ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 1st episode

13

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『バカだなぁ…!全然違うよ!』

 銃声がして、遠い日のおどけた声が聞こえる。

『まずほら、重さが違うだろ?見た目だって、フレームやバレルも違う。何より、トリガーを握ってみたらわかる。全然違うよ』

 全然何を言ってるかわからなかった。試しに撃ってみようとしたら、

『あーほら!片手はダメ!反動で銃口が上向いてお前脳天ぶち抜きたいの?両手!』

 漸く撃てたらあいつは驚いていた。ただ、俺も見栄を張った。物凄く肩に反動が来た。

『…お前にはまだ早いよ。俺のしばらく使ってな』

 そう言って渡されたのがベレッタM84、通称『チーター』だった。

 まだ銃も持ったことがないような俺は、自分で銃を手配した。一瞬パッと見ただけで、そいつが持っていた『チーター』を自分の力で手配したつもりだったから、内心がっかりしたんだ。お揃いに、したつもりだった。

 ところが俺が手配したのはより難易度の高い、猟銃としても扱われる『デザートイーグル』だった。今にして思えば、なんでそんな間違いを犯すのか、どう頑張っても間違えねぇよ昔の自分、と思う。多分よほどセンスがなかったんだ。

 シルバーとブラック。これしか見てねぇだろ昔の俺、と、この間違いに感しては本気で恥ずかしくて死にたくなる。

 だがあいつは…。

『てゆーかお前すげぇな。なんも教えてないのに初めて銃を持ってこれ撃てるって潜在能力だよな最早。自衛隊か何かかよ。どう見てもひ弱そうなのに』

 確かにキツかったけど。感覚なのかなんなのか。

 これを使い慣れてくると思うが、初心者でも撃てなくはないだろう。重心の掛け方とかそーゆーのさえしっかりすれば。

『だがまぁまだ俺が持ってる。もう少し上手くなったら返すよ』

 その優しい、爽やかな笑顔が。
 その、デザートイーグルが赤く染まったのは。

「反動が凄いから姿勢はまっすぐ。片寄ったら危ないぞ」
「へーい」

 軽く返事をして潤はいかにも軽く構えて一発撃った。
 気持ち前のめりになった様子。

「…うぉぉ、確かにすげぇ」
「うん」
「お前脱臼かよ」
「いや、してねぇよ」

 的がぶっ壊れかけている。

「やっぱりお前変態だな」
「失礼な。ライフル銃よりかそれの方が楽なんだよ」
「うわぁ、怖いな」
「いいから返せ」

 渋い顔をしてあっさり返してくれた。

「だからこれ使わないんだな」
「え?人の話聞いてた?」
「聞いてたよ。お前これ使わないじゃん。
って言ってもお前が銃ぶっ放してんのなんてあんま見ないけどさ。使ってなかったなと思って」
「…そう?」
「大体は…グロック使ってたから。でもそれも使いにくいらしいじゃん?なのにわざわざ使ってるってお前はやっぱり頭おかしいのかなって思ってたんだけど。
 こっちはさ、使うのに、ちょっと覚悟がいるね。だって、相手は確実に死ぬんだもんね」
「…そうだな」
「お前ってさ、いつも思うけどさ。
バカな男だよね。なんでそんなに息苦しいの?」

 そう、人のこと散々ディスりながらも。
 なんか切なそうに笑みを浮かべてやがるから。

「姑息なやつだな」

 なんて返していいかわかんないんだよ。

「…やっぱりお前とは喧嘩になるね。誘わなきゃよかった。お前となんてなんでまたこうやって、あん時みたいに仕事してんだろうね。
 でもいいよ。あん時よりか俺は銃も使えるようだし、まぁ場馴れもしたわ。皮肉にも。どんどん人から離れてるけどな」

 それを言ったら。

「嫌ならいいんだよ、潤」
「うーん、考えとく。だってどうせ俺もお前ももう…」

 何かを潤が言いかけたときだった。潤は、俺の後ろを見て、ふと微笑んだ。

「よう、クソガキ」

 振り向くと、伊緒がそこに立っていた。

「気付かなかったよ。どうやら俺らは背後が甘いらしいな。
 じゃぁね。俺先に戻るね」

 そう言うと潤は、肩を回しながら練習場から出ていった。
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