80 / 107
Thanks for you.
1
しおりを挟む
見た目に似合わずサイトウは、軽々しくひょいっと舞台に飛び乗って昴に手を差し伸べた。
登ってみて上手側からすぐ、「真樹ちゃん、やー!」と、幼児、女の子の楽しげな声がして、
「うりゃー!」と、真樹がステージまで駆けて来た。3歳くらいの女の子を背負って。
はっと二人と目が合えば、「あっ」と、真樹は立ち止まる。
昴が見たところこの、薄いピンクのワンピースを着た柔らかい茶髪の女児は、多分だが、見たがことある。
昨日ケータイで散々ナトリに見せられたナトリの娘、由亜ちゃんじゃないか?
「あっ!スバルくん!とサイトウ氏!」
「やぁあまちゃん。わー、ゆあちゃんじゃん、おっきくなったねぇ、いくつー?」
柔和に微笑むサイトウに、やはりと昴は確信。
国木田娘、由亜ちゃん、大男サイトウと眼鏡昴に硬直して笑顔まで消え失せた。
人見知りか。そうか。
「ゆあ、大丈夫だよ、この人。デカくて熊みたいだけど襲ってこないから死んだフリしなくていーよ。
あっちの眼鏡はスバルくんだよ。変態っぽいけど優しいよ、ゆあ」
「なっ、」
「ふっ、」
なんちゅーことを。
「真樹ちゃん、ホント?」
「ホントホント。俺ゆあには嘘吐かないよ。
ほら、かわいーゆあちゃん自己紹介!はい、」
「く…くにきだゆあでっ…しゅ」
「はい、よくできました~、お友達増えたねーゆあ。
サイトウ氏とスバル君どうしたの?来てくれてありがと」
なんだかサイトウと昴にには素っ気なく返す真樹。すると後ろから、
「あっ、いたてめぇ幼児誘拐野郎!由亜を返せ真樹ぃ!」
と国木田パパが走ってきて。
「やめなよなっちゃん、由亜が真樹ちゃんに会いたいってねぇ、聞いてくださいよ!」
舞台袖で超絶美人なロン毛ストレートの、国木田娘、由亜とお揃いのワンピースを着た女性が立って見守っていて。
「ははー、親バカ炸裂だねナトリ」
と、ひょっこり現れ嫁に笑いかける切れ長奥二重の文杜。それから頭を下げつつ現れた弦次。
後ろでゆったり談笑する嫁と文杜と弦次。「こるぁ、真樹!」と躍起になる国木田と逃げ回る真樹、「きゃっきゃ」と楽しむ由亜。
「はっはっは、楽しそー!僕もまぜてよー!」
「ええっ、サイトウさん…」
「あっ、」
「サイトウさん!?
あ、すんませんなんか。毎度どうもですぅ」
急にピタッとナトリ、動きをやめ、サイトウを見る。
「いやいや。まぁまぁよかったよ。陽介が君らに会いたいってさ。まぁ少ししたら来るよ」
「え、あの人大丈夫?」
「うん。女の子持ち帰る勢いで大丈夫」
「ちょっとぉ!娘いるんだからやめてくれません!?」
「え、つかあの人そーなの?」
「昴くん甘いなぁ、あいつセクシャルヤバイ人だからね実は」
「ねぇちょっとサイトウ氏からもちゃんと言ってよ!マジあいつなんなん!?ちょっと困るんだけど!」
「なんでぇ?」
「当たり前じゃん!廻り廻って俺んとこに来るとなんかこう…穴兄だ」
「真樹、殺すぞマジで。娘上にいるんだけどてめぇ返せマジで!」
「ゆあ、ダメだよあんな口が悪いパパのとこ行っちゃ!」
「パパ真樹ちゃんをいじめないでよバカぁぁ!」
「えぇぇ!違う、違うよ由亜ぁぁ!パパ人のこと苛めないでしょうが!」
漫才かよ。
置いてきぼり感の昴は素直に思う。
だがまぁ。
楽しいっちゃぁ、楽しい。
「仕方ないなぁ…」
真樹はそう言って由亜を降ろし、しゃがんで頭をなでなでした。
「パパうるさいからママのとこ行ってきな由亜。また後でね」
由亜は「わかった!」と無邪気に真樹に言い、美人ママの元へ駆けて行く。サイトウは美人ママに、漸く頭を下げた。
「サイトウ氏、そんで…」
「あぁ、うん。まぁ用事は後でいいや。うん、いまはよかったよって。
ほら、昴くんもさ、突っ伏してびっしゃびしゃだったんだからさっきまで」
「えっ」
「嘘ぅ」
