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「もう、もう……そんなこと言わないでよダメに決まってるじゃんどうして昔から変わらないの、大嫌いなの、どうして大切に出来ないのっ、みんな、みんな……っ」
「だってお前しかいないじゃん俺のこと見てくれるの。お前、俺のこと好きじゃん、俺のためにそうやって言ってくれたり、俺に時間合わせてくれたり、子供までおろしてくれるのお前しかいないよ?わかってるよね?」
はっと伊織は固まってしまった。
「そんなの、そんなの…、セ…セフレだからに」
「伊織ちゃん、」
カタカタと言う伊織を吉田は遮った。
かと思えば高架橋に腕を当てまるで抱えるように、そして吉田は伊織に深いキスをした。
ポカンと眺める伊織が切ないと、深く、深くすれば伊織もそのうち背に手を回し、少し、長くキスをして。
唇を離した瞬間、桝は引くように唖然としていた。
「こーゆーことだから、マジで」
伊織は吉田の、睨む蛇のようなキレた目を初めて見た。
「失せてくんないかなぁ、桝くん。警察呼ぶけど。白昼堂々生臭いんだよお前」
そんな低い声も初めて聞いて。
桝はまるで糸がぷつっと切れたように、へなへなとミニバンに帰って行った。
「………ちょっと、お宅の彼氏に触発されたかなぁ、俺の、物凄く青臭くて若すぎるダサいやつだったんだけど…っ、絶対言わないでホントに」
「…はぁ…」
「全く、行くよ、」
そう言う吉田に「言わないです」と伊織は言ったけれど。
「先輩、」
「ん、な」
伊織は「ビール飲みませんか先輩、」と、ニコッとしながら手を繋ぎ引いた。
「あと少しありますけど、有楽町の駅の側に、ビールの自販機があるんです。ギネスもありますし一本奢らせてください」
あぁ~っ。
その笑顔、俺マジめっちゃ弱いんだよ、「一本ね、取り敢えずね」と、吉田はしどろもどろになったが。
「…俺は意思を石のように固くするから、ホントに一本ね、」
「はい。…その、あっ、ありが…、」
「わーちょっ、待って泣かれる方が絶対に弱い!けどそれ上手いわ萎えるやつ~!よし行こう、俺も一本奢ってあげるトータル二本で帰るからねっ!わかった?」
うんうん頷く伊織に「はいはーい!真っ直ぐですかっ!」と手を逆に引いた。
伊織は切り換えようと、「はい、そうでふ、」と鼻が詰まってしょうがない。
真っ直ぐ歩いていけば途中で「すみませんあっち側の改札方面で」と言う伊織の抜け具合にもそうだなと吉田は従って。
吉田は初めて来た場所だったが遠くからでも、サラリーマンが立ってビール缶を持っている場所。
一目でわかり、「伊織ちゃんはギネスね?」と、伊織を向かい側の石段に促し、然り気無く吉田はその狭い自販機があるスペースに入って行く。
…タバコ。
サラリーマン達がタバコを吸っている。
伊織は鞄から、こっそり買った変な色のパッケージのタバコを1本取り出して吸い口を眺めた。
ギネスを2本持った吉田は「あれ?」と、伊織に1本渡した。
「どしたのそれ」
「いや…」
「ま、まずは乾杯」
それ、玉が中に落ちて泡が出るからびっくりしないでくださいね、という忠告の前に吉田はプルタブを開けからんと、「おっ、おわっ、」と、忠告しようとしたまんまの反応だった。
「あ、言おうと思ってて」
伊織もギネスのプルタブを開ける。からん、と音がして、「これで泡が立つらしいです」と説明した。
「そ、そうなんだ、」
「泡にこだわっているので、瓶と缶だとまたなんか、違うらしいです」
「へ~。1分くらいだっけ?」
「1分半から二分で、本当はグラスに注ぐと良いらしいです。じっくり焦らず注ぐらしい」
「詳しいよね」
「何かの時に…リュージだったかもしれない、聞いたんですよね」
「そうなんだ~」
間が生まれそうだったが「あ、これでしたっけ」と伊織はタバコを見せた。
「吸わなかったよね伊織ちゃん」
「まぁ、はい…買ってみたけど吸ってない」
箱を見た吉田は「これ確か噛むやつだよねぇ、丸い玉みたいなやつ。ブーストって言うんだっけ。1ミリってどうなんだろう」と手にとって眺めた。
「…そうなんですか」
「俺も吸わないからわかんないけど、喫煙者に聞いた気がする。わりと最近のやつ…かな?」
ライターある?と吉田が言ってきたので伊織はライターを手渡すが、「あっこれ擦るやつだ。点けられるかな」と、タバコを咥えて頑張って火を点けていた。
その間に伊織はビールに口付けようとしたが、「ぉひ、かんぱひ」と吉田がかん、とした。
伊織は一口ビールを飲んで、吉田は一口でタバコに「はぁ……っ、はぁ、かはっ、」と噎せていた。
「大丈夫ですか先輩」
「うむぅ、あっ、やばっ、ないわ、これ…」
しかし二口目を涙目で吸い、「はー、」と、次はギネスを一口飲んだ。
「あー、仕事帰りのビールってホントに最高」
「…ですね」
「疲れたなぁ今日も」
タバコも吸いながら、「うん不味いなタバコって」とギネスを飲みながら。
「クリーミーってやつだねギネス」
「はい」
「落ち着いた?」
…やはり然り気無く流すように聞いてくれる吉田に「いや、どうでしょうかね…」と伊織は俯いた。
「だってお前しかいないじゃん俺のこと見てくれるの。お前、俺のこと好きじゃん、俺のためにそうやって言ってくれたり、俺に時間合わせてくれたり、子供までおろしてくれるのお前しかいないよ?わかってるよね?」
はっと伊織は固まってしまった。
「そんなの、そんなの…、セ…セフレだからに」
「伊織ちゃん、」
カタカタと言う伊織を吉田は遮った。
かと思えば高架橋に腕を当てまるで抱えるように、そして吉田は伊織に深いキスをした。
ポカンと眺める伊織が切ないと、深く、深くすれば伊織もそのうち背に手を回し、少し、長くキスをして。
唇を離した瞬間、桝は引くように唖然としていた。
「こーゆーことだから、マジで」
伊織は吉田の、睨む蛇のようなキレた目を初めて見た。
「失せてくんないかなぁ、桝くん。警察呼ぶけど。白昼堂々生臭いんだよお前」
そんな低い声も初めて聞いて。
桝はまるで糸がぷつっと切れたように、へなへなとミニバンに帰って行った。
「………ちょっと、お宅の彼氏に触発されたかなぁ、俺の、物凄く青臭くて若すぎるダサいやつだったんだけど…っ、絶対言わないでホントに」
「…はぁ…」
「全く、行くよ、」
そう言う吉田に「言わないです」と伊織は言ったけれど。
「先輩、」
「ん、な」
伊織は「ビール飲みませんか先輩、」と、ニコッとしながら手を繋ぎ引いた。
「あと少しありますけど、有楽町の駅の側に、ビールの自販機があるんです。ギネスもありますし一本奢らせてください」
あぁ~っ。
その笑顔、俺マジめっちゃ弱いんだよ、「一本ね、取り敢えずね」と、吉田はしどろもどろになったが。
「…俺は意思を石のように固くするから、ホントに一本ね、」
「はい。…その、あっ、ありが…、」
「わーちょっ、待って泣かれる方が絶対に弱い!けどそれ上手いわ萎えるやつ~!よし行こう、俺も一本奢ってあげるトータル二本で帰るからねっ!わかった?」
うんうん頷く伊織に「はいはーい!真っ直ぐですかっ!」と手を逆に引いた。
伊織は切り換えようと、「はい、そうでふ、」と鼻が詰まってしょうがない。
真っ直ぐ歩いていけば途中で「すみませんあっち側の改札方面で」と言う伊織の抜け具合にもそうだなと吉田は従って。
吉田は初めて来た場所だったが遠くからでも、サラリーマンが立ってビール缶を持っている場所。
一目でわかり、「伊織ちゃんはギネスね?」と、伊織を向かい側の石段に促し、然り気無く吉田はその狭い自販機があるスペースに入って行く。
…タバコ。
サラリーマン達がタバコを吸っている。
伊織は鞄から、こっそり買った変な色のパッケージのタバコを1本取り出して吸い口を眺めた。
ギネスを2本持った吉田は「あれ?」と、伊織に1本渡した。
「どしたのそれ」
「いや…」
「ま、まずは乾杯」
それ、玉が中に落ちて泡が出るからびっくりしないでくださいね、という忠告の前に吉田はプルタブを開けからんと、「おっ、おわっ、」と、忠告しようとしたまんまの反応だった。
「あ、言おうと思ってて」
伊織もギネスのプルタブを開ける。からん、と音がして、「これで泡が立つらしいです」と説明した。
「そ、そうなんだ、」
「泡にこだわっているので、瓶と缶だとまたなんか、違うらしいです」
「へ~。1分くらいだっけ?」
「1分半から二分で、本当はグラスに注ぐと良いらしいです。じっくり焦らず注ぐらしい」
「詳しいよね」
「何かの時に…リュージだったかもしれない、聞いたんですよね」
「そうなんだ~」
間が生まれそうだったが「あ、これでしたっけ」と伊織はタバコを見せた。
「吸わなかったよね伊織ちゃん」
「まぁ、はい…買ってみたけど吸ってない」
箱を見た吉田は「これ確か噛むやつだよねぇ、丸い玉みたいなやつ。ブーストって言うんだっけ。1ミリってどうなんだろう」と手にとって眺めた。
「…そうなんですか」
「俺も吸わないからわかんないけど、喫煙者に聞いた気がする。わりと最近のやつ…かな?」
ライターある?と吉田が言ってきたので伊織はライターを手渡すが、「あっこれ擦るやつだ。点けられるかな」と、タバコを咥えて頑張って火を点けていた。
その間に伊織はビールに口付けようとしたが、「ぉひ、かんぱひ」と吉田がかん、とした。
伊織は一口ビールを飲んで、吉田は一口でタバコに「はぁ……っ、はぁ、かはっ、」と噎せていた。
「大丈夫ですか先輩」
「うむぅ、あっ、やばっ、ないわ、これ…」
しかし二口目を涙目で吸い、「はー、」と、次はギネスを一口飲んだ。
「あー、仕事帰りのビールってホントに最高」
「…ですね」
「疲れたなぁ今日も」
タバコも吸いながら、「うん不味いなタバコって」とギネスを飲みながら。
「クリーミーってやつだねギネス」
「はい」
「落ち着いた?」
…やはり然り気無く流すように聞いてくれる吉田に「いや、どうでしょうかね…」と伊織は俯いた。
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