Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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エレクトリック・レインボー

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 ばしゃっ。

 顔に何か冷たい液体をぶっ掛けられて目が覚めたらしい、ぼやけてる。
 照明ぽいのが直に眼球に直撃している気がして顔をしかめた。

 なんやこれは。は?
 てか視界が全体的にぼやけてる。頭痛ぇ?
 はっと顔面を触る。俺の本体、眼鏡が、ない。

「あいじょーぶぅ?」

 視界が急に暗くなったのがわかる。
 この声わかるぞ。この舌っ足らずなバカみてぇな喋り方。

「げんちゃん、起きたー」
「マキ、眼鏡」
「あー、はあい」

 顔辺りに手が伸びてきて驚愕した。目潰し?違うらしい。

 誰かが眼鏡を掛けてくれたようだ。物凄く荒っぽくてフレームの先が耳とかに刺さりそうになったけどなんとか大丈夫。
 指が離れていくのが鮮やかに見え、そっから間近に顔が見えた。一瞬近すぎて思わず「ひぃ、」と、変な声すら出ちゃう。

 相手の顔が引っ込めば、やはりライトが目に直撃した。

 というか気付いたがなんだか身体の、特に下半身辺りが重くて身動きが取れないんだがなんだろう、瓦礫か何か乗ってるの?全然理解出来ない。俺は一体どうしちゃったの?

 だが場所は知っている気がする。多分だがシモキタのライブハウス。状況把握しようと起き上がろうとして驚愕した。

 あまちゃんが俺の腹付近に乗っていた。体制的に言うなら騎乗位きじょういっぽい。いや服着てるけど。
 そしてあまちゃんは俺の右手真横、ちょっと指を動かしたら触れる位置に置いてあるジーマを飲み、口角から喉元へ溢れた雫を左腕のシャツで拭っていた。

 怖い。一言でこいつ怖い。
 俺どうしたの。食べられちゃうの?

 何も喋らずただただ空虚にどこかを見つめているその目が、透き通っていて綺麗。前髪がキラキラしている。

 マッシュと言うかこいつ、髪の毛伸びちゃった系なのねと思った。案外ストレートのヤツが陥りやすいやつだよねこのパターン。直毛なのにやってみました、即戻りました癖っ毛でみたいな。
 こんなとこからもちょっと、こいつのテキトーさが伺える。

「ねーあんたさっきの人ぉ?」
「あっ、」

 膝をついて取り敢えず体重を掛けて上半身を出来るだけ起こした。
 あたりを見渡すとどうやら客席。「あーホントだ、はい水買ってきたよ!」と、ドラムのなんだっけ、金髪の兄ちゃんに渡された。

「あれぇ、げんちゃんはぁ?」
「げんちゃんは山Dにひたすら謝ってるよ。お前がサキソのたかちんのエレキぶっ壊したから」
「あーね。てか山D…マジウケる…ひっひっひっ…」

 人の上であまちゃんは腹抱えて笑い始めた。
 なにこれ、俺どうしたの。

「てかまず退こうよマキ。この人死んじゃう。
すんませんね、あんた大丈夫ですか?」
「あっ、ええはぁ…いや、何がなんだか…」
「えぇ、覚えてないのぉ?」

 ラリった舌足らずさで言うあまちゃん、今度は前屈みに俺のヘソ上辺りに手ぇついて身を乗り出した。おかげでキスしそう。なんなのこれ一体。

 金髪、「おいコラマキ、め!」とか言ってあまちゃんのシャツの襟首を掴んで離す。おかげで腹に打撃。腹が暖かい。しかし痛い。

 よく見りゃあまちゃんジャケット着てない。多分俺に被せられてるこれがそうだろう。

「あんた突然客席でぶっ倒れたんすよ。後ろにスターンって」
「へ?」

 マジか。
 なにそれ。

 金髪兄ちゃん、その場でパンツのポケットからくしゃくしゃになったなんかのソフトパックを出して一本くわえ、ジッポで火をつける。
 あまちゃんを見ると、金髪を見上げていたので、金髪は仕方ないと言いたそうにしゃがんでくわえさせ、火をつけてやっていた。シガーキスで。

 あれちゃんとタバコかなぁ。

 そう思って見ていると、「あんたも吸う?メビウス」と言われたが咄嗟に、「いえ、あるんで、」と、思わず自分のジャケットからセッターマイルドを取り出して見せ、ついでに引きつった笑顔を見せてしまった。

「で、こいつ突然客席降りてっててんやわんや。スタッフビックリ。止めに入ったらあんた白目剥いて倒れてるから最初こいつがなんかぶん殴ったのかと思ったら「眼鏡!」とか言ってスタッフに眼鏡渡してさ」

 あまちゃんはなんだか怠そうにネクタイを緩め、「はーあぁ」と息を吐いた。

「頭打ったかと思ったけど大丈夫そうだね」
「え、はぁ…」
「だから言ったじゃん、その人多分急性アル中だよって」
「うん」
「あぁ、はぁ…」

 なるほど、そーゆーことか。

「え、その…なんか…。
 すみませんでした。その…ありがとうこざいました」

 あまちゃん、また空虚な目で俺をぱちくりと見て、ついでにタバコの煙を吹き掛けてきた。

 なんて野郎だ、こいつ。

「なんかすげぇビックリしてるあまちゃん」
「へ?」
「すみませんね、この人ちょっとビックリすると硬直しちゃうんですよ。別にあんたに嫌がらせしてる訳じゃないと思うんで」
「えぇえ」
「ほらマキ、退きなよいい加減、その人足痺れちゃうでしょ」
「あんか…」

 ポツリと言って俯き、再び俺を見たあまちゃんの視線は、酷く、綺麗に研ぎ澄まされていた。

「あんた、変な人」
「えっ、」
「けど、びょーいん行ったほーがいいよ。
あ、あの、ほら、頭さっき打ってたらやっぱ怖いから。こんなとこ来て死んでも仕方ねぇし」
「え、え?」
「あのぉ!」

 すると、勢いよく扉が開いた。

 怒り顔のスタッフと困り顔のベースが現れ、スタッフがずんずんとこちらに歩いてくる。
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