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The 23rd episode
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捜査車両なので、気を紛らわす音楽がなかった。
ラジオを聞いてもテレビ放送では警察組織が、大学の件で叩かれまくっていて。まぁ、仕方がない。結果どちらも爆発した。人も死んだ。
高梁銀次と里中栄の遺体は放火により葬られた。
里中からも高梁からも、知らない情報は出てきた。果たして相手方は俺たちのどこまでを知っていて、また情報源はなんだろうか。
こちらはまだまだお前らなんて謎でしかない。昔ほぼ壊滅させた宗教団体の残党である箕原海、高梁銀次。高梁の存在は正直、ホテル爆破で知った。
『“昴の会”は皆平等だ』
恭太の時にも祥真が言ったその宗教団体。祥真があの団体を知っているのも驚いたが、“兄貴”と言ったその男は恐らく樹実だ。
だとしたら俺が高田を“父”と言ったことに疑問を持ったあいつはなんだ。俺は一体何者で、樹実は、何者なんだ。
まだまだ、世界は広すぎるとうんざりする。そんな野暮な情報で人がこれだけ動かされるのは、いささか気に入らない。
果たして俺は何人殺し、死んだのか。樹実が背負った命を考えれば、犠牲が多すぎる。
止まないラジオが煩わしい、止める。
日本の道路はこれだけ狭くて、日本はこんなにも狭いのに、俺はどこに暮れているんだ。
こうもネガティブだと勝てなくなる。必死に鮫島を落とす案を考えた。
結局最後は自分を信じなければ、これだけ多くの命を亡くした俺に意味はない。信じたって意味はない。
きっと、潤。
俺、これが終わっても、幸せには、多分なれないんだ。どこかお前だって闇を背負うはずだ、どんな結果であれ。まだ闇を愛せる程、この踏み入った暗闇を照らせていない。
だから、せめて。
樹実のようにはなりたくない。後に、闇を残して人を苦しめるような結果は残したくない。せめて、今からでも目の前を愛さなければならない。
樹実はヒーローだ。
だけどいつまでも、俺の中では樹実はヒーローなんだ。哀しいと、思えるくらいに。
暗い昔への扉が見えたとき、鮫島の会社、証券会社 ゼウスを通りすぎたことに気付いた。
引き返してゼウスの、地下の駐車場へ車を止める。何事もなく。
しかし駐車場で。
車から降りたとき、鮫島と付き人に遭遇した。
前は短い髪やら目鼻立ちが、白澤銀河に少し似ていると感じたその中年は、案外、先輩には似ていないほど目付きが吊っていると気が付いた。
「…君は」
「…厚労省特本部のスミダと申します」
偽物だが手帳を胸ポケットから出して見せれば、鮫島は細い吊り目をさらに細め、口元を歪めるように笑って、「あぁ、壽美田くん」とはっきりと言った。
付き人の、ホストみたいな、しかし少年顔の細身な若い男に鮫島が「悪い、客だ」と言えば付き人の男は腰を降り、「失礼します、社長」と言い、今来た、駐車場のから社内への裏口のような扉へ去って行った。
「厚労省?へぇ。いきなりアポなしでどうしたの」
「…そのわりにタイミングが絶妙ですね」
「會澤さんの件ならもういいでしょ?俺の疑いは晴れたでしょ」
「別の件で参りました」
「厚労省と言えばまさしくいま世間にぶっ叩かれ中だね。そんな君を顧客にはしたくないが、まぁ君に興味はある。話を聞こうか」
「そうですね。絶賛渦中です。あんたも、その件で来ました」
「…投資の件?確かに大学の研究には投資したこともあるよ。どうせ伝票だって持ってるから来たんだろ?
