白い鴉の啼く夜に

二色燕𠀋

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寒鴉

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 すべての真相が崩れ去るように、いや、本当は少し地鳴りのようだったのかもしれないと「はは…、バレちゃった」と私から滑り落ちる笑いに、みな顔が青いように見えた。

「…みんなが見ていた私はもう、人形でしかなくなってしまったね」

 音を立て、

「私と孝雄はりゅうちゃん、気付いてたよね、親戚だったんだけど」

 地鳴りがして、

「私は……」

 崩れていく。

「歩くんが好きだったから、だからこうなったの、」

 空気は静かに流れていく。
 喉はそれでも反して詰まっていく。ねぇ、だからこうなっただなんて本当は思ってなかったんだ、みんな。

「…深景、」

 静かな歩くんの声がする。
 ねぇそんな、目で見ないでよ、触らないでよ。

「いまは君を待ってみるしかないよ、深景」
「そんな、」

 『お人形さん、よりはちゃんと、何て言うか…人間っぽいし。例えばさ、桜も綺麗だし鴉からすはうるさいし、セミは怖いし』

「そんな…、」

 あの子供の頃の眼差しで見る歩くんがそこにいまでも居続けるなら。

『そーゆーとこ、やっぱり綺麗だよね』

「そんな優しい顔しないでよ…!」

 壊れていく。
 歯を食い縛って壊れた人形のオルゴールのように。

 歪な孝雄との関係や私の家族はなくなっていたこと、全てが流れ始めていて。

 本当に殺すつもりなんてなくて、ただあの人は思った以上に偏愛を私にぶつけていただけだと、私は気付いていてもいまのまま。

「お願いだから透くんを連れ戻してって、頼んだ、理穂は、だから、仲直りをするべきだし、でも……、行ったらもう遅かったのよ、」

 こんな話を信じる方がどうかしてるの。

「けれど理穂だってわかってたでしょう!?」

 おかしいなんてことは。

「でも援交は私じゃなくて、孝雄が言い出したことで、金取ろう?理穂はバカだから脅せばやってくれるよって、でも、でも…だからもう怖かったのよあいつが!」

 気付いていたって私は何も止められなかった。

「でも…」

 わかっている。

「そんなものももう何も意味なんてなくなっちゃったんだ、言い訳で嘘でただ…、勝手なことにもなれない話なの」
「…どうして誰にも相談しなかったんだよ深景」

 りゅうちゃんの泣きそうな声がする。りゅうちゃん、だから言ってるでしょう。

「出来るわけないじゃない、チンピラに犯されてストーカーされて、私は何て言えばいいの、貴方たちになんて言えばいいの、貴方たちはそれで何をするの。
 いや、なにもしてくれなくていい。私はこんなにも醜い。あいつはあの日だって私のそばにずっといた、そんなやつに透くんを追ってと頼んだ私はそれでもどこかで何かが怖かったのに。もうこれも依存のようなものかもしれない。私はもう、もう、」
「深景、」

 ふいに歩くんがふわっと。
 
「もういいだろう、深景」

 これは拘束なんかじゃない。
 春のような暖かさが包んで。
 タバコの臭いがする。

 私に浴びせられる呼び名は、何故か優しかった。

「あったけぇな」
「歩くん…」
「知ってたよ、全部」
「え?」
「うん」

 髪の毛に、指が滑る。
 私の背中を掴む手が本当は震えるほどに握られているのに。

「だからここまでやってきた。俺でよかったんだよ、犯人なんて」
「歩くん…」
「そう思ってた。
でも、それじゃダメだったね」

 ゆっくり、拳がほぐれて。
 歩くんが離れる。色素の薄い茶色い目が、綺麗だった。

「みんながひとつずつ嘘を吐いたり隠し事をしなきゃならなくなった。何かを守るために、自分を守るために」

 歩くんは胸ポケットからタバコを取り出してくわえた。孝雄と違って吹かしてない。
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