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「解散してないしって否定しないのね」
「うん。いやこっちは一言太田に、解散って言って欲しい。だってあいつだけだし、しがみついてるの。
タカさんもノリトさんも俺も疲れてるしやる気ないし。あいつなしならまぁやっても良いけど俺今、ここのギターだから、もう二人に会うのも違うアーティストとしてだね」
そうなのか。
「…ここはいいんだ」
「…俺あまちゃんにね、多分来る?って言われなかったら人間やめてた。そんくらい疲れてた。音楽も嫌いになってた。
だって最初断ったじゃん?
でもお宅らのライブ観て気が変わった。いままで俺は太田しか見てなかったんだって。
甦ったんだ、あまちゃんの、「好きなことやれば?勇気いるけどね」ってのが」
「あぁ、言ってたねぇ…」
え、また良い話系なの?泣くよ?
「げんちゃんはあまちゃん大好きだねぇ」
ふみとがそう言えば、場は了解のような沈黙。
そうか。
なるほどなぁ。
「あんたらには負ける」
「いや、俺はあまちゃんがギターミスっても声出てなくてもゲロ吐いてても怒んないね。ナトリもそうでしょ?」
「そうだな。いつもだからな」
「でもこれは好きとか信頼とか言う訳じゃない」
「俺も6年見てきてわかる気がするよ。ふみとさんもハゲさんも俺より、もう少し寛大だよ」
なんだか。
「ねぇ一個凄く空気読めないこと聞いて良い?」
泣いちゃいそうなんで、なんかこのままいくと。
「なに?」
「なんで国木田さんハゲなの」
「あ、それ俺も実は知りたい」
「え?げんちゃん今更?
ナトリ中学のとき、真樹に初めて会った時だよね。10円ハゲあったんだよ」
「ひでぇ!」
こいつこんな可愛い顔して、なんてひでぇあだ名なの!
「いや、でも…。
文化の違いだけど貶されて親近感湧いたのも事実」
「え?」
「俺名前の通り台湾ハーフなの元は。今は永住あるけど」
「いやわかんねぇし!」
「台湾読みなんだっけ」
「ユーナウ。女偏に那須市の那に酉年の酉で娜酉」
「へぇ…」
芸名だと思ってた。
ナチュラル過ぎてビビるわ。
「あれ、俺あまちゃんに聞いたのと違う。サナトリウムのナトリって聞いたよ」
「またこいつは。まぁでも…」
沈黙が流れた。
「なるほどね。真樹にとってナトリは、心の、サナトリウムなんだね」
なんだよそれ。
サナトリウムって何?でもなんか染々してる。きっとまた良い話系だ。
「いいのか悪いのか…俺にはわかんねぇ」
「そうだねぇ…。でも、忘れてはくれない存在なんだよ、ナトリ」
染々してる。
聞けねぇ。サナトリウムって何。
こっそりケータイで調べた。
要約するとサナトリウム(sanatorium)とは、自然豊かな長期療養施設らしい。
ふぅん。
なんかそれって。
すげえなぁ、感性。
この男があまちゃんのサナトリウムか。確かに、一見すればいい奴、親友とかそーゆー感じ。でも裏を返せば、こいつの性格を考えたらなんか、確かに複雑だろう。だって、それってなんか、お互い息が詰まりそう。病院と患者って。
でも、切っても切れないんだ。
あまちゃんの頭に手を置く国木田の手は相変わらず優しい。何を思っているのか。その、激しいような、時に語り掛けるようなドラムを叩くその手は、何を思って伝えているのか。
俺にはわからない。
国木田が手を伸ばし、あまちゃんの左手首に触れ、袖を捲った。横に一本だけ痛々しい、塞がってはいるがケロイドの傷があった。それを俺に見せてくる。相当深いだろう。これは死のうとしたヤツしかやらないやつだ。
