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The 29th episode
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「その…お前らはつまり…」
「あー、多分違いますよ荒川さん」
先に祥ちゃんは訂正する。
なんて説明したらいいか。取り敢えず、
「俺が祥ちゃんとセックスするわけないよね?わかるよねそれくらい」
「え゛っ」
図星はついたらしい。
だがより迷宮に入ったようだった。まぁそうだよね。俺の素行をわりと知ってるもんね。
「…この人は、たまたま、うーん、二年近く前の警察庁立て籠りの時に拾われたんだよ」
「は?拾われたぁ?」
「潤は破天荒なんで。飛び降りようとした俺の前で俺の共犯者に刺されに来たんです」
「えっ、なに!?」
「破天荒ってあんたが言うの?」
「まぁ、そうだね」
「いや待って色々わかんないんだけど」
ですよね~。
「えっと、取り敢えず二人はなんなの?」
「同居人ですね」
「これから死ぬまでだね」
そうさらっと言えば「潤…」と感極まったように祥ちゃんは言うので、
「一生もんにしちゃったからねぇ」
と告げれば「違う違う」と祥ちゃんは訂正した。
「多分それ一番誤解生むやつ」
あっ。
「俺、マジですげぇわかんないけど。お前なんてマジで嫁さんとか貰った方がいいよなって話してたんだよ、流星とこの前」
「嫁さんになりかけてますね。大丈夫です俺ストレートですから」
「言い方がすでにそちらの方ですけど」
「あと俺はヘタクソと言われた立場なんで」
あっ。
根に持ってるし何気に楽しんでるよこいつ。
「祥ちゃん全体的に根に持ってるね。政宗ー大丈夫俺マジでこいつとは死んでもないからー」
「いや、うん…」
まだまだ疑り深い目に祥ちゃんは告げた。
「俺もこんなバイセクシャルの、皆愛せます!な博愛クソ野郎は願い下げです。俺もう少し人は愛せない方なので」
この野郎。
「…祥ちゃんって案外嫌なやつだったんだね。なんなのマジで。いままでわりと鬱憤溜まってたんだね」
「当たり前じゃんこの温室め~。スラムの俺には妬ましくて、
君の純粋で、綺麗なその世界なんてホントに妬ましくて、どうしようかと思ってたよ」
優男が笑う。
…綺麗な世界か。
これで納得しただろうかと思って政宗を見れば「まぁ、」と、やっぱり納得したようで。
「わかんなくもねぇけどな。まぁよかったのか?山下」
曖昧に祥ちゃんは笑う。
ほっとしたように政宗は一度息をついたが、今度はまた殺伐とした態度で祥ちゃんの左肩を鷲掴んで言った。
「だが俺は一生てめえだけは許さねぇからな。二度と面ぁ見ることはねぇだろう。忘れるなよ、てめえは這いつくばって生きて地獄を見ろ」
怖かった。
だが止めなかった。
マジな雰囲気のまま政宗はその肩を離して出ていこうとしたが、祥ちゃんへの最後の一言は「305だ」と告げる。
「ユミルの病室。しばらく厄介になるそうだ。
じゃぁな潤。明日から二人欠員だからな」
政宗が去った背中に祥ちゃんは笑って「いい人だね」と言った。
「残酷なまでに」
「祥ちゃん、」
「行けるわけ…ないじゃん。ユミルは俺があそこへ、連れてったんだから」
ユミルは。
ホストクラブで見張りをしている最中に消えた。
祥ちゃんがそれから連れ出し、最後に手榴弾を持たせたそうだ。何かあったらこれを投げろ。それだけ告げて。
何故そんなことをしたのか。
「潤」
考えていたのは祥ちゃんも同じらしい。黒い、目が笑ってないような笑顔でいった。
「高田さんがヤバイ話はマジだよ。これは信じてくれる?」
どうしようか。
「まぁ、話によるかな」
「あそう。じゃ、一人言にしておくから」
「でも、多分流星も、あの人はどこか信用してないし、政宗なんかは喧嘩しかしないからね。
俺だって、信用してはいないよ」
雨さんは密葬だったが。
