Eccentric Late Show

二色燕𠀋

文字の大きさ
24 / 107
I'm listen

3

しおりを挟む
 状況的に、緊急外来に通された。

 無機質な病室と言う空間で俺たちは、なんとなく息が詰まりそうな、しかし帰りを待つ心境で病室にいた。

 結果として真樹は、処方されている薬と非常に相性が悪い催婬薬を接種し一時的な薬物過剰摂取状態に陥り、気絶してしまった。
 相乗効果もあって少し時間は掛かっているが本来なら催婬剤はそれほど長い時間効果を発揮するものではない、しかし、そもそもソラナックスには過度な興奮を押さえる効果があったとのこと。

 解毒剤を投与され、あまちゃんは寝ていた。

「そもそもそれって」
「踏み込みたくないがまぁ…これで社長の執着となぜ一緒に住んでいたか、わかっちまったなぁ」
「あまちゃん…」

 げんちゃんが切なそうにあまちゃんを見つめ、ふと額から頬に手を触れた。思うところがあるようだ。

「バカ」

確かに。

「『愛されるというのはどんなに淀んでいるのか、俺は知らないんだ』」

 ふみとが、まるでなぞるようにそう言った。

「いつか真樹がそう俺に言った。いつだったかは忘れた。俺は綺麗な、暴力的な美しい愛情しか見ていないと」
「…淀んでたな、昔から」
「ねぇ古里ふるさとさん」
「はい?」

 薬品が流れる点滴が呼吸のように見える。

「親に何か怒られたとき、『黙ってなさい』って言われることあるじゃないですか。完璧になんて言うか押さえ込まれる瞬間の言葉とかそーゆーの。真樹はね、それ、まともに受け取るんです。だから彼の物は、洗練されてるけど、大人になれなかったんです」

なんか、なにそれ。

「硬直してるんです。暴力は、硬直が、一番身を守れるんですよ」
「…なんで俺に言うの」
「貴方、勘ですけどわりと番張ってた系でしょ。俺実はそのタイプなんです。そのよしみで」

えぇぇぇ。
この、穏やか顎髭が!?
しかしなんとなくわかる気もする。

「いや別に。マジかふみとさん」
「中学のときのこいつは流石に規制かけるレベルだよ」
「あんたらが規制掛けるの!?」

どんだけだよ。
ありきたりだがあれか、もうマジでヘロインセックスいやっふーか。

「真樹のがエキセントリックだったよ。初めての登場シーンヤバいよ。空から女の子が!状態だった」
「それ俺の登場シーンにも繋がるな」
「なにそれ」
「いや俺体育館裏で授業サボってタバコ吸ってたわけですよ。したら当時三階だっけ?校舎」
「そうだな」
「こうぽーんって。ひゅーって」
「いやわかんない全然わかんない」
「で、俺まだ一年だったから見張りだったわけですよ。
 先輩がね、体育倉庫でアバズレとセックスしてたわけ。で、誰か来たら殴れよって」
「うわぁ」

こいつらわりと田舎の出だな。
 東京じゃ多分お目にかかれない話だろう。

「ダルいなぁと思ってタバコ吸ってたらひゅー。あれマットなかったら死んでたよね」
「なんであったの」
「たまに先輩外で」
「はい、はいすみません」

 確かにそれはエキセントリックだ。そしてそれを淡々と語るこいつ、一周してサイコパスだ。

「ビビって俺が下覗いたらぐったりしてたから俺は死んだと思ったね。駆け付けたらヤンキー達がめっちゃ取り囲んでて。
 でもあっさり起きやがって、「このハゲ!ぶっ殺す!」っつてるけど骨折ってて立てず救急車」
「あれのせいで俺あとで先輩に怒られたけどぶっ飛ばしちゃって一年にして番長」
「…凄いっすね。吹っ飛んでるわ」

 いやあまりにすっ飛び過ぎてツッコミどころを色々忘れてるわ。なにそれ。

「取り敢えずなんで落ちたのこの人」
「あぁ、簡単簡単。ハゲって言ったから」
「いやそれですっ飛ばしちゃったの?」
「いや違うんだなこれがまた。
 クラスの台湾イビリにこいつがムカついたんだろうね。でも俺もイライラしてた。そこでちょっと悪役を買ってくれたと言うか…「台湾っつーかハゲ」ってよくわかんないこと言って、「イビるならこーゆーこったろ?お前らがイビるからこいつハゲたわ!」言って髪の毛がしぃ!って鷲掴みにされた瞬間投げ飛ばしちゃったんよね。したら思いのほか軽くてぽーんって」
「なにそれぇえ」

良い奴なんだか悪い奴なんだかわかんねぇ。

「けど次の日めっちゃクラスのやつが心配してて。けど俺無視して。俺病院通って。
退院して一緒に仲良く登校してクラス全員こいつ土下座させよったわ」

 やっぱ田舎出身だ。楽しそうに語っている言葉に訛りが少しずつ出てる。

「で、気付いたら俺ら三人はつるんでたな。なんだかんだで真樹落ちたとき世話したの文杜だったし」
「なるほどねぇ」

 青春の1ページからしてエキセントリックだった。だって普通の中学生は窓から降ってこないし降らせない。

 たまたま窓開いてたのかな。まぁなんでもいい。多分そんなの本人たちもわかってないだろう。
 なんならそこにふみとがいたことも奇跡だし全てが奇跡だ。でも確かに人って、運命の出会いって、そんな瞬間が確かにある。

「まさかあの時はこうなるなんて思ってなかったよねー」
「まぁね」
「あぁ、3人で台湾の実家行ったときの真樹の驚きよう凄かったね」
「あぁ、すばるくんの眼鏡すっ飛ばした時みたいなリアクションだったね」

あれか。

「頑張って台湾語覚えようとブルース・リー借りまくってね」
「けど案外日本語で、怒ってたな。あと後にブルース・リーは香港ほんこん出身って知ったときのあの真樹のこの世の終わり感な」
「なにそれバカっぽ」

 笑い合うふみとと国木田。バカだなぁ、あまちゃん。まぁ台湾でもヒーローだろうけどさぁ。

しかし、まぁ。

「…実家?」
「そ。父親が台湾なんだけどじぃちゃん倒れて。両親どっちも台湾に住むことになって。俺は日本のばあちゃん家に住むことになって。それがあってまぁこいつらに会うわけよ。それまで日本にはいたけど別の学校にいたから」
「へぇ…」
「しかもさぁ、俺馴染めなくて最初喋んなかったら、日本語わかんないと勘違いしたらしいの。めっさ中学英語で話しかけてくるけど俺もまぁわりと授業出てねぇからわかんねぇわけ英語」
「だからあまちゃん英語下手なんだ」

 一同に笑いが起きた。「それ多分本人自覚あるけど言ったら怒るからダメですよ」とふみとに言われた。果たしてそうだろうか。

「…昔から振り回す係りはこいつで…無駄に背負うのもこいつだな」

 そして、こういう話には大体こういう台詞って付いて来るもんだ。

「…でも聞いてるとさ、昔からあんたらが、なんか一緒にいてやってんだね」

これもまた壁かもね。げんちゃん。でもやっぱ良いヤツだね。

「でも運命って信じるよ。俺クリスチャンらしいし。あんただって、あのライブだか知らないけど、たまたまきっと見つけたバンドが俺たちで、たまたま今いる。でしょ?」
「前から思ってたけど、君良いヤツだよね」
「だろ?
 俺ら三人にとってそうだなぁげんちゃんは、多分真樹の昴くんポジション」

なんだそれ。
よくわかんないけど。

 げんちゃんは笑ってる。
そうなのか。

「…どーゆー?」
「うーん。
 気絶寸前に電話で話せるポジション」

わかんねぇ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...