心中 Rock'n Beat!!

二色燕𠀋

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酒場の閑居と情緒

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 メンバーから太刀回りを「おー」だの「かっけぇ」だの言われるのには「へへー」な依田。
 のんちゃんに、

「ロックンロールだねぇ」

と言われたことに対しては一瞬固まってから、

「うん!俺ロックンロール!」

とむちゃくちゃハイテンションになっている。

 …わかりやすすぎるだろう。嬉しそうにもうなんか口元押さえてるけどにやけやがって気持ち悪い。
 まぁ、お気持ちは察しますけど。

「え、で、じゃくじーはそれのどこやってるの?」

 そののんちゃん誤爆に一同固まり、依田すらも「はえ?」となりつつ間ののち、メンバーが先に爆笑した。
 つられて流石にあたしも、のんちゃんのド天然ぶりに笑ってしまった。

 まずどこを訂正するべきか、まぁこういうのはメンバーに任せるとして。

「いや、この人三味線だって」
「え、あれ?あ、そっか!」
「はい、俺、浄瑠璃の三味線なんです」
「あ、そっか。へぇえ!パンクだねぇ」

 最早のん基準、わからない。
 依田は嬉しそうに、「はい、パンクです」とのんちゃんに合わせている。

 最早穂咲兄さんより相性良いんじゃないの?お前ら。

「え俺もやってみたいだって三味線って12本?弦」
「いや、3。多分それお琴ですね」
「3!?2分の1!?」
「あれこの会話デジャブか山口」
「そうだね。のんのせいだ」

 けど意外となんだか依田とのんちゃん、噛み合ってるし。
 最早空気を読んで我々は我々で席替えをして、のんちゃんと依田に盛り上がって頂き、こちらはこちらでバンドあるあるで盛り上がることにした。

 程よく酔っぱらってきて、「リズム隊あるある」ネタで盛り上がる。

「そうねぇ、ウチののんはその辺大人しいかもね」
「弾かなくなっちゃうけどねぇ。高畑なんかたまに踊ってるよね」
「いいんだよのんに睨まれるくらい」
「あれ楽しそうですよね。多分ウチでやったら殺し合いっすよ」
「あぁ、確かにお宅ら若いから、ツンツンしてるよねー」
「高畑さん、何気ギターの暴走止められるの凄い。私多分ムリだわ」
「お宅らちょっと暴れすぎだよね」

 山口さんがのんびり言うが。確かにウチのバンド、“sexual harassment”は。

 ギターボーカルのケンジがよく暴れるというか突っ走るというか曲をぶち込んじゃうタイプ。
 頭に来てサイドギターのMINAコーラスでトリッキー叫び。アホみてぇなハイテクライブ限定コードぶっ込んできて。
 煽るドラム、焦る私。しかしアドレナリン、ついて行くのがすげぇ精一杯。
 ケンジがキレてマイク蹴っ飛ばしたりシャウトしまくって場がカオス。鳴り響くベース。
 うぇいうぇい客。乗っちゃうギター軍、げんなりリズム隊、みたいな。

「パンクだよねぇ」
「パンクってかカオスだよね」
「まぁセクハラっすね。もうおっぱい出そうかな」
「いやそれはダメだろー。てかそんな時は女王出ないのな」
「あれだって演技ですし。つか必死だしベース」

 山口さんがのんびり笑い、高畑さんがけっけと笑った。

 そんな中、

「ちなみにジャグジーは源氏名なんです」

と依田が向かい側で幸せそーにニヤニヤニヤニヤしてのんちゃんに言ってるのが聞こえてしまい、思わず「なんだそれ」と、ツッコミを入れてしまった。

「あそーなの?
 ま俺もねぇ、曽根原って実は本名じゃないよー」
「何ぃ!」

 思わずそこにもツッコミを入れてしまった。

 のんちゃんはにかにかしながら、「うん、曽根崎そねざき!」と言う。それに依田が思わず飛び退き「ふぇぇぇえ!」と神的リアクションを見せた。思わずあたしはビクッとしてしまう。

「びっくりしすぎだよジャグジー。
 え?本名なんて言うの?」
「よよよ、依田、こうっ、」

 噛みまくりじゃねえか。
 目の前にあった、多分コークハイを手渡してやった。依田はばっとあたしからコークハイを奪い取ってイッキ飲みし、息を整え、のんちゃんを見つめる。「?」なのんちゃん。

依田よだ紅葉こうようですっ、」
「パンクだね!
え、どゆ字?」
「あの、依頼の依に田んぼの田で依田、もみじで紅葉です」
「えすげぇ、歌詞に使って良い?」
「めめめ滅相もないっ」
「え、ちょービビってるどしたの?」
「のんちゃん、そいつちょっと頭がいまデッドヒートだと思います。
 なんか本名を教えるって凄いことらしいですよ。多分いま泌部を見せたくらいの」
「あぁぁ!言うなよ下品なヤツだな!やめてよ亀ちゃん!」
「え、なんか可愛いね図体デカいのに依田くん」
「いやぁぁ、のんちゃんちょっと恥ずかしい、」

 やべぇなおい依田。

 流石にリズム隊二人、少し引きながら、「あなんか」「あれ?」察しがつき始めている。
 しかし当ののんちゃん、「依田くんおもしろーい!飲も!酔っちゃお!」こんな調子の無自覚さん。

「亀ちゃんん…」

 こっちに飛び火。嫌だやめて欲しい。

「えやだやめてウザイ」
「卯月の紅葉とソネシン、ヤバいよどっちも近松ちかまつの心中物だよ亀ちゃん」
「はぁ!?」
「運命?俺そろそろ、良い感じぃ?」

 全然わかんねぇ異文化コミュニケーションなんだけど。

「わかんない」

 首を横に振ることしか出来なかった。
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