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第二実験室へ入ってすぐに雨川は着ていた白衣を捨てる。
一応座った診察室のようなベットと、南沢が向かい合って目の前のデスクから椅子をこちらに向ける。
そうなって大体問診、というかなんというかそれがスタートする。
雨川がシャツのボタンを外して行く様を南沢がまじまじと確認している。胸が見えたら触診。というか胸筋を鷲掴みしたりして少し拷問じみている見栄えだが、ちゃんとれっきとした診察。
南沢も難しい顔で「うーん」と言っている、これは月一恒例である。
ただぶっちゃけ雨川はこれが嫌いだ。何故なら男性のそれよりか感度がある。南沢には言わないが。言えないが。
「…いいっすか」
「うん。脇は?」
「生えてないけど」
「まぁなんとなくは脱がなくても見えるねぇ。君、本当に8歳くらいで止まってんのね。
それから変化もない?」
「ないと思うけど」
「一応…」
「はい」
今更南沢に言いにくそうにされるが、ここでこちらが恥じらいを見せたらいけない。下も一気に全部脱いでやる。神妙にそれを眺めて南沢は「マジで一本もないねぇ、毛」とか言ってやがる。
即座に履いて、着て、雨川は涼しい顔を保つことにした。
「生理も?」
「ない」
「さっきなんか腰が痛そうだったのは?」
「…歳じゃない?」
「そっかぁ…」
シャツのボタンをはめている間、南沢は自分のカルテにパソコンで、「予兆なし」と書き込んでいた。
「でも不思議なもんで、下半身以外はこうなんだろ、ウエストとかは確かに男っぽいよね雨川くん」
「そうですね」
「おっぱいもない」
「普通の女ならあんたぶち殺されてますよマジで」
「いいじゃない、君男の子なんでしょ?」
「…診察の後に言われるのわりと傷付く、とくにあんた」
「でも俺しか知らないじゃん?実は性別学的に女としている、だなんて。
まぁホルモンバランスと性器だけでそれと呼ばれてしまっているのだけどね、君は」
「まぁ…はい」
「だけどさぁ、まだ希望はあるよ雨川くん。
ここまでくると君のそれ、最早、両性具有的なやつかなって気がする」
「…それを否定したのあんたじゃないですか」
「いや、それがね。
ここが今日の本題。雨川くん、ちょっと来てくれない?」
「はぁ?どこに?」
雨川がそう言えば南沢は自分の後ろを顎でしゃくって振り返った。
確かに、後ろに扉がある。この扉はそのまま第一か第三、どちらか忘れたが実験室だかなんだかにまぁ、繋がっている。
先程のもあり、不信な顔付きで見つめる雨川と、先程の色々な己の暴挙を忘れることにした南沢は、「何が」と「さぁ、」がハモって互いに黙る。
思うところはそれは互いにあるのだろうが。
「あのねぇ、雨川くん」
「なんですか南沢准教授」
「嫌みっぽいなぁ。
俺別にねぇ、」
「何があるのですかあちらには」
「あぁ、だから行こうって言ってるじゃんか」
「貴方の悪いところ言い当てましょうか。
他者とのコミュニケーションだと思われますよ。あと全体的に社会不適合です」
「…はいはい、もうねちっこいなぁ君はそうやって。まだ怒ってるの?」
「いいえ、今思った率直な感想ですよ」
「さいですか。来てくれますか?」
「いいですよ。俺はわりと社会適合な人間だと自称していますので」
珍しくにかっと笑う雨川のそれが憎たらしくも新鮮だった。クソ野郎、可愛いじゃねぇかムカつくなぁ、と、少し自分が情けなくなるような思いがする南沢だった。
「さて、で?」
とか不純なことを考えていたら先に立ち上がった雨川に促されてしまうのも癪だが、まぁ心地は悪くない。
どうやら上手く乗せたな。南沢も立ち上がり、「あちらでございまーす」と、それから奥の、後ろの扉へ、二人で向かう。
さて、これを見せたときの君の反応はどうなのだろうかという南沢の少しの高揚と、
どうせろくでもないだろうがこの男の高揚を見る限りまぁ確かに、何かは飛び出るだろう。一応若くして准教授だ。頭はおかしいがキレる。
それなりの覚悟がいるだろうと雨川が身構えた。
雨川の薄い横顔、男であれば一言にもみあげ、ここに一筋流れる汗が堪らなくそそるなぁ、正直なやつだと南沢は笑いたくなってしまったが堪えた。
底冷えに似た高揚。俺は少しこいつに毒されている。
相手は男だ。(仮)、それがいけない。
実験体だ、そう思ったら南沢は雨川の汗を、指で拭ってやってしまった。やはり、迷惑そうに雨川に睨まれ、払い落とされてしまう。
雨川、それが悪いんだよ、と。
「まぁ身構えるな。大丈夫リラックス」
「変態臭い」
「よく言われる。なんとも思わないわ。君には特にね」
「では紳士的ですねー、あーすげぇ、俺には出来なーい」
「はは、ぶっ飛ばしたいねそれ。はーい開けまーす」
「え、あ、」
開けられた。
