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Past episode two
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喫煙所には、誰もいなかった。殺風景に灰皿が何個かと自販機が置かれている。しかし変に清潔的で、なんとなく樹実はこの雰囲気が好きではない。
「で、どうしたの今日は」
「ん?いや…。
ちょっと胸クソ悪いニュースを見ただけだ。日本人は陰険だよな、ホント」
「お前も立派な日本人だぜ。てかお前、二年間何してたの」
「ん?まぁ、国家秘密」
「あー、出たよ裏FBI。お前もだいぶ飼い殺されてんな」
「うるさいなぁ。嫌になるくらい、犬畜生に成り下がったよ俺も」
「まぁ丸くなったと言えばいいよ。今後ともその調子で」
「どうかな。
てか今度さ、ゴリラの子見してよ」
「ムカつくな。嫌だ」
「なんでよ。犬の子と猫の子見したるから」
「は?
うわぁ、お前それ本気で結婚から遠退いたな。さようなら独身変質者」
「まぁいいや。うん、可愛いくらいクソ生意気な強犬と捨て猫だよ」
「…は?何?またセフレかなんか?」
「その方がいくらかいいなぁ」
「え、なんだ?」
まさか、もっと厄介だったりして。
「あれはなんだろ、女房?」
政宗は思わずラーク一口分の煙を吹き出して無駄にしてしまった。
「お、おめでと…え?」
「いや、大きい息子?」
「え、卑猥」
「いや違う。てめぇ朝から元気だな」
「昨晩ちょっと」
「あーはいはいはい。
うーん、弟?いや、やっぱ息子かなぁ…うーん」
「…え、ごめん全然伝わらない」
「もう一人はねぇ」
「もう一人!?」
「うーん、隠し子?」
「は?え?何、え?」
「うーん、それとも愛人隠してるやつってこーゆー気持ちかな?」
「いや、いや、わかんない怖い」
「まぁ俺もわかんない。あっ、」
話しているうちにケータイが鳴ったようで、樹実は画面を眺めて溜め息を吐き、政宗に構わず応答した。
「はい、もしもし、いっちゃんでーぃす」
この感じ、おそらく樹実の電話相手は、上司だろう。
「あ、うんうん。ウチの子達どっちも今日よ。
…あ?マジ?
えぇー、そこあんたのコネと俺の勇気でなんとかはい、はい、すぐ繋いでください、はい」
急に真面目な口調に早変わり。
なんと言われたのだろう。まぁ恐らく、『借金全部請求して東京湾に沈めることは、ヤクザじゃなくても出来るんだよ?いっちゃん』とでも言われたんだろう。
「あー、もしもしはい、カヤヌマと申しますー。はーい。
え?二人とも書類不備?いやぁちょっと待ってよー。今上司のタカダから連絡ありましたけど何ー?理由は?
は?戸籍?
いやぁ、だからその子達が言うとおりなのよなんなら俺ハンコ押したよね?うん、そう保証人…。
は?あ、あぁ…はは…マジかー。
いやぁ、うん、それその子達に代わって」
なんの話をしているんだろうか。
こいつ公安のクセになんだか今すごく黒くないか?
「おいバカ何してんだよ。お前さぁ、何で続柄で親って書くの?バカなの?は?
だからさ、ラサールじゃねぇんだよここはに・ほ・ん!in Japanだわこのバカ!はい、代われ!
あ、どもども~、はい、間違いないですぅ~。その子ちょっと海外長くて。はい、すみませーん。はい、次。
よぅ。お前さ、何?は?いや、はぁ…。バカ、そりゃぁね、その兄ちゃん呆れるよ、うん。今は俺が面倒見てるでしょうが。取り敢えず親の欄は俺の名前にしときなさいよ。は?字?
お前なんで保証人の欄に書けて親の欄に書けないの、んなわけないでしょ代わって!
