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I'm listen
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そしてそれから何事もなかったように彼は鼻唄を歌い始める。
ふんふんふん、と、なんか、掠れるような鼻唄はオーソドックスなメロディーだった。
誰の歌なんだろう。自分のかな。しかしこの時間は寂しくも甘いなぁと思う。
鼻唄の共有は酷く難しいなぁ。ある意味、一人の陶酔なんだなこれって。音楽って、なんかそーゆー時があるもんだ。
「スバルくん」
そんな時、急にあまちゃんが俺を呼んだ。
鼻唄混じりとはまさしくこの事。少しその世界観に入り込んでしまっていた俺は急な現実に「はぇ?」と、変な、普段のあまちゃんみたいなアホな返事を返してしまう。
「紙、とペン。あとなんか楽器」
「あぁちょっと待ってね」
そういえば会社帰りだしそういった文房具はいくらでもある。しかし。
取り敢えずシステム手帳とボールペンを渡した。
それを見たあまちゃんは「なにこれ全部固い」と文句じみた一言を言う。
仕方なく紙は、探して見つけたパンフレットしかなかったが、奪うように取ったあまちゃんは一瞬握ったボールペンを睨むも何かを書き始めた。
それはよくてそれはダメなのか。わかんねぇ。
「それしかない。楽器はない」
何かを殴り書きのようにすらすらすらっと書き、ふとボールペンを置いたあまちゃんはにやっとした。
覗き込んで見ると一度目が合った。そしてにこっと笑う。
「閃いちゃった」
「えっ」
今ぁ?
こんな時にぃ?
どれどれ。
I say teina found matter
愛せてない ホント また?
I know see so founder
愛の真相 本当は?
痛烈だ。
「センス」
「そう、センス。あっ、来た来た」
それから暫く「うーん」とか「ふんふんふん」とか言いながら書き続けている。
そんな中、病室の扉が空いた。
3人は3人で何か、吹っ切れたようなスッキリしたような表情に見えた。
しかし、そんなあまちゃんを見て、「あぁ、」と、ふみとが笑い、国木田は溜め息のような、少し肩の力を抜いたような。げんちゃんは「あぁほらね」と、笑った。
さっきまでの4人とは、一瞬にして空気が変わった。そんなもんなのか。
「古里さん、やっぱり凄いですね」
「え?俺?」
「うん。だって、真樹、きっと曲書いてるんでしょ?」
「まぁ、そうですね」
「相性いいんじゃないですかあんた。あんた、マネージャーってやつだね俺らの」
ふんふん言ってるあまちゃんの世界は最早パンフレットの上だ。それを見て3人は、こっそり近付いて興味深そうに覗いていた。
しかし。
「暗ーい!
あっ」
漸く気付いたらしい。気まずそうに3人を見て、「まだダメ!」と腕で隠した。
「はいはい」
「えーでもあまちゃん、昴さんにはどうせみせたでしょ」
「見せた!お前らはダメ!」
いつの間にかふみと、あまちゃん呼びに戻ってる。やっぱ、これアーティスト呼びなのか。
「俺はよくね?ギターだし」
「ダメ!うーんとね、ふんふんふーんふんふふんって感じ?」
「へぇ?」
「わかったはい!」
そう言ってあまちゃんはパンフレットをこっそり見せる。顔が隠れる。
大丈夫かしらあの子達。
時折パンフレットを指して笑い合ってるのが見えた。だがなんか、
「ふ、ははは!」
思わず笑っちゃった。
「え?」
「なに?」
「どうしたの?」
「いやぁなんか」
仲直りしてやがる、いつの間にか。
あまちゃんとげんちゃんもパンフレットから顔を出して俺を見てる。まぁ、そうだよね。
「なんかよかったね」
さっきまでの葬式感、なくなったじゃん。凄いね仲間って。
「ねぇあまちゃん」
「なにげんちゃん」
「俺ね、最後のやつ。すげぇいいなと思う。これ曲作ったらまず送って」
「…わかった」
「そんなに言うなら俺も見たい」
「俺も俺も」
4人ともどうやら新曲に釘付けであるが、「ダメ!」の一点張り。
どうしてこんなに。
先行きが見えないのにこんなに明るく拓けて見えるのだろう、音楽に関しては。
「明るいねぇ未来」
「当たり前じゃん。
俺から音楽取ったらそれ、火葬場の灰だから」
「なにそれ」
「俺ですらなに言ってるかわからんな」
「ホントだよねぇ?俺ら来月から無職なのに」
「は?みんな何言ってるの?」
そのあまちゃんのガチトーンに、みんな顔を見合わせる。
本人は至って真面目そう。
「え?」
「真樹?」
「だから、言ってるじゃん。
俺から音楽取ったらそれ、火葬場の灰だよ。俺がなんもなくこんなことすると思ってんの?」
「思ってる」
「だから怒ってる」
「は?バカなのお前ら何年俺とやって来てんの」
えぇぇぇ。
「えうぜぇ」
「マジうぜぇ」
「じゃぁどういうことよ、だって新柴さんは」
「ちっちっち。
事務所がないなら建てれば良いじゃない」
は。
何そのアントワネット。
あれ。
てかその話どっかで聞いたな。
残りのメンバー顔を見合わせ、まるでせーの!の後のように「エクセレンっ!」と叫んだ。なにそれ。凄くわかんない。
「バカ!」
「もうバカ!」
「ホントにバカ!金は?」
「ある!書類がない!」
「死ねぇぇ!」
「バカ!」
「ホントにバカ!」
げんちゃんふみと国木田挟んであまちゃん、げんちゃんふみと国木田のコントラスト、流石グループ。息ぴったし。そこに「でも!」と割って入るあまちゃん。
「UVのサイトウ氏が判子押してるから!その辺抜かりないよ!」
「サイトウさん!?」
「マジか!」
「バンドのゴッドファーザーだね…」
誰だよサイトウ。
まぁあとで調べよう。きっと有名な人なんだろう。そして果たしてそれはうまくいくのか…。
ふんふんふん、と、なんか、掠れるような鼻唄はオーソドックスなメロディーだった。
誰の歌なんだろう。自分のかな。しかしこの時間は寂しくも甘いなぁと思う。
鼻唄の共有は酷く難しいなぁ。ある意味、一人の陶酔なんだなこれって。音楽って、なんかそーゆー時があるもんだ。
「スバルくん」
そんな時、急にあまちゃんが俺を呼んだ。
鼻唄混じりとはまさしくこの事。少しその世界観に入り込んでしまっていた俺は急な現実に「はぇ?」と、変な、普段のあまちゃんみたいなアホな返事を返してしまう。
「紙、とペン。あとなんか楽器」
「あぁちょっと待ってね」
そういえば会社帰りだしそういった文房具はいくらでもある。しかし。
取り敢えずシステム手帳とボールペンを渡した。
それを見たあまちゃんは「なにこれ全部固い」と文句じみた一言を言う。
仕方なく紙は、探して見つけたパンフレットしかなかったが、奪うように取ったあまちゃんは一瞬握ったボールペンを睨むも何かを書き始めた。
それはよくてそれはダメなのか。わかんねぇ。
「それしかない。楽器はない」
何かを殴り書きのようにすらすらすらっと書き、ふとボールペンを置いたあまちゃんはにやっとした。
覗き込んで見ると一度目が合った。そしてにこっと笑う。
「閃いちゃった」
「えっ」
今ぁ?
こんな時にぃ?
どれどれ。
I say teina found matter
愛せてない ホント また?
I know see so founder
愛の真相 本当は?
痛烈だ。
「センス」
「そう、センス。あっ、来た来た」
それから暫く「うーん」とか「ふんふんふん」とか言いながら書き続けている。
そんな中、病室の扉が空いた。
3人は3人で何か、吹っ切れたようなスッキリしたような表情に見えた。
しかし、そんなあまちゃんを見て、「あぁ、」と、ふみとが笑い、国木田は溜め息のような、少し肩の力を抜いたような。げんちゃんは「あぁほらね」と、笑った。
さっきまでの4人とは、一瞬にして空気が変わった。そんなもんなのか。
「古里さん、やっぱり凄いですね」
「え?俺?」
「うん。だって、真樹、きっと曲書いてるんでしょ?」
「まぁ、そうですね」
「相性いいんじゃないですかあんた。あんた、マネージャーってやつだね俺らの」
ふんふん言ってるあまちゃんの世界は最早パンフレットの上だ。それを見て3人は、こっそり近付いて興味深そうに覗いていた。
しかし。
「暗ーい!
あっ」
漸く気付いたらしい。気まずそうに3人を見て、「まだダメ!」と腕で隠した。
「はいはい」
「えーでもあまちゃん、昴さんにはどうせみせたでしょ」
「見せた!お前らはダメ!」
いつの間にかふみと、あまちゃん呼びに戻ってる。やっぱ、これアーティスト呼びなのか。
「俺はよくね?ギターだし」
「ダメ!うーんとね、ふんふんふーんふんふふんって感じ?」
「へぇ?」
「わかったはい!」
そう言ってあまちゃんはパンフレットをこっそり見せる。顔が隠れる。
大丈夫かしらあの子達。
時折パンフレットを指して笑い合ってるのが見えた。だがなんか、
「ふ、ははは!」
思わず笑っちゃった。
「え?」
「なに?」
「どうしたの?」
「いやぁなんか」
仲直りしてやがる、いつの間にか。
あまちゃんとげんちゃんもパンフレットから顔を出して俺を見てる。まぁ、そうだよね。
「なんかよかったね」
さっきまでの葬式感、なくなったじゃん。凄いね仲間って。
「ねぇあまちゃん」
「なにげんちゃん」
「俺ね、最後のやつ。すげぇいいなと思う。これ曲作ったらまず送って」
「…わかった」
「そんなに言うなら俺も見たい」
「俺も俺も」
4人ともどうやら新曲に釘付けであるが、「ダメ!」の一点張り。
どうしてこんなに。
先行きが見えないのにこんなに明るく拓けて見えるのだろう、音楽に関しては。
「明るいねぇ未来」
「当たり前じゃん。
俺から音楽取ったらそれ、火葬場の灰だから」
「なにそれ」
「俺ですらなに言ってるかわからんな」
「ホントだよねぇ?俺ら来月から無職なのに」
「は?みんな何言ってるの?」
そのあまちゃんのガチトーンに、みんな顔を見合わせる。
本人は至って真面目そう。
「え?」
「真樹?」
「だから、言ってるじゃん。
俺から音楽取ったらそれ、火葬場の灰だよ。俺がなんもなくこんなことすると思ってんの?」
「思ってる」
「だから怒ってる」
「は?バカなのお前ら何年俺とやって来てんの」
えぇぇぇ。
「えうぜぇ」
「マジうぜぇ」
「じゃぁどういうことよ、だって新柴さんは」
「ちっちっち。
事務所がないなら建てれば良いじゃない」
は。
何そのアントワネット。
あれ。
てかその話どっかで聞いたな。
残りのメンバー顔を見合わせ、まるでせーの!の後のように「エクセレンっ!」と叫んだ。なにそれ。凄くわかんない。
「バカ!」
「もうバカ!」
「ホントにバカ!金は?」
「ある!書類がない!」
「死ねぇぇ!」
「バカ!」
「ホントにバカ!」
げんちゃんふみと国木田挟んであまちゃん、げんちゃんふみと国木田のコントラスト、流石グループ。息ぴったし。そこに「でも!」と割って入るあまちゃん。
「UVのサイトウ氏が判子押してるから!その辺抜かりないよ!」
「サイトウさん!?」
「マジか!」
「バンドのゴッドファーザーだね…」
誰だよサイトウ。
まぁあとで調べよう。きっと有名な人なんだろう。そして果たしてそれはうまくいくのか…。
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