開けたそばからまず、アクリルが掛かった部屋だった。
一応座った診察室のようなベットと、南沢が向かい合って目の前のデスクから椅子をこちらに向ける。
そうなって大体問診、というかなんというかそれがスタートする。
雨川がシャツのボタンを外して行く様を南沢がまじまじと確認している。胸が見えたら触診。というか胸筋を鷲掴みしたりして少し拷問じみている見栄えだが、ちゃんとれっきとした診察。
南沢も難しい顔で「うーん」と言っている、これは月一恒例である。
ただぶっちゃけ雨川はこれが嫌いだ。何故なら男性のそれよりか感度がある。南沢には言わないが。言えないが。
「…いいっすか」
「うん。脇は?」
「生えてないけど」
「まぁなんとなくは脱がなくても見えるねぇ。君、本当に8歳くらいで止まってんのね。
それから変化もない?」
「ないと思うけど」
「一応…」
「はい」
今更南沢に言いにくそうにされるが、ここでこちらが恥じらいを見せたらいけない。下も一気に全部脱いでやる。神妙にそれを眺めて南沢は「マジで一本もないねぇ、毛」とか言ってやがる。
即座に履いて、着て、雨川は涼しい顔を保つことにした。
「生理も?」
「ない」
「さっきなんか腰が痛そうだったのは?」
「…歳じゃない?」
「そっかぁ…」
シャツのボタンをはめている間、南沢は自分のカルテにパソコンで、「予兆なし」と書き込んでいた。
「でも不思議なもんで、下半身以外はこうなんだろ、ウエストとかは確かに男っぽいよね雨川くん」
「そうですね」
「おっぱいもない」
「普通の女ならあんたぶち殺されてますよマジで」
「いいじゃない、君男の子なんでしょ?」
「…診察の後に言われるのわりと傷付く、とくにあんた」
「でも俺しか知らないじゃん?実は性別学的に女としている、だなんて。
まぁホルモンバランスと性器だけでそれと呼ばれてしまっているのだけどね、君は」
「まぁ…はい」
「だけどさぁ、まだ希望はあるよ雨川くん。
ここまでくると君のそれ、最早、両性具有的なやつかなって気がする」
「…それを否定したのあんたじゃないですか」
「いや、それがね。
ここが今日の本題。雨川くん、ちょっと来てくれない?」
「はぁ?どこに?」
雨川がそう言えば南沢は自分の後ろを顎でしゃくって振り返った。
確かに、後ろに扉がある。この扉はそのまま第一か第三、どちらか忘れたが実験室だかなんだかにまぁ、繋がっている。
先程のもあり、不信な顔付きで見つめる雨川と、先程の色々な己の暴挙を忘れることにした南沢は、「何が」と「さぁ、」がハモって互いに黙る。
思うところはそれは互いにあるのだろうが。
「あのねぇ、雨川くん」
「なんですか南沢准教授」
「嫌みっぽいなぁ。
俺別にねぇ、」
「何があるのですかあちらには」
「あぁ、だから行こうって言ってるじゃんか」
「貴方の悪いところ言い当てましょうか。
他者とのコミュニケーションだと思われますよ。あと全体的に社会不適合です」
「…はいはい、もうねちっこいなぁ君はそうやって。まだ怒ってるの?」
「いいえ、今思った率直な感想ですよ」
「さいですか。来てくれますか?」
「いいですよ。俺はわりと社会適合な人間だと自称していますので」
珍しくにかっと笑う雨川のそれが憎たらしくも新鮮だった。クソ野郎、可愛いじゃねぇかムカつくなぁ、と、少し自分が情けなくなるような思いがする南沢だった。
「さて、で?」
とか不純なことを考えていたら先に立ち上がった雨川に促されてしまうのも癪だが、まぁ心地は悪くない。
どうやら上手く乗せたな。南沢も立ち上がり、「あちらでございまーす」と、それから奥の、後ろの扉へ、二人で向かう。
さて、これを見せたときの君の反応はどうなのだろうかという南沢の少しの高揚と、
どうせろくでもないだろうがこの男の高揚を見る限りまぁ確かに、何かは飛び出るだろう。一応若くして准教授だ。頭はおかしいがキレる。
それなりの覚悟がいるだろうと雨川が身構えた。
雨川の薄い横顔、男であれば一言にもみあげ、ここに一筋流れる汗が堪らなくそそるなぁ、正直なやつだと南沢は笑いたくなってしまったが堪えた。
底冷えに似た高揚。俺は少しこいつに毒されている。
相手は男だ。(仮)、それがいけない。
実験体だ、そう思ったら南沢は雨川の汗を、指で拭ってやってしまった。やはり、迷惑そうに雨川に睨まれ、払い落とされてしまう。
雨川、それが悪いんだよ、と。
「まぁ身構えるな。大丈夫リラックス」
「変態臭い」
「よく言われる。なんとも思わないわ。君には特にね」
「では紳士的ですねー、あーすげぇ、俺には出来なーい」
「はは、ぶっ飛ばしたいねそれ。はーい開けまーす」
「え、あ、」
開けられた。
開けたそばからまず、アクリルが掛かった部屋だった。
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