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日常
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「おい真樹、」
「ようばあさん、元気かい?」
『あんたは…』
「真樹だよ。なぁ、誰だいあれは」
『真樹…、真樹!』
覚えていてくれたのか。なんだかそれはそれで複雑だ。
いっそ忘れられていた方がよかった。
「なぁ真樹、」
ケータイを取り上げようとするスバルくんを睨む。相手も睨んでくる。これはダメだな。
「ちょっと待ってね」と電話に話しかけスピーカーを申し訳程度に塞いでから、「うっせぇ、てめぇ!」とスバルくんに言葉を投げ捨てる。
「なに考えてんだよ、」
「黙っててうるさい。俺の友人なんだ、あんたとは違う」
またケータイを耳に当て、「ごめんねお待たせ」と、出来る限り優しめに返す。嗄れた声が「あの…」と頼りない。
「ねぇばあちゃん。あんたさ、このままだと一生誤解されたまま死ぬしかないよ」
『なんで、』
「ねぇだからさ。もうスバルくんに関わらないでよ。お願い」
『何言ってるのよ、あんた、』
「お金の話とか、迷惑がってる、彼は。太一もみんな。あんたろくな人生歩んでないんだ」
ばあさんは黙り混んだ。
しばらくして啜り泣きが聞こえてくる。
わかってる。わかってるよ。
「ねぇでもさ、おばあちゃん。俺の話聞いてよ、もしよかったら。俺赤の他人だからさぁ。
俺15の時ね、母親をビニールシートに入れて山に埋めに行ったんだ。父親が殴り殺しちゃって手伝えって言われて」
『なによそれ…』
「人って簡単に死ぬんだよ。
ねぇ、てかさぁ、ろくでもないと思わない?俺警察にさ、それでも、わかんないって答えたんだそしたら心療内科ぶち込まれたよ。ねぇ、俺とあんた、ろくでもねぇよね?
だからさぁ、友達のよしみ。持つべき物は友。スバルくんじゃなくて、その役、俺じゃダメかい?おばあちゃん」
「真樹…、」
「だって彼の人生をその腐った前頭葉で考えてあげてよ。俺の方がよくない?」
「何言ってんだよ、バカ!」
ホント何言ってんだよ、バカ。
『真樹さん…』
「あい、なんでしょ」
『貴方きっと、優しい子なんでしょうね。会いたかった。昴のように、きっと』
「やめてよ。違うよ。
ねぇ、生きてりゃいつか会えますよ。死んで価値ある人間なんているわけないじゃん。そして俺は優しいんじゃない。アホなだけ。一宿一飯の恩とか言うでしょ?彼とはそんな感じなの。
だから誰に償うかあんた考えた方がいい。スバルくんはだから、あんたのせいであんたの近くは酸素が薄いんだきっと。他人だから、言ってあげる」
『…ありがとう』
「どういたしまして。次の電話は、覚えていて欲しいなぁ、俺はあんたとデートがしたい」
『…はい』
「メモった?じゃぁ切るよ。じゃぁまたねおばあちゃん」
電話を切った。
スバルくんは怒ったように拳を震わせている。だけど俺は悪くない。
「…やっぱ、明日までにしよう、スバルくん」
「真樹、」
「俺飽きっぽいの。ごめんね」
「なんで…」
いままでの怒り顔が急に崩れて、そして溢れて眼鏡を外した。
大変だ。
「ちょっと、ちょっとぉ!」
「うるせぇ…!」
ひたすら涙を拭っている。
なんだよ情緒大丈夫かよ困るよ。
取り敢えず掛け寄って涙を拭いてやろうとしたら急に両肩をガシッと掴まれた。
なんだよなんだよ怖いよそれぇ!
しかし束の間、俯きながら抱き締められて俺困惑。
なんじゃこれ。
「な、はぁ!?」
「お前ってさぁ…!」
やっぱキレてる。
「なんでんなこと、んな…切ねぇ擦れた失恋みてぇな変なさ、クソヒロインみてぇな顔して言えんだよクソがぁ…。こっちの心殺しにかかってんのかバカ!」
「え、よくわかんないなに怖い」
「思わず誤作動で涙腺ロック強制解除しちゃったじゃん!ねぇ!ど…どうしてくれんだショタ声あまちゃん野郎が!」
なに怒ってんのこいつ。
けどなんか「うぅー…!」とか言って鼻水拭いてんだか髪の臭い嗅いでんだかわかんないきしょい。
取り敢えず腹パンしてやったら「ごふっ!」とか言って蹲った。
「そんなに怒ることないでしょーが!」
「うるせぇ…。ねぇ、あの真樹、あの…」
しかし痛そうだ。仕方ないから手を貸してやったら仕返しとばかりに思いっきり引っ張られてコケかけた。
あぶねぇよクソったれぇ!
しかし今度は優しい抱擁。
なにこいつ。大丈夫かよ。
「…あんだよ」
「…いや、なんか怖ぇなって」
「何がよ」
「…君、鍵は返さないで。捨ててもいいけどさぁ、なんか、俺がわかんないとこで捨てて」
「なにそれ傲慢」
「そ。お前も我が儘だから俺もそれくらい言う。ねぇ、真樹、本当に大丈夫?俺…」
「バカでしょあんた。優しいっつーかバカじゃねぇの?
いいの、俺好きに生きたいから黙ってて。縛りはもういや」
「わかってる。だから好きにしろって。ただ俺も捨てらんない、それだけだから。わかった?」
「ん…」
なんかずりぃよこいつ。
「明日朝飯は食ってけ」
「嫌だ」
「ダメ。ウチのルールですから。フレンチトーストは?」
「…ん」
「じゃ帰ったら用意するよ。帰ろう、真樹」
結局仕方ないから折れてやるよ。明日ライブ前に吐いたらてめぇのせいだからな、マジで。
それから二人、少し距離を持って歩き始めた。丁度、真ん中に一人は入れないような、半人くらいの距離。
「明日は何時に出るの?」
「…12時くらい」
「あそう。昼はあっち?」
「うん」
「じゃぁ本当に朝飯が最後だね」
そうか。
「今夜は」
「ん?」
「ちゃんと寝る。明日唄いたいから」
「そうだね。だからって飲みすぎたらダメだよ」
「うん」
おかん終了か。
まぁ、またいつか、来ればいいんだけどねきっと。
「ようばあさん、元気かい?」
『あんたは…』
「真樹だよ。なぁ、誰だいあれは」
『真樹…、真樹!』
覚えていてくれたのか。なんだかそれはそれで複雑だ。
いっそ忘れられていた方がよかった。
「なぁ真樹、」
ケータイを取り上げようとするスバルくんを睨む。相手も睨んでくる。これはダメだな。
「ちょっと待ってね」と電話に話しかけスピーカーを申し訳程度に塞いでから、「うっせぇ、てめぇ!」とスバルくんに言葉を投げ捨てる。
「なに考えてんだよ、」
「黙っててうるさい。俺の友人なんだ、あんたとは違う」
またケータイを耳に当て、「ごめんねお待たせ」と、出来る限り優しめに返す。嗄れた声が「あの…」と頼りない。
「ねぇばあちゃん。あんたさ、このままだと一生誤解されたまま死ぬしかないよ」
『なんで、』
「ねぇだからさ。もうスバルくんに関わらないでよ。お願い」
『何言ってるのよ、あんた、』
「お金の話とか、迷惑がってる、彼は。太一もみんな。あんたろくな人生歩んでないんだ」
ばあさんは黙り混んだ。
しばらくして啜り泣きが聞こえてくる。
わかってる。わかってるよ。
「ねぇでもさ、おばあちゃん。俺の話聞いてよ、もしよかったら。俺赤の他人だからさぁ。
俺15の時ね、母親をビニールシートに入れて山に埋めに行ったんだ。父親が殴り殺しちゃって手伝えって言われて」
『なによそれ…』
「人って簡単に死ぬんだよ。
ねぇ、てかさぁ、ろくでもないと思わない?俺警察にさ、それでも、わかんないって答えたんだそしたら心療内科ぶち込まれたよ。ねぇ、俺とあんた、ろくでもねぇよね?
だからさぁ、友達のよしみ。持つべき物は友。スバルくんじゃなくて、その役、俺じゃダメかい?おばあちゃん」
「真樹…、」
「だって彼の人生をその腐った前頭葉で考えてあげてよ。俺の方がよくない?」
「何言ってんだよ、バカ!」
ホント何言ってんだよ、バカ。
『真樹さん…』
「あい、なんでしょ」
『貴方きっと、優しい子なんでしょうね。会いたかった。昴のように、きっと』
「やめてよ。違うよ。
ねぇ、生きてりゃいつか会えますよ。死んで価値ある人間なんているわけないじゃん。そして俺は優しいんじゃない。アホなだけ。一宿一飯の恩とか言うでしょ?彼とはそんな感じなの。
だから誰に償うかあんた考えた方がいい。スバルくんはだから、あんたのせいであんたの近くは酸素が薄いんだきっと。他人だから、言ってあげる」
『…ありがとう』
「どういたしまして。次の電話は、覚えていて欲しいなぁ、俺はあんたとデートがしたい」
『…はい』
「メモった?じゃぁ切るよ。じゃぁまたねおばあちゃん」
電話を切った。
スバルくんは怒ったように拳を震わせている。だけど俺は悪くない。
「…やっぱ、明日までにしよう、スバルくん」
「真樹、」
「俺飽きっぽいの。ごめんね」
「なんで…」
いままでの怒り顔が急に崩れて、そして溢れて眼鏡を外した。
大変だ。
「ちょっと、ちょっとぉ!」
「うるせぇ…!」
ひたすら涙を拭っている。
なんだよ情緒大丈夫かよ困るよ。
取り敢えず掛け寄って涙を拭いてやろうとしたら急に両肩をガシッと掴まれた。
なんだよなんだよ怖いよそれぇ!
しかし束の間、俯きながら抱き締められて俺困惑。
なんじゃこれ。
「な、はぁ!?」
「お前ってさぁ…!」
やっぱキレてる。
「なんでんなこと、んな…切ねぇ擦れた失恋みてぇな変なさ、クソヒロインみてぇな顔して言えんだよクソがぁ…。こっちの心殺しにかかってんのかバカ!」
「え、よくわかんないなに怖い」
「思わず誤作動で涙腺ロック強制解除しちゃったじゃん!ねぇ!ど…どうしてくれんだショタ声あまちゃん野郎が!」
なに怒ってんのこいつ。
けどなんか「うぅー…!」とか言って鼻水拭いてんだか髪の臭い嗅いでんだかわかんないきしょい。
取り敢えず腹パンしてやったら「ごふっ!」とか言って蹲った。
「そんなに怒ることないでしょーが!」
「うるせぇ…。ねぇ、あの真樹、あの…」
しかし痛そうだ。仕方ないから手を貸してやったら仕返しとばかりに思いっきり引っ張られてコケかけた。
あぶねぇよクソったれぇ!
しかし今度は優しい抱擁。
なにこいつ。大丈夫かよ。
「…あんだよ」
「…いや、なんか怖ぇなって」
「何がよ」
「…君、鍵は返さないで。捨ててもいいけどさぁ、なんか、俺がわかんないとこで捨てて」
「なにそれ傲慢」
「そ。お前も我が儘だから俺もそれくらい言う。ねぇ、真樹、本当に大丈夫?俺…」
「バカでしょあんた。優しいっつーかバカじゃねぇの?
いいの、俺好きに生きたいから黙ってて。縛りはもういや」
「わかってる。だから好きにしろって。ただ俺も捨てらんない、それだけだから。わかった?」
「ん…」
なんかずりぃよこいつ。
「明日朝飯は食ってけ」
「嫌だ」
「ダメ。ウチのルールですから。フレンチトーストは?」
「…ん」
「じゃ帰ったら用意するよ。帰ろう、真樹」
結局仕方ないから折れてやるよ。明日ライブ前に吐いたらてめぇのせいだからな、マジで。
それから二人、少し距離を持って歩き始めた。丁度、真ん中に一人は入れないような、半人くらいの距離。
「明日は何時に出るの?」
「…12時くらい」
「あそう。昼はあっち?」
「うん」
「じゃぁ本当に朝飯が最後だね」
そうか。
「今夜は」
「ん?」
「ちゃんと寝る。明日唄いたいから」
「そうだね。だからって飲みすぎたらダメだよ」
「うん」
おかん終了か。
まぁ、またいつか、来ればいいんだけどねきっと。
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