はい、よーく言っときましたんで。すみません。これからも宜しくお願いしまーす。はい、はーい」
絶対にこいつ、なんか悪いことをしている。さっき言っていた女房だかなんだか凄くよくわからないなんかあれだろうか。
樹実と目が合ったので政宗は反射的にに目を逸らす。だが樹実は大体空気を読まない。「ゴリラパパ~!」と政宗に泣きつく。
「やめろよ怖いしムカつくわぁ!」
「もうさ、子育ての仕方教えて。死んじゃう俺。今の若い子ってかガキはなんなの頭の中。全員コカイン中毒かよ」
「やめなさいよバカ。お前一応クリーンな公安でしょ、違うけどぉ!
何?俺今のままだとお前悪い人なんですけど。若い外人の姉ちゃんを誰かに売り付けてないよな?」
「悪い人たちが、やぁてきて~♪」
「…お前の方がやべぇよ」
「マジやべぇ。ぱねぇ」
樹実は2本目のタバコを揉み消し、「きっとかわいー女の子だからー♪」と、ベンジーを調子っ外れに歌い続けて先に喫煙所を先に去っていく。
その背はただごとじゃないなと政宗は思ったが、
そもそもあいつ、いつでもただごとじゃないなと思い直し、通常通り仕事が出来そうだと安心した。
それからその日の樹実はいつになくそわそわしていて、ぶっちゃけ仕事の精度で言えば、凡人なら80、いつもの樹実なら60パーセントくらいの働きだった。
何がそんなに彼をそわそわさせるのか。理由は単純だった。
「樹実、今日飲み行く?」
「ん?んー、待って、まだ待って」
仕事中にケータイを何度も確認しては上の空。本当に女でも作りやがったかと、銀ちゃんこと銀河も政宗も顔を見合わせる。
そして遂に終業時刻に差し掛かったとき。
「おっしゃぁぁ!」
見ていたケータイをぶん投げ、雄叫びをあげて樹実は立ち上がる。なんなんだ。競馬場のおっさんか、競馬関連か。
そしてすぐに樹実は、「じゃ、終わったから帰る!じゃね!」と、颯爽と帰ってしまった。
「…うまくいったらしいな」
「みたいだな」
面倒なので気にせず二人は帰ることにした。
「で、どうしたの今日は」
「ん?いや…。
ちょっと胸クソ悪いニュースを見ただけだ。日本人は陰険だよな、ホント」
「お前も立派な日本人だぜ。てかお前、二年間何してたの」
「ん?まぁ、国家秘密」
「あー、出たよ裏FBI。お前もだいぶ飼い殺されてんな」
「うるさいなぁ。嫌になるくらい、犬畜生に成り下がったよ俺も」
「まぁ丸くなったと言えばいいよ。今後ともその調子で」
「どうかな。
てか今度さ、ゴリラの子見してよ」
「ムカつくな。嫌だ」
「なんでよ。犬の子と猫の子見したるから」
「は?
うわぁ、お前それ本気で結婚から遠退いたな。さようなら独身変質者」
「まぁいいや。うん、可愛いくらいクソ生意気な強犬と捨て猫だよ」
「…は?何?またセフレかなんか?」
「その方がいくらかいいなぁ」
「え、なんだ?」
まさか、もっと厄介だったりして。
「あれはなんだろ、女房?」
政宗は思わずラーク一口分の煙を吹き出して無駄にしてしまった。
「お、おめでと…え?」
「いや、大きい息子?」
「え、卑猥」
「いや違う。てめぇ朝から元気だな」
「昨晩ちょっと」
「あーはいはいはい。
うーん、弟?いや、やっぱ息子かなぁ…うーん」
「…え、ごめん全然伝わらない」
「もう一人はねぇ」
「もう一人!?」
「うーん、隠し子?」
「は?え?何、え?」
「うーん、それとも愛人隠してるやつってこーゆー気持ちかな?」
「いや、いや、わかんない怖い」
「まぁ俺もわかんない。あっ、」
話しているうちにケータイが鳴ったようで、樹実は画面を眺めて溜め息を吐き、政宗に構わず応答した。
「はい、もしもし、いっちゃんでーぃす」
この感じ、おそらく樹実の電話相手は、上司だろう。
「あ、うんうん。ウチの子達どっちも今日よ。
…あ?マジ?
えぇー、そこあんたのコネと俺の勇気でなんとかはい、はい、すぐ繋いでください、はい」
急に真面目な口調に早変わり。
なんと言われたのだろう。まぁ恐らく、『借金全部請求して東京湾に沈めることは、ヤクザじゃなくても出来るんだよ?いっちゃん』とでも言われたんだろう。
「あー、もしもしはい、カヤヌマと申しますー。はーい。
え?二人とも書類不備?いやぁちょっと待ってよー。今上司のタカダから連絡ありましたけど何ー?理由は?
は?戸籍?
いやぁ、だからその子達が言うとおりなのよなんなら俺ハンコ押したよね?うん、そう保証人…。
は?あ、あぁ…はは…マジかー。
いやぁ、うん、それその子達に代わって」
なんの話をしているんだろうか。
こいつ公安のクセになんだか今すごく黒くないか?
「おいバカ何してんだよ。お前さぁ、何で続柄で親って書くの?バカなの?は?
だからさ、ラサールじゃねぇんだよここはに・ほ・ん!in Japanだわこのバカ!はい、代われ!
あ、どもども~、はい、間違いないですぅ~。その子ちょっと海外長くて。はい、すみませーん。はい、次。
よぅ。お前さ、何?は?いや、はぁ…。バカ、そりゃぁね、その兄ちゃん呆れるよ、うん。今は俺が面倒見てるでしょうが。取り敢えず親の欄は俺の名前にしときなさいよ。は?字?
お前なんで保証人の欄に書けて親の欄に書けないの、んなわけないでしょ代わって!
はい、よーく言っときましたんで。すみません。これからも宜しくお願いしまーす。はい、はーい」
絶対にこいつ、なんか悪いことをしている。さっき言っていた女房だかなんだか凄くよくわからないなんかあれだろうか。
樹実と目が合ったので政宗は反射的にに目を逸らす。だが樹実は大体空気を読まない。「ゴリラパパ~!」と政宗に泣きつく。
「やめろよ怖いしムカつくわぁ!」
「もうさ、子育ての仕方教えて。死んじゃう俺。今の若い子ってかガキはなんなの頭の中。全員コカイン中毒かよ」
「やめなさいよバカ。お前一応クリーンな公安でしょ、違うけどぉ!
何?俺今のままだとお前悪い人なんですけど。若い外人の姉ちゃんを誰かに売り付けてないよな?」
「悪い人たちが、やぁてきて~♪」
「…お前の方がやべぇよ」
「マジやべぇ。ぱねぇ」
樹実は2本目のタバコを揉み消し、「きっとかわいー女の子だからー♪」と、ベンジーを調子っ外れに歌い続けて先に喫煙所を先に去っていく。
その背はただごとじゃないなと政宗は思ったが、
そもそもあいつ、いつでもただごとじゃないなと思い直し、通常通り仕事が出来そうだと安心した。
それからその日の樹実はいつになくそわそわしていて、ぶっちゃけ仕事の精度で言えば、凡人なら80、いつもの樹実なら60パーセントくらいの働きだった。
何がそんなに彼をそわそわさせるのか。理由は単純だった。
「樹実、今日飲み行く?」
「ん?んー、待って、まだ待って」
仕事中にケータイを何度も確認しては上の空。本当に女でも作りやがったかと、銀ちゃんこと銀河も政宗も顔を見合わせる。
そして遂に終業時刻に差し掛かったとき。
「おっしゃぁぁ!」
見ていたケータイをぶん投げ、雄叫びをあげて樹実は立ち上がる。なんなんだ。競馬場のおっさんか、競馬関連か。
そしてすぐに樹実は、「じゃ、終わったから帰る!じゃね!」と、颯爽と帰ってしまった。
「…うまくいったらしいな」
「みたいだな」
面倒なので気にせず二人は帰ることにした。
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