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CRAVING【短編】
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「あっ、」
そしてそれから4年が経った今。
場所はZeppe Tokyo、楽屋。
あれから、一度の活動休止を(早くも)一年くらいした俺たち『エレクトリック・レインボー』、通称“でんにじ”は、休止復活ライブをしようとこの場に来ている。
何故休止になったか。
「う゛~、マジ吐く、」
ただいま楽屋のソファでダウン中のリーダー兼、ギターボーカルの天崎真樹、通称あまちゃん。こいつはそのあだ名に恥じぬあまちゃん野郎で、こいつの情緒不安定さ&売れずに事務所契約が切れてしまった故にその事態に陥ったのだった。
「死んじゃうかもしれない」
この野郎がどう情緒不安定かって。
カート・コーバンまでとはいかなかった。
しかしながらいまこうして、復活ライブ前日にまぁ、なんたら安定剤だのを飲みまくって揚げ句、酒とスポドリをアレしすぎて寝不足なんだか眠くねえんだか、鬱なんだかテンション高いんだか取り敢えず高熱出してゲロ吐いて酒飲んでを繰り返すくらいのアホだった。信じられない。それで生きてるとか俺には神の憐れみが混じる嘲笑じみたお恵みにしか思えない。
だって俺実は、信じてねぇけど墓が十字架系のクリスチャンらしいし。どーでもいいけど。
「どしたのげんちゃん」
「いやぁ」
そう言いながら、我がバンドのシド・ヴィシャス、栗村文杜は、我がバンドのX,YOSHIKIの台湾ハーフ、国木田ナトリとやっていた、なんかよくわからない一方的に掌を殴り付けるジョブをやめて俺を見た。
この二人いつもそうだ。ナトリさん、いつも突発的に何かをやられても受け止めちゃう人。文杜さん、見た目に似合わずわりと爆走型。あまちゃん、ほっとけばうるさいだけ。
「なんでもねっす」
「あそう?なんか思い出した感満載じゃなかった?」
「いや、セトリとか」
「あれ?久しぶりだからちょっと~。
まぁそうだねぇ。まぁでも、んなグロってる真樹多分あんまセトリセンスないよ」
「あ、俺仮に考えたけど?」
「えやだぁ。お前の最近見てるとなんだっけサポート。セックス」
「サキソフォンだよバカなのお前」
「あーそれ高校でも言われたわ。
で、セックスのプレイスタイルだと嫌だ。だって俺あんなね、うちエレキ2pよ?主導権争い出来るほど最強じゃないわ、んな若くなーい」
「いちいちなんなのお前。あれかもしかして音楽部の」
「はーい、今からジャズベース破壊しまーす。でんにじかいさーん。これから俺シド・ヴィシャス」
「怖いよ栗村さん。地味に重いから、つぅか若くねぇんでしょ?やめときなよシド・ヴィシャス。大体あんたあれ昔なんか微妙がってたでしょ」
「え?何言ってんの?
シド・ヴィシャスはハードル高いって話だよげんちゃん。ダメだなぁ。やっぱ太田のクソバンドからウチ来てよかったねー」
なっ。
「話すり変わってる話すり変わってる」
「ねっ、てか俺グロってんのにガチで貴様らうるさくねぇ?」
不機嫌な低音ボイスであまちゃんが言うも、間を置き、しかし久しぶり。
なんだか高揚したのか文杜さんはにっかにかな笑顔で、ナトリさんは俯いた顔は笑顔、しかしあまちゃんを見る顔は真顔で、二人ハモろうとしたところに俺もタイミング合わせ、
「お前のせいだわ!」
と、言えたら3人、見合わせて笑ってしまった。
「さーぁ、
真樹ぃ。行くぞ。あーおぶってくから」
「うぃー…あと5分…」
「大丈夫だよ。ギブソン触れば、な?」
珍しく優しく言うナトリさんに、「うん…」と、ゆらりとあまちゃんは起き上がり、そのまま背負われて先に楽屋を出て行った。
「栗村さん」
「ん?」
「いや、さっきね。ふと思い出して。
あの日栗村さん、だからBreed、唄っちゃったのかなぁ、なぁんてさ」
あれから4年で色々、メンバーを知った。あまちゃんのことも少し、栗村さんやナトリさんのことも少しだけ。だから。
あまちゃんに。
カート・コーバンにシド・ヴィシャスが夢を。
なぁんてな。
バカみてぇな。
「ふふっ、」
しかし文杜さんは笑ってくれて。
「さぁ、わかんね」
「…そう、」
「げんちゃん、君って、わりと良いやつだよね。たまに言われない?」
「え?」
そうかなぁ。
「さ、行こうかげんちゃん。
Every line ends in rhyme.
I don't know why,Less is more, love is blind.Stay away.君は、どう訳す?」
「栗村さん…」
あぁ、そう。
にやっと笑って背中を向ける。
ありがとう、俺の、シド・ヴィシャス。
わかりましたよ。
あんたや、あんたのカート・コーバンだって、そうさ。
実はシド・ヴィシャスでもカート・コーバンでもアベフトシでもYOSHIKIでもねぇから。
そう、俺多分。
あんたら単純に、好きなんだと、一緒にいたい、音楽やって生きて呼吸したい。そう、思えた25歳、夏。
まだある人生に、Craving.
そしてそれから4年が経った今。
場所はZeppe Tokyo、楽屋。
あれから、一度の活動休止を(早くも)一年くらいした俺たち『エレクトリック・レインボー』、通称“でんにじ”は、休止復活ライブをしようとこの場に来ている。
何故休止になったか。
「う゛~、マジ吐く、」
ただいま楽屋のソファでダウン中のリーダー兼、ギターボーカルの天崎真樹、通称あまちゃん。こいつはそのあだ名に恥じぬあまちゃん野郎で、こいつの情緒不安定さ&売れずに事務所契約が切れてしまった故にその事態に陥ったのだった。
「死んじゃうかもしれない」
この野郎がどう情緒不安定かって。
カート・コーバンまでとはいかなかった。
しかしながらいまこうして、復活ライブ前日にまぁ、なんたら安定剤だのを飲みまくって揚げ句、酒とスポドリをアレしすぎて寝不足なんだか眠くねえんだか、鬱なんだかテンション高いんだか取り敢えず高熱出してゲロ吐いて酒飲んでを繰り返すくらいのアホだった。信じられない。それで生きてるとか俺には神の憐れみが混じる嘲笑じみたお恵みにしか思えない。
だって俺実は、信じてねぇけど墓が十字架系のクリスチャンらしいし。どーでもいいけど。
「どしたのげんちゃん」
「いやぁ」
そう言いながら、我がバンドのシド・ヴィシャス、栗村文杜は、我がバンドのX,YOSHIKIの台湾ハーフ、国木田ナトリとやっていた、なんかよくわからない一方的に掌を殴り付けるジョブをやめて俺を見た。
この二人いつもそうだ。ナトリさん、いつも突発的に何かをやられても受け止めちゃう人。文杜さん、見た目に似合わずわりと爆走型。あまちゃん、ほっとけばうるさいだけ。
「なんでもねっす」
「あそう?なんか思い出した感満載じゃなかった?」
「いや、セトリとか」
「あれ?久しぶりだからちょっと~。
まぁそうだねぇ。まぁでも、んなグロってる真樹多分あんまセトリセンスないよ」
「あ、俺仮に考えたけど?」
「えやだぁ。お前の最近見てるとなんだっけサポート。セックス」
「サキソフォンだよバカなのお前」
「あーそれ高校でも言われたわ。
で、セックスのプレイスタイルだと嫌だ。だって俺あんなね、うちエレキ2pよ?主導権争い出来るほど最強じゃないわ、んな若くなーい」
「いちいちなんなのお前。あれかもしかして音楽部の」
「はーい、今からジャズベース破壊しまーす。でんにじかいさーん。これから俺シド・ヴィシャス」
「怖いよ栗村さん。地味に重いから、つぅか若くねぇんでしょ?やめときなよシド・ヴィシャス。大体あんたあれ昔なんか微妙がってたでしょ」
「え?何言ってんの?
シド・ヴィシャスはハードル高いって話だよげんちゃん。ダメだなぁ。やっぱ太田のクソバンドからウチ来てよかったねー」
なっ。
「話すり変わってる話すり変わってる」
「ねっ、てか俺グロってんのにガチで貴様らうるさくねぇ?」
不機嫌な低音ボイスであまちゃんが言うも、間を置き、しかし久しぶり。
なんだか高揚したのか文杜さんはにっかにかな笑顔で、ナトリさんは俯いた顔は笑顔、しかしあまちゃんを見る顔は真顔で、二人ハモろうとしたところに俺もタイミング合わせ、
「お前のせいだわ!」
と、言えたら3人、見合わせて笑ってしまった。
「さーぁ、
真樹ぃ。行くぞ。あーおぶってくから」
「うぃー…あと5分…」
「大丈夫だよ。ギブソン触れば、な?」
珍しく優しく言うナトリさんに、「うん…」と、ゆらりとあまちゃんは起き上がり、そのまま背負われて先に楽屋を出て行った。
「栗村さん」
「ん?」
「いや、さっきね。ふと思い出して。
あの日栗村さん、だからBreed、唄っちゃったのかなぁ、なぁんてさ」
あれから4年で色々、メンバーを知った。あまちゃんのことも少し、栗村さんやナトリさんのことも少しだけ。だから。
あまちゃんに。
カート・コーバンにシド・ヴィシャスが夢を。
なぁんてな。
バカみてぇな。
「ふふっ、」
しかし文杜さんは笑ってくれて。
「さぁ、わかんね」
「…そう、」
「げんちゃん、君って、わりと良いやつだよね。たまに言われない?」
「え?」
そうかなぁ。
「さ、行こうかげんちゃん。
Every line ends in rhyme.
I don't know why,Less is more, love is blind.Stay away.君は、どう訳す?」
「栗村さん…」
あぁ、そう。
にやっと笑って背中を向ける。
ありがとう、俺の、シド・ヴィシャス。
わかりましたよ。
あんたや、あんたのカート・コーバンだって、そうさ。
実はシド・ヴィシャスでもカート・コーバンでもアベフトシでもYOSHIKIでもねぇから。
そう、俺多分。
あんたら単純に、好きなんだと、一緒にいたい、音楽やって生きて呼吸したい。そう、思えた25歳、夏。
まだある人生に、Craving.
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