ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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Past episode two

6

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 教官の態度といい、こっちとら貴様らから見ればゆとり教育世代、流星のやる気がなくなり腹が立った。

 流星がテキトーにぷらぷらと歩いていると、二、三人の先輩(と思われる)、その先輩に囲まれているわりに態度は堂々とした、外廊下に片膝を抱えて座る茶髪の青年を発見した。

 直感だが絶対外れていないはず。多分、星川潤とはあいつだろう。

 先輩方の背後の位置から流星はこっそり近付いてみると、一瞬茶髪と目が合った。
 膝に乗せた顔の上目遣いが睨むようで、なんとなく背筋が、ぞわっとした。

「お前、新入りだろ?」
「はぁ、でしょうねぇ」
「なんでこんなとこにいんだよ」
「あんたらは?なんでいんの?俺と一緒でしょ?サボりじゃん」
「お前なぁ…!」
「ルールって言葉を知らないようだな」
「いやいや言えた口かよ…」

 一人、真ん中のヤツが茶髪にガン飛ばすように覗き込むが、「へぇ…」と一瞬、間を置く。

「可愛い顔してんな、お坊っちゃん」

 先輩が茶髪を嘲笑いそう言って目配せをしたので、そろそろ傍観を決め込むのもダメかなと流星は思い、「あのー、」と声を掛けたのと同時だった。

「ありがと、先輩」

 にこっと可愛らしく笑った茶髪は廊下から外に降り立つと、いきなり真ん中のヤツの横っ面をぶん殴ってしまった。

「うわぁ…」

タチ悪っ。

「てめぇ…!」

 踞る一人と、心配そうに庇う残り二人。

「あのー、すんません。大丈夫っすか?」

 後ろから流星が声を掛けるが、「誰?」「誰だお前!」と、茶髪と先輩からそれぞれ口撃を受けた。

「あー、新入生です。君、星川くん?」 
「え?あい」

 きょとんとした顔で返事にもならない返事をする彼に、流星は少し笑いそうになりながらも真顔を保ち、
「教官が呼んでこいって」
まで言うのが限界で、言葉を続けず黙って鉄面皮をキープした。

「え、嫌だ」
「え、なんで」
「うーん、宗教臭くて気が狂いそうだから」

 咄嗟にしてはハイセンスな言い訳。溜め息を吐くが流星の内心は爆笑で流石に、にやけてしまった。

「同感だね」
「え、何それ」
「いや、俺も教官うぜぇしあの空気吸ってらんないわ、気持ちはわかる」

 意外な一言だったようで、星川はじっと流星を見る。

 まぁそうだよな。

 流星の真意を探りたい、真っ直ぐな視線だった。

「てめぇらな…!」

 起き上がらないまま、先輩は喚く。
 星川はそいつを冷たく見下すと、「あ、忘れてた。なんですかセンパイ」と冷たく言い放った。
 漸く隣のヤツが一人立ち上がり、星川の胸ぐらを鷲掴む。

「喧嘩売ってんのかてめぇ」
「物騒だなぁ。俺からは売ってねぇけど?」
 
 先輩に掴まれた手首を掴む星川。
 遠目で見ている流星にまでめりめりと音が聞こえてきそう。星川の、白くひょろい印象を受けた腕の血管が浮いている。
 そのうち力負けして先輩は、その手を離す羽目になる。

「センパイ達も俺と遊んでく?暇なんでしょ?」
「てめぇ」
「あのー、星川くん」
「なんですか同期くん。話は済んだよあんたとは」
「いや、済んでないから。俺君を連れて帰らないといけないんですけど」
「だから嫌です」
「だからダメです」
「なんでよ」
「わからん。取り敢えず来てよ」
「嫌だ」
「あのなぁ…。君も大人ならね」
「お前ら二人してバカにしてないか」
「うるさい先輩お宅は黙って」
「あぁ!?」

 流星には嫌いなことがいくつかあるが、まず生産性のない言い争いと、話を遮られることは上位に君臨するほど嫌いである。
 それをこのセンパイはやりやがる。

「てかあんたもサボっちゃえよ」
「うんまぁそれでもいいけどお前とは嫌だ」
「なんで」
「お前日本語通じねぇし空気読んでくれないから」
「…まぁよく言われるけどそんなにはっきり初対面で言う?案外失礼だね」
「俺もそれよく言われる。初対面で言うかなお前空気読めよ」
「なんなんだお前ら」
「だからうるせぇっつってんだよ!」

 ここは二人ハモった。案外、息が合うようだ。

「大体君たち後輩にいちゃもんつけて絡んだ挙げ句殴られてますけど大丈夫かよ。どうせだったらシめろよ情けねぇな」
「えぇ、ひでぇ、なんだよお前」
「なんだ、おま」
「先輩風だけなら誰でも吹かせられんだよわかるか?大体君らいくつよ二十歳越えてますか?俺はこう見えて20になるんですよわかりますか?多分君らが高卒なら俺の方が年上なんですよどう考えても!」
「は、はい…」
「はいじゃねぇ立てやクソガキ!」
「はい!」
「わかったら去れ!Go away!」
「はい!」

 拳銃を握り、流星はその腕を真横に伸ばし去れの合図をする。

 頭おかしいわ。

 先輩方は恐れおののき、そそくさと立ち去った。

 ちょろいもんだ、年下なんて。
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