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The 35th episode
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「愛蘭ちゃんは流星の…無理かもしれないけどケータイのGPSを追ったら最終の居場所を教えて。
瞬と諒斗は全体的に戦闘きって。
慧さん、愛蘭ちゃんのデータをもとにハッキング準備をお願いします。ウイルス感染ソフトは正直効くかわからない。
そんなこと言っておいて大方検討はついてるんですけど、」
厚労省前で出会った特本部一同は潤のその場の指揮でポジション確認をし、それぞれワゴン車に所狭ましと乗り込んだ。本来ならば、現在流星を置いて7人。ギリギリ道路交通法違反かもしれない。
ワゴン車をレンタルした際に、政宗は潤に密かに語った。
「流星の出生を追ってみた」
と。
潤からすれば
「は?あんなの高田さんの相方の息子かもしれないってことぐらい、祥ちゃんから聞いたけど」
だった。それには政宗も腰を抜かす思いだった。
「え、なにそれ」
「は?違うの?
本当はでも、そこも曖昧で樹実さんがそこのポジションかもしれないとか、そんなんでしょ?」
「…マジかー。…若干違うけど呆れたぞおい」
「…ん?」
レンタカーで厚労省に向かう道すがらの、会話。
「…そもそも樹実はどうしてそこのポジションなのか、それはどうなんだ?」
「え、知らないけどなに?」
「…樹実は元は、前警察庁長官曽田の隠し子だったわけで」
「…は?」
「“カヤヌマ”というのは曽田の愛人であり、高田創太の相方、壽美田一成の妻だったわけ」
「あーそんなこと言ってたような」
「そして樹実は、壽美田一成が死んだ際に、高田創太の養子になるわけだが」
「…ん?」
「流星は樹実が死んだ際に高田の養子、という扱いになったわけだ」
「…あ、そっか」
お父様とか、茶化していたもんな。
…だが待て、そうなると。
「…ん、待て待て。
樹実さんが生きていた間の流星はどうなったわけさ」
「そこだ。
いなかったんだ、流星は」
「…は、え?」
「壽美田一成の息子となった12歳、だが壽美田一成には子供は一人しかいないが、相手は茅沼舞子ではない、相手が不詳だということだ」
「…流星は、誰なの?」
「…前に、流星が言っていた。自分は恐らく、どこかの施設で生まれたんだって」
話がまとまってきた。
「もしかして」
「…多分。
昴の会の人間だ」
だとしたら。
「…そんな不毛なことって、あるかよ」
何故、茅沼樹実はそんな子供を、胡散臭い戸籍まで残して守ろうとしたのだろうか。
そういえば。
「…祥ちゃんが言ってた。
本当は樹実さんも戸籍でいうなら、4歳のときに死んでるんだって」
「…いずれにしても壽美田一成の子供を引き取ったのは、」
高田創太だ。
恐らく、二人の出生については、認知しているはずだ。
だから確証があった。
「…恐らく流星は高田さんのとこ、つまりFBI日本支部に殴り込みに行ったんだろうと思う。
そうなるとあそこの回線はハッキングを許さない。一か八かでしかないけれど」
「…まぁ、もう書類提出も済んでしまいましたし…この35万は消耗品として、全てが済んだら流星さん当てに領収書切りますよっと」
言いながら元特本部鑑識(サイバー兼任)、猪越慧はノートパソコンをカチャカチャといじり始めた。
同じくサイバーの山瀬愛蘭は、潤の指示を元にしたが、二人揃って「あー…ホントに死んじゃった」「ダメでしたね」と言い合っていた。
また、先頭を任された黒田瞬、早坂諒斗両名は「先頭とかかっこいくね?」だの、「真っ先に死ぬけどな」だのとやりとりをしている。
「…霞ちゃん、取り敢えず瞬と諒斗の援護よろしく」
「まかせてくださぁい」
いつも通り、卜霞は間延びしてそういった。
なんだか。
状況のわりに部下たちは逞しいくらいに、いつも通りだった。
だが、そうなんだが。
「…伊緒は俺と…政宗と。突入」
何が、とは言えないでいる。
そんな監督官の様子を横目で見て運転をする政宗も、確かに過去はフラッシュバックしている。
「…みんなさ。
俺はもしかすると、…あいつを射殺するかもしれない。みんなだって、…可能性、あるけど」
溜息だか哀愁だか。
そんな助手席の潤の姿に、一同は少しだけ沈黙するが。
「…俺は殺しませんよ、潤さん」
伊緒が。
そうはっきりと言った。
「ヒーローを殺すなんて、そんなのエゴじゃないですか」
…そうか。
今もあの日も、そう言えたなら、まぁ。
心に一つ、傷をつけられた気がした。
「…そうかもしれないな」
出来れば。
「そうあって欲しいもんだよな、」
政宗が最後にそれを呟く。
急いで、急いでと。
とにかく今はそう思おうと、潤の中でもそう片付いた。
今、終焉を目の前にした混沌のなかで、
誰しも新たな呼吸を、求めるように、祈るように。
戦地に足を踏み入れようと、している。
弾は、静かにこめられた。
瞬と諒斗は全体的に戦闘きって。
慧さん、愛蘭ちゃんのデータをもとにハッキング準備をお願いします。ウイルス感染ソフトは正直効くかわからない。
そんなこと言っておいて大方検討はついてるんですけど、」
厚労省前で出会った特本部一同は潤のその場の指揮でポジション確認をし、それぞれワゴン車に所狭ましと乗り込んだ。本来ならば、現在流星を置いて7人。ギリギリ道路交通法違反かもしれない。
ワゴン車をレンタルした際に、政宗は潤に密かに語った。
「流星の出生を追ってみた」
と。
潤からすれば
「は?あんなの高田さんの相方の息子かもしれないってことぐらい、祥ちゃんから聞いたけど」
だった。それには政宗も腰を抜かす思いだった。
「え、なにそれ」
「は?違うの?
