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Past episode two
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「今ごろ政府や警察関係者は顔面蒼白でしょうね」
「なにをした」
「樹実、これはね。君が見るべきものではないんです。君は、君が信じた世界を歩めばいい。ただ、僕が残した爪痕は、僕らの真実は、こんなちっぽけな物に収まるんです」
「貴様は何を」
「あんたは黙ってください栗林さん。
あんたはこの頃、別の部隊の海尉でしたね。幸せ者ですよ」
「なんの話をしているんだ」
「だけど無関係ではない。一眼となって僕らは滅ぼされたのだから」
「雨…?」
「樹実、僕はただ…。
ただ、職務を全うしたかっただけだった。死んだ仲間を想うことは、それを背負うことは最早、僕がしてもいいことではないから。だから、僕は、」
「雨、」
「僕はね、樹実」
持っていた拳銃を樹実に向け、雨は悲しそうに笑ったのだった。
「君が羨ましかった。何も背負わない君が、…ヒーローになれる君が、凄く」
一発、その雨の弾丸が樹実の右肩を掠めた。
こんな時ですら、右側を、攻めるなんて。
「…避けないんですね」
「…俺は右側が弱いんだ。忘れたのか」
「忘れていませんよ。右目の視力が悪いんですよね」
なんでこんなときまで。
泣いているときまで笑っていられるんだ、お前は。
「雨…。お前を、俺が悪いんだよな」
「…あんたみたいな生温い友情なんかじゃありません。強いて言うなら…。
その男がウチの野良猫を脅かしたので。殺してやろうと半狂乱になったのがきっかけでした。きっかけなんてそんなもんなんです」
痛みで眼が霞む。
「樹実、覚えてるでしょうか」
「何を…」
「うーん、あれかな、樹実が、ボリビアの氷の上でご飯ぶちまけたとき。一瞬で凍って驚いて。だけどみんなは、それどころじゃなくて」
「覚えてる、覚えてる。なんで、そんなこと」
「あぁ、あとね、僕が先輩にぶっ掛けたお茶がね、先輩が避けちゃって樹実に掛かっちゃったのとか」
「…覚えてるよ…。だから、なんで」
「でも僕、そのあと樹実が先輩をぶん殴って謹慎になったの、今も怒ってますよ。けど…すっきりしたんです」
「雨…!」
「これは僕の記憶なんです。それでいいんです。ただ、少しだけ贅沢を言うなら、ちょっとくらいでいい、覚えていて欲しいなぁと」
胸の切迫。
これが、いつでも嫌なんだ。
「このUSBは貴方に託します。
そうだなぁ、よければ僕の猫に預けてください。家でお腹を空かせて待っているでしょう。ま、僕の遺言と財産です。このデータは、もうここにしか存在しない」
「雨…、」
樹実が、だけど哀しそうにハンマーを引く。ああ、そうかもう僕は終わるんだと、雨は目を閉じた。
銃声がした、確かに聞いた。
だが衝撃はなく。
恐る恐る目を開けると樹実は、真横の上官の心臓を一発で仕留めていた。
「…樹実!?」
「…二階級特進おめでとー栗林海将」
「な…」
「雨、俺は思い出を背負えない」
「樹実…」
「だから、取り敢えず着いて来てくれないか」
「あんた、自分が今何言ってるか」
「わかってる。けど無理なんだ」
そう言う樹実の哀しい表情に、雨は力が抜けたように笑うしかなく。
「それに、俺のスポッターは、お前以外…」
「あぁ、もう…。
嫌になっちゃうなぁ…」
それから熱海雨は訓練所を明け渡し、降参した。
USBは然り気無く紛失。テレビ画面には、手錠の上に白衣を掛けられた熱海元二等海佐の姿が連日晒された。
しかし闇の真実が存在し、雨は二階級特進した。
真実だけは煙に巻かれてしまい、罪は消え去ろうとしていた。
「なにをした」
「樹実、これはね。君が見るべきものではないんです。君は、君が信じた世界を歩めばいい。ただ、僕が残した爪痕は、僕らの真実は、こんなちっぽけな物に収まるんです」
「貴様は何を」
「あんたは黙ってください栗林さん。
あんたはこの頃、別の部隊の海尉でしたね。幸せ者ですよ」
「なんの話をしているんだ」
「だけど無関係ではない。一眼となって僕らは滅ぼされたのだから」
「雨…?」
「樹実、僕はただ…。
ただ、職務を全うしたかっただけだった。死んだ仲間を想うことは、それを背負うことは最早、僕がしてもいいことではないから。だから、僕は、」
「雨、」
「僕はね、樹実」
持っていた拳銃を樹実に向け、雨は悲しそうに笑ったのだった。
「君が羨ましかった。何も背負わない君が、…ヒーローになれる君が、凄く」
一発、その雨の弾丸が樹実の右肩を掠めた。
こんな時ですら、右側を、攻めるなんて。
「…避けないんですね」
「…俺は右側が弱いんだ。忘れたのか」
「忘れていませんよ。右目の視力が悪いんですよね」
なんでこんなときまで。
泣いているときまで笑っていられるんだ、お前は。
「雨…。お前を、俺が悪いんだよな」
「…あんたみたいな生温い友情なんかじゃありません。強いて言うなら…。
その男がウチの野良猫を脅かしたので。殺してやろうと半狂乱になったのがきっかけでした。きっかけなんてそんなもんなんです」
痛みで眼が霞む。
「樹実、覚えてるでしょうか」
「何を…」
「うーん、あれかな、樹実が、ボリビアの氷の上でご飯ぶちまけたとき。一瞬で凍って驚いて。だけどみんなは、それどころじゃなくて」
「覚えてる、覚えてる。なんで、そんなこと」
「あぁ、あとね、僕が先輩にぶっ掛けたお茶がね、先輩が避けちゃって樹実に掛かっちゃったのとか」
「…覚えてるよ…。だから、なんで」
「でも僕、そのあと樹実が先輩をぶん殴って謹慎になったの、今も怒ってますよ。けど…すっきりしたんです」
「雨…!」
「これは僕の記憶なんです。それでいいんです。ただ、少しだけ贅沢を言うなら、ちょっとくらいでいい、覚えていて欲しいなぁと」
胸の切迫。
これが、いつでも嫌なんだ。
「このUSBは貴方に託します。
そうだなぁ、よければ僕の猫に預けてください。家でお腹を空かせて待っているでしょう。ま、僕の遺言と財産です。このデータは、もうここにしか存在しない」
「雨…、」
樹実が、だけど哀しそうにハンマーを引く。ああ、そうかもう僕は終わるんだと、雨は目を閉じた。
銃声がした、確かに聞いた。
だが衝撃はなく。
恐る恐る目を開けると樹実は、真横の上官の心臓を一発で仕留めていた。
「…樹実!?」
「…二階級特進おめでとー栗林海将」
「な…」
「雨、俺は思い出を背負えない」
「樹実…」
「だから、取り敢えず着いて来てくれないか」
「あんた、自分が今何言ってるか」
「わかってる。けど無理なんだ」
そう言う樹実の哀しい表情に、雨は力が抜けたように笑うしかなく。
「それに、俺のスポッターは、お前以外…」
「あぁ、もう…。
嫌になっちゃうなぁ…」
それから熱海雨は訓練所を明け渡し、降参した。
USBは然り気無く紛失。テレビ画面には、手錠の上に白衣を掛けられた熱海元二等海佐の姿が連日晒された。
しかし闇の真実が存在し、雨は二階級特進した。
真実だけは煙に巻かれてしまい、罪は消え去ろうとしていた。
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