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Hot Pink Fade
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「えっ…いや……まだ不幸中の幸いだったね…。他はどうなん?」
「頭は血が出て脳しんとうって感じだけど…確かに、佐藤さんも一応?心臓とか圧迫されたんなら」
「…苦しがってたらしいけど」
「今は?」
「…寝てるけど」
「学の方が頭は小さいからこう、ガツッといったんだろうけどお宅、医者に聞いていいっすか?」
「……ぷ、プライバシーの侵害っ!」
「じゃ、根拠なしなんで賠償はいいっすね?」
「は!?」
アカネさんがパッとケータイを出し佐藤母に「ほらっ!」と見せつけると、由亜ちゃんの「何してんの!」が聞こえてくる。…あぁ、あれって撮ってくれていたのか…。
「もっかい見ます!?まぁ気付いてすぐ、だったらしいのであまり撮れてませんがほら、この感じ、明らかお宅の子が…こんなに…殴ってんじゃん、」
「あ、それナトリンと一緒に見た…由亜ちゃん肝が据わって」
「何!?あんたらグルなのさっきから!」
「あ、そういう感じですか…」
「DQNかよっ。
これは!学と幸村くんと一緒にクラブ活動やってる子が撮ってくれたの!階段からうるさかったから回したんだって流石だよね今の子!この子女の子だかんね!?怖かったろうに!」
「な、何よ……!こんなもの作ったのかも」
「それこそ小学6年生には無理じゃないかなー…」
「わかんないじゃん!」
「ダメだこの人、もーなんか、いーや。
旦那に再度電話する、弁護士なんてクソほど知り合いいるから。曽根原さんは?集団ってか二人でいきます?」
「それはちょっと考える。
確かに高いもん学校に持ってったのは悪いっちゃ悪いから、そこはね…。
一応、佐藤くんのお見舞いは」
「は?嫌に決まって」
「じゃあまずお大事にとしか言えませんよね。
…幸村、怖かったし押さえるの大変だったよなこれ…。学、そうだったんだね…。
あのね佐藤さん。学には吃音がある、つまり…アカネちゃん、言っていい?」
「どうぞ」
「学は特別学級の子なんですよ。あまり接点はないはずですよね?言いたいことわかります?
人をからかったり、傷付けたのも事実みたいですよ。息子くんに、しゃべぇことしてんじゃねぇよってのも伝えといてください。
ウチに関しては、抗議があったら学校通して。
あんたもそんなことで騒いでないで、息子さんも胸ぶっけてるから、見ててやってくださいよ。
アカネちゃん、学は…今日は無理か、ウチも優先順位はユキだけど…かなり心配だから連絡くれると嬉しい」
「わかりました。
じゃ、佐藤さんお大事に。
ソネさん、ちょっと」
何かを吐き捨てた佐藤母を置き、ほぼ見えなくなった場所で「本当にすみません、一度これで」と、アカネさんが封筒を出そうとしたそれを、父さんは「大丈夫」と手でやる。
「でも幸村くんは守ってくれたって…」
「いや、オレ、守ってあげられなかった…学くんはギター、守ってくれてたのに…あいつ、謝りも」
「ギターはまた買えばいいよ、ユキ。
アカネちゃん、それは学に使ってやって。
こちらの方が被害を被ってても…二対一になってるから、相手としては溜飲が下がらないと思う、DQNだし」
「…すません、ちょっとキレそうで…」
「そりゃそうよ、アカネちゃんも学も悪くないと思うよ、俺はね。
お気持ちでよければ…。学、ストラト使えるとか凄いね、でも手は小さめ…てか、指切れたって」
「あ、ああいう言い方しといただけっす。切れたっつってもバッサリザックリでなく、普通にかすり傷というか、治るやつ」
「あ、あああ~っ。よかった…」
オレもそれには安心…。
「ああ見えて弱くないから…旦那にもいい加減切り上げて帰ってこいとは言ったけど…ウチは休学にはなる…1週間は、最低でも。一応」
「そかそか、どこかでお見舞いに行かせて欲しいな。
長々ごめんね。学くんにまずはお大事にと、ありがとうって伝えておいて」
「…了解っす」
また頭を下げたので「大丈夫大丈夫」と言った父さんと共に病院を去る。
ふっと優しく笑った父さんは「よくやったよ」と言ってくれるけれど…。
「……全然、なんにも」
「相手が悪かったなぁ…」
車に乗り「何聞きたい?」と聞かれたので「トム・ウェイツ…」と答える。
「あ、いいね」と優しい旋律が流れ始め、つい、という感じで父さんはトムと被って冒頭を歌う。
「この前配信で弾いたな~これ」
「…うん、見てた」
「ははっ、」
「和訳があまり出てこなくて……」
「ん~~そうだなぁ、ギターも死んだ木なら、船も死んだ木なんだろうな…。弾き語りばっかやってた時期によく聴いたよ。一人で行くんだ!ってね。
…ユキは本当に大丈夫?」
「うん……本当に学くんが守ってくれて……由亜ちゃんが、それから先生に、色々言ってくれたみたいで…」
「あーうん、確かに由亜パパといたからさ、あっさり来られた。後で焼肉でも奢るか…」
「………」
じわじわくる。
波が、砂をさらうような。
「嫌な思いしただろ」
「……ギターも、そうだけど、学くんが…」
「お互い守ろうとしたんだ、また元気に会えるよ、こういう関係はな」
「………ぅん、あと、父さんの…」
「そうだな。
お前らはもう練習でわかってると思うから、学校には練習用の…つっても、部はまだ出来てないんだよな」
「これでもうその話も」
「んー…まぁ、そうかも」
