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The 36th episode
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FBI日本支部についた駐車場で潤は溜め息を吐いてタバコに火をつけた。
「…予想通り過ぎてつまんねぇしやる気なくした」
現場は殺伐としていた。救急車やらなにやら、取り敢えず怪我人ばかりが搬出されていた、入り口も割れている。
建物破壊はないようなのでこれは強度の低い手榴弾だろうがお前な、バカじゃねぇのか器物破損なんて問題じゃないぞ。
共謀罪、つまりテロと変わらねーつうんだよ。
「やる気なくしたなんてお前、悠長なこと言ってられると思ってんのか…」
「胸くそも悪いあいつ嫌い」
「まぁ、笑えねぇけど…」
と言っているうちにこちらに気付いた煤まみれの役員が車に向かって何か吠えてるのが目に入る。
大方「誰だ貴様ら、」だの、そんなところだろうとは思う。確かに怪しい。こちらはレンタカーだし交通法違反だ。
しまいにはアホなのか、拳銃を向けている男に「行く感じっすか、これ」と諒斗が後ろで言った。
「えぇ~、FBIってもうちょっとなんかぁ、ヤバ気なヤクザみたいなものだと思ってました~」
「大方あってるよ霞ちゃん。流石動物の嗅覚は違うね。
ちなみに本拠地籍になった俺から言うとここ、別にFBIじゃないからね」
「え゛っ」
特本部動物の先祖、政宗先輩が唸った。そりゃあ、せっかく籍をここにしちゃったゴリラ脳みそには少々刺激が強いに違いない。
「…どっちかってーと、日本マフィア」
「…は、はぁ!?」
「おっさん情報収集能力が錆びちゃったんじゃないの?そんくらいあのクソ単細胞ですら多分知ってるよ」
「…なにそれぇ…」
信じらんなぁい、と現代っ子ゴリラ女のような口調になったのはさておいて、「じゃぁ真面目にヤバいじゃないですか…」と瞬がぼやいた。
「うーん、ヤバいんじゃね?」
「え、何でそんな他人行儀なんですか、行きます?」
「あー、部下ってめんどい。ちょっと待ってな、」
俺はまぁまぁ勝てないけどね。
と心のなかで呟いてから、あまり使ってこなかったよくわからないスミスのM39を抜いてスライドを引いた。
多分届かないんだよなぁ、この距離。
まぁ、威嚇だからいいか。潤は勝手に窓を開けて「おっさーん」と役員に声を掛け、FBIのマジ手帳を翳した。
「アメリカ国勢調査に来たんだけど退いてくんねぇ?弾勿体ないからあとは轢き殺すしかないんだけどー」
「ちょっと待てよ潤、それ俺じゃんか」
やっぱり何か喚いてる。
もう仕方ないや。
「センパーイ10メートル前進、スミス届かねぇ多分」
「え、え、」
「なに?運転できねぇの?俺今運転したら医者とか色々で多分黒つけなきゃなんねーんだけど、多分。頭来て今朝クソほど薬飲んでっからね」
「それいずれにしても撃てねぇんじゃね」
「早く俺頭飛ぶかフロント粉砂糖だぞゴリラ」
もうこいつの性格破綻には慣れたと思っていたがいざってときなんでこんな頭冴えて、というか吹っ飛んでんだろと、溜め息どころか舌打ちをしたくなったのを殺して政宗はアクセルを踏んだ。
10メートルとかよくわかんねえよと、取り敢えず役員の前で停車しようかなと思ったが、逃げてしまったようだった。そりゃそうだ、怖すぎる。
涼しい顔をしてタバコを吸って窓から投げた潤に「お前さぁ!」と政宗は言ったが、「うるさい」と、窓の外を眺めている潤はセンチメンタルなようだった。
「…多分諒斗と瞬と霞ちゃんはこれでいらなくなった」
「はい?」
「どして?」
「危ないんじゃないですかぁ?」
「危なくないようにしたっつーの。待機ね」
微妙なやさぐれ感に政宗は溜め息を吐いて「だってよ、みんな」と言った。
「…予想通り過ぎてつまんねぇしやる気なくした」
現場は殺伐としていた。救急車やらなにやら、取り敢えず怪我人ばかりが搬出されていた、入り口も割れている。
建物破壊はないようなのでこれは強度の低い手榴弾だろうがお前な、バカじゃねぇのか器物破損なんて問題じゃないぞ。
共謀罪、つまりテロと変わらねーつうんだよ。
「やる気なくしたなんてお前、悠長なこと言ってられると思ってんのか…」
「胸くそも悪いあいつ嫌い」
「まぁ、笑えねぇけど…」
と言っているうちにこちらに気付いた煤まみれの役員が車に向かって何か吠えてるのが目に入る。
大方「誰だ貴様ら、」だの、そんなところだろうとは思う。確かに怪しい。こちらはレンタカーだし交通法違反だ。
しまいにはアホなのか、拳銃を向けている男に「行く感じっすか、これ」と諒斗が後ろで言った。
「えぇ~、FBIってもうちょっとなんかぁ、ヤバ気なヤクザみたいなものだと思ってました~」
「大方あってるよ霞ちゃん。流石動物の嗅覚は違うね。
ちなみに本拠地籍になった俺から言うとここ、別にFBIじゃないからね」
「え゛っ」
特本部動物の先祖、政宗先輩が唸った。そりゃあ、せっかく籍をここにしちゃったゴリラ脳みそには少々刺激が強いに違いない。
「…どっちかってーと、日本マフィア」
「…は、はぁ!?」
「おっさん情報収集能力が錆びちゃったんじゃないの?そんくらいあのクソ単細胞ですら多分知ってるよ」
「…なにそれぇ…」
信じらんなぁい、と現代っ子ゴリラ女のような口調になったのはさておいて、「じゃぁ真面目にヤバいじゃないですか…」と瞬がぼやいた。
「うーん、ヤバいんじゃね?」
「え、何でそんな他人行儀なんですか、行きます?」
「あー、部下ってめんどい。ちょっと待ってな、」
俺はまぁまぁ勝てないけどね。
と心のなかで呟いてから、あまり使ってこなかったよくわからないスミスのM39を抜いてスライドを引いた。
多分届かないんだよなぁ、この距離。
まぁ、威嚇だからいいか。潤は勝手に窓を開けて「おっさーん」と役員に声を掛け、FBIのマジ手帳を翳した。
「アメリカ国勢調査に来たんだけど退いてくんねぇ?弾勿体ないからあとは轢き殺すしかないんだけどー」
「ちょっと待てよ潤、それ俺じゃんか」
やっぱり何か喚いてる。
もう仕方ないや。
「センパーイ10メートル前進、スミス届かねぇ多分」
「え、え、」
「なに?運転できねぇの?俺今運転したら医者とか色々で多分黒つけなきゃなんねーんだけど、多分。頭来て今朝クソほど薬飲んでっからね」
「それいずれにしても撃てねぇんじゃね」
「早く俺頭飛ぶかフロント粉砂糖だぞゴリラ」
もうこいつの性格破綻には慣れたと思っていたがいざってときなんでこんな頭冴えて、というか吹っ飛んでんだろと、溜め息どころか舌打ちをしたくなったのを殺して政宗はアクセルを踏んだ。
10メートルとかよくわかんねえよと、取り敢えず役員の前で停車しようかなと思ったが、逃げてしまったようだった。そりゃそうだ、怖すぎる。
涼しい顔をしてタバコを吸って窓から投げた潤に「お前さぁ!」と政宗は言ったが、「うるさい」と、窓の外を眺めている潤はセンチメンタルなようだった。
「…多分諒斗と瞬と霞ちゃんはこれでいらなくなった」
「はい?」
「どして?」
「危ないんじゃないですかぁ?」
「危なくないようにしたっつーの。待機ね」
微妙なやさぐれ感に政宗は溜め息を吐いて「だってよ、みんな」と言った。
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