270 / 376
The 22nd episode
7
しおりを挟む
てかそんなに俺なんだろ。
「俺飢えてんのかな、なんかに」
ポロっと口から言葉が出た。それを拾った流星はタバコを咥えながら「うわっ、」と露骨に嫌な顔をしやがったので、
ロシアン外れたかなとか思って俺もタバコを取り出す。また前髪タバコだった。最低。かちっとして火をつける。
「お前何、なんでそんな擦れた突然。あの入間さんに会っても平気だったお前になにがあったの」
「は?別に擦れて」
るね。
うん、俺今日もナーバス。
「…なんだよなんかあったの?マトリ?」
「いや、別に」
「そうかなぁ」
「いや逆によ、逆に」
果たしてなんの逆説だよとか頭を掠めたが「お前って溜まらないの、いま」と勢い余って流星に聞いてみれば。
「は?なんでそんな擦れてんのマジで。何がですか、ええ?」
「何がって精子だよ」
「うわっ、何お前ホント。大丈夫?マジ」
「うるせぇな大丈夫じゃねぇから言ってんじゃんかクソが」
「だよな、大丈夫じゃないよな。なんだよその気じゃん。でもやめて。お前の飛び火本気で面倒」
「まだ怒ってんのかよ昔の彼女。いいじゃんもう」
「うるさっ、違っ、ムカつくなお前人が心配すりゃぁ。俺一回マジでお前みたいに刺されかかったんだからなバカ野郎。思い出させるなよタラシ!」
「どの件だかわかんないねぇ!大体俺ごときに寝取られるお前が悪いんだよこの童貞!」
前髪タバコは吸わずとなくなった。
奇跡的に当てた俺の1本。やった優勢かと思って火をつけるが「燃えろ下半身」とかいって胸ぐら掴まれそうになりよけたらライターから火が消えた。
なんだよ燃えろ下半身って。死ねばいいのに鉄面皮。
「お前の性格の悪さホントどうにかしろ来年の課題」
「25年やってきたからムリだね。お前なんてもう30近い童貞なんだから気を長くすればぁ?なんでジジイ化しないのお前」
「気はわりと長くなったね。お前と組んでるお陰だなクソが」
「やだ下品。死んだほうがいい」
「なんだ下品とは。猿に言われたくねぇな!」
あぁ、やだやだ更年期め。ハゲろ。モテなくなれ。
「やっぱお前病んでんだろ性格破綻猿」
「お前もな童貞鉄面皮」
しかしこうなってみて。
互いに煙を吐き出し見つめるがやっぱ我慢の限界。悪口が浸透した。
「ぷはっ、」と吹き出してしまった。だけど流星も「やめっ、笑うなよ、」と明らかに笑っていた。
「変わんねぇな、お前」
「お前もな」
ホントどうしようもねぇな。
「…西山真波という、この前の、獄中死したホストの、妊娠してた彼女に会いに行った」
「…よくやるよお前」
「会ったことには後悔してないが、なんだかなぁと」
「…まぁな」
それはきっと、
褒められた訳じゃないんだろ。
「ただ昔よりは、ちゃんと俺は前向きだ。多分」
「…あっそ」
細いタバコはあっさりなくなった。
流星も同じタイミングでラキストを捨てて「さて、」と伸びをし、二人で部署へ向かう。
「どうするんだお前。帰るのか?」
「いや、今日はサボったからやるわあと少し」
「サボったぁ!?お前がぁ?」
間抜けに驚いている。顔を見れば「なんだ潤、」と心配そうではあった。
「また例の不眠か」
「いや、寝れた。ゲロ吐くレベルで寝れた」
「あぁ、やっちまったのね。久しぶりだななんかあった?」
「あった。けどなかった」
流星は暫く俺を見つめているが俺は黙って前を見たまま。
わかってる。
多分、祥ちゃんとお前、知り合いでしょ。なんとなくだけど。
それでも祥ちゃんは多分お前が思ってるようなやつではないが、流星も、祥ちゃんが思ってたやつとは違うんだろう。
正直、疑心暗鬼は俺だ、どこか。ただそれは昔と変わらない。
「…俺少し前な、部下を…仲間を見捨てたことがある」
「お前が?」
「あぁ。見捨てた」
まるで確認するかのように流星はそれを噛み締めて言う。流石に俺も頑を解き、流星の横顔を見つめてみるが今度は流星が頑として前を見つめていた。
「しかし最近再会してな。人柄が少し柔らかくなってた。俺もそうらしい。言われたわ」
「…ふぅん」
「確かに俺は全体的に絶望してたからな、あれから。信じたものを取り返そう、いや忘れようと、多分無意識にしてたんだ。
それはお前だって、多分そうなんだよな」
「…どうかな」
昔から…。
俺はどうなんだろ。
「でもまだ、整理がつかない。俺はあれから多分、誰のことも信用してないんだ」
「なんだよ暗いな」
「だけどこれは保護者のせいだ。これをどうにかしないと俺は」
「やめてよね、なんか…」
早まるのは。
けど俺もお前も確かに、これが済んだらどうすんだ。称え合うのか?いや多分二度と本当に会いたくなくなる。
けど、どうかな。
