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The 5th episode
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改めて、ホワイトボードの前に立つ。政宗も隣に立って支えるように袖を掴んでいてくれたが、やんわりとそれを払う。
「聞いたとは思うが、今さっき…會澤組が5課により検挙された」
一同に動揺が走る。無理もない。こちらの糸口のひとつではあったのだから。
「現場には俺も立ち会った。全員検挙だ」
「それじゃぁ…今後我々はどうするんですか…?」
瞬が不安そうな眼差しで問う。
「考えた。
まず、今潜入捜査をしているホストクラブの件については、先方に動きがあるまでは続行しようと思う。
理由は、ここはあくまでも出資者が會澤組と言うだけだ。あとは、これでヤクが途絶えれば會澤組がエレボスと繋がっていたと言うことになるし…。
実は俺もここ二日會澤組に潜入捜査をしていた。ここでわかってきたことは、會澤組にもバックがいた、と言うことだ」
「…それが証券会社ゼウスと言うことか」
「あぁ。ただまぁ、ゼウスの社長はどういうわけかこちらの素性に詳しくてな。エレボスに特本部が立ったことまでご存じだった」
「えっ…」
今度は沈黙が流れた。唖然としているのかもしれない。
「貴方は…」
その沈黙を破ったのは、意外にも伊緒だった。
「そんな捜査を自分一人でしていた訳ですか」
明らかにその声には怒りが隠っている。周りの目も、呆れやら、怒りやら。
これが、自分がしてしまった中途半端な捜査の結果だった。
「…ああ。
中途半端な結果になってしまったことは、最早詫びるしかない」
「そんなことを俺は言いたい訳じゃないんです…!」
デスクを叩いて伊緒が立ち上がった。「おい、落ち着け伊緒」と、政宗が宥める。
「止めなかった俺の責任もあるな、流星。
だがお前は俺にすら何も言わなかった。なんでだ?どうして黙ってそんな危ない橋を一人で渡って、挙げ句に真ん中で立ち往生してんだよ」
わかってる。
「…今回は密令だった。所謂先行捜査と言うやつで、これからの段階だったが突然事情が変わってな。本日付で検挙となった」
「それはわかった。それに関してはもういい」
「あの、」
今度は諒斗が一言を発した。
「揉めるならよそでやってくれよ。俺らどうやら、蚊帳の外じゃねぇか。
流星さん、あんたがどんなつもりで、思いで無茶をして昔のこと引きずってやってんのか知らない。俺たちは昔のこともなんも知らないんだ。若輩者だってここには多い。けどな、あんたがこの事件にしがみついてるくらい懸命で、俺たちだってその思いは一緒なんだよ。それであんたの下に付いてんのに、あんたはどうやら、信用なんてしてくれてないじゃないか」
そう真っ直ぐに言われて、返す言葉がなくなってしまった。
…なるほど。先程からの話のズレは、そこだったのか。
「…そうかもな」
「え…?」
「…わかった。悪かったな。こっからは強制はしない。出ていきたいやつは根こそぎ出て行ってくれ」
「あんたさ、」
「以上だ。俺からはそんだけ。あとは好きにしろ」
それだけ言ってデスクに戻ると、すれ違い様に、「情緒不安定かよてめぇ」と政宗の小言が聞こえた。
そうかもしれない。
取り敢えず今ある情報を処理しよう。
がんっ、という鈍い音がして、諒斗が出て行ったのがわかった。多分デスクを蹴ったんだろう。
「諒斗…!」と、瞬も追いかけるように立ち上がり、出て行き様に目が合って一言、「お互い、整理しましょう。また夕方に」と言ってから走って出て行った。
「私も…わかんなくなっちゃった」
霞もそう言って悲しそうな顔をして立ち上がり、のろのろと部署から出て行く。
そんな姿を眺めていると急に、俺のデスクの上にがん、という音がして、振り向けば愛蘭がお茶を荒々しく置いたようだった。
「霞を追いかけたら戻ってきますのでそれまでは慧さんから資料を頂いてくださいね部長」
表情こそ変えないが、愛蘭のオーラが怖い。
「…お前も行けよ。あいつらに言っとけ。ちゃんと次への口添えはしとくと」
「言ってみますけど」
大して目も合わさずに出て行ってしまった。
「お前って、なんでそんなに頭悪いかね」
横で潤が不機嫌そうに言った。
「…うるさい」
「ったく。呆れた。てめぇの湿気た面見て仕事する気分でもねぇからタバコ吸って銃撃ってくるわ」
荒々しく立ち上がって潤も出て行った。
どうやら今残っているのは4人。政宗と慧さんと伊緒と恭太だ。
「あらあら。若い子は血気盛んだね」
慧さんがのんびりとした口調で言い、立ち上がって書類を渡しにきた。
「貴方に渡そうと思ってたんですが、ずっと留守だったんで」
「…あんたは、いいんですか」
「なにが?」
「ここに残って」
「ええ。私もやり残した仕事だらけなので」
「…そうですか」
「良い人でよかったな、流星」
急に肩の荷が降りた。
途端に、激しいまでの眠気に教われ、反射的にその場にあったペンを左手に突き刺した。
「で、書類ってのは…」
「流星さん、それ、見てて痛々しいのですが」
「あぁ、気にしないでください。最近寝てないんで」
眠い。
「一応、この前のスミス&ウェッソンの製造番号と工場、そして仕入れ先がわかりました。
あと紙幣番号ですが…」
ホント、眠い。
あぁ、力が抜ける。
視界が大きく揺らいだ。大震災でも、来たかな。
「流星!?」
なんか身体が痛いな。
眠い。
視界がぼやける。頭も痛い。