ナトリ、真樹、両名漸く昴を見つめる。ナトリはそれから「はぁぁ、」と、感心したような声を漏らした。
「昴くん、来てくれてありがと。そっか。でもなんかよかったな、真樹」
「…ん、まぁ」
「わりと俺らも、え?なんかいいんじゃね?ってテンション上がっちゃってさ。正直今回お客さんはさ、どっちに捉えたかなぁ、とか。
ほら、ドラムって多分だけど一番位置的によく見えるから、ウチボーカルちっさいし。サイトウさん直々にお出ましとか、マジで、なぁ、真樹」
「そだね~、サイトウ氏苛めのエキスパートだからねぇ」
「そうだね。まさかんなビビってる奴らがチバ氏ぶちこんできたと思うと…僕はこれはどう捉えるべき?もっと苛めてパターン?それは陽介にAV借りるのをオススメ」
「おいサイトウ氏、国木田娘がいなくなったからって調子こいたな。
ねね、よーちゃんいつ来るの?」
「あぁ…。昴くんのお友達を送ったら。ちゃんと来るよ。
さて昴くん、君も少しゆっくりしてこうか。せっかく来たんだし。あまちゃんの飼い主だし」
「あぁ、それ…」
「サイトウ氏!」
遮るように真樹が明るく言った。
「どーせなら、みんなで写真撮って!げんちゃん記念に!」
「…らしくないねぇ」
それには無言で、真樹は一人、舞台袖に向かう。
「…どしちゃったのあの子」
「…多分…。
ほら、俺、今日までだったんです。飼い主。まぁ、鍵はあいつ、持ってるけどね」
「え?」
「じゃぁ、真樹…今日から…。
なんも言ってこねぇけどあいつ、どうすんだ?」
「…あまちゃん…」
なんとなく。
嫌な予感がする。
「…僕、たまたま来ちゃって正解だったかもね」
「…どうかな」
なんとなく、サイトウとナトリが複雑そうだ。
互いにどうやら違う複雑さを持っているのを、昴は感じ取った。
登ってみて上手側からすぐ、「真樹ちゃん、やー!」と、幼児、女の子の楽しげな声がして、
「うりゃー!」と、真樹がステージまで駆けて来た。3歳くらいの女の子を背負って。
はっと二人と目が合えば、「あっ」と、真樹は立ち止まる。
昴が見たところこの、薄いピンクのワンピースを着た柔らかい茶髪の女児は、多分だが、見たがことある。
昨日ケータイで散々ナトリに見せられたナトリの娘、由亜ちゃんじゃないか?
「あっ!スバルくん!とサイトウ氏!」
「やぁあまちゃん。わー、ゆあちゃんじゃん、おっきくなったねぇ、いくつー?」
柔和に微笑むサイトウに、やはりと昴は確信。
国木田娘、由亜ちゃん、大男サイトウと眼鏡昴に硬直して笑顔まで消え失せた。
人見知りか。そうか。
「ゆあ、大丈夫だよ、この人。デカくて熊みたいだけど襲ってこないから死んだフリしなくていーよ。
あっちの眼鏡はスバルくんだよ。変態っぽいけど優しいよ、ゆあ」
「なっ、」
「ふっ、」
なんちゅーことを。
「真樹ちゃん、ホント?」
「ホントホント。俺ゆあには嘘吐かないよ。
ほら、かわいーゆあちゃん自己紹介!はい、」
「く…くにきだゆあでっ…しゅ」
「はい、よくできました~、お友達増えたねーゆあ。
サイトウ氏とスバル君どうしたの?来てくれてありがと」
なんだかサイトウと昴にには素っ気なく返す真樹。すると後ろから、
「あっ、いたてめぇ幼児誘拐野郎!由亜を返せ真樹ぃ!」
と国木田パパが走ってきて。
「やめなよなっちゃん、由亜が真樹ちゃんに会いたいってねぇ、聞いてくださいよ!」
舞台袖で超絶美人なロン毛ストレートの、国木田娘、由亜とお揃いのワンピースを着た女性が立って見守っていて。
「ははー、親バカ炸裂だねナトリ」
と、ひょっこり現れ嫁に笑いかける切れ長奥二重の文杜。それから頭を下げつつ現れた弦次。
後ろでゆったり談笑する嫁と文杜と弦次。「こるぁ、真樹!」と躍起になる国木田と逃げ回る真樹、「きゃっきゃ」と楽しむ由亜。
「はっはっは、楽しそー!僕もまぜてよー!」
「ええっ、サイトウさん…」
「あっ、」
「サイトウさん!?
あ、すんませんなんか。毎度どうもですぅ」
急にピタッとナトリ、動きをやめ、サイトウを見る。
「いやいや。まぁまぁよかったよ。陽介が君らに会いたいってさ。まぁ少ししたら来るよ」
「え、あの人大丈夫?」
「うん。女の子持ち帰る勢いで大丈夫」
「ちょっとぉ!娘いるんだからやめてくれません!?」
「え、つかあの人そーなの?」
「昴くん甘いなぁ、あいつセクシャルヤバイ人だからね実は」
「ねぇちょっとサイトウ氏からもちゃんと言ってよ!マジあいつなんなん!?ちょっと困るんだけど!」
「なんでぇ?」
「当たり前じゃん!廻り廻って俺んとこに来るとなんかこう…穴兄だ」
「真樹、殺すぞマジで。娘上にいるんだけどてめぇ返せマジで!」
「ゆあ、ダメだよあんな口が悪いパパのとこ行っちゃ!」
「パパ真樹ちゃんをいじめないでよバカぁぁ!」
「えぇぇ!違う、違うよ由亜ぁぁ!パパ人のこと苛めないでしょうが!」
漫才かよ。
置いてきぼり感の昴は素直に思う。
だがまぁ。
楽しいっちゃぁ、楽しい。
「仕方ないなぁ…」
真樹はそう言って由亜を降ろし、しゃがんで頭をなでなでした。
「パパうるさいからママのとこ行ってきな由亜。また後でね」
由亜は「わかった!」と無邪気に真樹に言い、美人ママの元へ駆けて行く。サイトウは美人ママに、漸く頭を下げた。
「サイトウ氏、そんで…」
「あぁ、うん。まぁ用事は後でいいや。うん、いまはよかったよって。
ほら、昴くんもさ、突っ伏してびっしゃびしゃだったんだからさっきまで」
「えっ」
「嘘ぅ」
ナトリ、真樹、両名漸く昴を見つめる。ナトリはそれから「はぁぁ、」と、感心したような声を漏らした。
「昴くん、来てくれてありがと。そっか。でもなんかよかったな、真樹」
「…ん、まぁ」
「わりと俺らも、え?なんかいいんじゃね?ってテンション上がっちゃってさ。正直今回お客さんはさ、どっちに捉えたかなぁ、とか。
ほら、ドラムって多分だけど一番位置的によく見えるから、ウチボーカルちっさいし。サイトウさん直々にお出ましとか、マジで、なぁ、真樹」
「そだね~、サイトウ氏苛めのエキスパートだからねぇ」
「そうだね。まさかんなビビってる奴らがチバ氏ぶちこんできたと思うと…僕はこれはどう捉えるべき?もっと苛めてパターン?それは陽介にAV借りるのをオススメ」
「おいサイトウ氏、国木田娘がいなくなったからって調子こいたな。
ねね、よーちゃんいつ来るの?」
「あぁ…。昴くんのお友達を送ったら。ちゃんと来るよ。
さて昴くん、君も少しゆっくりしてこうか。せっかく来たんだし。あまちゃんの飼い主だし」
「あぁ、それ…」
「サイトウ氏!」
遮るように真樹が明るく言った。
「どーせなら、みんなで写真撮って!げんちゃん記念に!」
「…らしくないねぇ」
それには無言で、真樹は一人、舞台袖に向かう。
「…どしちゃったのあの子」
「…多分…。
ほら、俺、今日までだったんです。飼い主。まぁ、鍵はあいつ、持ってるけどね」
「え?」
「じゃぁ、真樹…今日から…。
なんも言ってこねぇけどあいつ、どうすんだ?」
「…あまちゃん…」
なんとなく。
嫌な予感がする。
「…僕、たまたま来ちゃって正解だったかもね」
「…どうかな」
なんとなく、サイトウとナトリが複雑そうだ。
互いにどうやら違う複雑さを持っているのを、昴は感じ取った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる