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The 29th episode
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だけど少し祥ちゃんは、
「お前なんて初めから利用しようとしたに決まってんだろ、防衛大臣の息子なんて」
一瞬何を言われたかわからなかった。
祥ちゃんは言ってから、歯を噛んでまたどこか、俯くように下を向いて。
「それは本当か祥真」
意外にも声を掛けたのは流星だった。
俯いたまま祥ちゃんは「あぁそうだよっ、」と噛み締めた。
祥ちゃん、
「あっ…そう、」
ダメだ。
思ったように素っ気なくなんて、出ていかねぇよ、言葉なんて。
「いいよ、別に」
泣きそう。
『泣きたいときは泣けばいい』
違うらしいよ雨さん。
泣きたくないときに泣きそうになることも、俺にはあるらしいよ。
「は?」
「それはそれで、まぁ…」
言葉なんて、
どうしてこんなに詰まっちゃうわけ?
「祥真、潤、」
意思がはっきりした流星の声がした。
振り向いたらやっぱり死にそうな顔してるくせに、しかも言葉なんてわからないくせに、
「…What the hell?」
だなんて。
何言ってっかわかんねぇよバカ。
祥ちゃんはだけど、流星にポカンとした表情を向けてから「なっ、」泣きそうになった。
そんな表情だって初めてで。
「ごめん、日本語でなんか、出てこなかった。
俺にもわかんねぇんだけど、潤、祥真。
間違っちゃいねぇよな、多分…」
は?
「…何言ってんのお前」
「あ、それだな。
…だって、樹実は…。
俺のなかでは悲しくも、憎たらしくもいまだに…、
ヒーローなんだぜ、マジで。祥真、お前だって、そうみたいじゃん。まさか、こんな形で知っているとは思わなかったけど」
「流星、だから、」
「お前がどう生きたか…。ごめん、俺も一回死んでるからわかんねぇの。俺今、お前は何か、でも…残しに来たんだと思ってる。お前なんて、そういうやつだってことしか知らねぇんだよ」
「お前を殺しに来たかもしれないだろうが、なぁ、俺は多分騙して来て、」
「うるせぇな。もうそういうのは…
まぁ、止めよう。取り敢えず俺は自分を…
信じちゃいなくて、いまでもずっとそうだけど、だから環を密葬なんてさせないから。潤、お前ここ来たこと、どうせあるんだろ?
なんか、なんでもいい。環が、寒いだろうから、持ってきて」
「…えっ、」
気が触れた。
訳ではないらしい。結局泣きそうな自我を持っている。俺がスイッチを切ったせいか?
んなことより。
「多分、戦艦にあるよ…。
…わりとトラウマなんだよねぇ…。来てくれない?マジで」
「んなことして一人にしてコンバットが自殺したらお前どうしてくれる」
「あっ、」
そっか。
自殺をするなら他所でやれ。
お前か、祥ちゃんの元上司。
「…お前いつからそんなクソ野郎に成り下がったの狂犬」
「あーうるさいうるさい、お前とはやっぱ気が合わない。
彼女と別れの挨拶すらしてねぇんだよ、てめぇらどっか行けってのがわかんないわけ?使えねぇな」
うわっ。
「…祥ちゃん、こいつ前からやっぱ」
「うん、そう。そこは多分死んでも変わらないと思うよ」
「だよな。多分身から出たやつだよな。
『くっ喋ってねぇで行け殺すぞ』って言われる前に行こうか…」
少し震えるけど、然り気無く見えるように手を差しのべた。
やっぱりポカンとしていた矢先、M92が足元に滑ってきた。
当の本人はこちらを見もせず、ぼんやりとタバコに火をつけて溜め息を吐いた。
「これで俺は武器なしだから。早く行け」
「へぇ」
軽い口調だが。
祥ちゃんは何かを含んでそうに返事をする。
M92は俺が手にして「祥ちゃん、悪いね」と告げる。
俺の手を借りて祥ちゃんは「こちらこそ」と立ち上がった。
俺たちが第三資料室を出る時も、流星は環ちゃんを見て、ぼんやりと空虚だった。
戦艦への道はあっさりと、
嫌になるくらい、自然と覚えていた。思い出すこともたくさんあって。
あの人、最初は俺の事、苦手とか言ってたけどそうじゃない。多分、嫌いに近かったと思うんだ。
ここは地獄のような場所だった。
泥水啜って生きてきたのなんて、何も流星や祥ちゃんだけじゃない。温室には温室でそれなりの物がある。
金は確かに持っていた。母親にも父親にも求められた情欲なんて、毒の入った水と変わらない。
金だけしかなく、それも変わらないから今の俺がいる。多分、ここで“熱海雨”に出会わなければ、いまごろ情夫、考えられる。ヤクザ?考えられる。自分なんて生きてようがいまいが多分誰も気にしない。いないようなもので。
それでも、母親を殺した自分なんて許せる訳もなく、どうにでもなってしまえと、本気で思っていた。今もこの染み付いた自傷は変わらない。
それって流星や祥ちゃんと大差ないじゃん。ずっと、嫌いな自分なんて鍵の掛からない部屋に閉じ込めてるじゃん。
「お前なんて初めから利用しようとしたに決まってんだろ、防衛大臣の息子なんて」
一瞬何を言われたかわからなかった。
祥ちゃんは言ってから、歯を噛んでまたどこか、俯くように下を向いて。
「それは本当か祥真」
意外にも声を掛けたのは流星だった。
俯いたまま祥ちゃんは「あぁそうだよっ、」と噛み締めた。
祥ちゃん、
「あっ…そう、」
ダメだ。
思ったように素っ気なくなんて、出ていかねぇよ、言葉なんて。
「いいよ、別に」
泣きそう。
『泣きたいときは泣けばいい』
違うらしいよ雨さん。
泣きたくないときに泣きそうになることも、俺にはあるらしいよ。
「は?」
「それはそれで、まぁ…」
言葉なんて、
どうしてこんなに詰まっちゃうわけ?
