Eccentric Late Show

二色燕𠀋

文字の大きさ
45 / 107
An heroin near

6

しおりを挟む
「あっ」

 そんななかで。

「この歌」

同じライブでやったからだろうか。自動再生された『学校』

「これ俺好きだわ地味に」
「あぁ…そりゃよかった」
「この高音上がりの辛そーなあまちゃんの声とか堪んないねぇ」
「変態臭いなあ」

 まぁこれ確かに復活の時最後に唄ったら無理だった。唄うの辛くて二番から半音下げたヤツなんだけどね。
 げんちゃんに「出た、最近の高音逃げ」とか言われたやつだよ。仕方ないじゃん?年食ったら高音キツいんだよ。

 しかしそん時もげんちゃんに称賛されたなこの歌。俺的にも思い入れはあるがそう、ちょっと引っ掛かる程度に苦しいかもしれない歌。

「これアドリブだったんだよね」
「え?そうなの?
 にしちゃぁ、ちゃんと…」
「一番最初にやったの高校の文化祭だから。俺がリフ弾いた瞬間ハゲも文杜も思い出したんだって。
 復活の時はげんちゃんいてこれぶち込んだ。げんちゃん、あいつらに聞いてたのかな。なんかちゃんと弾いてて、てか4人になったらこの曲こうなるんだって、サイドギターってすげぇって思った」
「えなにそれ観たい」
「最後に観ようか。凄いよげんちゃん。アドリブなのか、ぶち込まれた時用に音作ってたかは知らないけど凄いよマジ。感動して抱きついちゃったもんね」
「そもそもなんでそんな突然曲やっちゃうの?」
「うーん、思い付き?
 この曲はね、文化祭出演時間過ぎてたけど、最後にぶち込もうって決めてたの三人で」
「なに、思い出ソング?」
「まぁ…。
 その年に、まぁ俺たち全然知らない、誰だかわかんないヤツだけどさ、自殺したんだよ。教室から先輩が。それでなんとなく作った。苛めだったんだけど、わざわざ授業中に落ちたらしくてね。それってすげぇなぁって思ってさ。俺には出来ねぇなぁって」
「なるほどね…」
「その後プロになってから、後半歌詞書き直したりした。まぁ出回ってないけど、この動画歌詞付きだね」

 一体誰が字幕つけたんだろう。

「出回ってないの?」
「うん。人生で3回しか唄ってない、公では。そーゆー曲もあるよ。全英詞とか」
「それ見た!あれ上手いじゃん!」
「あー確かに言われた。いつものはどうしたって。だって仕方なくね?書いてもらったからにはちょっと本腰入れなきゃ」
「いつも入れろよ!てか書いて貰ったんだ」
「うん。いやぁ、その人と飲んだとき、まぁその人普段歌詞とか書く人じゃないし英語も別に出来ない人だけど、まぁ同意してくれたのは、“言葉”に関して。
 俺は自分の気持ちは表現するけど直接はしないよって、言葉を少し変える、ダイレクトに表現しないんだって話をしたらさ、その人ライターなんだけど、それいいねって。
 じゃぁこんなのどう?って一生懸命英語作ってくれた。あ、そんとき恋愛の話もしたんだけどね。
 ただ…。
 日本語訳はやっぱりなんか直接的すぎて、ちょっとあの場だけしか唄えてないねぇ」
「へぇ…」
「でも幅は広がった。なるほどってね」
「つまり、なんかその未発表なのってさ」
「まぁそーゆーことだね」

 自分の中で唄える歌と唄えない歌がある。そう言うことだ。

「でもどっちも俺好きだなぁ」
「あそう」
「なんか反抗期の息子の別の表情を見た気分」
「やっぱおかん気質だねスバルくん」

 しかしなんだか。
 隣で嬉しそうにというか楽しそうに観ているスバルくんを見ていると、なんだか自分も、好きなバンドのハコに行ったりライブ観たりしたときこんなんだなぁとか思う。いいなぁ。なんか。

 しかし照れ臭いなぁ。
 寝転がって毛布を抱き締めて観ているとやっぱ、昔の自分尖ってましたなぁ。しかし意外と安定してんなぁ。

「あそれロッキン?」
「そうそう」
「うわぁそれインフルの時のロッキンやん…いやぁぁ、やめない?ひでぇマジ。え?ラリってんじゃん多分」
「いつもじゃんいやぁ、これこん時はあれ?あまちゃんギブソンじゃないね」
「これ間違えて多分持ってきちゃってぇ、でほら、げんちゃんテレキャスなんよこんとき。ついでにチューニングしてもらった。
 けどこの英詞の歌、一回限りだしなんとなくマッチしてる感あるねえ」
「つかやべぇ興奮する」
「は?」
「なんだろこう…うはぁ、いい、いいねこのアンバランス感。してふみとくんのここここ!唄引っ張り出すようなこのベースってか指弾きってトゲがなくていいなぁ。あとエロい」
「心底気持ち悪いねスバルくん。けどわかる。文杜多分変態だよ」

 確かにこれバランスいいなぁ。俺の声さえよけりゃぁなぁ。

「タミフル効いてんなぁ。頭ボケてっから逆にすげぇ冴えてるけど前日まで咳が凄くてゲロ吐きまくっててこの後酒と安定剤飲んで吐いたもん」
「飲むなよ」

 ふと振り向いて見上げる形になったスバルくんは、腕を伸ばしてきてなんか、俺の頭を抱えてなぜた。
 伏せた眉毛が妙に長い。そして吐くように、「そんなに死にたいの?」と言った視線の先が丁度、腹辺り、腰骨が覗いていて腹の傷がパーカーから出ていた。

「別にそういうんじゃないと思うよ」

 気まずくなって然り気無く片手で傷をしまった。無意識にスバルくんは自分がそれを見てしまっていたのに気付いたらしい。

「俺だって、スバルくんが言うほど悲観してないよ。確かに、「死ねばよかった」「お前なんて生きてるから」そう父親に言われて育ったから、多分どっかにはあるかもしれないけど、もはや今は…なんとも思わない。そんなことに体力なんて」
「真樹、」
「ん?」
「ロッキン観ようか」
「…うん」
「無理に、話さなくていいんだ。ごめんよ」

 そう、悲しいような笑顔でスバルくんが言ってくれた時だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...