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Past episode two
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その日樹実を不機嫌&ハイテンションにさせた元凶は、警察学校の教官室にあった。
教官室1。
「君、この前の面接は合格です。ラサールの出だし海軍訓練所出て…ん?
あれ、この訓練所って…」
「あぁ、去年閉鎖されたらしいですね」
受かったのはよかった。今日は諸々の書類を受け取りに来たのだが。
「え?てかなにこれ。親これ…」
「親というか…なんでしょう?小さい頃からその人に世話になってるんで一応親の欄に書いたんですが」
「は?いや、待って。親は?」
「だから、その…」
「じゃなくて、えーっとね、お母さんと、お父さん」
「その人どっちかっていうとお父さん」
「はぁ?何を言ってんの君は。あのね、生物学的な…なんて言うの?お父さんと、」
「あー、卵子と精子提供者的な?いや、わかんない」
「提供者?は?」
「うーんとね、うん、俺、どこの誰だかわかんないわけ」
流星の言葉一つ一つに、教官の顔がみるみる青ざめていく。
そして凄く言いにくそうに、「ごめんね、凄く聞きにくいこと聞いていいかな…」と教官が言ってきたので即、「じゃダメ」と流星は突き返した。
「わかった。この人の連絡先わかる?」
と、哀れむように言われてしまった。
教官室2。
「君、面接では合格か不合格か微妙でした。何故ならば…」
面接官が書類を叩く。
見てみるとそこには、親の欄に熱海雨の名前と、保証人に茅沼樹実の名前があったからだ。
「…それが?」
「君、つかぬことを聞くようだが、星川防衛大臣のご子息だよね?」
「…さぁ」
「僕はそう聞いてたんだけど」
「…誰から」
「各方面から」
「…人違いじゃない?第一そうだったとして、星川防衛大臣はもうお亡くなりになってませんでしたっけ?」
「よくご存じで。不幸な事故だったそうだね」
「へぇ」
「熱海雨とは、どういう?」
「ずっと一緒に住んでます」
「親代わりなのか。この、茅沼樹実?とは?」
「家の保証人です。熱海との友人だそうで。いま、彼いないから。ちょっと世話になってるんですよ」
「…ホントに?」
「…嘘吐いたって不利でしょうが」
「確認取れないの?」
「あー、取れるよ」
そして二人が、最終的に答えた内容が全く同じだった。
「何かあったらFBI日本支部のタカダソウタを通してってカヤヌマが言ってた」
と。
言われた通りそれぞれの面接官は電話番号を押し、FBI日本支部へ連絡。
『はい、日本支部でございます』
本当に出られてどちらも驚愕。それからタカダへ内線。
『はい、タカダと申しますがカヤヌマ関係でしょうか?警察学校は受かりましたか?』
第一声にこれ。混乱を極めた。
「えぇぇえっと、か、カヤヌマ様は…」
「カヤヌマは只今おりませんが、というかこの電話はカヤヌマ個人のものではないのですが。どういったご用件ですか」
「いえ、あの…面接で来た子の書類不備が多数ありまして。身元確認の際にこちらを教えられたものでして」
「畏まりました、少々お待ちくださいませ」
そこから流れるパヴァーヌが怖すぎる。しかも長い。
その保留オンの間の会話は至ってシンプル。
「はい、もしもし、いっちゃんでーぃす」
「もしもしいっちゃん。高田でぃす。
今日、君のとこの、面接だったよね」
「あ、うんうん。ウチの子達どっちも今日よ」
「お宅のペット、書類不備が多いってよ。面接官困ってるよ」
「…あ?マジ?」
「あの感じだとアウトだね」
「えぇー、そこあんたのコネと俺の勇気でなんとか」
「お前な、俺にいくら借りを作ってると」
「はい、」
「いいか?抹殺というのはいとも簡単なんだよいっちゃん」
「はい、すぐ繋いでください」
「よろしい」
「はい」
最後あたりは最早間髪をいれずに高田が樹実に畳み掛けた。樹実の言葉と被る勢いだった。すぐに電話が切れる。
あとはそれぞれに樹実が即電話を繋ぎ、「ラサールはこれでいけたんだけど」とか、「いや、俺の親は熱海さんだから」という世間知らずさを一蹴して強引に書類の書き直しをさせ、本人確認的なものを済ませ、隠蔽臭さが漂う形で正式に書類を通して流星と潤は警察学校への入学を認められた。
後に流星が高田に話をしたところ、「よく通ったね」と言われたそうだ。
二人の出会いはそれから三日後。入学式の日だった。
潤が入学式をバックれた。
朝礼には確実にいたらしい。
二人の教官となった男、有田洋匡という、50代くらいの、いかにも厳格そうなおっさんに、「壽美田くん」と、流星は入学式の開会前に呼ばれたのだった。
「はい」
「君、星川潤を知っているね?」
「誰ですかそれ」
「え?親戚じゃないのか?」
「いえ。親戚なんていませんけど」
「あぁ、そうか。君らは、そうだよなぁ。
君と同じく書類不備で一度落とした子だよ。どうせその辺でぷらぷらしてる奴なんてそいつだけだ。探してきてくれ」
嘲笑うように言われてしまう。
なんて不躾な奴なんだ。
返事もせずに流星は有田教官に背を向けたが、「なんだ、返事も出来ないのか」と言われたので、振り返って嘲笑だけを返してやった。
よくもまぁ、何も人のことを知らず言えたもんだ。
教官室1。
「君、この前の面接は合格です。ラサールの出だし海軍訓練所出て…ん?