「祥真、潤、」
意思がはっきりした流星の声がした。
振り向いたらやっぱり死にそうな顔してるくせに、しかも言葉なんてわからないくせに、
「…What the hell?」
だなんて。
何言ってっかわかんねぇよバカ。
祥ちゃんはだけど、流星にポカンとした表情を向けてから「なっ、」泣きそうになった。
そんな表情だって初めてで。
「ごめん、日本語でなんか、出てこなかった。
俺にもわかんねぇんだけど、潤、祥真。
間違っちゃいねぇよな、多分…」
は?
「…何言ってんのお前」
「あ、それだな。
…だって、樹実は…。
俺のなかでは悲しくも、憎たらしくもいまだに…、
ヒーローなんだぜ、マジで。祥真、お前だって、そうみたいじゃん。まさか、こんな形で知っているとは思わなかったけど」
「流星、だから、」
「お前がどう生きたか…。ごめん、俺も一回死んでるからわかんねぇの。俺今、お前は何か、でも…残しに来たんだと思ってる。お前なんて、そういうやつだってことしか知らねぇんだよ」
「お前を殺しに来たかもしれないだろうが、なぁ、俺は多分騙して来て、」
「うるせぇな。もうそういうのは…
まぁ、止めよう。取り敢えず俺は自分を…
信じちゃいなくて、いまでもずっとそうだけど、だから環を密葬なんてさせないから。潤、お前ここ来たこと、どうせあるんだろ?
なんか、なんでもいい。環が、寒いだろうから、持ってきて」
「…えっ、」
気が触れた。
訳ではないらしい。結局泣きそうな自我を持っている。俺がスイッチを切ったせいか?
んなことより。
「多分、戦艦にあるよ…。
…わりとトラウマなんだよねぇ…。来てくれない?マジで」
「んなことして一人にしてコンバットが自殺したらお前どうしてくれる」
「あっ、」
そっか。
自殺をするなら他所でやれ。
お前か、祥ちゃんの元上司。
「…お前いつからそんなクソ野郎に成り下がったの狂犬」
「あーうるさいうるさい、お前とはやっぱ気が合わない。
彼女と別れの挨拶すらしてねぇんだよ、てめぇらどっか行けってのがわかんないわけ?使えねぇな」
うわっ。
「…祥ちゃん、こいつ前からやっぱ」
「うん、そう。そこは多分死んでも変わらないと思うよ」
「だよな。多分身から出たやつだよな。
『くっ喋ってねぇで行け殺すぞ』って言われる前に行こうか…」
少し震えるけど、然り気無く見えるように手を差しのべた。
やっぱりポカンとしていた矢先、M92が足元に滑ってきた。
当の本人はこちらを見もせず、ぼんやりとタバコに火をつけて溜め息を吐いた。
「これで俺は武器なしだから。早く行け」
「へぇ」
軽い口調だが。
祥ちゃんは何かを含んでそうに返事をする。
M92は俺が手にして「祥ちゃん、悪いね」と告げる。
俺の手を借りて祥ちゃんは「こちらこそ」と立ち上がった。
俺たちが第三資料室を出る時も、流星は環ちゃんを見て、ぼんやりと空虚だった。
戦艦への道はあっさりと、
嫌になるくらい、自然と覚えていた。思い出すこともたくさんあって。
あの人、最初は俺の事、苦手とか言ってたけどそうじゃない。多分、嫌いに近かったと思うんだ。
ここは地獄のような場所だった。
泥水啜って生きてきたのなんて、何も流星や祥ちゃんだけじゃない。温室には温室でそれなりの物がある。
金は確かに持っていた。母親にも父親にも求められた情欲なんて、毒の入った水と変わらない。
金だけしかなく、それも変わらないから今の俺がいる。多分、ここで“熱海雨”に出会わなければ、いまごろ情夫、考えられる。ヤクザ?考えられる。自分なんて生きてようがいまいが多分誰も気にしない。いないようなもので。
それでも、母親を殺した自分なんて許せる訳もなく、どうにでもなってしまえと、本気で思っていた。今もこの染み付いた自傷は変わらない。
それって流星や祥ちゃんと大差ないじゃん。ずっと、嫌いな自分なんて鍵の掛からない部屋に閉じ込めてるじゃん。
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