「ホント、何が気に入らなかったんだろう……」
ほとんど関わりがないクラスメイトなのに。
「頭は血が出て脳しんとうって感じだけど…確かに、佐藤さんも一応?心臓とか圧迫されたんなら」
「…苦しがってたらしいけど」
「今は?」
「…寝てるけど」
「学の方が頭は小さいからこう、ガツッといったんだろうけどお宅、医者に聞いていいっすか?」
「……ぷ、プライバシーの侵害っ!」
「じゃ、根拠なしなんで賠償はいいっすね?」
「は!?」
アカネさんがパッとケータイを出し佐藤母に「ほらっ!」と見せつけると、由亜ちゃんの「何してんの!」が聞こえてくる。…あぁ、あれって撮ってくれていたのか…。
「もっかい見ます!?まぁ気付いてすぐ、だったらしいのであまり撮れてませんがほら、この感じ、明らかお宅の子が…こんなに…殴ってんじゃん、」
「あ、それナトリンと一緒に見た…由亜ちゃん肝が据わって」
「何!?あんたらグルなのさっきから!」
「あ、そういう感じですか…」
「DQNかよっ。
これは!学と幸村くんと一緒にクラブ活動やってる子が撮ってくれたの!階段からうるさかったから回したんだって流石だよね今の子!この子女の子だかんね!?怖かったろうに!」
「な、何よ……!こんなもの作ったのかも」
「それこそ小学6年生には無理じゃないかなー…」
「わかんないじゃん!」
「ダメだこの人、もーなんか、いーや。
旦那に再度電話する、弁護士なんてクソほど知り合いいるから。曽根原さんは?集団ってか二人でいきます?」
「それはちょっと考える。
確かに高いもん学校に持ってったのは悪いっちゃ悪いから、そこはね…。
一応、佐藤くんのお見舞いは」
「は?嫌に決まって」
「じゃあまずお大事にとしか言えませんよね。
…幸村、怖かったし押さえるの大変だったよなこれ…。学、そうだったんだね…。
あのね佐藤さん。学には吃音がある、つまり…アカネちゃん、言っていい?」
「どうぞ」
「学は特別学級の子なんですよ。あまり接点はないはずですよね?言いたいことわかります?
人をからかったり、傷付けたのも事実みたいですよ。息子くんに、しゃべぇことしてんじゃねぇよってのも伝えといてください。
ウチに関しては、抗議があったら学校通して。
あんたもそんなことで騒いでないで、息子さんも胸ぶっけてるから、見ててやってくださいよ。
アカネちゃん、学は…今日は無理か、ウチも優先順位はユキだけど…かなり心配だから連絡くれると嬉しい」
「わかりました。
じゃ、佐藤さんお大事に。
ソネさん、ちょっと」
何かを吐き捨てた佐藤母を置き、ほぼ見えなくなった場所で「本当にすみません、一度これで」と、アカネさんが封筒を出そうとしたそれを、父さんは「大丈夫」と手でやる。
「でも幸村くんは守ってくれたって…」
「いや、オレ、守ってあげられなかった…学くんはギター、守ってくれてたのに…あいつ、謝りも」
「ギターはまた買えばいいよ、ユキ。
アカネちゃん、それは学に使ってやって。
こちらの方が被害を被ってても…二対一になってるから、相手としては溜飲が下がらないと思う、DQNだし」
「…すません、ちょっとキレそうで…」
「そりゃそうよ、アカネちゃんも学も悪くないと思うよ、俺はね。
お気持ちでよければ…。学、ストラト使えるとか凄いね、でも手は小さめ…てか、指切れたって」
「あ、ああいう言い方しといただけっす。切れたっつってもバッサリザックリでなく、普通にかすり傷というか、治るやつ」
「あ、あああ~っ。よかった…」
オレもそれには安心…。
「ああ見えて弱くないから…旦那にもいい加減切り上げて帰ってこいとは言ったけど…ウチは休学にはなる…1週間は、最低でも。一応」
「そかそか、どこかでお見舞いに行かせて欲しいな。
長々ごめんね。学くんにまずはお大事にと、ありがとうって伝えておいて」
「…了解っす」
また頭を下げたので「大丈夫大丈夫」と言った父さんと共に病院を去る。
ふっと優しく笑った父さんは「よくやったよ」と言ってくれるけれど…。
「……全然、なんにも」
「相手が悪かったなぁ…」
車に乗り「何聞きたい?」と聞かれたので「トム・ウェイツ…」と答える。
「あ、いいね」と優しい旋律が流れ始め、つい、という感じで父さんはトムと被って冒頭を歌う。
「この前配信で弾いたな~これ」
「…うん、見てた」
「ははっ、」
「和訳があまり出てこなくて……」
「ん~~そうだなぁ、ギターも死んだ木なら、船も死んだ木なんだろうな…。弾き語りばっかやってた時期によく聴いたよ。一人で行くんだ!ってね。
…ユキは本当に大丈夫?」
「うん……本当に学くんが守ってくれて……由亜ちゃんが、それから先生に、色々言ってくれたみたいで…」
「あーうん、確かに由亜パパといたからさ、あっさり来られた。後で焼肉でも奢るか…」
「………」
じわじわくる。
波が、砂をさらうような。
「嫌な思いしただろ」
「……ギターも、そうだけど、学くんが…」
「お互い守ろうとしたんだ、また元気に会えるよ、こういう関係はな」
「………ぅん、あと、父さんの…」
「そうだな。
お前らはもう練習でわかってると思うから、学校には練習用の…つっても、部はまだ出来てないんだよな」
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ほとんど関わりがないクラスメイトなのに。
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