39 / 52
小鳥網
13
しおりを挟む
そのまま夏休みが終わり、始業式を迎えた。
俺はその短い間に、出来る限りの情報収集をしようと試みた。
しかし、それもなかなか難航した。相手が相手だ、分が悪い。
登校初日、予想はしていた。
「椎名、お前の妹ってさ」
予想はしていたんだ。
「援交とAVやってるって、マジ?」
クラスの男子数名にそう聞かれた。女子にも、「もうスゴい有名だよ」なんて言われて。
すべてシカトした。本来なら「バカじゃねぇの?」だの、「人違いだよ」で言い逃れ出来たのだが今回は、写真と動画が裏サイトやその他SNSに出回ってしまったのだ。
「黙ってるってことはマジだよな」
「てかお前の妹中等部来てねぇよな?中等部の写真と一緒に上がってたけどマジ本人だよな」
「うっせぇな」
「あ?」
「うっせぇっつってんだろてめぇら。なんか証拠あんなら持ってこいよ喧嘩売ってんのか」
普段こんなにキレないもんだから、こーゆーやつらは案外ビビるらしく、「な、なんだよ」とか、「そんな怒んなよ…」とか言ってやがる。
うざってえ。ホントうざってえ。
その他ひそひそ話が本気でうざったすぎて、頭に来てイヤホンでずっと音楽を聴いていた。
気が狂いそうなほど大音量で聴いていたら、先生に呼ばれていることすら気付かなくて。ふと肩を叩かれ、「生徒指導室に来い」と一言通告。
仕方なく行き、ぼーっとしていた。
「…今朝の件だが」
「…なんですか」
「お前が今、学年中で話題になってる件だよ」
「あぁ、はいはい」
「あのネタは本当か?」
「知りませんね。クラスのやつらが朝からぎゃーぎゃー、聞きもしねぇのにいろいろご親切に言ってきてくれてね。
何?裏サイトやらSNSで俺が干されてんだろ」
「あぁそうだ」
「いいよ。慣れた。俺は気にしない」
「お前はな。だがまわりはどうする」
「それはお宅らがなんとかしてくれよ。こっちは被害者だ。根も葉もない」
「根も葉もないか。
今日付けでお前の妹は退学届けを自ら出した」
「…は?」
「知らなかったのか?」
知るわけがない。
「…あんたら教師は、ホント、使えないな。
遠回しに俺に辞めて欲しいってか。金返してくれるなら考えてやるよって理事長にでも言っとけ。
てめぇら教師の教育不足で苛めが起きて、苛められた生徒を辞めさせるっていうのは笑える話だ。これが有名私立か。上等だよ。裁判でも起こしてやろうか?」
「まぁ落ち着けよ」
「話にならない。てめぇと話すだけ無駄だよ」
散々、不登校の生徒を放置したくせに。
澄の死をなかったことにしたくせに。
挙げ句辞めてくれって。
なんなんだよクソったれ。
勢い余って生徒指導室から出たら、悔しさが込み上げた。
俺だけは、せめて前を向いていようと思ったけど。
腹が立つから取り敢えず生徒指導室のドアを蹴っ飛ばしたら。
「ざけんじゃねぇてめぇら!」
聞き覚えのある声が、隣の職員室から聞こえてきて。
「何が悪いんだよ。おい、誰かしら聞けやコラ!」
「落ち着け浦賀!分かったから!」
「わかってない、てめぇら大人はなんもわかってない、なんで、なんでそうなるんだよ、離せ!」
斎藤先生に羽交い締めにされて職員室から歩が出てくるのが見えて。
これはあれだな。
乗り込んじゃったな、歩。
「歩?」
「あっ」
声を掛けると、歩は斎藤先生の手を離れ、駆け寄ってきた。斎藤先生はどうやら敢えて手を離したようで、首を傾げて俺を見たので、軽く会釈した。
「何してんの」
「お前こそ、なんだあの有り様は」
「お前さぁ…。まさかと思うけど、それで、乗り込んだんじゃねぇだろうな」
「えっ、うん」
「ばっ…」
的中したようだ。思わず笑ってしまった。
「お前なんなの」
「だって、お前、下手すりゃ退学って…」
「え、そうだったの?一言も言われてねぇけど。まぁ辞めてくんねぇかなみたいな態度だったから、ふざけんなよとは言ったけどさ」
「え?マジ?」
「うん」
「え?俺もしかして損したの?」
「バカだねお前は」
「なんだよ!まぁでもいいや、よかったよ!」
「…ありがとう」
「…理穂のことは?」
急に歩が声を潜めたので俺は小さく頷いた。
何かを考えて、歩も頷き返して斎藤先生の方へ戻って行った。
「先生、悪かったよ」
「このバカ!てめぇ何様だよ!」
「うん、今回はちょっと言い返せないわ」
「ったく。戻るぞバカタレ」
そう言って二人は教室の方へ歩き出した。
歩、お前はいいな。
やっぱ、羨ましいよ。
いつでも我を通して突っ走って。それが出来る強さ、俺にはないなぁ。
いつもお前には良いライバル心で歩んできた。マイペースなお前に翻弄されることもよくあったけど、それはそれで楽しかったよ。
教室に戻ろう。
俺は負けない。負けちゃいけない。
そう、思ったのに。