なんだろ、政宗がめちゃくちゃ心配そうに人の顔覗き込んでるけど政宗の向こうは、天井かな。
目蓋が重い。
あぁ、暗い。
「聞いたとは思うが、今さっき…會澤組が5課により検挙された」
一同に動揺が走る。無理もない。こちらの糸口のひとつではあったのだから。
「現場には俺も立ち会った。全員検挙だ」
「それじゃぁ…今後我々はどうするんですか…?」
瞬が不安そうな眼差しで問う。
「考えた。
まず、今潜入捜査をしているホストクラブの件については、先方に動きがあるまでは続行しようと思う。
理由は、ここはあくまでも出資者が會澤組と言うだけだ。あとは、これでヤクが途絶えれば會澤組がエレボスと繋がっていたと言うことになるし…。
実は俺もここ二日會澤組に潜入捜査をしていた。ここでわかってきたことは、會澤組にもバックがいた、と言うことだ」
「…それが証券会社ゼウスと言うことか」
「あぁ。ただまぁ、ゼウスの社長はどういうわけかこちらの素性に詳しくてな。エレボスに特本部が立ったことまでご存じだった」
「えっ…」
今度は沈黙が流れた。唖然としているのかもしれない。
「貴方は…」
その沈黙を破ったのは、意外にも伊緒だった。
「そんな捜査を自分一人でしていた訳ですか」
明らかにその声には怒りが隠っている。周りの目も、呆れやら、怒りやら。
これが、自分がしてしまった中途半端な捜査の結果だった。
「…ああ。
中途半端な結果になってしまったことは、最早詫びるしかない」
「そんなことを俺は言いたい訳じゃないんです…!」
デスクを叩いて伊緒が立ち上がった。「おい、落ち着け伊緒」と、政宗が宥める。
「止めなかった俺の責任もあるな、流星。
だがお前は俺にすら何も言わなかった。なんでだ?どうして黙ってそんな危ない橋を一人で渡って、挙げ句に真ん中で立ち往生してんだよ」
わかってる。
「…今回は密令だった。所謂先行捜査と言うやつで、これからの段階だったが突然事情が変わってな。本日付で検挙となった」
「それはわかった。それに関してはもういい」
「あの、」
今度は諒斗が一言を発した。
「揉めるならよそでやってくれよ。俺らどうやら、蚊帳の外じゃねぇか。
流星さん、あんたがどんなつもりで、思いで無茶をして昔のこと引きずってやってんのか知らない。俺たちは昔のこともなんも知らないんだ。若輩者だってここには多い。けどな、あんたがこの事件にしがみついてるくらい懸命で、俺たちだってその思いは一緒なんだよ。それであんたの下に付いてんのに、あんたはどうやら、信用なんてしてくれてないじゃないか」
そう真っ直ぐに言われて、返す言葉がなくなってしまった。
…なるほど。先程からの話のズレは、そこだったのか。
「…そうかもな」
「え…?」
「…わかった。悪かったな。こっからは強制はしない。出ていきたいやつは根こそぎ出て行ってくれ」
「あんたさ、」
「以上だ。俺からはそんだけ。あとは好きにしろ」
それだけ言ってデスクに戻ると、すれ違い様に、「情緒不安定かよてめぇ」と政宗の小言が聞こえた。
そうかもしれない。
取り敢えず今ある情報を処理しよう。
がんっ、という鈍い音がして、諒斗が出て行ったのがわかった。多分デスクを蹴ったんだろう。
「諒斗…!」と、瞬も追いかけるように立ち上がり、出て行き様に目が合って一言、「お互い、整理しましょう。また夕方に」と言ってから走って出て行った。
「私も…わかんなくなっちゃった」
霞もそう言って悲しそうな顔をして立ち上がり、のろのろと部署から出て行く。
そんな姿を眺めていると急に、俺のデスクの上にがん、という音がして、振り向けば愛蘭がお茶を荒々しく置いたようだった。
「霞を追いかけたら戻ってきますのでそれまでは慧さんから資料を頂いてくださいね部長」
表情こそ変えないが、愛蘭のオーラが怖い。
「…お前も行けよ。あいつらに言っとけ。ちゃんと次への口添えはしとくと」
「言ってみますけど」
大して目も合わさずに出て行ってしまった。
「お前って、なんでそんなに頭悪いかね」
横で潤が不機嫌そうに言った。
「…うるさい」
「ったく。呆れた。てめぇの湿気た面見て仕事する気分でもねぇからタバコ吸って銃撃ってくるわ」
荒々しく立ち上がって潤も出て行った。
どうやら今残っているのは4人。政宗と慧さんと伊緒と恭太だ。
「あらあら。若い子は血気盛んだね」
慧さんがのんびりとした口調で言い、立ち上がって書類を渡しにきた。
「貴方に渡そうと思ってたんですが、ずっと留守だったんで」
「…あんたは、いいんですか」
「なにが?」
「ここに残って」
「ええ。私もやり残した仕事だらけなので」
「…そうですか」
「良い人でよかったな、流星」
急に肩の荷が降りた。
途端に、激しいまでの眠気に教われ、反射的にその場にあったペンを左手に突き刺した。
「で、書類ってのは…」
「流星さん、それ、見てて痛々しいのですが」
「あぁ、気にしないでください。最近寝てないんで」
眠い。
「一応、この前のスミス&ウェッソンの製造番号と工場、そして仕入れ先がわかりました。
あと紙幣番号ですが…」
ホント、眠い。
あぁ、力が抜ける。
視界が大きく揺らいだ。大震災でも、来たかな。
「流星!?」
なんか身体が痛いな。
眠い。
視界がぼやける。頭も痛い。
なんだろ、政宗がめちゃくちゃ心配そうに人の顔覗き込んでるけど政宗の向こうは、天井かな。
目蓋が重い。
あぁ、暗い。
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