それが一本なのがより、彼の気持ちを現していた。これはどう考えても死を望んだ。そういえば、社長の家の風呂場で半年前、血塗れで見つかったんだっけ。
「死ねないんだと」
「え?」
「俺言われたんだよ。半年前、意識戻ったとき病院で包帯に血を滲ませながらこいつにさ。「呼吸は生きていないと出来ねぇな」って」
「国木田さん…」
「ちょっとした躁鬱病はよくある。仕方がない。だがまぁ、これは違うな。バカだよなぁ、許せない、そんなんでやって楽しいわけないじゃん。そんなことまでしてどうして俺らを守ろうとしたんだかなぁ…」
「ナトリ」
ふみとの、少し低い声がした。
「悔しいのは一緒だ。潔く辞めてやろう。サナトリウム終了」
「文杜、」
「そう言う。真樹には。だって真樹は俺たちを守りたい、俺たちは真樹を守りたい」
なんかそれって。
「さぁ、ついたよ」
ふみとがそう告げる。前方に病院が見えてきた。
依然としてあまちゃんは意識を戻さない。このままここに入って起きたら、そのまま終わっている。もしそうだったら。
「起きるまで俺が付き添います。したら皆さんいますかここに」
「え?」
「俺だって飼い主みたいになってるし」
「まぁ…」
「うん、まぁ」
決断はまだ早い。
まだまだあんたらやり残してるから。
「元気なバカ面見て帰りましょう。すぐ済むんでしょ?こーゆーの」
「いや」
「わかんない」
ふみとの国産車は駐車場に車は止まる。今度は俺があまちゃんをおんぶしたろう。
後部座席を開け、当たり前のようにおぶろうとする国木田を制し、俺があまちゃんを目標通りおぶった。
首筋に掛かる微かな息。予想通りの軽い体重と、少しのシャンプーの臭いに混じる生きた臭い。感じる胸の鼓動。あぁ、生きてる、よかった。泣きそう。
先頭きって病院に向かう。さぁ、ついてこい、野郎共。
「うん。いやこっちは一言太田に、解散って言って欲しい。だってあいつだけだし、しがみついてるの。
タカさんもノリトさんも俺も疲れてるしやる気ないし。あいつなしならまぁやっても良いけど俺今、ここのギターだから、もう二人に会うのも違うアーティストとしてだね」
そうなのか。
「…ここはいいんだ」
「…俺あまちゃんにね、多分来る?って言われなかったら人間やめてた。そんくらい疲れてた。音楽も嫌いになってた。
だって最初断ったじゃん?
でもお宅らのライブ観て気が変わった。いままで俺は太田しか見てなかったんだって。
甦ったんだ、あまちゃんの、「好きなことやれば?勇気いるけどね」ってのが」
「あぁ、言ってたねぇ…」
え、また良い話系なの?泣くよ?
「げんちゃんはあまちゃん大好きだねぇ」
ふみとがそう言えば、場は了解のような沈黙。
そうか。
なるほどなぁ。
「あんたらには負ける」
「いや、俺はあまちゃんがギターミスっても声出てなくてもゲロ吐いてても怒んないね。ナトリもそうでしょ?」
「そうだな。いつもだからな」
「でもこれは好きとか信頼とか言う訳じゃない」
「俺も6年見てきてわかる気がするよ。ふみとさんもハゲさんも俺より、もう少し寛大だよ」
なんだか。
「ねぇ一個凄く空気読めないこと聞いて良い?」
泣いちゃいそうなんで、なんかこのままいくと。
「なに?」
「なんで国木田さんハゲなの」
「あ、それ俺も実は知りたい」
「え?げんちゃん今更?
ナトリ中学のとき、真樹に初めて会った時だよね。10円ハゲあったんだよ」
「ひでぇ!」
こいつこんな可愛い顔して、なんてひでぇあだ名なの!
「いや、でも…。
文化の違いだけど貶されて親近感湧いたのも事実」
「え?」
「俺名前の通り台湾ハーフなの元は。今は永住あるけど」
「いやわかんねぇし!」
「台湾読みなんだっけ」
「ユーナウ。女偏に那須市の那に酉年の酉で娜酉」
「へぇ…」
芸名だと思ってた。
ナチュラル過ぎてビビるわ。
「あれ、俺あまちゃんに聞いたのと違う。サナトリウムのナトリって聞いたよ」
「またこいつは。まぁでも…」
沈黙が流れた。
「なるほどね。真樹にとってナトリは、心の、サナトリウムなんだね」
なんだよそれ。
サナトリウムって何?でもなんか染々してる。きっとまた良い話系だ。
「いいのか悪いのか…俺にはわかんねぇ」
「そうだねぇ…。でも、忘れてはくれない存在なんだよ、ナトリ」
染々してる。
聞けねぇ。サナトリウムって何。
こっそりケータイで調べた。
要約するとサナトリウム(sanatorium)とは、自然豊かな長期療養施設らしい。
ふぅん。
なんかそれって。
すげえなぁ、感性。
この男があまちゃんのサナトリウムか。確かに、一見すればいい奴、親友とかそーゆー感じ。でも裏を返せば、こいつの性格を考えたらなんか、確かに複雑だろう。だって、それってなんか、お互い息が詰まりそう。病院と患者って。
でも、切っても切れないんだ。
あまちゃんの頭に手を置く国木田の手は相変わらず優しい。何を思っているのか。その、激しいような、時に語り掛けるようなドラムを叩くその手は、何を思って伝えているのか。
俺にはわからない。
国木田が手を伸ばし、あまちゃんの左手首に触れ、袖を捲った。横に一本だけ痛々しい、塞がってはいるがケロイドの傷があった。それを俺に見せてくる。相当深いだろう。これは死のうとしたヤツしかやらないやつだ。
それが一本なのがより、彼の気持ちを現していた。これはどう考えても死を望んだ。そういえば、社長の家の風呂場で半年前、血塗れで見つかったんだっけ。
「死ねないんだと」
「え?」
「俺言われたんだよ。半年前、意識戻ったとき病院で包帯に血を滲ませながらこいつにさ。「呼吸は生きていないと出来ねぇな」って」
「国木田さん…」
「ちょっとした躁鬱病はよくある。仕方がない。だがまぁ、これは違うな。バカだよなぁ、許せない、そんなんでやって楽しいわけないじゃん。そんなことまでしてどうして俺らを守ろうとしたんだかなぁ…」
「ナトリ」
ふみとの、少し低い声がした。
「悔しいのは一緒だ。潔く辞めてやろう。サナトリウム終了」
「文杜、」
「そう言う。真樹には。だって真樹は俺たちを守りたい、俺たちは真樹を守りたい」
なんかそれって。
「さぁ、ついたよ」
ふみとがそう告げる。前方に病院が見えてきた。
依然としてあまちゃんは意識を戻さない。このままここに入って起きたら、そのまま終わっている。もしそうだったら。
「起きるまで俺が付き添います。したら皆さんいますかここに」
「え?」
「俺だって飼い主みたいになってるし」
「まぁ…」
「うん、まぁ」
決断はまだ早い。
まだまだあんたらやり残してるから。
「元気なバカ面見て帰りましょう。すぐ済むんでしょ?こーゆーの」
「いや」
「わかんない」
ふみとの国産車は駐車場に車は止まる。今度は俺があまちゃんをおんぶしたろう。
後部座席を開け、当たり前のようにおぶろうとする国木田を制し、俺があまちゃんを目標通りおぶった。
首筋に掛かる微かな息。予想通りの軽い体重と、少しのシャンプーの臭いに混じる生きた臭い。感じる胸の鼓動。あぁ、生きてる、よかった。泣きそう。
先頭きって病院に向かう。さぁ、ついてこい、野郎共。
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