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どうなってもいい、そこにあった混乱の延長線上でついに職場では倒れたし、社長にはハプバーに入る前を抑えられた。
ぼんやり、入り口のガラス戸に見覚えのあるオシャレ白髪が写ったのだ。
まさかな、いつもふらっと目の前に現れるからな。幻覚とか末期だな、と思ったところで肩を叩かれ、振り向けば本当に社長本人だったので、言葉を失くしてしまった。
「やぁ、駒越くん」
彼は穏やかに微笑んだ。
「…は、」
「意外だねぇ…」
社長は自分を、爪先から頭のてっぺんまでを眺め今度は、ハプバーの外装をのっぺり眺めて「うっへっへっへ、」と、変な笑いをする。
一瞬で、あの病院で向けられた柔らかい印象の笑顔が消え失せた。
「遊ぶねぇ…」
「…えっと、」
客は平然と出入りしている。
ちょっと避けよっか、と壁際へ促され鮮やかに日常が流れ込んできた。
社長秘書になって間もない。
あれ、これ、もしかしてヤバイんじゃないのか?
「…社長っ、」
「どうも」
「な………なんでここにいらっしゃるんです?」
「いやーなんかふらっと歩いてた」
ふらっとって。
ここ、ちゃんと気を張って歩いてないとなかなか踏み外しますけれども。
つまり、そんなわけがないだろう。
「君こそどうしたの。いやはや若いって良いねぇ。おじさんにはなかなか勇気が」
「尚更どうしているんです!?」
いや、よくよく考えれば自分も全く言えた立場じゃないけど。
「だから、お散歩だったんだけど」と、社長は調子を変えない。
「まさか君を捕まえるとは思ってなかったよ」
「あ、はぁ、」
「なるほど、こーゆーとこくる人ってそこそこ良いって聞いたんだけど、君、流石だなぁ」
カップル率高いからってやつだろうか。
社長、今何を見てそう言ってるんだ、一体。
「結構イケる?やっぱ」
「は、いや…」
「どんくらい?どんくらいイケるのこれって」
「あの…まだ入ってないんですけど…」
「じゃあ、ご一緒して良い?」
「えっ、」
「金なら出すからさ」
「いや、待ってくださいね」
落ち着け。
こんなのが来たらカオスになってしまう。いや、元からカオスな空間なんだけれども。
危険もあるな、すられたらいくらだろうか、マジで。
「男、二人って、あんま入りませんよ」
「しどろもどろだねぇ、そうなの?友達とかと入りそうじゃん」
「いや、確かにそうです、ハイ」
「入ってってる人も、単身ってあんまいないねぇ…どうやら」
「はい、まぁ、はい。しゃ…ちょーくらいならあり得るかもしれませんが…」
「あそう?でも俺は無理だなぁ」
「確カニ、一人トカ、カナリの自信ガ…」
「うっはっはナニソレ!面白っ、君やっぱ」
「いえ、空気です。ごめんなさい今何言ってるか自分もよくわかってません」
「だよねぇ。入る?」
「イヤ、」
まず、
「…ゲイと間違えられますよ社長」
「ん?」
「カップルで入る方が多いですので」
「あそう?まぁいいとしてそーなの?マジで?カップル?」
「はい、あの…割引とかあったり、女の人連れてると割引とかあったり」
「ははは、高いんだね?よく来たねぇ~、金はまぁいいよ?ほら好都合でしょ?」
「いやいや間違えられたら貴方、それしか来ませんよ?」
「あー、なるほどねー」
理解して貰えたらしい。
ここは素人が来る場所じゃない、いや、初めは皆素人だ、自分もそうだったというか自分は未だに素人に近いけど。あれは多分ビビるだろう。あまりに世界観が違くて。
「…キャバクラみたく、ひょいっと行って良い感じではありませんよ社長…」
「そうなんだね?乱交?」
「あ、はい、えっと」
純粋そうに「乱交?」なんて言われてしまっては、かなり心に刺さる。
動揺して「あ、いや見えるような見えないようなです」だなんて、秘書にしてはリサーチ報告がポンコツになった。
入り行く客、出て行く客の視線がちらほら、気付くくらいには冷静になってきた。
「社長、取り敢えず…移動しません?ちょっと、変かも」
「ん?」
「からかいっていうのが…一番失礼ですしね……」
入り口でうだうだやってるこれがいけない。
そういうつもりだったのだが「なかなか積極的だね…ビックリ…」と、は?何を言っているんだこの人は状態に、本当に一瞬だけ力が抜けてしまった。
「じゃぁ、」
楽しそうにそう言った社長。
まで、理解したが。
「………?」
何故か、その場で社長から壁に押し付けられ、キスされたのだから、途端に思考が吹っ飛ばされてしまったような、いや、ギリギリ飛べずに「どーゆーこと?」と考えた自分が不思議だった。
ん?
頭がまわらず社長を突き飛ばしてしまった。
あ、やってしまった。ん?やってしまったのか?とわからないまま「なんで!?」とそのままストレートに言葉が出てくる。
…理解出来ませんけど!
「……あれぇ、今キス出来たんだけどなんで突き飛ばされた?」
「え、」
「案外あっさりと受け入れられたから、やっぱりなって」
「何!?」
「流石だねぇ~慣れてるね~、凄く気持ちよ」
「社長っ!」
「雰囲気かなぁ、君ならイケそうと思ったらホントについ」
「つい!?」
待って。
色々過ってきた。
あれ、この人もしかして、こっち?
いやはや違うな、既婚者だったはず。
既婚者?