雨さんには、ちゃんと、高田さんの元には名前しか預けていなかったから葬式は出来た。だが樹実さんはどうなったか、そういえば知らない。流星とも、そんな話はしなかった。
「あー、多分違いますよ荒川さん」
先に祥ちゃんは訂正する。
なんて説明したらいいか。取り敢えず、
「俺が祥ちゃんとセックスするわけないよね?わかるよねそれくらい」
「え゛っ」
図星はついたらしい。
だがより迷宮に入ったようだった。まぁそうだよね。俺の素行をわりと知ってるもんね。
「…この人は、たまたま、うーん、二年近く前の警察庁立て籠りの時に拾われたんだよ」
「は?拾われたぁ?」
「潤は破天荒なんで。飛び降りようとした俺の前で俺の共犯者に刺されに来たんです」
「えっ、なに!?」
「破天荒ってあんたが言うの?」
「まぁ、そうだね」
「いや待って色々わかんないんだけど」
ですよね~。
「えっと、取り敢えず二人はなんなの?」
「同居人ですね」
「これから死ぬまでだね」
そうさらっと言えば「潤…」と感極まったように祥ちゃんは言うので、
「一生もんにしちゃったからねぇ」
と告げれば「違う違う」と祥ちゃんは訂正した。
「多分それ一番誤解生むやつ」
あっ。
「俺、マジですげぇわかんないけど。お前なんてマジで嫁さんとか貰った方がいいよなって話してたんだよ、流星とこの前」
「嫁さんになりかけてますね。大丈夫です俺ストレートですから」
「言い方がすでにそちらの方ですけど」
「あと俺はヘタクソと言われた立場なんで」
あっ。
根に持ってるし何気に楽しんでるよこいつ。
「祥ちゃん全体的に根に持ってるね。政宗ー大丈夫俺マジでこいつとは死んでもないからー」
「いや、うん…」
まだまだ疑り深い目に祥ちゃんは告げた。
「俺もこんなバイセクシャルの、皆愛せます!な博愛クソ野郎は願い下げです。俺もう少し人は愛せない方なので」
この野郎。
「…祥ちゃんって案外嫌なやつだったんだね。なんなのマジで。いままでわりと鬱憤溜まってたんだね」
「当たり前じゃんこの温室め~。スラムの俺には妬ましくて、
君の純粋で、綺麗なその世界なんてホントに妬ましくて、どうしようかと思ってたよ」
優男が笑う。
…綺麗な世界か。
これで納得しただろうかと思って政宗を見れば「まぁ、」と、やっぱり納得したようで。
「わかんなくもねぇけどな。まぁよかったのか?山下」
曖昧に祥ちゃんは笑う。
ほっとしたように政宗は一度息をついたが、今度はまた殺伐とした態度で祥ちゃんの左肩を鷲掴んで言った。
「だが俺は一生てめえだけは許さねぇからな。二度と面ぁ見ることはねぇだろう。忘れるなよ、てめえは這いつくばって生きて地獄を見ろ」
怖かった。
だが止めなかった。
マジな雰囲気のまま政宗はその肩を離して出ていこうとしたが、祥ちゃんへの最後の一言は「305だ」と告げる。
「ユミルの病室。しばらく厄介になるそうだ。
じゃぁな潤。明日から二人欠員だからな」
政宗が去った背中に祥ちゃんは笑って「いい人だね」と言った。
「残酷なまでに」
「祥ちゃん、」
「行けるわけ…ないじゃん。ユミルは俺があそこへ、連れてったんだから」
ユミルは。
ホストクラブで見張りをしている最中に消えた。
祥ちゃんがそれから連れ出し、最後に手榴弾を持たせたそうだ。何かあったらこれを投げろ。それだけ告げて。
何故そんなことをしたのか。
「潤」
考えていたのは祥ちゃんも同じらしい。黒い、目が笑ってないような笑顔でいった。
「高田さんがヤバイ話はマジだよ。これは信じてくれる?」
どうしようか。
「まぁ、話によるかな」
「あそう。じゃ、一人言にしておくから」
「でも、多分流星も、あの人はどこか信用してないし、政宗なんかは喧嘩しかしないからね。
俺だって、信用してはいないよ」
雨さんは密葬だったが。
雨さんには、ちゃんと、高田さんの元には名前しか預けていなかったから葬式は出来た。だが樹実さんはどうなったか、そういえば知らない。流星とも、そんな話はしなかった。
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