あの二人は成し遂げなかったのかもしれない。けど、だから一緒にいれたんだとも思わなくて。
流星はふと、笑った。
「お前からそれが聞けてよかった。ならいい。仕方のないことだ」
「…なにが」
「早い話が早まるなってことだ。俺も焦ってるしな」
「はぁ…」
ヘタクソだなこいつ。
わかんねえし。何言ってんのか。
しかし予想外にヤツの表情は穏やかだ。悲観からこいつは一人で歩き案外いまは、それから遠くなってきてんのかもしれないな。
「…俺は…」
どうだろうか。
「ん?」
「…辻井に謝るべきかな」
「は、」
笑った。
確かに全く考えたことと違うことを言ったけど。
「その気がないヤツを口説くな。以上、部長命令」
「いやタイプじゃないって言ったよ、俺」
「うわ確信犯じゃん最早好きにしろよ」
「捜査は?ねえ捜査は?」
「好きにしろよてか俺に振るなよ!」
「えーなにその他人行儀。職務怠惰じゃん」
知るか!と突っぱねられた。
まぁ仕方ないか。こいつ単細胞、細胞がないもんな。違うけど。
「まぁお前が拾ったなら別にいいよって。腹刺されなきゃな」
「あっそ。じゃ付き合う」
「本気?バカなの?」
「ううん。用なくなったら捨てちゃう」
「気が狂ってる」
なんだよノリ悪いなぁ。
ま、昔からか。
信用は裏切らないようにしよっと。また銃向けられちゃうし。それだけシンプルに思った。
「俺飢えてんのかな、なんかに」
ポロっと口から言葉が出た。それを拾った流星はタバコを咥えながら「うわっ、」と露骨に嫌な顔をしやがったので、
ロシアン外れたかなとか思って俺もタバコを取り出す。また前髪タバコだった。最低。かちっとして火をつける。
「お前何、なんでそんな擦れた突然。あの入間さんに会っても平気だったお前になにがあったの」
「は?別に擦れて」
るね。
うん、俺今日もナーバス。
「…なんだよなんかあったの?マトリ?」
「いや、別に」
「そうかなぁ」
「いや逆によ、逆に」
果たしてなんの逆説だよとか頭を掠めたが「お前って溜まらないの、いま」と勢い余って流星に聞いてみれば。
「は?なんでそんな擦れてんのマジで。何がですか、ええ?」
「何がって精子だよ」
「うわっ、何お前ホント。大丈夫?マジ」
「うるせぇな大丈夫じゃねぇから言ってんじゃんかクソが」
「だよな、大丈夫じゃないよな。なんだよその気じゃん。でもやめて。お前の飛び火本気で面倒」
「まだ怒ってんのかよ昔の彼女。いいじゃんもう」
「うるさっ、違っ、ムカつくなお前人が心配すりゃぁ。俺一回マジでお前みたいに刺されかかったんだからなバカ野郎。思い出させるなよタラシ!」
「どの件だかわかんないねぇ!大体俺ごときに寝取られるお前が悪いんだよこの童貞!」
前髪タバコは吸わずとなくなった。
奇跡的に当てた俺の1本。やった優勢かと思って火をつけるが「燃えろ下半身」とかいって胸ぐら掴まれそうになりよけたらライターから火が消えた。
なんだよ燃えろ下半身って。死ねばいいのに鉄面皮。
「お前の性格の悪さホントどうにかしろ来年の課題」
「25年やってきたからムリだね。お前なんてもう30近い童貞なんだから気を長くすればぁ?なんでジジイ化しないのお前」
「気はわりと長くなったね。お前と組んでるお陰だなクソが」
「やだ下品。死んだほうがいい」
「なんだ下品とは。猿に言われたくねぇな!」
あぁ、やだやだ更年期め。ハゲろ。モテなくなれ。
「やっぱお前病んでんだろ性格破綻猿」
「お前もな童貞鉄面皮」
しかしこうなってみて。
互いに煙を吐き出し見つめるがやっぱ我慢の限界。悪口が浸透した。
「ぷはっ、」と吹き出してしまった。だけど流星も「やめっ、笑うなよ、」と明らかに笑っていた。
「変わんねぇな、お前」
「お前もな」
ホントどうしようもねぇな。
「…西山真波という、この前の、獄中死したホストの、妊娠してた彼女に会いに行った」
「…よくやるよお前」
「会ったことには後悔してないが、なんだかなぁと」
「…まぁな」
それはきっと、
褒められた訳じゃないんだろ。
「ただ昔よりは、ちゃんと俺は前向きだ。多分」
「…あっそ」
細いタバコはあっさりなくなった。
流星も同じタイミングでラキストを捨てて「さて、」と伸びをし、二人で部署へ向かう。
「どうするんだお前。帰るのか?」
「いや、今日はサボったからやるわあと少し」
「サボったぁ!?お前がぁ?」
間抜けに驚いている。顔を見れば「なんだ潤、」と心配そうではあった。
「また例の不眠か」
「いや、寝れた。ゲロ吐くレベルで寝れた」
「あぁ、やっちまったのね。久しぶりだななんかあった?」
「あった。けどなかった」
流星は暫く俺を見つめているが俺は黙って前を見たまま。
わかってる。
多分、祥ちゃんとお前、知り合いでしょ。なんとなくだけど。
