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Hydrangea
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翌日、みっちゃんは病室から消えていた。
看護士さんに、渡された手紙には一言、「ありがとう」と書かれていた。
だけど飛び降りたわけでもなく、ちゃんと事務の手続きをして朝、帰って行ったらしい。
帰って行ったと聞いたので家に向かったけど、家はそのままで誰もいなくて、ケータイに電話をしてもいつでも留守電。
何日過ぎてもみっちゃんは帰ってこない。
「裏切られたのかな…」
そう言うマリちゃんに掛ける言葉はなく。
そのまま少しして私は高校へ転入し、お店はみっちゃんなしで営業を再開。たまに来るフレッドさんには、「そのうちふらっと帰ってくるさ」と言われたりして。
なんとなく前が向けたような、だけど下を向いてしまうような日々を過ごして気が付いたら1年が経っていた。私は2年生になり、また夏休みが来ていて。
ふと最近になってやっとマリちゃんも柏原さんもみっちゃんのことを笑い話に出来るようになり始めていた。だけど最後にはやっぱり、思い出して言葉に詰まってしまう。
今日もそんな日の中のひとつで、なんとなく過ぎていくのだろうと思っていた。
開店してすぐにお店の扉が開いた。開いてすぐ、いらっしゃいませと言おうとして言葉を飲んだ。
「あっ…」
「よう…」
一年ぶりにみるみっちゃんは全然変わらなくて。
「みっちゃん!」
私は思わず抱きついたけど。頭を撫でてくれるその手の優しさも声も全部変わらなくて。
「光也…。お前…!勤務時間過ぎまくってんじゃねぇかよっ…」
「ごめん、おっさん」
マリちゃんも厨房から出て来て、「この幽霊野郎!」と泣きそうになって言った。
「生きてたんだね、抱きつけるもん」
「ちょっと…、京都に帰ってた」
「は?」
「おっさん、白州ロックでください」
その一言でみんな座って話を聞くことにした。柏原さんが目で合図するとマリちゃんはお店の看板をしまいにいった。その間に柏原さんはマリちゃんにも白州を出してみっちゃんの隣に置いた。私にはリンゴジュースを出してくれる。
マリちゃんが戻ってくると皆で取り敢えず乾杯。
「なんか新鮮だな、おっさんそっちか」
「お前がいない間は俺がやってたの」
「…ごめんなさーい」
「ったく。京都行ってなにしてたの?」
「…全部面倒事片付けてきた。
親父の遺産とかね。俺に残してくれてたみたいで。全部放棄しようとしたけど、朱鷺子さんがね、手切れ金や!とか言いながらくれたりして。ただ俺が愛人の子だとかバレると朱鷺子さんが面倒事になるよ?って言ったんだ。したら、親子だったら関係ないやろとか言ってプラスアルファで遺産くれて…。
ついでに、実の母親のこと教えてくれてさ。まだ生きていたことがわかったんだ」
「えぇ!」
「死んだっぽいこと言ってたのに!?」
「うん。あのあと調べてくれたみたいでね。そしたら、死んだと思ってたら生きていたことがわかったらしくて。早速行ってみた。生きてて感動の再会。
いろいろあって、取り敢えず俺は志摩家の長男で遺産やらなんやらがあるからあんまバレちゃうと面倒だねって話になってこっちに実の母親を連れてくることになって、連れてきたわけだ。
次はババアの相続の時だけ帰ってこいって話で終息。俺はやっとこっちに戻ってきたわけ」
「え?いまはお母さんと?」
「いや。
家やらなんやらを確保してやったら遺産のほとんどはなくなっちゃったよ。さてどうしようかと思ってここにふらっと来てみたよ」
「そっか」
「これからどうするの?」
「んー、まだ考えてないや」
そう言ってお酒を飲むみっちゃん。
「プランなしかよ。お前大の大人の癖にしっかりしてないなぁ」
「はっはっは…」
「マリちゃん、この前私寮の更新どうしよっかなって話してたよね」
「うん。ねー」
二人でみっちゃんを見る。みっちゃんから言葉を引き出すために。
だけど相変わらずマイペース。全然そんなことに気付いてくれなくて、白州の丸い氷をくるくる指で回して遊んでる。
「一緒に住もっかって言ってたんだよねーマリちゃん」
「俺もなー、従業員が一人バックれてマジ鬼畜スケジュールで人件めっちゃ困ってんだよなー」
「え?あれ、俺に言ってた?なんだよみんなして。素直じゃないなぁ」
「いや、あんたほどじゃないっしょ」
「…あーはいはい。わかりました。
真里さん、家に転がり込んでもいいですか?」
「ったくしかたねーな」
「おっさん、働いていいですか?」
「働いていいも何も従業員なんだから働けや」
「…みんな意地悪や…。小夜味方してくれる?」
「今回はダメかな」
「マジかー」
そうやってみんなで笑いあった。
「お帰りなさい、みっちゃん」
「うん…ただいま」
「神様、やっぱりいたね、みっちゃん」
こうやってまた、リセットして、新しくみんなでの生活、日常が始まる。
永遠なんてどこにもないけど少なくても続くまでは、このまましがみついて生きていきたい。これから先も、ずっと。
「じゃぁまた新しい生活を祝して!」