あれ、この訓練所って…」
「あぁ、去年閉鎖されたらしいですね」
受かったのはよかった。今日は諸々の書類を受け取りに来たのだが。
「え?てかなにこれ。親これ…」
「親というか…なんでしょう?小さい頃からその人に世話になってるんで一応親の欄に書いたんですが」
「は?いや、待って。親は?」
「だから、その…」
「じゃなくて、えーっとね、お母さんと、お父さん」
「その人どっちかっていうとお父さん」
「はぁ?何を言ってんの君は。あのね、生物学的な…なんて言うの?お父さんと、」
「あー、卵子と精子提供者的な?いや、わかんない」
「提供者?は?」
「うーんとね、うん、俺、どこの誰だかわかんないわけ」
流星の言葉一つ一つに、教官の顔がみるみる青ざめていく。
そして凄く言いにくそうに、「ごめんね、凄く聞きにくいこと聞いていいかな…」と教官が言ってきたので即、「じゃダメ」と流星は突き返した。
「わかった。この人の連絡先わかる?」
と、哀れむように言われてしまった。
教官室2。
「君、面接では合格か不合格か微妙でした。何故ならば…」
面接官が書類を叩く。
見てみるとそこには、親の欄に熱海雨の名前と、保証人に茅沼樹実の名前があったからだ。
「…それが?」
「君、つかぬことを聞くようだが、星川防衛大臣のご子息だよね?」
「…さぁ」
「僕はそう聞いてたんだけど」
「…誰から」
「各方面から」
「…人違いじゃない?第一そうだったとして、星川防衛大臣はもうお亡くなりになってませんでしたっけ?」
「よくご存じで。不幸な事故だったそうだね」
「へぇ」
「熱海雨とは、どういう?」
「ずっと一緒に住んでます」
「親代わりなのか。この、茅沼樹実?とは?」
「家の保証人です。熱海との友人だそうで。いま、彼いないから。ちょっと世話になってるんですよ」
「…ホントに?」
「…嘘吐いたって不利でしょうが」
「確認取れないの?」
「あー、取れるよ」
そして二人が、最終的に答えた内容が全く同じだった。
「何かあったらFBI日本支部のタカダソウタを通してってカヤヌマが言ってた」
と。
言われた通りそれぞれの面接官は電話番号を押し、FBI日本支部へ連絡。
『はい、日本支部でございます』
本当に出られてどちらも驚愕。それからタカダへ内線。
『はい、タカダと申しますがカヤヌマ関係でしょうか?警察学校は受かりましたか?』
第一声にこれ。混乱を極めた。
「えぇぇえっと、か、カヤヌマ様は…」
「カヤヌマは只今おりませんが、というかこの電話はカヤヌマ個人のものではないのですが。どういったご用件ですか」
「いえ、あの…面接で来た子の書類不備が多数ありまして。身元確認の際にこちらを教えられたものでして」
「畏まりました、少々お待ちくださいませ」
そこから流れるパヴァーヌが怖すぎる。しかも長い。
その保留オンの間の会話は至ってシンプル。
「はい、もしもし、いっちゃんでーぃす」
「もしもしいっちゃん。高田でぃす。
今日、君のとこの、面接だったよね」
「あ、うんうん。ウチの子達どっちも今日よ」
「お宅のペット、書類不備が多いってよ。面接官困ってるよ」
「…あ?マジ?」
「あの感じだとアウトだね」
「えぇー、そこあんたのコネと俺の勇気でなんとか」
「お前な、俺にいくら借りを作ってると」
「はい、」
「いいか?抹殺というのはいとも簡単なんだよいっちゃん」
「はい、すぐ繋いでください」
「よろしい」
「はい」
最後あたりは最早間髪をいれずに高田が樹実に畳み掛けた。樹実の言葉と被る勢いだった。すぐに電話が切れる。
あとはそれぞれに樹実が即電話を繋ぎ、「ラサールはこれでいけたんだけど」とか、「いや、俺の親は熱海さんだから」という世間知らずさを一蹴して強引に書類の書き直しをさせ、本人確認的なものを済ませ、隠蔽臭さが漂う形で正式に書類を通して流星と潤は警察学校への入学を認められた。
後に流星が高田に話をしたところ、「よく通ったね」と言われたそうだ。
二人の出会いはそれから三日後。入学式の日だった。
潤が入学式をバックれた。
朝礼には確実にいたらしい。
二人の教官となった男、有田洋匡という、50代くらいの、いかにも厳格そうなおっさんに、「壽美田くん」と、流星は入学式の開会前に呼ばれたのだった。
「はい」
「君、星川潤を知っているね?」
「誰ですかそれ」
「え?親戚じゃないのか?」
「いえ。親戚なんていませんけど」
「あぁ、そうか。君らは、そうだよなぁ。
君と同じく書類不備で一度落とした子だよ。どうせその辺でぷらぷらしてる奴なんてそいつだけだ。探してきてくれ」
嘲笑うように言われてしまう。
なんて不躾な奴なんだ。
返事もせずに流星は有田教官に背を向けたが、「なんだ、返事も出来ないのか」と言われたので、振り返って嘲笑だけを返してやった。
よくもまぁ、何も人のことを知らず言えたもんだ。
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