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Past episode four
16
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講堂のドアを開ければ荒んでいた。
信者達は祈りを捧げている。死体はいくつも寝かされていて、祈りが終われば裏口に担架で運ばれていくのだった。
「あれは…」
この中では一番下っ端の青年が聞いてきた。名は橋田知徳《はしだとものり》と言う。名前のわりに線が細く、女みたいな見た目でいつもいじられていた天然キャラだった。
いつも、潤や流星の喧嘩を止めたりしていた。
彼がここにいるのはエレボス事件で両親を亡くしたからだった。
「裏で遺体は解体される。そうして、使える臓器を海外に輸出するんだよ。まぁ多分、死亡時刻的にはどれもダメだろうけどな」
「は…?」
誰も教会のやつらはこちらに目もくれない。いま踏み込んだら一発で壊滅出来るだろう。
担架で死体を運んでいた、薬品臭い長身で初老の男が樹実に気付いて歩いてきた。
「茅沼さん、お元気そうで」
よく見れば男の目は青かった。それ以外は日本人なのだろうが、それだけが異質だった。
「あぁまぁな。
エリック、彼らは君たちの大敵、厚労省の人間だ」
「…あぁ、そうですか。また、来たんですか。
そこの黒人と眼鏡の坊やは昨日お会いしましたね。私は傍観してたんで君らは知らないだろうけど。
なんですか今日は」
「言うことはひとつだ。エレボスは解散だ」
「ほぅ、急にですか。つまり?」
「残ったやつらは普通に、神様でも信じて生きていけということだ」
「わからないなぁ、あんた、自分が仕出かしたことの大きさを、わかっていますか」
「聞けないなら撃ち殺す。お前らを反逆者として殺す権限は俺にある」
「はぁ、笑わせるね。ですがまぁ、丸腰じゃ勝てない。こりゃひとつ金で解決しませんか」
「断る。俺はこの悪循環を辞めに来た」
「ふざけてらっしゃる。途中からふらっと現れて全てを変えたのはあんたじゃないか。今更になって何を言う。俺はあんたらに大分貢献しましたよ?科学者として、運び屋としてなぁ…別にまぁいい。
あんたなんて高々数ある大口のウチの一つにすぎない。死ねば?」
拳銃を向けられた。それを合図としたかのように信者達は血相を変えてこちらに敵意を剥き出した。
「その大口全部、俺が潰してきた」
「は?」
「曽田長官や…あとルークは?」
「昔自衛隊で苛めラれた官僚共」
「知徳は?」
「捜査一課だったころの、今監視官になったやつを、雪と」
知徳は相棒の、澤村雪を見た。髪の長い、色白の和製美人の女の子だった。二人はこれが終わったら結婚するのだそうだ。
「そーゆー訳で。素直に解散してくれよ。こっちもそろそろ、他に人材がくるし、不利だと思う」
「出来ないな」
「ルーク、悪いな。最後までこんな仕事ばかり任せてな」
「イイよ、樹実」
「全員殺していいよ、ここにいるやつらは全員エレボスの奴らだから。一般信者には昨日俺から通達をしておいた。だから心配ない」
ルークは背負っていたサブマシンガンを抱え、まず第一段の連射をぶちかました。
何人かが遠くで死んだ。
「酷い、」
流石に今までで一番凄惨な現場に女の子はキツかったようだ。雪はその場にしゃがみこんでしまった。
「知徳」
「はい」
「確か2階に部屋がある。連れて行っても構わない」
「いえ、大丈夫です、樹実さん」
「あそう。
じゃぁ君らは入り口で流星たちを迎え撃て。あいつらにとって俺たちは反逆者だ。
多分殺される。生半可で行くと死ぬからな、頭使えよ。なんならここまで連れてきても構わない」
「…わかりました」
「いいんですか樹実、」
「構わない。どうせここにいるみんな今、死に場所しか求めてないのさ、雨」
ルークの第一段射撃が終了した。その頃には皆、戦意喪失をしていた。歯向かう者はまずいなかった。
信者達は祈りを捧げている。死体はいくつも寝かされていて、祈りが終われば裏口に担架で運ばれていくのだった。
「あれは…」
この中では一番下っ端の青年が聞いてきた。名は橋田知徳《はしだとものり》と言う。名前のわりに線が細く、女みたいな見た目でいつもいじられていた天然キャラだった。
いつも、潤や流星の喧嘩を止めたりしていた。
彼がここにいるのはエレボス事件で両親を亡くしたからだった。
「裏で遺体は解体される。そうして、使える臓器を海外に輸出するんだよ。まぁ多分、死亡時刻的にはどれもダメだろうけどな」
「は…?」
誰も教会のやつらはこちらに目もくれない。いま踏み込んだら一発で壊滅出来るだろう。
担架で死体を運んでいた、薬品臭い長身で初老の男が樹実に気付いて歩いてきた。
「茅沼さん、お元気そうで」
よく見れば男の目は青かった。それ以外は日本人なのだろうが、それだけが異質だった。
「あぁまぁな。
エリック、彼らは君たちの大敵、厚労省の人間だ」
「…あぁ、そうですか。また、来たんですか。
そこの黒人と眼鏡の坊やは昨日お会いしましたね。私は傍観してたんで君らは知らないだろうけど。
なんですか今日は」
「言うことはひとつだ。エレボスは解散だ」
「ほぅ、急にですか。つまり?」
「残ったやつらは普通に、神様でも信じて生きていけということだ」
「わからないなぁ、あんた、自分が仕出かしたことの大きさを、わかっていますか」
「聞けないなら撃ち殺す。お前らを反逆者として殺す権限は俺にある」
「はぁ、笑わせるね。ですがまぁ、丸腰じゃ勝てない。こりゃひとつ金で解決しませんか」
「断る。俺はこの悪循環を辞めに来た」
「ふざけてらっしゃる。途中からふらっと現れて全てを変えたのはあんたじゃないか。今更になって何を言う。俺はあんたらに大分貢献しましたよ?科学者として、運び屋としてなぁ…別にまぁいい。
あんたなんて高々数ある大口のウチの一つにすぎない。死ねば?」
拳銃を向けられた。それを合図としたかのように信者達は血相を変えてこちらに敵意を剥き出した。
「その大口全部、俺が潰してきた」
「は?」
「曽田長官や…あとルークは?」
「昔自衛隊で苛めラれた官僚共」
「知徳は?」
「捜査一課だったころの、今監視官になったやつを、雪と」
知徳は相棒の、澤村雪を見た。髪の長い、色白の和製美人の女の子だった。二人はこれが終わったら結婚するのだそうだ。
「そーゆー訳で。素直に解散してくれよ。こっちもそろそろ、他に人材がくるし、不利だと思う」
「出来ないな」
「ルーク、悪いな。最後までこんな仕事ばかり任せてな」
「イイよ、樹実」
「全員殺していいよ、ここにいるやつらは全員エレボスの奴らだから。一般信者には昨日俺から通達をしておいた。だから心配ない」
ルークは背負っていたサブマシンガンを抱え、まず第一段の連射をぶちかました。
何人かが遠くで死んだ。
「酷い、」
流石に今までで一番凄惨な現場に女の子はキツかったようだ。雪はその場にしゃがみこんでしまった。
「知徳」
「はい」
「確か2階に部屋がある。連れて行っても構わない」
「いえ、大丈夫です、樹実さん」
「あそう。
じゃぁ君らは入り口で流星たちを迎え撃て。あいつらにとって俺たちは反逆者だ。
多分殺される。生半可で行くと死ぬからな、頭使えよ。なんならここまで連れてきても構わない」
「…わかりました」
「いいんですか樹実、」
「構わない。どうせここにいるみんな今、死に場所しか求めてないのさ、雨」
ルークの第一段射撃が終了した。その頃には皆、戦意喪失をしていた。歯向かう者はまずいなかった。
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