そしてみんなで乾杯をした。新しく楽しい生活を祝って、乾杯。
看護士さんに、渡された手紙には一言、「ありがとう」と書かれていた。
だけど飛び降りたわけでもなく、ちゃんと事務の手続きをして朝、帰って行ったらしい。
帰って行ったと聞いたので家に向かったけど、家はそのままで誰もいなくて、ケータイに電話をしてもいつでも留守電。
何日過ぎてもみっちゃんは帰ってこない。
「裏切られたのかな…」
そう言うマリちゃんに掛ける言葉はなく。
そのまま少しして私は高校へ転入し、お店はみっちゃんなしで営業を再開。たまに来るフレッドさんには、「そのうちふらっと帰ってくるさ」と言われたりして。
なんとなく前が向けたような、だけど下を向いてしまうような日々を過ごして気が付いたら1年が経っていた。私は2年生になり、また夏休みが来ていて。
ふと最近になってやっとマリちゃんも柏原さんもみっちゃんのことを笑い話に出来るようになり始めていた。だけど最後にはやっぱり、思い出して言葉に詰まってしまう。
今日もそんな日の中のひとつで、なんとなく過ぎていくのだろうと思っていた。
開店してすぐにお店の扉が開いた。開いてすぐ、いらっしゃいませと言おうとして言葉を飲んだ。
「あっ…」
「よう…」
一年ぶりにみるみっちゃんは全然変わらなくて。
「みっちゃん!」
私は思わず抱きついたけど。頭を撫でてくれるその手の優しさも声も全部変わらなくて。
「光也…。お前…!勤務時間過ぎまくってんじゃねぇかよっ…」
「ごめん、おっさん」
マリちゃんも厨房から出て来て、「この幽霊野郎!」と泣きそうになって言った。
「生きてたんだね、抱きつけるもん」
「ちょっと…、京都に帰ってた」
「は?」
「おっさん、白州ロックでください」
その一言でみんな座って話を聞くことにした。柏原さんが目で合図するとマリちゃんはお店の看板をしまいにいった。その間に柏原さんはマリちゃんにも白州を出してみっちゃんの隣に置いた。私にはリンゴジュースを出してくれる。
マリちゃんが戻ってくると皆で取り敢えず乾杯。
「なんか新鮮だな、おっさんそっちか」
「お前がいない間は俺がやってたの」
「…ごめんなさーい」
「ったく。京都行ってなにしてたの?」
「…全部面倒事片付けてきた。
親父の遺産とかね。俺に残してくれてたみたいで。全部放棄しようとしたけど、朱鷺子さんがね、手切れ金や!とか言いながらくれたりして。ただ俺が愛人の子だとかバレると朱鷺子さんが面倒事になるよ?って言ったんだ。したら、親子だったら関係ないやろとか言ってプラスアルファで遺産くれて…。
ついでに、実の母親のこと教えてくれてさ。まだ生きていたことがわかったんだ」
「えぇ!」
「死んだっぽいこと言ってたのに!?」
「うん。あのあと調べてくれたみたいでね。そしたら、死んだと思ってたら生きていたことがわかったらしくて。早速行ってみた。生きてて感動の再会。
いろいろあって、取り敢えず俺は志摩家の長男で遺産やらなんやらがあるからあんまバレちゃうと面倒だねって話になってこっちに実の母親を連れてくることになって、連れてきたわけだ。
次はババアの相続の時だけ帰ってこいって話で終息。俺はやっとこっちに戻ってきたわけ」
「え?いまはお母さんと?」
「いや。
家やらなんやらを確保してやったら遺産のほとんどはなくなっちゃったよ。さてどうしようかと思ってここにふらっと来てみたよ」
「そっか」
「これからどうするの?」
「んー、まだ考えてないや」
そう言ってお酒を飲むみっちゃん。
「プランなしかよ。お前大の大人の癖にしっかりしてないなぁ」
「はっはっは…」
「マリちゃん、この前私寮の更新どうしよっかなって話してたよね」
「うん。ねー」
二人でみっちゃんを見る。みっちゃんから言葉を引き出すために。
だけど相変わらずマイペース。全然そんなことに気付いてくれなくて、白州の丸い氷をくるくる指で回して遊んでる。
「一緒に住もっかって言ってたんだよねーマリちゃん」
「俺もなー、従業員が一人バックれてマジ鬼畜スケジュールで人件めっちゃ困ってんだよなー」
「え?あれ、俺に言ってた?なんだよみんなして。素直じゃないなぁ」
「いや、あんたほどじゃないっしょ」
「…あーはいはい。わかりました。
真里さん、家に転がり込んでもいいですか?」
「ったくしかたねーな」
「おっさん、働いていいですか?」
「働いていいも何も従業員なんだから働けや」
「…みんな意地悪や…。小夜味方してくれる?」
「今回はダメかな」
「マジかー」
そうやってみんなで笑いあった。
「お帰りなさい、みっちゃん」
「うん…ただいま」
「神様、やっぱりいたね、みっちゃん」
こうやってまた、リセットして、新しくみんなでの生活、日常が始まる。
永遠なんてどこにもないけど少なくても続くまでは、このまましがみついて生きていきたい。これから先も、ずっと。
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そしてみんなで乾杯をした。新しく楽しい生活を祝って、乾杯。
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