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日常
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それからちゃんと風呂に入ってセトリを考えながら、スバルくんは隣でイヤホンをしてケータイで動画を観ていて。
リスの抱き枕に顔を埋めて唸っていたら、「早く寝るんじゃないの?寝れないの?」とか言われてしまって。
でも気付いたら寝ていて朝は来ていた。というか昼近くに甘い臭いとコーヒーの臭いで目覚めた。夢は見なかった。
「おはよう真樹」
「おは…よう?」
覗き込んだ顔がなんだか気持ち悪いくらいにやにやしていた。なんやろこいつ。変態かなぁ。
「凄く幸せそーに寝てたねぇ真樹、いい夢見た?」
「え…?いや…なんも」
「あそう。まぁいいや。起き上がれるようになったらね」
そう言ってスバルくんは椅子に座ってぼーっとタバコを吸い始めた。
やはり、何も変わらない日常だなぁ。
しかしどうだろう。
「スバルくん」
「ん?起きられそう?」
「楽しかったね一週間」
息を呑むのがわかった。でもいいんだ、俺、我が儘だから。
「スバルくんの唄作ったんだよ実はね」
ただ言いたいのはそれだけだ。
すぐに起き上がって隣に座り、俺もタバコを吸い始めると、スバルくんは一言、「わかった」とだけ言って立ち上がり、キッチンに立った。
より甘い臭いが立ち込めてすぐに、フレンチトーストが運ばれてきた。コーヒーは俺がいれる。
最後の「いただきます」をして食べて、それから準備をして家を出る直前まで互いに無言だった。
ただ、一言最後、色々準備をしているときに「楽しみにしてる」と言われた。
「ん」
「またな」
それから中野を後にして、一度地下鉄に乗り換えたりしてお台場へ向かった。
スタジオ着いてからは今日の段取りと、音やら流れやらを合わせたり打ち合わせをしたり。
久しぶりのワンマン。しかしやはり、ライブ前に空の客席を見ると襲ってくる。
「これ何割入ったん?」
「当日券も売ってるけどまぁ2000は売れたねぇ」
「えっ、2000って、人?」
「なんだと思ったんだよ円じゃね…」
ハゲ喋ってる最中ですが「うぇぇぇぇ…」ゲロ吐きそう。何2000って。メンタマで言ったら4000うぇぇぇきもっ、気持ち悪っ。
「ごめっ、ちょっ、吐…」
「あー、いまだな行くなら」
「俺のことふにゃちん言うけどお前どうなんだ」
「うぇぇぇ…」
「ごめんごめんごめん!」
「はーい、お水ね、あまちゃん」
文杜がくれたその瓶はジーマ。確かに確かに。一回酔っとこうか。げんちゃんの視線痛いけどどうでもいい流しこおぇぇぇ!
「たんま、ご、」
「はいはい」
文杜に付き添われてトイレで全部吐いた。すまんスバルくん。出たわ。
早めにスタジオ来といてよかった。全部終わっていたからよかった。それから入場時間までダウンしていた、マジで。
しかしテンションは上げねばならぬ。ダルいながら仕方ない。テキーラサンライズ2杯と安定剤を胃にぶちこんで控え室で空虚を眺めていた。
「いつもながらあまちゃん、クソだねぇ」
「うぃ…」
手が震えるレベルに怖い。
安定剤とか安定しない。一生この不安なんて取れるわけないのはわかっている。
「あぁぁ…」
死にたくねぇけどやる気ねぇよ。嫌だな怖いな。なんなの毎回ながら。なんでなの。俺ってでもどうしてこんなにダメなの。吐いちゃったし。こんなやつが作った唄お前らどうして2000人も。
『楽しみにしてる』
なんで?
ねぇごめん、でも君の唄はね。
完成なんてしないと思ったんだ、俺。それ伝わるといいなぁとか、でもこんなときしか、考えられなくて。
あぁそういえばあの唄いいって言ってくれたけど、あれだって文化祭の唄だし。
あの唄だって、ねぇ文杜、君にまだ伝わってるだなんて思えてなくて。
げんちゃん、あの唄、俺ちゃんと唄えるのかなぁ、ねぇ。
あぁ、もう。
「怖い」
そうしてしばらく動けない俺に、メンバーはそれでもそれが日常。各々雑談もしてる。けど。
「うわぁ、すげぇな今日は」
上部に取り付けられたモニターを見てハゲが楽しそうに言う。
「さて、行くか」
「そうだねぇ。幕は上がってないし、いまだよあまちゃん」
「うぅ、はい」
「おぶってこうか?」
「ん、うー、待って」
3錠くらいポケットから薬を出して流し込んだ。
喉が痺れる。唄えるかなぁ、これ。
「今日は俺のデビューだしあまちゃん」
「あぁ、そうねぇ」
よし、そう行かなきゃ行かなきゃ。
「っしゃぁ…。ぜーいん…ぶち殺しに行きましょーかぁ…」
「お前が死にそうだな。はい、円陣」
なんかふわふわしたまま取り敢えず円陣組んで、動悸のまま、ステージの階段を登る。
だけど。
ステージライトはやはりパフォーマンス。あぁそうねぇ。そう。俺って結局でも、これには、陶酔してんのよ、幕の向こうのうるせぇ4000。
よく見とけよ。てめぇら全員ハッピーに生きて返さねぇんだよ!あぁ。
「よし、行くよ」
言えば殺気に似たステージ。よしオッケー。客席ライト落ちたのはモニターで見えた。さぁ、行くよ、みんな。
リスの抱き枕に顔を埋めて唸っていたら、「早く寝るんじゃないの?寝れないの?」とか言われてしまって。
でも気付いたら寝ていて朝は来ていた。というか昼近くに甘い臭いとコーヒーの臭いで目覚めた。夢は見なかった。
「おはよう真樹」
「おは…よう?」
覗き込んだ顔がなんだか気持ち悪いくらいにやにやしていた。なんやろこいつ。変態かなぁ。
「凄く幸せそーに寝てたねぇ真樹、いい夢見た?」
「え…?いや…なんも」
「あそう。まぁいいや。起き上がれるようになったらね」
そう言ってスバルくんは椅子に座ってぼーっとタバコを吸い始めた。
やはり、何も変わらない日常だなぁ。
しかしどうだろう。
「スバルくん」
「ん?起きられそう?」
「楽しかったね一週間」
息を呑むのがわかった。でもいいんだ、俺、我が儘だから。
「スバルくんの唄作ったんだよ実はね」
ただ言いたいのはそれだけだ。
すぐに起き上がって隣に座り、俺もタバコを吸い始めると、スバルくんは一言、「わかった」とだけ言って立ち上がり、キッチンに立った。
より甘い臭いが立ち込めてすぐに、フレンチトーストが運ばれてきた。コーヒーは俺がいれる。
最後の「いただきます」をして食べて、それから準備をして家を出る直前まで互いに無言だった。
ただ、一言最後、色々準備をしているときに「楽しみにしてる」と言われた。
「ん」
「またな」
それから中野を後にして、一度地下鉄に乗り換えたりしてお台場へ向かった。
スタジオ着いてからは今日の段取りと、音やら流れやらを合わせたり打ち合わせをしたり。
久しぶりのワンマン。しかしやはり、ライブ前に空の客席を見ると襲ってくる。
「これ何割入ったん?」
「当日券も売ってるけどまぁ2000は売れたねぇ」
「えっ、2000って、人?」
「なんだと思ったんだよ円じゃね…」
ハゲ喋ってる最中ですが「うぇぇぇぇ…」ゲロ吐きそう。何2000って。メンタマで言ったら4000うぇぇぇきもっ、気持ち悪っ。
「ごめっ、ちょっ、吐…」
「あー、いまだな行くなら」
「俺のことふにゃちん言うけどお前どうなんだ」
「うぇぇぇ…」
「ごめんごめんごめん!」
「はーい、お水ね、あまちゃん」
文杜がくれたその瓶はジーマ。確かに確かに。一回酔っとこうか。げんちゃんの視線痛いけどどうでもいい流しこおぇぇぇ!
「たんま、ご、」
「はいはい」
文杜に付き添われてトイレで全部吐いた。すまんスバルくん。出たわ。
早めにスタジオ来といてよかった。全部終わっていたからよかった。それから入場時間までダウンしていた、マジで。
しかしテンションは上げねばならぬ。ダルいながら仕方ない。テキーラサンライズ2杯と安定剤を胃にぶちこんで控え室で空虚を眺めていた。
「いつもながらあまちゃん、クソだねぇ」
「うぃ…」
手が震えるレベルに怖い。
安定剤とか安定しない。一生この不安なんて取れるわけないのはわかっている。
「あぁぁ…」
死にたくねぇけどやる気ねぇよ。嫌だな怖いな。なんなの毎回ながら。なんでなの。俺ってでもどうしてこんなにダメなの。吐いちゃったし。こんなやつが作った唄お前らどうして2000人も。
『楽しみにしてる』
なんで?
ねぇごめん、でも君の唄はね。
完成なんてしないと思ったんだ、俺。それ伝わるといいなぁとか、でもこんなときしか、考えられなくて。
あぁそういえばあの唄いいって言ってくれたけど、あれだって文化祭の唄だし。
あの唄だって、ねぇ文杜、君にまだ伝わってるだなんて思えてなくて。
げんちゃん、あの唄、俺ちゃんと唄えるのかなぁ、ねぇ。
あぁ、もう。
「怖い」
そうしてしばらく動けない俺に、メンバーはそれでもそれが日常。各々雑談もしてる。けど。
「うわぁ、すげぇな今日は」
上部に取り付けられたモニターを見てハゲが楽しそうに言う。
「さて、行くか」
「そうだねぇ。幕は上がってないし、いまだよあまちゃん」
「うぅ、はい」
「おぶってこうか?」
「ん、うー、待って」
3錠くらいポケットから薬を出して流し込んだ。
喉が痺れる。唄えるかなぁ、これ。
「今日は俺のデビューだしあまちゃん」
「あぁ、そうねぇ」
よし、そう行かなきゃ行かなきゃ。
「っしゃぁ…。ぜーいん…ぶち殺しに行きましょーかぁ…」
「お前が死にそうだな。はい、円陣」
なんかふわふわしたまま取り敢えず円陣組んで、動悸のまま、ステージの階段を登る。
だけど。
ステージライトはやはりパフォーマンス。あぁそうねぇ。そう。俺って結局でも、これには、陶酔してんのよ、幕の向こうのうるせぇ4000。
よく見とけよ。てめぇら全員ハッピーに生きて返さねぇんだよ!あぁ。
「よし、行くよ」
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