F.G.A.B

二色燕𠀋

文字の大きさ
8 / 13
ファソラシ

7

しおりを挟む
 銃を出せと言ったケリーに俺は従ったのだが、「アホかお前はマズル向けんなや」と顔をしかめられてしまった。

「え?」
「…撃たれるかと思うわ、普通向けない」
「あ、すんません…」

 改めてじゃあどうやって渡そうか、バレルを掴んで渡してみれば「出来るやないか、アホ」とケリーはグリップを握って「へぇ、」と、イツミと同じ、拳銃を舐めまわすかのように眺めたのだった。

「俺もハジメテは怒られたヨ」
「お前は普通に私を殺そうという意思で向けてきたやんユミル」
「だってケリーはレミントンだった」

 話ながらユミルもケリーの手元をキョロキョロと興味深く眺め、「コレ使い方わかるの?ケリー」と聞いていた。

「あーそうね、大して変わらんけどリボルバーには見ての通りスライドがない。薬莢が落ちない変わりに回転する」
「へぇ、」
「だから撃つのが楽だし早いけど、」

 ケリーは少し先の椅子にマズルを向けバン、と涼しい顔をして1発ぶちかました。

 椅子の頭は木っ端微塵になってしまう。

 ただただ驚いた俺をよそに「わーホントだぁ!穴あいちゃったネ!」と喜ぶユミルに「だろ」とケリーが普通に会話しているのが異様だと感じた。

「けど6発しかないんよ。弾はこうやって、」

 ケリーはさも当たり前にくるっとシリンダーを外し、

「この穴に1発づつ詰めて」
「ふんふん、375あたり?」

 指を差し説明をしながらまたシリンダーを戻す。

「そう、まさしく375。
 で、あとはオートマチックと変わらずハンマー上げてトリガー引けば弾が出る。この先のフロントサイトから自分で見て照準を定めるんだよ」
「へぇ~。借りて良い?」

 ユミルがまるで子供のようにそう言うので「あぁ…はぁ、」と気後れ気味になってしまったが、ケリーが「教会が壊れるだろアホ」とユミルを制した。

「…まぁ懐かしいもんだなリボルバーなんて。いまやオートマチックだろうに。
 …確かに…長さも中くらいのモデルを選んだのは実用的だが、お前これ撃てたんか」
「…いや、使ってない」
「訓練では使ってないんか。ははっ、宝の持ち腐れだわ。
 まぁこれは子供が撃てるほど軽くねぇよ、身体支えられずパーンと頭飛んじまうな。それこそオートマチックの方がまだ撃ちやすいだろうに。発展途上というより、酷く甘い。大日本帝国の頃のようだな。
 しかし、確か日本の軍や警察支給のリボルバーは自国開発したSAKURAか、ニューナンブモデル60だったはずなんだけど」
「…そうなんですか」
「お前、オートマチックは使えるんか?」
「…それは水鉄砲のことでしょうか」
「は?」
「こういう形じゃない拳銃の訓練は水鉄砲でした」
「はあ!?ホンマに言うとるんかそれ、」
「…はい」
「…っはははは!ナニソレ頭どーしちゃってんだよっ!」

 ケリーはひたすらに腹を抱えて笑った。
 ツボを押したようで最早止まらない、ひくひくしつつも「あ、あのねえ…っはははは!」と暫く爆笑していた。

「さ、流石にアホジャパンでもそりゃねぇやろし、えっ、とイツミは確かやれベレッタライフルやらレミントンやら…AKフォーティセブンやらを押収したと言っていたが、お前らはなんだ?そんでホンマに狩りしか習っとらんの?」
「狩りは確かに習いましたけど」
「ふぅん…ますますわからんな。
 軍隊やらなんやらが関与していないにしては、武器は狩り用でもない。バックにどこかの軍隊が付き武器を流して小遣い稼ぎでもしたんかねえ…という見解に至ったかな、私は」
「えっと…一体何が何やら」
「そうだろうな。
 今回私とイッセイが調査しているのは君たちが収容されていた宗教団体についてだ。
 宗教団体とは仮の姿でその実、軍隊訓練の秘密組織かという疑惑が浮上したんでな。それを捜査しているのがイツミやアタミといった工作員で、この宗教組織は世界各国に至る。
 殲滅という判断にまで至ったのは、一部テロ団体にこの組織出身の者が存在したからだ。
 彼らは各々神を語り数々のテロを起こしてきた。年齢は皆二十歳前後でしかし出生、職歴、経歴が全て真っ更な者達だが、共通点は皆日本人かハーフ。
 こんな虫も殺せない面をしているがユミルも似たようなもんでな。ユミルの経緯は不明だが、彼はこう見えてフランスの裏路地にあったロシアンマフィアの事務所を一人で殲滅するほどの化け物だ。それには訓練をした者がおり、命を下していた者たちがいるはずだが、君と同じく発見時には薬漬けで意識も記憶の一部も吹っ飛んでいた」

 思わず側にいたユミルを見てしまったが彼はなんの違和感もなく、やはりマイペースに拳銃を眺め、というか、あろうことか分解して楽しんでいるのだから驚愕でしかなかった。

「そこで、私は君が過ごしてきた人生を聞いておきたい」
「…貴方は一体なんなんですか」
「ははっ、君にはわからんくらいの世界的にごっつ偉い、警察や軍隊なんかの上にも立つ神父。しかし神以下だと答えておこうか。
 お前はどうやらバカではない。話が進みそうだな」

 そうして神父は笑い、獣のような目で俺を見るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...