それでも祥ちゃんは多分お前が思ってるようなやつではないが、流星も、祥ちゃんが思ってたやつとは違うんだろう。
正直、疑心暗鬼は俺だ、どこか。ただそれは昔と変わらない。
「…俺少し前な、部下を…仲間を見捨てたことがある」
「お前が?」
「あぁ。見捨てた」
まるで確認するかのように流星はそれを噛み締めて言う。流石に俺も頑を解き、流星の横顔を見つめてみるが今度は流星が頑として前を見つめていた。
「しかし最近再会してな。人柄が少し柔らかくなってた。俺もそうらしい。言われたわ」
「…ふぅん」
「確かに俺は全体的に絶望してたからな、あれから。信じたものを取り返そう、いや忘れようと、多分無意識にしてたんだ。
それはお前だって、多分そうなんだよな」
「…どうかな」
昔から…。
俺はどうなんだろ。
「でもまだ、整理がつかない。俺はあれから多分、誰のことも信用してないんだ」
「なんだよ暗いな」
「だけどこれは保護者のせいだ。これをどうにかしないと俺は」
「やめてよね、なんか…」
早まるのは。
けど俺もお前も確かに、これが済んだらどうすんだ。称え合うのか?いや多分二度と本当に会いたくなくなる。
けど、どうかな。
あの二人は成し遂げなかったのかもしれない。けど、だから一緒にいれたんだとも思わなくて。
流星はふと、笑った。
「お前からそれが聞けてよかった。ならいい。仕方のないことだ」
「…なにが」
「早い話が早まるなってことだ。俺も焦ってるしな」
「はぁ…」
ヘタクソだなこいつ。
わかんねえし。何言ってんのか。
しかし予想外にヤツの表情は穏やかだ。悲観からこいつは一人で歩き案外いまは、それから遠くなってきてんのかもしれないな。
「…俺は…」
どうだろうか。
「ん?」
「…辻井に謝るべきかな」
「は、」
笑った。
確かに全く考えたことと違うことを言ったけど。
「その気がないヤツを口説くな。以上、部長命令」
「いやタイプじゃないって言ったよ、俺」
「うわ確信犯じゃん最早好きにしろよ」
「捜査は?ねえ捜査は?」
「好きにしろよてか俺に振るなよ!」
「えーなにその他人行儀。職務怠惰じゃん」
知るか!と突っぱねられた。
まぁ仕方ないか。こいつ単細胞、細胞がないもんな。違うけど。
「まぁお前が拾ったなら別にいいよって。腹刺されなきゃな」
「あっそ。じゃ付き合う」
「本気?バカなの?」
「ううん。用なくなったら捨てちゃう」
「気が狂ってる」
なんだよノリ悪いなぁ。
ま、昔からか。
信用は裏切らないようにしよっと。また銃向けられちゃうし。それだけシンプルに思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました
ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。
そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。
イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。
これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。
※1章完結※
追記 2020.09.30
2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす
Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二
その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。
侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。
裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。
そこで先天性スキル、糸を手に入れた。
だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。
「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」
少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。
※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。
※2020-01-16より執筆開始。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる