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CRAVING【短編】
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俺が唖然としているなか、タカさん、ノリトさんは「あいーよいーよ、マジ拡散拡散」とか「仕返しって痛烈だな」とか、3人に悪乗りし始めた。
えっ。
これ俺どうするべきなの?
この、動物園みたいな状況。
「うるせぇ、っんだよ、貴様らぁぁぁ!」
ついに太田、キレ始めた。
一同黙りこくる。
「こっちが黙ってりゃ調子込みやがってぇ!ぶっ殺すぞGo to Hell! Fuck in out!」
喚くが、
「うわやぁだ」
と殺し屋が言い、それに対し、「え何て言ったの?」とチビが問う。
それをちらっと見る金髪という奇妙な構図に、今度はタカさんノリトさんが爆笑した。
「うんうん、嫌だねぇ、ホントその通りだなおチビ」
「え?チビっつったんかあいつ」
「違う違う。もっとイヤらしい意味だよ。しかもあんたらにじゃねぇさ。俺たちにだよ」
「えなに、やっぱあんたらそんな感じ?」
「そうそう。
ねぇあのさぁ、3ピースのリズムってどーやったらいーかなぁ。あとで教えてよ兄ちゃん。いまからあんたら観に行くからさ。メアド交換しね?」
「うーん、ちなみに次は?」
「Space」
「あんたのプレイ、そこそこよかったよ今日。Spaceかぁ。いいんじゃないですか?刺激的で。たまにはあんなジャンク感も。観たことあるんでしょ?」
「うん」
「どうせあんたらにはまぁ、あいつ?ブランドなんてなかったっぽいしね。まぁそうね。あんたらよかヘッタクソだがまぁウチも観てくなら、そうですね。メアドは終わったら。
栗村文杜です。まぁもし覚えてくれるなら」
「覚えとく。高安雄仁」
「そういえば野外どうでした?」
今度はノリトさんが金髪ドラムに聞く。金髪は、「あぁ、まぁ」と、タバコに火をつけた。
「びしゃびしゃ。ちょーびしゃびしゃ。
俺らチビのせいで野外とかマジ不慣れだからなぁ。
いや俺はわりとさ、ほらあんたもわかるっしょ?びしゃびしゃなわけ室内でも。それ嫌がるわけこいつ一丁前に。
でもいいねあれシャワー浴びなくて済むわ。こっち空気ちょー汚ぇけど、なんか最近中国のよくわかんねぇガス?舞ってるらしいけどでもいいね雨。マジセルフサービスシャワー。俺野外好きだわ野外やりたいけど真樹」
「やだ。それ聞いたら余計やだ」
「んなこと言ってあまちゃん気持ち良さそうだったじゃん。史上最大級のアへ顔だったんじゃない?」
「アへ顔ゆーなし、こっちとらラリってんのじゃアホ!何回イきそうになった思っとんねん」
なんだそれ。
メンバー二人から「それちょっ、卑猥」だの「気持ちぃよな、バーカそのまま死ねばよかったのに」だの言われている。
何このバンド。
絶対男子校出身だよこいつら。ノリが大学生よか男子校だよ。
ただなにこれ。
むちゃくちゃ楽しそうですけどこのバカバンド。
ふとチビと目が合う。
見上げるように俺を見る彼はただ一言無愛想に言う、「来る?」と。
さぁ。
でも俺はもうはっきり言えば。
「いや、」
「あっそう」
わかんねぇんだ。音楽が。
「えつか時間じゃね?」
「あっ」
「あっ、すんません」
「まいいんじゃね?んなことより文杜、ジーマジーマ」
「あ、さっき飲んじゃったねあまちゃん。大変だ買ってこないと」
「いや俺が買ってくるばい。お前今走ったら多分鼻血出るやろ」
「そーゆーナトリもお国言葉が出ていらっしゃるばい、あれぇ?俺らどんだけ飲んだぁ?」
「お前途中ウォッカに火ぃつけようとしました。俺が止めて2杯ストレートです」
なんだそれ。
チビはチビで、「火なんてつかんかったね~」とか言ってる。なに、大丈夫かこいつら。
「だって、」
「はいはい、いいからジーマ3人で1本づつにしよう。そろそろ誰かがアル中で運ばれるわバカ」
「去年はあまちゃんだったねぇ。終わった瞬間袖でスターンって。ヤク中かよつかXかよ」
「本来それ俺の見せ場だぞチビ。死ね、ホント」
「はっはー!あんへりぃんにー」
「アンヘドニア!ひぇい!」
「大丈夫か文杜。お前も今日はヤバイぞ。俺二人分介護とかマジ嫌だよ。それ男子校で終えたはずだよなぁ、おい」
雑談しながら3人とも非常にヤバ気なテンションで、「しーゆーげーん!」とチビが言い残して手を振りながら楽屋を去っていく。
嵐、と言うよりはなんだか、雷のような三人の去り行く背中を唖然と見送って俺とタカさんとノリトさんはまず、誰からともなく吹き出して、「さぁさ」とタカさんが言う。
「俺らも観に行くかー」
「俺初めてだよ。どんなバンドなんだ?」
「んー?まぁ俺もあんまよく知んねぇけど文杜くん?が指弾き。何気に侮れない。ドラムは下手すりゃ負けちゃうかもよぉ?ノリト」
「マジか」
「ギターはねぇ、最早弦次、うん、お前の渇望には持ってこいだ。まずチューニングしてやんな」
「えぇ?もしやそーゆー系?」
ヤバい系?ヤバい勘違い系?どっちだ?
「うーん、わからん。俺はベンジー系だと思うよある意味」
「へ?」
「まま、行こう行こう」
なんだろう。
しかしなんだろう。
俺とノリトさんの肩を掴み、「へへっ、」と笑うタカさん、初めて見たのに、何故だかこの感覚、懐かしい。
「楽しみだなぁ」
あぁ。
「そうだな」
ニヤリと笑うノリトさんを見て。
ヒステリックも疲れた太田を振り返りもしない俺たちは。そんなことなんかよりいまはただそう。
アーティストのライブ前のファン。
そうだこれは、懐かしい。そして、楽しいんだ、凄く。この特有の、場でしか味わえない興奮は、客席にしか、わからない事情なんだ。
えっ。
これ俺どうするべきなの?
この、動物園みたいな状況。
「うるせぇ、っんだよ、貴様らぁぁぁ!」
ついに太田、キレ始めた。
一同黙りこくる。
「こっちが黙ってりゃ調子込みやがってぇ!ぶっ殺すぞGo to Hell! Fuck in out!」
喚くが、
「うわやぁだ」
と殺し屋が言い、それに対し、「え何て言ったの?」とチビが問う。
それをちらっと見る金髪という奇妙な構図に、今度はタカさんノリトさんが爆笑した。
「うんうん、嫌だねぇ、ホントその通りだなおチビ」
「え?チビっつったんかあいつ」
「違う違う。もっとイヤらしい意味だよ。しかもあんたらにじゃねぇさ。俺たちにだよ」
「えなに、やっぱあんたらそんな感じ?」
「そうそう。
ねぇあのさぁ、3ピースのリズムってどーやったらいーかなぁ。あとで教えてよ兄ちゃん。いまからあんたら観に行くからさ。メアド交換しね?」
「うーん、ちなみに次は?」
「Space」
「あんたのプレイ、そこそこよかったよ今日。Spaceかぁ。いいんじゃないですか?刺激的で。たまにはあんなジャンク感も。観たことあるんでしょ?」
「うん」
「どうせあんたらにはまぁ、あいつ?ブランドなんてなかったっぽいしね。まぁそうね。あんたらよかヘッタクソだがまぁウチも観てくなら、そうですね。メアドは終わったら。
栗村文杜です。まぁもし覚えてくれるなら」
「覚えとく。高安雄仁」
「そういえば野外どうでした?」
今度はノリトさんが金髪ドラムに聞く。金髪は、「あぁ、まぁ」と、タバコに火をつけた。
「びしゃびしゃ。ちょーびしゃびしゃ。
俺らチビのせいで野外とかマジ不慣れだからなぁ。
いや俺はわりとさ、ほらあんたもわかるっしょ?びしゃびしゃなわけ室内でも。それ嫌がるわけこいつ一丁前に。
でもいいねあれシャワー浴びなくて済むわ。こっち空気ちょー汚ぇけど、なんか最近中国のよくわかんねぇガス?舞ってるらしいけどでもいいね雨。マジセルフサービスシャワー。俺野外好きだわ野外やりたいけど真樹」
「やだ。それ聞いたら余計やだ」
「んなこと言ってあまちゃん気持ち良さそうだったじゃん。史上最大級のアへ顔だったんじゃない?」
「アへ顔ゆーなし、こっちとらラリってんのじゃアホ!何回イきそうになった思っとんねん」
なんだそれ。
メンバー二人から「それちょっ、卑猥」だの「気持ちぃよな、バーカそのまま死ねばよかったのに」だの言われている。
何このバンド。
絶対男子校出身だよこいつら。ノリが大学生よか男子校だよ。
ただなにこれ。
むちゃくちゃ楽しそうですけどこのバカバンド。
ふとチビと目が合う。
見上げるように俺を見る彼はただ一言無愛想に言う、「来る?」と。
さぁ。
でも俺はもうはっきり言えば。
「いや、」
「あっそう」
わかんねぇんだ。音楽が。
「えつか時間じゃね?」
「あっ」
「あっ、すんません」
「まいいんじゃね?んなことより文杜、ジーマジーマ」
「あ、さっき飲んじゃったねあまちゃん。大変だ買ってこないと」
「いや俺が買ってくるばい。お前今走ったら多分鼻血出るやろ」
「そーゆーナトリもお国言葉が出ていらっしゃるばい、あれぇ?俺らどんだけ飲んだぁ?」
「お前途中ウォッカに火ぃつけようとしました。俺が止めて2杯ストレートです」
なんだそれ。
チビはチビで、「火なんてつかんかったね~」とか言ってる。なに、大丈夫かこいつら。
「だって、」
「はいはい、いいからジーマ3人で1本づつにしよう。そろそろ誰かがアル中で運ばれるわバカ」
「去年はあまちゃんだったねぇ。終わった瞬間袖でスターンって。ヤク中かよつかXかよ」
「本来それ俺の見せ場だぞチビ。死ね、ホント」
「はっはー!あんへりぃんにー」
「アンヘドニア!ひぇい!」
「大丈夫か文杜。お前も今日はヤバイぞ。俺二人分介護とかマジ嫌だよ。それ男子校で終えたはずだよなぁ、おい」
雑談しながら3人とも非常にヤバ気なテンションで、「しーゆーげーん!」とチビが言い残して手を振りながら楽屋を去っていく。
嵐、と言うよりはなんだか、雷のような三人の去り行く背中を唖然と見送って俺とタカさんとノリトさんはまず、誰からともなく吹き出して、「さぁさ」とタカさんが言う。
「俺らも観に行くかー」
「俺初めてだよ。どんなバンドなんだ?」
「んー?まぁ俺もあんまよく知んねぇけど文杜くん?が指弾き。何気に侮れない。ドラムは下手すりゃ負けちゃうかもよぉ?ノリト」
「マジか」
「ギターはねぇ、最早弦次、うん、お前の渇望には持ってこいだ。まずチューニングしてやんな」
「えぇ?もしやそーゆー系?」
ヤバい系?ヤバい勘違い系?どっちだ?
「うーん、わからん。俺はベンジー系だと思うよある意味」
「へ?」
「まま、行こう行こう」
なんだろう。
しかしなんだろう。
俺とノリトさんの肩を掴み、「へへっ、」と笑うタカさん、初めて見たのに、何故だかこの感覚、懐かしい。
「楽しみだなぁ」
あぁ。
「そうだな」
ニヤリと笑うノリトさんを見て。
ヒステリックも疲れた太田を振り返りもしない俺たちは。そんなことなんかよりいまはただそう。
アーティストのライブ前のファン。
そうだこれは、懐かしい。そして、楽しいんだ、凄く。この特有の、場でしか味わえない興奮は、客席にしか、わからない事情なんだ。
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