ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 32nd episode

4

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 ふらっと政宗はどこか、正面の窓あたりを眺めては「うーん」と途方にくれた。

「潤がいねぇのか…。意外と潤頼みだったとこあるよなぁ…」
「そうですねぇ」
「お前なんか特にそうだよなぁ。俺スナイパーはよくわからんがまぁスポッターとスナイパーって、お前ら見てる感じだと最早一心同体だがまたちょっと違うよな。互いの命握ってるもんなぁ…」
「まぁ…」

確かにな。

「あいつ来たところで制限がなぁ…。間違いなく現場は行けねぇもんなぁ」
「ある意味その点まだハッキング系でよかったにはよかったが、なかなかそれすら制限は前よりあるからなぁ…」
「てか待った。
お前ら本部行ったんだよな、その辺どーなのよ」
「微妙っすね。本部って言っちゃったらアメリカ組織ですからね」
「あ、そっか」
「感覚的には“アメリカのために工作員を日本に出す”だから、俺たちやってることはそれとは違う。何故出来たかって高田さんが日本支部を私物化しているから、みたいなもんだし」
「厄介だなー…」
「あんたはまだ日本警察に籍を、まぁ置いてる?マトリ辞めたけど。日本警察だから出来る、俺もインチキぶっこいてるけど籍ある設定だからいいが潤は完璧に一般市民、からのアメリカ本部籍のみになっちゃったからなぁ」

考えたところで始まらないけども。

「…てか、ユミルはどうなったよ」
「あぁ…はぁ…」
「なんだよその平成返事」
「なんですかそれ。
 ユミルは本拠地に帰りました。きっともう日本には来れないかなぁ」
「マジかよ…」

 なかなか辛いなぁと思ったときだった。
 廊下に足音がして近付いて来る。
 なんだ、ウチかマトリか、早いなおいとか思って気を少し張るようにドアを意識すれば、横目でドアをなんとなく眺めた政宗が「は?」と言った。

 最早気配で誰だかわかったが振り返る。
 がっつりなんかカジュアル私服の潤が腕組のドヤ顔で「湿気てんなぁ、おはようじゃん」と言ったのも「お前何故んなカジュアルだよ」と突っ込みどころだが、背中にもカジュアル?無駄な前垂らしマフラーして次元ハットを被った胡散臭い笑顔の祥真がいた。

わかるわー「は?」マジで「は?」だわぁ。

「マジかよ潤」

 とげんなり言う政宗に潤は「来るっつっただろ先輩」とにへっと笑っているが多分そこじゃないぞ潤。私服と私物(人)だぞおい。

「どうもおはようございます」
「いや待て山下と潤。お前らどーしたよおい」
「いや俺どっから突っ込むべきかマジでわかんねぇわ」
「まず先輩からな?
 おいふらっと「近所の喫茶店に来ました」ノリで元職場にくんなよバカ!」
「うわぁ、ホントに潤の先輩だけある、キレっキレっすね荒川さん」
「うるせぇよ山下ぁ!お前何故いる!」
「俺がつれてきたんだよセンパイ」
「はぁ?」

うわぁ。
なんなのこいつら。すっげぇめんどくせぇ。

 唖然としている俺を漸く潤は見たが、正直目をそらしてしまった。

「んだよつれねぇな鉄面皮。俺も祥ちゃんも欲しいだろお前」

 最早どこから突っ込むか、突っ込むのを諦めて溜め息が出た。バカ野郎頭のなかどうなっていやがるよと、無言で左隣の椅子を促した。
 潤はすげえ偉そうに足と腕を組んで座り俺を見て、「いいもん持ってきたぞぶちょー」と言った。ホントにムカつくから話しかけないで欲しい。

「おはよう。んだよ全く」
「あれ、お前寝てなくね?マジくまやべぇ、つうかお前ら早くね?」
「…うるせぇやつだなお前。祥真お前いつもこれに耐えてるとか想像出来ないわ。なんなのお前ら」
「いやー家でもうるさいけどもう少し人格は破綻してないよ多分」
「…もうなんでもいーでーす。なんですか潤くん。お前らなんで私服なんですか」
「はぁ?お前もOFFの日私服じゃん」
「先輩助けて日本語通じない」

投げようぞ先輩。
 「投げてくんじゃねぇよバカ」と言われたが俺は取り憑かれている。

「昨日のやつよりましなんでしょ先輩」
「いや撤回。ダメだわ潤+1」
「あはは~、ヤマシタです。里の夜に月が綺麗と覚えてください」

 潤と政宗が「なにっ」とハモった。この隠語流石に俺でも解読できない。

「え、お前山の下じゃないの」
「実は違います。書くの面倒だし珍しくて一発覚えされるんでメジャーなやつ使ってました~。秘密でお願いします」
「マジかよ祥ちゃん」
「マジだよ。あのファッキン神父が「日本の名前素晴らしいね」ってドキュンネームをつけやがったんだよ」

うわぁ。
可哀想に祥真。

「…なんかわかんねぇけど取り敢えずお前ら次からスーツ着てこれねぇ?」

 政宗がド正論をこいたがそもそも伊緒が私服なのはどうなんだ、一般市民だからいいのか?いや、こいつらも「危ない」が頭につく一般市民だわ。ようわからんくなってきたな。
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