ただ、別に危ない所とは」
「インサイダーの件でもって、
声が通りますね、地下駐車場ってのは。もしよければ社長室に読んで頂きたい。
殺された警視庁長官に、あんたインサイダー取引持ちかけてただろ」
外れていないだろう予想を言ってみた。だがデタラメレベルだ。と言うかデタラメであって欲しいと願う俺には祥真の顔が浮かんで仕方なかった。
だが鮫島は目の笑いを取り、「あぁ、なるほどね。じゃぁ、社長室に行こうか」と眼光を鋭くした。
当たってるかはわからないが、何かしら鮫島の心にぶち当ててしまったらしい。
祥真の顔を無理に意識から引き剥がして、また裏口へ向いた鮫島の後に着いていった。思わず、懐にあるM18の存在を確認する。
敵地に入る。これはそういうことだ。
しかし気配に気付いたらしい鮫島が、「そんなに殺気立てないでよ」と言った。
「もしかすると君にも為になる話だ、壽美田流星。それとも、冨田竜也がいいかい?」
「からかうのもいい加減にしてくれませんか」
一瞬名前に違和感があったが、そうだヤクザネームだと思い出して思わず感情を出してしまった。
鮫島は「ははっ、悪いね」と軽口を叩く。
「君が追ってるモンは、どうやらそうやって胡散臭いらしいな」
「…は?」
「またまたぁ。俺は君と友好を結びたい。てか、君もそれを求めるだろう」
自信があるらしいな。
少し覚悟した。鮫島が裏口の扉を開ける。
ラジオを聞いてもテレビ放送では警察組織が、大学の件で叩かれまくっていて。まぁ、仕方がない。結果どちらも爆発した。人も死んだ。
高梁銀次と里中栄の遺体は放火により葬られた。
里中からも高梁からも、知らない情報は出てきた。果たして相手方は俺たちのどこまでを知っていて、また情報源はなんだろうか。
こちらはまだまだお前らなんて謎でしかない。昔ほぼ壊滅させた宗教団体の残党である箕原海、高梁銀次。高梁の存在は正直、ホテル爆破で知った。
『“昴の会”は皆平等だ』
恭太の時にも祥真が言ったその宗教団体。祥真があの団体を知っているのも驚いたが、“兄貴”と言ったその男は恐らく樹実だ。
だとしたら俺が高田を“父”と言ったことに疑問を持ったあいつはなんだ。俺は一体何者で、樹実は、何者なんだ。
まだまだ、世界は広すぎるとうんざりする。そんな野暮な情報で人がこれだけ動かされるのは、いささか気に入らない。
果たして俺は何人殺し、死んだのか。樹実が背負った命を考えれば、犠牲が多すぎる。
止まないラジオが煩わしい、止める。
日本の道路はこれだけ狭くて、日本はこんなにも狭いのに、俺はどこに暮れているんだ。
こうもネガティブだと勝てなくなる。必死に鮫島を落とす案を考えた。
結局最後は自分を信じなければ、これだけ多くの命を亡くした俺に意味はない。信じたって意味はない。
きっと、潤。
俺、これが終わっても、幸せには、多分なれないんだ。どこかお前だって闇を背負うはずだ、どんな結果であれ。まだ闇を愛せる程、この踏み入った暗闇を照らせていない。
だから、せめて。
樹実のようにはなりたくない。後に、闇を残して人を苦しめるような結果は残したくない。せめて、今からでも目の前を愛さなければならない。
樹実はヒーローだ。
だけどいつまでも、俺の中では樹実はヒーローなんだ。哀しいと、思えるくらいに。
暗い昔への扉が見えたとき、鮫島の会社、証券会社 ゼウスを通りすぎたことに気付いた。
引き返してゼウスの、地下の駐車場へ車を止める。何事もなく。
しかし駐車場で。
車から降りたとき、鮫島と付き人に遭遇した。
前は短い髪やら目鼻立ちが、白澤銀河に少し似ていると感じたその中年は、案外、先輩には似ていないほど目付きが吊っていると気が付いた。
「…君は」
「…厚労省特本部のスミダと申します」
偽物だが手帳を胸ポケットから出して見せれば、鮫島は細い吊り目をさらに細め、口元を歪めるように笑って、「あぁ、壽美田くん」とはっきりと言った。
付き人の、ホストみたいな、しかし少年顔の細身な若い男に鮫島が「悪い、客だ」と言えば付き人の男は腰を降り、「失礼します、社長」と言い、今来た、駐車場のから社内への裏口のような扉へ去って行った。
「厚労省?へぇ。いきなりアポなしでどうしたの」
「…そのわりにタイミングが絶妙ですね」
「會澤さんの件ならもういいでしょ?俺の疑いは晴れたでしょ」
「別の件で参りました」
「厚労省と言えばまさしくいま世間にぶっ叩かれ中だね。そんな君を顧客にはしたくないが、まぁ君に興味はある。話を聞こうか」
「そうですね。絶賛渦中です。あんたも、その件で来ました」
「…投資の件?確かに大学の研究には投資したこともあるよ。どうせ伝票だって持ってるから来たんだろ?
ただ、別に危ない所とは」
「インサイダーの件でもって、
声が通りますね、地下駐車場ってのは。もしよければ社長室に読んで頂きたい。
殺された警視庁長官に、あんたインサイダー取引持ちかけてただろ」
外れていないだろう予想を言ってみた。だがデタラメレベルだ。と言うかデタラメであって欲しいと願う俺には祥真の顔が浮かんで仕方なかった。
だが鮫島は目の笑いを取り、「あぁ、なるほどね。じゃぁ、社長室に行こうか」と眼光を鋭くした。
当たってるかはわからないが、何かしら鮫島の心にぶち当ててしまったらしい。
祥真の顔を無理に意識から引き剥がして、また裏口へ向いた鮫島の後に着いていった。思わず、懐にあるM18の存在を確認する。
敵地に入る。これはそういうことだ。
しかし気配に気付いたらしい鮫島が、「そんなに殺気立てないでよ」と言った。
「もしかすると君にも為になる話だ、壽美田流星。それとも、冨田竜也がいいかい?」
「からかうのもいい加減にしてくれませんか」
一瞬名前に違和感があったが、そうだヤクザネームだと思い出して思わず感情を出してしまった。
鮫島は「ははっ、悪いね」と軽口を叩く。
「君が追ってるモンは、どうやらそうやって胡散臭いらしいな」
「…は?」
「またまたぁ。俺は君と友好を結びたい。てか、君もそれを求めるだろう」
自信があるらしいな。
少し覚悟した。鮫島が裏口の扉を開ける。
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