本当はでも、そこも曖昧で樹実さんがそこのポジションかもしれないとか、そんなんでしょ?」
「…マジかー。…若干違うけど呆れたぞおい」
「…ん?」
レンタカーで厚労省に向かう道すがらの、会話。
「…そもそも樹実はどうしてそこのポジションなのか、それはどうなんだ?」
「え、知らないけどなに?」
「…樹実は元は、前警察庁長官曽田の隠し子だったわけで」
「…は?」
「“カヤヌマ”というのは曽田の愛人であり、高田創太の相方、壽美田一成の妻だったわけ」
「あーそんなこと言ってたような」
「そして樹実は、壽美田一成が死んだ際に、高田創太の養子になるわけだが」
「…ん?」
「流星は樹実が死んだ際に高田の養子、という扱いになったわけだ」
「…あ、そっか」
お父様とか、茶化していたもんな。
…だが待て、そうなると。
「…ん、待て待て。
樹実さんが生きていた間の流星はどうなったわけさ」
「そこだ。
いなかったんだ、流星は」
「…は、え?」
「壽美田一成の息子となった12歳、だが壽美田一成には子供は一人しかいないが、相手は茅沼舞子ではない、相手が不詳だということだ」
「…流星は、誰なの?」
「…前に、流星が言っていた。自分は恐らく、どこかの施設で生まれたんだって」
話がまとまってきた。
「もしかして」
「…多分。
昴の会の人間だ」
だとしたら。
「…そんな不毛なことって、あるかよ」
何故、茅沼樹実はそんな子供を、胡散臭い戸籍まで残して守ろうとしたのだろうか。
そういえば。
「…祥ちゃんが言ってた。
本当は樹実さんも戸籍でいうなら、4歳のときに死んでるんだって」
「…いずれにしても壽美田一成の子供を引き取ったのは、」
高田創太だ。
恐らく、二人の出生については、認知しているはずだ。
だから確証があった。
「…恐らく流星は高田さんのとこ、つまりFBI日本支部に殴り込みに行ったんだろうと思う。
そうなるとあそこの回線はハッキングを許さない。一か八かでしかないけれど」
「…まぁ、もう書類提出も済んでしまいましたし…この35万は消耗品として、全てが済んだら流星さん当てに領収書切りますよっと」
言いながら元特本部鑑識(サイバー兼任)、猪越慧はノートパソコンをカチャカチャといじり始めた。
同じくサイバーの山瀬愛蘭は、潤の指示を元にしたが、二人揃って「あー…ホントに死んじゃった」「ダメでしたね」と言い合っていた。
また、先頭を任された黒田瞬、早坂諒斗両名は「先頭とかかっこいくね?」だの、「真っ先に死ぬけどな」だのとやりとりをしている。
「…霞ちゃん、取り敢えず瞬と諒斗の援護よろしく」
「まかせてくださぁい」
いつも通り、卜霞は間延びしてそういった。
なんだか。
状況のわりに部下たちは逞しいくらいに、いつも通りだった。
だが、そうなんだが。
「…伊緒は俺と…政宗と。突入」
何が、とは言えないでいる。
そんな監督官の様子を横目で見て運転をする政宗も、確かに過去はフラッシュバックしている。
「…みんなさ。
俺はもしかすると、…あいつを射殺するかもしれない。みんなだって、…可能性、あるけど」
溜息だか哀愁だか。
そんな助手席の潤の姿に、一同は少しだけ沈黙するが。
「…俺は殺しませんよ、潤さん」
伊緒が。
そうはっきりと言った。
「ヒーローを殺すなんて、そんなのエゴじゃないですか」
…そうか。
今もあの日も、そう言えたなら、まぁ。
心に一つ、傷をつけられた気がした。
「…そうかもしれないな」
出来れば。
「そうあって欲しいもんだよな、」
政宗が最後にそれを呟く。
急いで、急いでと。
とにかく今はそう思おうと、潤の中でもそう片付いた。
今、終焉を目の前にした混沌のなかで、
誰しも新たな呼吸を、求めるように、祈るように。
戦地に足を踏み入れようと、している。
弾は、静かにこめられた。
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