ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 31st episode

5

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 祥ちゃんは少しケリーから顔を反らしながら舌打ちをする。黒い笑顔だ。
 仕方ないとばかりに左手でコンバットを抜く、
と思いきや器用にタバコを一本出して咥え、面倒臭そうに火をつける。
 ケリーがそれに少し眉を潜めたのを見るや、「わふれれらな(訳:忘れてたな?かな?)」と言い、タバコを咥えたままコンバットを抜き、

「ただいまクソジジイ」

とモゴモゴしながらもはっきり言った。

「てめえ、私が嫌煙家なの知っとるよな殺されたいんかクソガキ」

えっ、

I love cigarettes私は愛煙家です,kill youアナタを殺します

 俺訳、祥ちゃんの声が聞こえるようだ…「俺は愛煙家だねっ!殺すぞてめぇ」が…。

「面倒だなニホンゴ使えんだろ喧嘩売ってんかすっ飛ばすぞゴラぁ」

えっ、

 ケリーは更に眉間に皺を寄せてカシャッと、ゴツい銃のスライドを引く。祥ちゃんも祥ちゃんで煙を吐き出しながら「どっちが早いかな」とか言っている。

待てよ待てよ。

 ちらっと流星を見れば「多分長いぞあれ」と呟く。

「待ってぇ…どっからさぁ…」
「言いたいことはわかるケドね、黙ってた方が」
「てめぇのツレはどれだショウマ」
「えっ」
「見てわかんないの、あ、タバコ落ちただろぉ、1本20円、」
「ふざけんなや教会燃やす気か使えねぇ、口に手榴弾突っ込むぞこん、能無しがぁ、」

 ケリー、祥ちゃんに歩み寄ろうと(撃とうと)する、ついでに足で鎮火。祥ちゃん手を伸ばす。俺予感的に次飛び火しそうなんだけど。

 ケリーと目が合う。
やっぱぜってぇこれくる嫌だ。

「あれか」
「どれだよよそ見とか」
「真ん中の金髪、君ちょっとこっち来ぃ、」
「え゛っ」
「来なくてい~よ、いま殺すから」
「なっ、」
「殺すだとぉ、てめぇこの私によく片腕で言ったな」
「片腕で充分だろ、神父様ならねっ、」

やべぇ。

 どーしたらいいの俺と流星もユミルも見るけど目は合わせてくれない。明らかに二人とも能面のような顔をして断固姿勢だ。何故だ戦地に味方がいない。このまま出てったら即死してしまうだろうが薄情者め。それでも日本人かコラ。

「おいそこの混じりハイエナぁ」

 ケリーの低いドスの利いたヤクザのような声に「いっ、」とユミルが怯える。変化球だ、ピッチャー、デッドボール。
 俺は絶対に助けてやれないからねユミル。ケリーは拳銃を祥ちゃんの左腕に押し付けたままユミルを睨む。

「てめぇストレスで医者掛かるとかなんだぁ?殺すぞこのチビ」
「いぃぃ…」
「んで、リュウセイ。君、その箱はなんだってんだい」
「…弔って頂けないかなと」
「ふんっ、」

 またクールな鉄面皮に戻ったケリーは銃を祥ちゃんから離して右手にぶら下げ、
目を合わせた瞬間に祥ちゃんが「ごふっ、」と、漫画のように踞った。鳩尾にパンチを食らったらしい。コンバットも落ちた。危ない暴発しちゃう。
 
 いまや俺の頭は「ホントに死んでもここ教会だ」と、目の前から離れていくのが保身だった。

 しかしもれなく全員を見下すように眺めたケリーの長い沈黙は、場に似合わず殺伐としていた。

「ざまぁねぇなジャパニーズ、全員ファック。死んでから来いよバーカ」

なにっ、その
すげぇ頭悪そうなセンスねぇ罵倒。

けど言えねぇ、それなりに腹立つが殺気だけは半端ない。高田と同類だ、イライラだけで人を殺せそう。
神父じゃない、これ、間違いなく神父じゃない。

 ケリーはそれから足元で「てめぇ」と痛そうに唸った祥ちゃんへしゃがみ、「でぇ?」と、ラリった覚束ない口調で言い捨て前髪を鷲掴む。

「どの面下げて来やがったショウマ」

マジな殺気低音でケリーは言った。
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