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第四話
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次の日、大輔は退職していた。
やはり気まずかったようだ。
店長はどうやら昨日結局来なかったらしく、大輔のことは、「あの子何か馴染めてなさそうだったわよね」と言っていた。
真里と二人で主催の料理長には詫びを入れたが、「あれは仕方ない」と許してくれた。
そしてその日から他の従業員にはもれなく俺が軽く潔癖症なのが広まり(別に隠していた訳ではない)、大輔はもしや真里に3枚卸しにされたのではないかと言う冗談じみた噂もたった。
その噂に乗じて真里はあれから、イライラしていると本出刃を手にし、「何枚がいい?」と色んなやつにやっていた。調子に乗ると、何事も俺に話を振ってくる店長に対しても、「店長、今日は切れ味良いっすねこの出刃」とか言う。しかし当の店長はわかってない。周りが爆笑しつつ騒然となるだけだった。
こうして真里はまたひとつ、伝説を作り上げたのだった。
ふと暇な時間に、ドリンカーがあまりにも暇すぎて厨房メンツと談笑しているときだった。
「あ、いた。光也さーん」
大学生の麻希子が厨房の方までやってきた。
「やべ。ごめんごめん。ドリンク入った?」
「いや、ドリンカーは最早クリ…松村がやってます」
その麻希子の爆弾天然発言に厨房は爆笑。「最早言っちゃってるよね」とどっかで誰かが言う。最近松村は、俺がわりと固定ポジションにいないのがわかったらしい。必要に応じてやってくれるようになった。
俺は大体、暇なときはこうして厨房で談笑しながら在庫整理してみたり、忙しいときはヤバそうなところにいたりして、自由に仕事をしてる。
古株特権だろうか、あまり誰も文句を言わない。お偉いさんが居るときだけ気を付けるようにしている。
「どした?」
「そうそう、光也さんライブ行きません?」
「なんの?」
「ふっふっふ。
ガムシロ」
「え、えぇぇえ!マジかよ!ちょい、えぇぇえ!」
得意気に言った麻希子がちょっと意地らしい。お前、俺が生粋のファンだって知っててその言い方だな!
「復活ライブ。チケット当たっちった」
「お前すごっ、え、何それ何それ!」
「三枚あるんだぁ。行きます?」
「うわマジ行きたいなー、俺当たんなかったよびくともしなかったよ」
「なんの話してんの?」
二人でヒートアップしてる中、第三者、真里が介入。
「え?バンドのライブ!ガムシロップ15mlの」
「誰それ」
「ん?マイナーバンド!」
「光也さん説明雑だよ!興奮してるのはわかるけど!」
「あいつら解散したよね?」
そこに入ってきた料理長。まさかの人物。
「解散したんだけど最近また復活したんですよ。ファンの間ではボーカル生きてんのか?とか言ってたから安心したところです」
「麻希子ちゃん三枚って言ったよね?あと一枚あては?」
「特にないですけどまぁ友達連れて行こうかなって。まだ声掛けてないけど」
「俺行っていい?」
「え、おっさんが!?てか知ってるんすか?麻希子が知ってるのも意外だけど…おっさん世代違うよね」
「知ってるわ。俺も鬱時代あいつらに金かけたんだよ」
意外な過去だ。てか何歳の頃鬱になってんだよ…。解散したの10年くらい前だけど…。
あぁ、でも年齢同じくらいなのか、バンドのやつらと。
あーでもなぁ。
「うーん、俺ちっとパス!」
「えぇぇえ!なに言ってるんですか!?」
「せっかくだけど…」
小夜もいるしな。ライブなんて帰り遅くなるだろうし、そんな歳でもないし…。
「いつよそれ?」
俺が渋っていると真里が麻希子に聞く。
「来月?というか2週間後」
「いいじゃん、まだシフト間に合うし行ってくれば?」
「えー」
「家のことなら別に俺いるし。たまには気分転換してきたら?」
まだ煮え切らないでいると、「麻希子、よろしく」と真里が勝手に決定してしまった。
「はいよー」
そりゃぁ嬉しいけど…。
「こう言ってくれてるんだからここは甘えといた方がいいんじゃね?」
「そうですかねぇ…」
「たまの贅沢くらい誰も文句言わねぇよ。な?」
真里は深く頷き、バシっと肩を叩いてきた。
「ここで甘えない方が男として失礼だし!俺もいるし、一緒に楽しもう」
そう言われてしまうと返しにくいし確かにそうかなとも思う。
どうやらここしばらくは予定が結構あるらしい。
「てか光也だったっけ?ベースやってたの」
「やってましたよ」
「やっぱりそうだよね。ピックより指弾きの方が好きって言ってたよね」
「おっさんよく覚えてますね。いつ話したかも覚えてないやそれ。でもそれ俺だわ」
「え、楽器やってるんですか!」
そして料理長は然り気無く話を流してくれた。これはつまり暗黙の予定決定とも言える。
「今はぜんっぜん弾いてないよ。一昔前にちょっとやっただけ」
「でも言われてみればなんか弾きそうな手してる!細いからかな?」
確かに指は細いって言われるけど。
「ベース実家にあんの?」
「いや、家にあるよ。押し入れの奥底に眠ってる」
あれ、実家の押し入れだったかな。あ、いや、大学の頃までやってたから家にまだあるはずだな。
ここまでサボってると、店長がちらっと覗きに来た。皆それぞれ解散し、持ち場へ戻った。
やはり気まずかったようだ。
店長はどうやら昨日結局来なかったらしく、大輔のことは、「あの子何か馴染めてなさそうだったわよね」と言っていた。
真里と二人で主催の料理長には詫びを入れたが、「あれは仕方ない」と許してくれた。
そしてその日から他の従業員にはもれなく俺が軽く潔癖症なのが広まり(別に隠していた訳ではない)、大輔はもしや真里に3枚卸しにされたのではないかと言う冗談じみた噂もたった。
その噂に乗じて真里はあれから、イライラしていると本出刃を手にし、「何枚がいい?」と色んなやつにやっていた。調子に乗ると、何事も俺に話を振ってくる店長に対しても、「店長、今日は切れ味良いっすねこの出刃」とか言う。しかし当の店長はわかってない。周りが爆笑しつつ騒然となるだけだった。
こうして真里はまたひとつ、伝説を作り上げたのだった。
ふと暇な時間に、ドリンカーがあまりにも暇すぎて厨房メンツと談笑しているときだった。
「あ、いた。光也さーん」
大学生の麻希子が厨房の方までやってきた。
「やべ。ごめんごめん。ドリンク入った?」
「いや、ドリンカーは最早クリ…松村がやってます」
その麻希子の爆弾天然発言に厨房は爆笑。「最早言っちゃってるよね」とどっかで誰かが言う。最近松村は、俺がわりと固定ポジションにいないのがわかったらしい。必要に応じてやってくれるようになった。
俺は大体、暇なときはこうして厨房で談笑しながら在庫整理してみたり、忙しいときはヤバそうなところにいたりして、自由に仕事をしてる。
古株特権だろうか、あまり誰も文句を言わない。お偉いさんが居るときだけ気を付けるようにしている。
「どした?」
「そうそう、光也さんライブ行きません?」
「なんの?」
「ふっふっふ。
ガムシロ」
「え、えぇぇえ!マジかよ!ちょい、えぇぇえ!」
得意気に言った麻希子がちょっと意地らしい。お前、俺が生粋のファンだって知っててその言い方だな!
「復活ライブ。チケット当たっちった」
「お前すごっ、え、何それ何それ!」
「三枚あるんだぁ。行きます?」
「うわマジ行きたいなー、俺当たんなかったよびくともしなかったよ」
「なんの話してんの?」
二人でヒートアップしてる中、第三者、真里が介入。
「え?バンドのライブ!ガムシロップ15mlの」
「誰それ」
「ん?マイナーバンド!」
「光也さん説明雑だよ!興奮してるのはわかるけど!」
「あいつら解散したよね?」
そこに入ってきた料理長。まさかの人物。
「解散したんだけど最近また復活したんですよ。ファンの間ではボーカル生きてんのか?とか言ってたから安心したところです」
「麻希子ちゃん三枚って言ったよね?あと一枚あては?」
「特にないですけどまぁ友達連れて行こうかなって。まだ声掛けてないけど」
「俺行っていい?」
「え、おっさんが!?てか知ってるんすか?麻希子が知ってるのも意外だけど…おっさん世代違うよね」
「知ってるわ。俺も鬱時代あいつらに金かけたんだよ」
意外な過去だ。てか何歳の頃鬱になってんだよ…。解散したの10年くらい前だけど…。
あぁ、でも年齢同じくらいなのか、バンドのやつらと。
あーでもなぁ。
「うーん、俺ちっとパス!」
「えぇぇえ!なに言ってるんですか!?」
「せっかくだけど…」
小夜もいるしな。ライブなんて帰り遅くなるだろうし、そんな歳でもないし…。
「いつよそれ?」
俺が渋っていると真里が麻希子に聞く。
「来月?というか2週間後」
「いいじゃん、まだシフト間に合うし行ってくれば?」
「えー」
「家のことなら別に俺いるし。たまには気分転換してきたら?」
まだ煮え切らないでいると、「麻希子、よろしく」と真里が勝手に決定してしまった。
「はいよー」
そりゃぁ嬉しいけど…。
「こう言ってくれてるんだからここは甘えといた方がいいんじゃね?」
「そうですかねぇ…」
「たまの贅沢くらい誰も文句言わねぇよ。な?」
真里は深く頷き、バシっと肩を叩いてきた。
「ここで甘えない方が男として失礼だし!俺もいるし、一緒に楽しもう」
そう言われてしまうと返しにくいし確かにそうかなとも思う。
どうやらここしばらくは予定が結構あるらしい。
「てか光也だったっけ?ベースやってたの」
「やってましたよ」
「やっぱりそうだよね。ピックより指弾きの方が好きって言ってたよね」
「おっさんよく覚えてますね。いつ話したかも覚えてないやそれ。でもそれ俺だわ」
「え、楽器やってるんですか!」
そして料理長は然り気無く話を流してくれた。これはつまり暗黙の予定決定とも言える。
「今はぜんっぜん弾いてないよ。一昔前にちょっとやっただけ」
「でも言われてみればなんか弾きそうな手してる!細いからかな?」
確かに指は細いって言われるけど。
「ベース実家にあんの?」
「いや、家にあるよ。押し入れの奥底に眠ってる」
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