ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

文字の大きさ
332 / 376
The 31st episode

6

しおりを挟む
「てめぇの墓場はここだなショウマ、あぁ!?シクったのかおい、あっちで死んでくるくらい出来ねぇのかこん駄犬が、」

 拷問のように祥ちゃんの握った髪をゆさゆさしながら言うケリーに祥ちゃんは「うっさ、痛ぇっ…てば、」と諦めた様子で、左手で力なく立とうとする。
 「いらねぇよな、んな利き手ぇ!」と、ケリーがゴツい銃をまた祥ちゃんの右手に当てた。
 ヤバいマジで殺られるかもしれない。

「待った待ったちょっとぉ!」

 咄嗟にだが叫んだ。ケリーの冷淡な目とかち合う。ちょっとビビる。これは本気で“殺し屋”の、切れた目だ。

 後ろで流星が「まっ、」待てと正気になったのかもしれない。一瞬左手に触れたがそれを振りはらい、最早ケリーに銃を向けてしまったがこんな時初めて脂汗をかいた。

「…、」

 ケリーは無言で俺を見つめている。動じない。確かに正直俺に勝算とか、わからない、多分ない。

「その人は俺が」

 言い途中で祥ちゃんから、唸り声を殺した詰まりそうな息が漏れ出た。

 あまり動かない右手と慣れない左手で起き上がろうとしたようで、ケリーは祥ちゃんの髪を鷲掴んでいた手を引き拳銃を持つ手をぱしっと取った。

 何が起きると見ていれば、祥ちゃんはその取った手を口元に持ってくよう、これはキスをしたのか。対外人流。

 ケリーを見上げ、ケリーも祥ちゃんを見下ろしたようで。

「Dear my father,I’m home.」
「くっ、はは、」

 ケリーの、ここへ来て初めてな、人らしく無邪気な笑顔を一瞬みた。後ろ二人も息を呑むしかなかったそれに、漸く呼吸を許された雰囲気を感じる。

「その目だよ祥真」

 ニヒルに戻ったケリーを確認した祥ちゃんは、こちらに漸く柔和に笑って振り返った。

「OK、第一関門突破したよ」

 「ふはぁ…」と、完璧なる気の緩みが流星の呼吸で読み取れた。

「え、なに?」
「ははは、まぁしまえよそこの君」

 ケリーに言われ、ユミルも俺の肩に手を置き「潤ちゃん、」と耳打ちする。

「君ってスゴい」

 何がだろう。
 釈然としないまま銃を下げれば「遅くなりましたミスターケリー、」と流星が言う。

「It’s been a while.覚えていてくれてよかった。リュウセイ・スミダです」
「あぁ、君とはいつ以来かな。2年は経つか?
ウチのバカ犬二匹をどうもおーきに。相変わらずえー男だね流星」

とケリーは饒舌に言う。
 かと思いきや途端に、眉間に皺は寄ったが悲しそうな顔をするケリーは流星の抱えた骨壺を眺めた。

「それは、誰だい」
「…あぁ、はぁ…。
恋人です」

 重々しく口を開いたケリーの一言は「そうか」だけだった。

 完全に俺はそれでスミスをしまった。
悪い人ではないのかもしれない。

 今度は俺と目があった。

「これの片腕になるだけあるなぁ、君、気に入った」

 と、低いが普通に殺気なく言うケリーに俺は唖然しかない。

 少し笑って「お前らまともに来て関税通ったんか?なんでもえーけど褒めてやろう」と言う。

なんだろ、ちょいちょい関西風味なの凄く気になるんだけど。

「さぁて、どう言った訳かを聞かせてもらおか。
 でも、先にまずはその方を弔おうな、リュウセイ」

やっぱりそうだ。なんか変。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月
キャラ文芸
「皇帝になったら、迎えに来る」幼なじみとのそんな約束を律儀に守っているうちに結婚適齢期を逃してしまった私。彼は無事皇帝になったみたいだけど、五年経っても迎えに来てくれる様子はない。今度会ったらぶん殴ろうと思う。皇帝陛下に会う機会なんてそうないだろうけど。嘆いていてもしょうがないので結婚はすっぱり諦めて、“神仙術士”として生きていくことに決めました。……だというのに。皇帝陛下。今さら私の前に現れて、一体何のご用ですか?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

処理中です...