「やめてください、不倫とか、」
「不倫?」
「流石にそれは無理です、」
「ん?不倫が無理なの?」
「そーですよ当たり前じゃないですかっ!」
慰謝料とか無理だよ、間違いなく。
ぼんやり、入り口のガラス戸に見覚えのあるオシャレ白髪が写ったのだ。
まさかな、いつもふらっと目の前に現れるからな。幻覚とか末期だな、と思ったところで肩を叩かれ、振り向けば本当に社長本人だったので、言葉を失くしてしまった。
「やぁ、駒越くん」
彼は穏やかに微笑んだ。
「…は、」
「意外だねぇ…」
社長は自分を、爪先から頭のてっぺんまでを眺め今度は、ハプバーの外装をのっぺり眺めて「うっへっへっへ、」と、変な笑いをする。
一瞬で、あの病院で向けられた柔らかい印象の笑顔が消え失せた。
「遊ぶねぇ…」
「…えっと、」
客は平然と出入りしている。
ちょっと避けよっか、と壁際へ促され鮮やかに日常が流れ込んできた。
社長秘書になって間もない。
あれ、これ、もしかしてヤバイんじゃないのか?
「…社長っ、」
「どうも」
「な………なんでここにいらっしゃるんです?」
「いやーなんかふらっと歩いてた」
ふらっとって。
ここ、ちゃんと気を張って歩いてないとなかなか踏み外しますけれども。
つまり、そんなわけがないだろう。
「君こそどうしたの。いやはや若いって良いねぇ。おじさんにはなかなか勇気が」
「尚更どうしているんです!?」
いや、よくよく考えれば自分も全く言えた立場じゃないけど。
「だから、お散歩だったんだけど」と、社長は調子を変えない。
「まさか君を捕まえるとは思ってなかったよ」
「あ、はぁ、」
「なるほど、こーゆーとこくる人ってそこそこ良いって聞いたんだけど、君、流石だなぁ」
カップル率高いからってやつだろうか。
社長、今何を見てそう言ってるんだ、一体。
「結構イケる?やっぱ」
「は、いや…」
「どんくらい?どんくらいイケるのこれって」
「あの…まだ入ってないんですけど…」
「じゃあ、ご一緒して良い?」
「えっ、」
「金なら出すからさ」
「いや、待ってくださいね」
落ち着け。
こんなのが来たらカオスになってしまう。いや、元からカオスな空間なんだけれども。
危険もあるな、すられたらいくらだろうか、マジで。
「男、二人って、あんま入りませんよ」
「しどろもどろだねぇ、そうなの?友達とかと入りそうじゃん」
「いや、確かにそうです、ハイ」
「入ってってる人も、単身ってあんまいないねぇ…どうやら」
「はい、まぁ、はい。しゃ…ちょーくらいならあり得るかもしれませんが…」
「あそう?でも俺は無理だなぁ」
「確カニ、一人トカ、カナリの自信ガ…」
「うっはっはナニソレ!面白っ、君やっぱ」
「いえ、空気です。ごめんなさい今何言ってるか自分もよくわかってません」
「だよねぇ。入る?」
「イヤ、」
まず、
「…ゲイと間違えられますよ社長」
「ん?」
「カップルで入る方が多いですので」
「あそう?まぁいいとしてそーなの?マジで?カップル?」
「はい、あの…割引とかあったり、女の人連れてると割引とかあったり」
「ははは、高いんだね?よく来たねぇ~、金はまぁいいよ?ほら好都合でしょ?」
「いやいや間違えられたら貴方、それしか来ませんよ?」
「あー、なるほどねー」
理解して貰えたらしい。
ここは素人が来る場所じゃない、いや、初めは皆素人だ、自分もそうだったというか自分は未だに素人に近いけど。あれは多分ビビるだろう。あまりに世界観が違くて。
「…キャバクラみたく、ひょいっと行って良い感じではありませんよ社長…」
「そうなんだね?乱交?」
「あ、はい、えっと」
純粋そうに「乱交?」なんて言われてしまっては、かなり心に刺さる。
動揺して「あ、いや見えるような見えないようなです」だなんて、秘書にしてはリサーチ報告がポンコツになった。
入り行く客、出て行く客の視線がちらほら、気付くくらいには冷静になってきた。
「社長、取り敢えず…移動しません?ちょっと、変かも」
「ん?」
「からかいっていうのが…一番失礼ですしね……」
入り口でうだうだやってるこれがいけない。
そういうつもりだったのだが「なかなか積極的だね…ビックリ…」と、は?何を言っているんだこの人は状態に、本当に一瞬だけ力が抜けてしまった。
「じゃぁ、」
楽しそうにそう言った社長。
まで、理解したが。
「………?」
何故か、その場で社長から壁に押し付けられ、キスされたのだから、途端に思考が吹っ飛ばされてしまったような、いや、ギリギリ飛べずに「どーゆーこと?」と考えた自分が不思議だった。
ん?
頭がまわらず社長を突き飛ばしてしまった。
あ、やってしまった。ん?やってしまったのか?とわからないまま「なんで!?」とそのままストレートに言葉が出てくる。
…理解出来ませんけど!
「……あれぇ、今キス出来たんだけどなんで突き飛ばされた?」
「え、」
「案外あっさりと受け入れられたから、やっぱりなって」
「何!?」
「流石だねぇ~慣れてるね~、凄く気持ちよ」
「社長っ!」
「雰囲気かなぁ、君ならイケそうと思ったらホントについ」
「つい!?」
待って。
色々過ってきた。
あれ、この人もしかして、こっち?
いやはや違うな、既婚者だったはず。
既婚者?
「やめてください、不倫とか、」
「不倫?」
「流石にそれは無理です、」
「ん?不倫が無理なの?」
「そーですよ当たり前じゃないですかっ!」
慰謝料とか無理だよ、間違いなく。
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