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状況的に、緊急外来に通された。
無機質な病室と言う空間で俺たちは、なんとなく息が詰まりそうな、しかし帰りを待つ心境で病室にいた。
結果として真樹は、処方されている薬と非常に相性が悪い催婬薬を接種し一時的な薬物過剰摂取状態に陥り、気絶してしまった。
相乗効果もあって少し時間は掛かっているが本来なら催婬剤はそれほど長い時間効果を発揮するものではない、しかし、そもそもソラナックスには過度な興奮を押さえる効果があったとのこと。
解毒剤を投与され、あまちゃんは寝ていた。
「そもそもそれって」
「踏み込みたくないがまぁ…これで社長の執着となぜ一緒に住んでいたか、わかっちまったなぁ」
「あまちゃん…」
げんちゃんが切なそうにあまちゃんを見つめ、ふと額から頬に手を触れた。思うところがあるようだ。
「バカ」
確かに。
「『愛されるというのはどんなに淀んでいるのか、俺は知らないんだ』」
ふみとが、まるでなぞるようにそう言った。
「いつか真樹がそう俺に言った。いつだったかは忘れた。俺は綺麗な、暴力的な美しい愛情しか見ていないと」
「…淀んでたな、昔から」
「ねぇ古里さん」
「はい?」
薬品が流れる点滴が呼吸のように見える。
「親に何か怒られたとき、『黙ってなさい』って言われることあるじゃないですか。完璧になんて言うか押さえ込まれる瞬間の言葉とかそーゆーの。真樹はね、それ、まともに受け取るんです。だから彼の物は、洗練されてるけど、大人になれなかったんです」
なんか、なにそれ。
「硬直してるんです。暴力は、硬直が、一番身を守れるんですよ」
「…なんで俺に言うの」
「貴方、勘ですけどわりと番張ってた系でしょ。俺実はそのタイプなんです。そのよしみで」
えぇぇぇ。
この、穏やか顎髭が!?
しかしなんとなくわかる気もする。
「いや別に。マジかふみとさん」
「中学のときのこいつは流石に規制かけるレベルだよ」
「あんたらが規制掛けるの!?」
どんだけだよ。
ありきたりだがあれか、もうマジでヘロインセックスいやっふーか。
「真樹のがエキセントリックだったよ。初めての登場シーンヤバいよ。空から女の子が!状態だった」
「それ俺の登場シーンにも繋がるな」
「なにそれ」
「いや俺体育館裏で授業サボってタバコ吸ってたわけですよ。したら当時三階だっけ?校舎」
「そうだな」
「こうぽーんって。ひゅーって」
「いやわかんない全然わかんない」
「で、俺まだ一年だったから見張りだったわけですよ。
先輩がね、体育倉庫でアバズレとセックスしてたわけ。で、誰か来たら殴れよって」
「うわぁ」
こいつらわりと田舎の出だな。
東京じゃ多分お目にかかれない話だろう。
「ダルいなぁと思ってタバコ吸ってたらひゅー。あれマットなかったら死んでたよね」
「なんであったの」
「たまに先輩外で」
「はい、はいすみません」
確かにそれはエキセントリックだ。そしてそれを淡々と語るこいつ、一周してサイコパスだ。
「ビビって俺が下覗いたらぐったりしてたから俺は死んだと思ったね。駆け付けたらヤンキー達がめっちゃ取り囲んでて。
でもあっさり起きやがって、「このハゲ!ぶっ殺す!」っつてるけど骨折ってて立てず救急車」
「あれのせいで俺あとで先輩に怒られたけどぶっ飛ばしちゃって一年にして番長」
「…凄いっすね。吹っ飛んでるわ」
いやあまりにすっ飛び過ぎてツッコミどころを色々忘れてるわ。なにそれ。
「取り敢えずなんで落ちたのこの人」
「あぁ、簡単簡単。ハゲって言ったから」
「いやそれですっ飛ばしちゃったの?」
「いや違うんだなこれがまた。
クラスの台湾イビリにこいつがムカついたんだろうね。でも俺もイライラしてた。そこでちょっと悪役を買ってくれたと言うか…「台湾っつーかハゲ」ってよくわかんないこと言って、「イビるならこーゆーこったろ?お前らがイビるからこいつハゲたわ!」言って髪の毛がしぃ!って鷲掴みにされた瞬間投げ飛ばしちゃったんよね。したら思いのほか軽くてぽーんって」
「なにそれぇえ」
良い奴なんだか悪い奴なんだかわかんねぇ。
「けど次の日めっちゃクラスのやつが心配してて。けど俺無視して。俺病院通って。
退院して一緒に仲良く登校してクラス全員こいつ土下座させよったわ」
やっぱ田舎出身だ。楽しそうに語っている言葉に訛りが少しずつ出てる。
「で、気付いたら俺ら三人はつるんでたな。なんだかんだで真樹落ちたとき世話したの文杜だったし」
「なるほどねぇ」
青春の1ページからしてエキセントリックだった。だって普通の中学生は窓から降ってこないし降らせない。
たまたま窓開いてたのかな。まぁなんでもいい。多分そんなの本人たちもわかってないだろう。
なんならそこにふみとがいたことも奇跡だし全てが奇跡だ。でも確かに人って、運命の出会いって、そんな瞬間が確かにある。
「まさかあの時はこうなるなんて思ってなかったよねー」
「まぁね」
「あぁ、3人で台湾の実家行ったときの真樹の驚きよう凄かったね」
「あぁ、昴くんの眼鏡すっ飛ばした時みたいなリアクションだったね」
あれか。
「頑張って台湾語覚えようとブルース・リー借りまくってね」
「けど案外日本語で、怒ってたな。あと後にブルース・リーは香港出身って知ったときのあの真樹のこの世の終わり感な」
「なにそれバカっぽ」
笑い合うふみとと国木田。バカだなぁ、あまちゃん。まぁ台湾でもヒーローだろうけどさぁ。
しかし、まぁ。
「…実家?」
「そ。父親が台湾なんだけどじぃちゃん倒れて。両親どっちも台湾に住むことになって。俺は日本のばあちゃん家に住むことになって。それがあってまぁこいつらに会うわけよ。それまで日本にはいたけど別の学校にいたから」
「へぇ…」
「しかもさぁ、俺馴染めなくて最初喋んなかったら、日本語わかんないと勘違いしたらしいの。めっさ中学英語で話しかけてくるけど俺もまぁわりと授業出てねぇからわかんねぇわけ英語」
「だからあまちゃん英語下手なんだ」
一同に笑いが起きた。「それ多分本人自覚あるけど言ったら怒るからダメですよ」とふみとに言われた。果たしてそうだろうか。
「…昔から振り回す係りはこいつで…無駄に背負うのもこいつだな」
そして、こういう話には大体こういう台詞って付いて来るもんだ。
「…でも聞いてるとさ、昔からあんたらが、なんか一緒にいてやってんだね」
これもまた壁かもね。げんちゃん。でもやっぱ良いヤツだね。
「でも運命って信じるよ。俺クリスチャンらしいし。あんただって、あのライブだか知らないけど、たまたまきっと見つけたバンドが俺たちで、たまたま今いる。でしょ?」
「前から思ってたけど、君良いヤツだよね」
「だろ?
俺ら三人にとってそうだなぁげんちゃんは、多分真樹の昴くんポジション」
なんだそれ。
よくわかんないけど。
げんちゃんは笑ってる。
そうなのか。
「…どーゆー?」
「うーん。
気絶寸前に電話で話せるポジション」
わかんねぇ。
無機質な病室と言う空間で俺たちは、なんとなく息が詰まりそうな、しかし帰りを待つ心境で病室にいた。
結果として真樹は、処方されている薬と非常に相性が悪い催婬薬を接種し一時的な薬物過剰摂取状態に陥り、気絶してしまった。
相乗効果もあって少し時間は掛かっているが本来なら催婬剤はそれほど長い時間効果を発揮するものではない、しかし、そもそもソラナックスには過度な興奮を押さえる効果があったとのこと。
解毒剤を投与され、あまちゃんは寝ていた。
「そもそもそれって」
「踏み込みたくないがまぁ…これで社長の執着となぜ一緒に住んでいたか、わかっちまったなぁ」
「あまちゃん…」
げんちゃんが切なそうにあまちゃんを見つめ、ふと額から頬に手を触れた。思うところがあるようだ。
「バカ」
確かに。
「『愛されるというのはどんなに淀んでいるのか、俺は知らないんだ』」
ふみとが、まるでなぞるようにそう言った。
「いつか真樹がそう俺に言った。いつだったかは忘れた。俺は綺麗な、暴力的な美しい愛情しか見ていないと」
「…淀んでたな、昔から」
「ねぇ古里さん」
「はい?」
薬品が流れる点滴が呼吸のように見える。
「親に何か怒られたとき、『黙ってなさい』って言われることあるじゃないですか。完璧になんて言うか押さえ込まれる瞬間の言葉とかそーゆーの。真樹はね、それ、まともに受け取るんです。だから彼の物は、洗練されてるけど、大人になれなかったんです」
なんか、なにそれ。
「硬直してるんです。暴力は、硬直が、一番身を守れるんですよ」
「…なんで俺に言うの」
「貴方、勘ですけどわりと番張ってた系でしょ。俺実はそのタイプなんです。そのよしみで」
えぇぇぇ。
この、穏やか顎髭が!?
しかしなんとなくわかる気もする。
「いや別に。マジかふみとさん」
「中学のときのこいつは流石に規制かけるレベルだよ」
「あんたらが規制掛けるの!?」
どんだけだよ。
ありきたりだがあれか、もうマジでヘロインセックスいやっふーか。
「真樹のがエキセントリックだったよ。初めての登場シーンヤバいよ。空から女の子が!状態だった」
「それ俺の登場シーンにも繋がるな」
「なにそれ」
「いや俺体育館裏で授業サボってタバコ吸ってたわけですよ。したら当時三階だっけ?校舎」
「そうだな」
「こうぽーんって。ひゅーって」
「いやわかんない全然わかんない」
「で、俺まだ一年だったから見張りだったわけですよ。
先輩がね、体育倉庫でアバズレとセックスしてたわけ。で、誰か来たら殴れよって」
「うわぁ」
こいつらわりと田舎の出だな。
東京じゃ多分お目にかかれない話だろう。
「ダルいなぁと思ってタバコ吸ってたらひゅー。あれマットなかったら死んでたよね」
「なんであったの」
「たまに先輩外で」
「はい、はいすみません」
確かにそれはエキセントリックだ。そしてそれを淡々と語るこいつ、一周してサイコパスだ。
「ビビって俺が下覗いたらぐったりしてたから俺は死んだと思ったね。駆け付けたらヤンキー達がめっちゃ取り囲んでて。
でもあっさり起きやがって、「このハゲ!ぶっ殺す!」っつてるけど骨折ってて立てず救急車」
「あれのせいで俺あとで先輩に怒られたけどぶっ飛ばしちゃって一年にして番長」
「…凄いっすね。吹っ飛んでるわ」
いやあまりにすっ飛び過ぎてツッコミどころを色々忘れてるわ。なにそれ。
「取り敢えずなんで落ちたのこの人」
「あぁ、簡単簡単。ハゲって言ったから」
「いやそれですっ飛ばしちゃったの?」
「いや違うんだなこれがまた。
クラスの台湾イビリにこいつがムカついたんだろうね。でも俺もイライラしてた。そこでちょっと悪役を買ってくれたと言うか…「台湾っつーかハゲ」ってよくわかんないこと言って、「イビるならこーゆーこったろ?お前らがイビるからこいつハゲたわ!」言って髪の毛がしぃ!って鷲掴みにされた瞬間投げ飛ばしちゃったんよね。したら思いのほか軽くてぽーんって」
「なにそれぇえ」
良い奴なんだか悪い奴なんだかわかんねぇ。
「けど次の日めっちゃクラスのやつが心配してて。けど俺無視して。俺病院通って。
退院して一緒に仲良く登校してクラス全員こいつ土下座させよったわ」
やっぱ田舎出身だ。楽しそうに語っている言葉に訛りが少しずつ出てる。
「で、気付いたら俺ら三人はつるんでたな。なんだかんだで真樹落ちたとき世話したの文杜だったし」
「なるほどねぇ」
青春の1ページからしてエキセントリックだった。だって普通の中学生は窓から降ってこないし降らせない。
たまたま窓開いてたのかな。まぁなんでもいい。多分そんなの本人たちもわかってないだろう。
なんならそこにふみとがいたことも奇跡だし全てが奇跡だ。でも確かに人って、運命の出会いって、そんな瞬間が確かにある。
「まさかあの時はこうなるなんて思ってなかったよねー」
「まぁね」
「あぁ、3人で台湾の実家行ったときの真樹の驚きよう凄かったね」
「あぁ、昴くんの眼鏡すっ飛ばした時みたいなリアクションだったね」
あれか。
「頑張って台湾語覚えようとブルース・リー借りまくってね」
「けど案外日本語で、怒ってたな。あと後にブルース・リーは香港出身って知ったときのあの真樹のこの世の終わり感な」
「なにそれバカっぽ」
笑い合うふみとと国木田。バカだなぁ、あまちゃん。まぁ台湾でもヒーローだろうけどさぁ。
しかし、まぁ。
「…実家?」
「そ。父親が台湾なんだけどじぃちゃん倒れて。両親どっちも台湾に住むことになって。俺は日本のばあちゃん家に住むことになって。それがあってまぁこいつらに会うわけよ。それまで日本にはいたけど別の学校にいたから」
「へぇ…」
「しかもさぁ、俺馴染めなくて最初喋んなかったら、日本語わかんないと勘違いしたらしいの。めっさ中学英語で話しかけてくるけど俺もまぁわりと授業出てねぇからわかんねぇわけ英語」
「だからあまちゃん英語下手なんだ」
一同に笑いが起きた。「それ多分本人自覚あるけど言ったら怒るからダメですよ」とふみとに言われた。果たしてそうだろうか。
「…昔から振り回す係りはこいつで…無駄に背負うのもこいつだな」
そして、こういう話には大体こういう台詞って付いて来るもんだ。
「…でも聞いてるとさ、昔からあんたらが、なんか一緒にいてやってんだね」
これもまた壁かもね。げんちゃん。でもやっぱ良いヤツだね。
「でも運命って信じるよ。俺クリスチャンらしいし。あんただって、あのライブだか知らないけど、たまたまきっと見つけたバンドが俺たちで、たまたま今いる。でしょ?」
「前から思ってたけど、君良いヤツだよね」
「だろ?
俺ら三人にとってそうだなぁげんちゃんは、多分真樹の昴くんポジション」
なんだそれ。
よくわかんないけど。
げんちゃんは笑ってる。
そうなのか。
「…どーゆー?」
「うーん。
気絶寸前に電話で話せるポジション」
わかんねぇ。
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