俺はその短い間に、出来る限りの情報収集をしようと試みた。
しかし、それもなかなか難航した。相手が相手だ、分が悪い。
登校初日、予想はしていた。
「椎名、お前の妹ってさ」
予想はしていたんだ。
「援交とAVやってるって、マジ?」
クラスの男子数名にそう聞かれた。女子にも、「もうスゴい有名だよ」なんて言われて。
すべてシカトした。本来なら「バカじゃねぇの?」だの、「人違いだよ」で言い逃れ出来たのだが今回は、写真と動画が裏サイトやその他SNSに出回ってしまったのだ。
「黙ってるってことはマジだよな」
「てかお前の妹中等部来てねぇよな?中等部の写真と一緒に上がってたけどマジ本人だよな」
「うっせぇな」
「あ?」
「うっせぇっつってんだろてめぇら。なんか証拠あんなら持ってこいよ喧嘩売ってんのか」
普段こんなにキレないもんだから、こーゆーやつらは案外ビビるらしく、「な、なんだよ」とか、「そんな怒んなよ…」とか言ってやがる。
うざってえ。ホントうざってえ。
その他ひそひそ話が本気でうざったすぎて、頭に来てイヤホンでずっと音楽を聴いていた。
気が狂いそうなほど大音量で聴いていたら、先生に呼ばれていることすら気付かなくて。ふと肩を叩かれ、「生徒指導室に来い」と一言通告。
仕方なく行き、ぼーっとしていた。
「…今朝の件だが」
「…なんですか」
「お前が今、学年中で話題になってる件だよ」
「あぁ、はいはい」
「あのネタは本当か?」
「知りませんね。クラスのやつらが朝からぎゃーぎゃー、聞きもしねぇのにいろいろご親切に言ってきてくれてね。
何?裏サイトやらSNSで俺が干されてんだろ」
「あぁそうだ」
「いいよ。慣れた。俺は気にしない」
「お前はな。だがまわりはどうする」
「それはお宅らがなんとかしてくれよ。こっちは被害者だ。根も葉もない」
「根も葉もないか。
今日付けでお前の妹は退学届けを自ら出した」
「…は?」
「知らなかったのか?」
知るわけがない。
「…あんたら教師は、ホント、使えないな。
遠回しに俺に辞めて欲しいってか。金返してくれるなら考えてやるよって理事長にでも言っとけ。
てめぇら教師の教育不足で苛めが起きて、苛められた生徒を辞めさせるっていうのは笑える話だ。これが有名私立か。上等だよ。裁判でも起こしてやろうか?」
「まぁ落ち着けよ」
「話にならない。てめぇと話すだけ無駄だよ」
散々、不登校の生徒を放置したくせに。
澄の死をなかったことにしたくせに。
挙げ句辞めてくれって。
なんなんだよクソったれ。
勢い余って生徒指導室から出たら、悔しさが込み上げた。
俺だけは、せめて前を向いていようと思ったけど。
腹が立つから取り敢えず生徒指導室のドアを蹴っ飛ばしたら。
「ざけんじゃねぇてめぇら!」
聞き覚えのある声が、隣の職員室から聞こえてきて。
「何が悪いんだよ。おい、誰かしら聞けやコラ!」
「落ち着け浦賀!分かったから!」
「わかってない、てめぇら大人はなんもわかってない、なんで、なんでそうなるんだよ、離せ!」
斎藤先生に羽交い締めにされて職員室から歩が出てくるのが見えて。
これはあれだな。
乗り込んじゃったな、歩。
「歩?」
「あっ」
声を掛けると、歩は斎藤先生の手を離れ、駆け寄ってきた。斎藤先生はどうやら敢えて手を離したようで、首を傾げて俺を見たので、軽く会釈した。
「何してんの」
「お前こそ、なんだあの有り様は」
「お前さぁ…。まさかと思うけど、それで、乗り込んだんじゃねぇだろうな」
「えっ、うん」
「ばっ…」
的中したようだ。思わず笑ってしまった。
「お前なんなの」
「だって、お前、下手すりゃ退学って…」
「え、そうだったの?一言も言われてねぇけど。まぁ辞めてくんねぇかなみたいな態度だったから、ふざけんなよとは言ったけどさ」
「え?マジ?」
「うん」
「え?俺もしかして損したの?」
「バカだねお前は」
「なんだよ!まぁでもいいや、よかったよ!」
「…ありがとう」
「…理穂のことは?」
急に歩が声を潜めたので俺は小さく頷いた。
何かを考えて、歩も頷き返して斎藤先生の方へ戻って行った。
「先生、悪かったよ」
「このバカ!てめぇ何様だよ!」
「うん、今回はちょっと言い返せないわ」
「ったく。戻るぞバカタレ」
そう言って二人は教室の方へ歩き出した。
歩、お前はいいな。
やっぱ、羨ましいよ。
いつでも我を通して突っ走って。それが出来る強さ、俺にはないなぁ。
いつもお前には良いライバル心で歩んできた。マイペースなお前に翻弄されることもよくあったけど、それはそれで楽しかったよ。
教室に戻ろう。
俺は負けない。負けちゃいけない。
そう、思ったのに。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる