ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 22nd episode

6

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 遠い日の、
 それが誰だか、そこがどこだかもわかる夢を見た。だけど、起きてみれば曖昧にしかわからない。
 多分、海軍訓練所だったなたと。ぼやけた頭でそう思ってゆったりと右手側を見れば、政宗はもういなかった。

 時間的にはそれほど寝たとは思わなかったが。また耳鳴りのような眠気がする。あかんと急に起き上がってみれば低血圧的に左脳が軋んだ。

 ベットから降り立ってレースカーテンを開ければ目に入ってくる時刻。5時58分くらいの針。もう定時だ。ホントにサボっちまったなぁ。

政宗、部署にいるかな。

 まぁいいやと、すっきりな感じで一人部署に戻ると、政宗と流星以外がいつも通りにいた。

「あ潤さん、」
「大丈夫っすかマジ」

 とか声が掛かるが「うん大丈夫!みんなごめん!」と、妙なテンションで告げている自分がわかる。

 何もなくデスクに座る俺に皆は少し俺の様子を伺いつつ、
流石に半年以上は共にやってきたせいか空気は察したらしい。ほっといてくれるようだった。

 霞ちゃんに「気を付けてくださいね?」だとか言われ、愛蘭ちゃんはお茶を入れてくれたし、瞬は「無理せず」とパソコンに向かっていた。
 ユミルは特に何も言わず。慧さんは、「政宗さんとこ寄ってきます、お疲れ様です」と、持ってたチョコレートをくれた。

心配かけたらしいな、どうやら。
それに気付けるようになっただけ歳は食ったらしい。そりゃそうか、あれから7年だ。

 さて、どうしようかな。少しでいいからまとめようかなと、誰かが閉じてくれたらしいパソコンの電源をつける。

てか、辻井はどうしたかな。来ないんですけど。下っぱは流石に定時じゃ帰れないか?いや、あいつは多分帰るタイプだし部長も聞かねぇフリして黙認してたんだ、来るはずなんだけどな。

 とか思ってたら「ただいま」と、物凄く憔悴しきった流星が帰ってきた。
 正直それに笑いそうになったが、隣にふらっと座ったので、
まぁストーカーとか色々あったし、「やっときたか」と労った。

「あのストーカーはわりとガセだったぞ流星」

 今日唯一俺がやった仕事報告。しかし流星は忘れていたらしい、「…そうか」と疲れたように言った。

参ったらしいな、どうやら。

「…まずはタバコ吸いに行こ。それからな」

どーせ吸いまくってんだろうけど、あのキッツいタバコ。

「あいよ…」

 力なく言って忙しなく流星はまた立ち上がり、「はい、みんな解散。お疲れ」と、部長らしいかよくわからん、いつも通りな事を皆に告げ、それから一緒に部署を出た。

「つかさ…」

 マトリの部署が見える。わりとすっからかんだった。

「なんだ、なんかあった?」
「いやさぁ、辻井?待ってんだよ俺」
「は?」
「終わったらウチ寄ってっつったのに何あいつ死ねよ」
「…なんで?」

 凄くすっからかんな顔して流星は聞いてきた。二人でエレベーターに乗る。

もしやタバコかあいつ。タバコ抜けから帰る口実作ったか?

「いや捜査協力するとかあいつ部長の前で言い出してさ。流星とも話した方がいいよなぁ、と思って呼んだ」
「…あのさぁ、」

 何故か流星は呆れた。
 厚労省から出て喫煙通路に向かう。

「お前それ多分だけどあいつ…。
 お前の家だと思ったんじゃねぇのか」
「は?なんで」
「ゲイ寄りなんだろ?だって」
「はっ…」

えぇ。
嘘だよぅ、え、なにそれ。

「お前そーゆー誘い方しちゃったんじゃねぇの?天然タラシ」
「え、え、いやしてない普通。なんかメチャクチャ疑心暗鬼だったから、「終わったら部署ウチ寄って」って」
「でもいないじゃん」
「うん…」
「大体科なんて必ずしも定時じゃないじゃん。なのにその言い方、しかもお前が、ゲイ寄りに。間違いないじゃんそれ」
「えっ、」

 流星に溜め息を吐かれた。
え、俺が悪いのそれ。

「だって家知らないじゃん、連絡とか知らないじゃん」
「いや恐らくな。
 ちょっと忙しいからあいつは定時で帰れない、んなのお前にもわかるよな?
 ウチ、今ある意味暇。絶対定時で帰れそう、なのに「終わったらウチ寄って」これ、待ってるよって意思表示じゃね?」
「んな片想い男子みたいなことするかよ」
「お前じゃなかったらね。でもお前じゃん」
「は?」
「無自覚って罪だな。可哀想に前髪」

 わざとらしく言われた。
 なに、俺マジで、こんな童貞みたいなヤツに何言われてんの、マジで。

「えフェロモン的なやつっすか」
「今更ぁ?お前昔からそれでどんだけトラブルになってんだよ猿」

腹刺されやがって、と呟く流星。
いや、確かに多分お前が一番飛び火を食らってるけど、昔から。

けど唖然。
あー、そっかあいつ…。

「うんそうかも」

なんかぽかったよね始終。

 「はぁ~、」と溜め息を吐けば「全くだわ」と言われてしまった。
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