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The 36th episode
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「…この際だから特本部の活動報告なんてものはシュレッダーに掛けちまおうと思うんですが、昴の会の残党は恐らく…同郷でしょう、俺の。樹実はどうだかわかりませんが、秋津艦隊のあたりにあんたはどう関与したんでしょうか」
「…それは誉めようか。秋津艦隊殲滅で俺は熱海雨を拾った、そんなところかな」
「…雨さんはほとんどこの支部に在籍していなかったように思いますが」
「そうだねぇ。唯一なつかなかった男だな」
「では樹実と雨さんの関係はそこから始まった、ということでしょうか」
「つまらないことばかり聞いてくるもんだね。そんなもん、わからないなら犬以下だよ」
「…話を秋津艦隊に戻すとしたら、違法輸出だったとありましたがその辺には関与したのでしょうか」
余裕そうな高田の表情は一変した。
「…誰に聞いたんだい」
「…雨さんが秘密裏に記録を残していました。
正直その程度なら日記だと思うことにして信憑性も皆無だったかと思ったのですが、違うようですね。
そうなると潤の父親はそれを山車に防衛大臣に上がったが暗殺されてしまった。つまりこれは暗殺するほどの価値であったと決定付けられますね。誰がしたかは明白じゃないにしてもまぁ…政治家の一人だ、国家的なものだろうと思います。俺も端くれながらそうやって各国を飛び回りましたから。
で、確か星川匠は海上自衛隊だったのだろうと予想がつきますが樹実は陸上自衛隊、雨さんが海上自衛隊だ。ここでこの三つの接点が繋がりました。とするとあんたの接点が見当たらない」
秋津艦隊の話を持ってこられると、確かに総崩れして行き着くのは、早いだろう。
「ふ、ははははは!」
笑いが止まらない。
根本へ漸くやって来て突き刺してきたこのナイフを、さあ、どうしようか。
「…食えない男だなぁ、熱海」
「…だから拾ったんじゃないんですか」
「樹実は異様に嗅覚のいい犬だった、というのがまたひとつはっきりしたな」
「…なるほど」
「そしていまここに来てお前を拾ってきたのも、気まぐれだったんだろうがまぁ、これは天性の才能だろうな、あの犬畜生め」
「いい線いってるということですかね、じゃぁ話を進めましょうか」
「不毛だと思うけどね。まぁ、お前らとしちゃあと一歩が確定でないということか」
「…単純な話をしますとこの構図、俺たちが七年やって来たことに偉く似ている。根本には国があり軍があり…反対組織がいて海外とも関わりがある。勿論反対組織を潰しにかかるのは筋ですが、潰されるのは結局日本内のものである。これがジャパニーズソウルというべきか、いや、正直アメリカンを感じますね。
反対組織のもとに正義が作られる。真髄を言ってしまえば必要悪として仕組まれているように俺には感じる。
そして結局それは内戦の構図だ。当たり前に有耶無耶になる」
「…は、あっそ。それをわかっていながら動いていたのかどうか、それを聞いてもいいかい…流星」
流星は、それには黙った。
答える必要があるのかどうか。無表情の眼鏡越しの瞳。これは、そう、渇望にある承認欲求なのかもしれない。
「まぁ、どっちでも」
「わかってませんでしたよ。たった今まで」
今度は高田が、
唖然としたような、いや、こちらを不思議で、探ってみたいという純粋な気持ちの瞳で見ていた。
至近距離戦でナイフは心臓を射止めたとして。
必ず返り血を浴びるものなんだ。
「…多分、いつまでもわかりません。俺は視野の狭い、世間知らずで、箱の中で生まれ育った孤児ですから」
そう。
「…いいなぁ、自由で」
そう言った高田は切なそうに、慈悲深く微笑んだのだった。
その宇宙のように真っ黒で果てのない綺麗な瞳、俺はそう。
誰かの、笑顔を思い出す。
『大丈夫だよ、帰ってくるから!』
「…君のその濁りなく真っ黒な瞳は」
君は濁りのない真っ黒な瞳を忘れなかった。縄で縛られた手を振って、なのに底抜けに明るい笑顔で。
「気が狂いそうで嫌いだったんだよ、流星」
誰もがあの地で、この男は気が狂ってしまったんだと思ったに違いない。
現に俺も気が狂うほどに、恐怖を感じた。世界は、ただ歪曲して回転を止めていないというだけだったのだから。
こんな生ゴミのようになり下がったノスタルジーに、そう、ノスタルジーというだけの話。生きていくことはそうやって塗り潰して前に進むしかなくなってくるんだ。
「…高田さん、」
「君も経験したはずだ、ゴミ溜めのような、」
高田はそれから流星に漸く、銃を向けた。
「反吐を吐き捨てていくこんな全うを」
ゴミはゴミとして捨てられていく、消化不良を君は知らないでいる。
当たり前だ。
「この国を作ったのは紛れもなく、俺だ」
宗教も道徳も権力もなにもかも、意味をなさないこんな、安穏とした救いのない世界を。
「…それは誉めようか。秋津艦隊殲滅で俺は熱海雨を拾った、そんなところかな」
「…雨さんはほとんどこの支部に在籍していなかったように思いますが」
「そうだねぇ。唯一なつかなかった男だな」
「では樹実と雨さんの関係はそこから始まった、ということでしょうか」
「つまらないことばかり聞いてくるもんだね。そんなもん、わからないなら犬以下だよ」
「…話を秋津艦隊に戻すとしたら、違法輸出だったとありましたがその辺には関与したのでしょうか」
余裕そうな高田の表情は一変した。
「…誰に聞いたんだい」
「…雨さんが秘密裏に記録を残していました。
正直その程度なら日記だと思うことにして信憑性も皆無だったかと思ったのですが、違うようですね。
そうなると潤の父親はそれを山車に防衛大臣に上がったが暗殺されてしまった。つまりこれは暗殺するほどの価値であったと決定付けられますね。誰がしたかは明白じゃないにしてもまぁ…政治家の一人だ、国家的なものだろうと思います。俺も端くれながらそうやって各国を飛び回りましたから。
で、確か星川匠は海上自衛隊だったのだろうと予想がつきますが樹実は陸上自衛隊、雨さんが海上自衛隊だ。ここでこの三つの接点が繋がりました。とするとあんたの接点が見当たらない」
秋津艦隊の話を持ってこられると、確かに総崩れして行き着くのは、早いだろう。
「ふ、ははははは!」
笑いが止まらない。
根本へ漸くやって来て突き刺してきたこのナイフを、さあ、どうしようか。
「…食えない男だなぁ、熱海」
「…だから拾ったんじゃないんですか」
「樹実は異様に嗅覚のいい犬だった、というのがまたひとつはっきりしたな」
「…なるほど」
「そしていまここに来てお前を拾ってきたのも、気まぐれだったんだろうがまぁ、これは天性の才能だろうな、あの犬畜生め」
「いい線いってるということですかね、じゃぁ話を進めましょうか」
「不毛だと思うけどね。まぁ、お前らとしちゃあと一歩が確定でないということか」
「…単純な話をしますとこの構図、俺たちが七年やって来たことに偉く似ている。根本には国があり軍があり…反対組織がいて海外とも関わりがある。勿論反対組織を潰しにかかるのは筋ですが、潰されるのは結局日本内のものである。これがジャパニーズソウルというべきか、いや、正直アメリカンを感じますね。
反対組織のもとに正義が作られる。真髄を言ってしまえば必要悪として仕組まれているように俺には感じる。
そして結局それは内戦の構図だ。当たり前に有耶無耶になる」
「…は、あっそ。それをわかっていながら動いていたのかどうか、それを聞いてもいいかい…流星」
流星は、それには黙った。
答える必要があるのかどうか。無表情の眼鏡越しの瞳。これは、そう、渇望にある承認欲求なのかもしれない。
「まぁ、どっちでも」
「わかってませんでしたよ。たった今まで」
今度は高田が、
唖然としたような、いや、こちらを不思議で、探ってみたいという純粋な気持ちの瞳で見ていた。
至近距離戦でナイフは心臓を射止めたとして。
必ず返り血を浴びるものなんだ。
「…多分、いつまでもわかりません。俺は視野の狭い、世間知らずで、箱の中で生まれ育った孤児ですから」
そう。
「…いいなぁ、自由で」
そう言った高田は切なそうに、慈悲深く微笑んだのだった。
その宇宙のように真っ黒で果てのない綺麗な瞳、俺はそう。
誰かの、笑顔を思い出す。
『大丈夫だよ、帰ってくるから!』
「…君のその濁りなく真っ黒な瞳は」
君は濁りのない真っ黒な瞳を忘れなかった。縄で縛られた手を振って、なのに底抜けに明るい笑顔で。
「気が狂いそうで嫌いだったんだよ、流星」
誰もがあの地で、この男は気が狂ってしまったんだと思ったに違いない。
現に俺も気が狂うほどに、恐怖を感じた。世界は、ただ歪曲して回転を止めていないというだけだったのだから。
こんな生ゴミのようになり下がったノスタルジーに、そう、ノスタルジーというだけの話。生きていくことはそうやって塗り潰して前に進むしかなくなってくるんだ。
「…高田さん、」
「君も経験したはずだ、ゴミ溜めのような、」
高田はそれから流星に漸く、銃を向けた。
「反吐を吐き捨てていくこんな全うを」
ゴミはゴミとして捨てられていく、消化不良を君は知らないでいる。
当たり前だ。
「この国を作ったのは紛れもなく、俺だ」
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