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「いやぁ店主、えろう良かった。女みてぇで最高やけど、…暫くは何も出えへんな…」
翌朝。
明るい声色のわりに武智の目元は3歳くらい老けたようにげっそりと隈が出来ていた。
…どうやら。
「搾り取られたわ…」
客を見送りもしない翡翠は恐らくあの空き部屋だろう。
上機嫌な武智に「それはよかった」と、店主は偉く低い、腹に残る声でその他と変わらず延べ、武智を見送った。
それから、桶と手拭いを持ち、暫く空いていた埃臭い見世の戸を開けに行く。
開けただけでむわっと生臭い。
翡翠は戸から背を向け、布団にくるまっていた。
背中に彫られた藤の中にいる百舌鳥の頭が布団からこちらを覗いている。
翡翠には来訪者が店主だとわかったのだけど、最早そちらへ寝返る気もなくただただぼんやりと窓の光を眺めるばかり。
直前まで男に舐めずられていた背中の百舌は囀りもしない。
どこもかしこも、頭から足先まで食い散らかされた死体のような気分。腸に染みる温さが気持ち悪い。
店主が何も言わずに静かに戸を閉め、「客を見送らねぇとはどういうことだ」と、腹に残る低音で小言を漏らす。
それだけで少し、込み上げるものが汗と、とにかく体を火照らせるように感じた。
「起きてんだろ翡翠。臭ぇんだよ」
あんたのせいだ。
その小言に似た呪い事すらも片隅に押しやられるほど、何に対しても気力が湧かない。
そんなもの、あのドヘタクソな変態になぶられながら、死ぬほど考え疲れた感情だった。
店主がすぐ背中で座ったのがわかる。
だがこちらも意地で泣きそうだ。顔も見たくないと思うのに、髪止めが指で解かれ肌にベタベタと張り付いた髪が首筋から剥がれる。
その指の感触に身体がビクッと反応した。
…最早、痛みかどうかもわからない。
暫し店主が顔を眺めているのも凌辱な気がしていたたまれないが感覚はそもそも麻痺している。
なのに、意思に反し治まらない翡翠の熱は中心へ逃げ場を求めるのだから死にたくなる。
店主がすぐ側で手拭いを絞り首筋に当ててくる。
悔しさに染まった反射でばしっと拒絶し店主を睨み付ければ、顔を歪めて思い切り舌打ちをされた。
何を言ってやろうかこの忘八に。
考えれば考えるほど頭が沸きそうなくらい、身体が熱くなる。だが、店主は翡翠の気持ちに構いなく、弾かれた手拭いを拾い首筋を拭った。
その感触は翡翠の予想より、優しい気がして戸惑った。
「…っ藤、がはっ、」
がらがらで声もまばらだが再び「ふじしまさまっ、」と翡翠は店主を呼ぶ。
何を店主に言おうかまだ考えていて、店主の藤嶋も翡翠に無言のまま不機嫌に歪んでいく。
首筋や髪や…肩の痕を拭うあたりで店主の表情は歪みから少し無表情に変わるのだが、視線だけはそれに反して穏やかだった。
「こってり絞られたな」
ふと、藤嶋が翡翠の手首に薄く残った絞め痕に気付いたと視線でわかる。
藤嶋の気付きに翡翠が気付けばすぐ、布団を剥がされ朝日に身体が晒された。
百舌鳥はそれでも鳴かない。
自棄に執拗にその肩を拭い始めた痛みに、そういえば出会った頃、藤嶋は毎日この肩に軟膏を塗ってくれた。
思い出した事柄に却って傷付く。
この人だけは自分の気持ちをわかってくれていたと、勝手に思っていたからだ。
背中を舐められていると錯覚するほどに優しい手付きで手拭いがその、ところどころ精子が乾いた滑らかな肌を拭っていく。
まるで女のようだが、筋はあるもんだな。
背骨をすっと拭われるのにこそばゆさ、嫌悪を感じてしまう。
「こそばい」
縮こまり股間を隠している自分を藤嶋がどう見るかは知らないが、藤嶋は平坦に「足を伸ばせ」と命じてきた。
「嫌や」
店主に反抗をしたせいか「あっそ、」と言ってはわざとらしく股へ手拭いを這わせてくるのだから、羞恥だ。失敗した。
陰嚢か陰茎かに触れる位置まで拭ってくるのだから「やめてくださいよ、」と意義を申し立てるも当然だ。
それにも店主は何事もないように「別に」と平坦に言うのだから、流石に泣きそう、頭に来て「なんなん、ですか、」と語尾を震わせた。
「なんだ恥ずかしいのかぁ?」
「…んなん、やなくて、」
「じゃぁ良いだろ」
この人のわからず屋さに傷付く。
「…んで?」
何で、を誤飲してしまった。息が詰まって苦しいくらいに。
「あ?」
「んでっ、こんな、」
「てめぇ今更泣くほど初でもねぇだろこの淫乱が。おいまだ足んねぇか勃ってんぞ」
「…るさ、違う、」
「大人しくしてろよ」
藤嶋は、そう言って翡翠の痛む股間に手を伸ばし、あろうことか手で触れ始めるのだから「…めて、痛い、」と抗議が漏れる。
その少年の抗議に藤嶋の手は足の間から抜かれたが、ここまでくるとそれももどかしいと感じる。だが意地でも我慢してやると翡翠は意気込んだのだが、今度は溜め息を吐き割れ目に手拭いを当てるのだから「あっ…、」と、声が思わず漏れてしまった。
「力抜けよ」
淡々と言い穴へ指を入れようとする店主は「痛ぇんだろ?」と続ける。
自分もあっさり力を抜いてしまうのに「いい子」と言われ、何様だよと翡翠は大人を頭で批判した。
「…出さねぇと腹壊すんだよ、知らねぇだろうけど」
藤嶋の一言に羞恥が沸いた。
ゆっくり、藤嶋に掻き出される感触に「んんっ、」とどうしても声が出る。
店主の方が慣れているし何より藤嶋の指が骨っぽくて変になる、自然に力が抜けてしまう。
だけど藤嶋はえらく自分に淡々としてると翡翠は感じた。淡々と自分は藤嶋に犯されている。
その方がいくらでも悲しくなった。
自分だって武智に淡々としていた癖に。
「んんっ、はっ、」と、翡翠の涙に濡れた声と水の音が重なる。どんどん悲しくなっていくのだが、それに藤嶋が呆れたように溜め息を吐くのだから、終わった頃に「死ね、あほ」と子供は悪態しか吐き出せない。
「…一通り終わったが風呂入って帰ってこい」
それを言い残し藤嶋は本当に部屋から出て行ってしまった。
熱を全て冷ましてしまおうと、翡翠は縮こまって陰茎を手でしごき、声を殺して暫く一人で泣いていた。
翌朝。
明るい声色のわりに武智の目元は3歳くらい老けたようにげっそりと隈が出来ていた。
…どうやら。
「搾り取られたわ…」
客を見送りもしない翡翠は恐らくあの空き部屋だろう。
上機嫌な武智に「それはよかった」と、店主は偉く低い、腹に残る声でその他と変わらず延べ、武智を見送った。
それから、桶と手拭いを持ち、暫く空いていた埃臭い見世の戸を開けに行く。
開けただけでむわっと生臭い。
翡翠は戸から背を向け、布団にくるまっていた。
背中に彫られた藤の中にいる百舌鳥の頭が布団からこちらを覗いている。
翡翠には来訪者が店主だとわかったのだけど、最早そちらへ寝返る気もなくただただぼんやりと窓の光を眺めるばかり。
直前まで男に舐めずられていた背中の百舌は囀りもしない。
どこもかしこも、頭から足先まで食い散らかされた死体のような気分。腸に染みる温さが気持ち悪い。
店主が何も言わずに静かに戸を閉め、「客を見送らねぇとはどういうことだ」と、腹に残る低音で小言を漏らす。
それだけで少し、込み上げるものが汗と、とにかく体を火照らせるように感じた。
「起きてんだろ翡翠。臭ぇんだよ」
あんたのせいだ。
その小言に似た呪い事すらも片隅に押しやられるほど、何に対しても気力が湧かない。
そんなもの、あのドヘタクソな変態になぶられながら、死ぬほど考え疲れた感情だった。
店主がすぐ背中で座ったのがわかる。
だがこちらも意地で泣きそうだ。顔も見たくないと思うのに、髪止めが指で解かれ肌にベタベタと張り付いた髪が首筋から剥がれる。
その指の感触に身体がビクッと反応した。
…最早、痛みかどうかもわからない。
暫し店主が顔を眺めているのも凌辱な気がしていたたまれないが感覚はそもそも麻痺している。
なのに、意思に反し治まらない翡翠の熱は中心へ逃げ場を求めるのだから死にたくなる。
店主がすぐ側で手拭いを絞り首筋に当ててくる。
悔しさに染まった反射でばしっと拒絶し店主を睨み付ければ、顔を歪めて思い切り舌打ちをされた。
何を言ってやろうかこの忘八に。
考えれば考えるほど頭が沸きそうなくらい、身体が熱くなる。だが、店主は翡翠の気持ちに構いなく、弾かれた手拭いを拾い首筋を拭った。
その感触は翡翠の予想より、優しい気がして戸惑った。
「…っ藤、がはっ、」
がらがらで声もまばらだが再び「ふじしまさまっ、」と翡翠は店主を呼ぶ。
何を店主に言おうかまだ考えていて、店主の藤嶋も翡翠に無言のまま不機嫌に歪んでいく。
首筋や髪や…肩の痕を拭うあたりで店主の表情は歪みから少し無表情に変わるのだが、視線だけはそれに反して穏やかだった。
「こってり絞られたな」
ふと、藤嶋が翡翠の手首に薄く残った絞め痕に気付いたと視線でわかる。
藤嶋の気付きに翡翠が気付けばすぐ、布団を剥がされ朝日に身体が晒された。
百舌鳥はそれでも鳴かない。
自棄に執拗にその肩を拭い始めた痛みに、そういえば出会った頃、藤嶋は毎日この肩に軟膏を塗ってくれた。
思い出した事柄に却って傷付く。
この人だけは自分の気持ちをわかってくれていたと、勝手に思っていたからだ。
背中を舐められていると錯覚するほどに優しい手付きで手拭いがその、ところどころ精子が乾いた滑らかな肌を拭っていく。
まるで女のようだが、筋はあるもんだな。
背骨をすっと拭われるのにこそばゆさ、嫌悪を感じてしまう。
「こそばい」
縮こまり股間を隠している自分を藤嶋がどう見るかは知らないが、藤嶋は平坦に「足を伸ばせ」と命じてきた。
「嫌や」
店主に反抗をしたせいか「あっそ、」と言ってはわざとらしく股へ手拭いを這わせてくるのだから、羞恥だ。失敗した。
陰嚢か陰茎かに触れる位置まで拭ってくるのだから「やめてくださいよ、」と意義を申し立てるも当然だ。
それにも店主は何事もないように「別に」と平坦に言うのだから、流石に泣きそう、頭に来て「なんなん、ですか、」と語尾を震わせた。
「なんだ恥ずかしいのかぁ?」
「…んなん、やなくて、」
「じゃぁ良いだろ」
この人のわからず屋さに傷付く。
「…んで?」
何で、を誤飲してしまった。息が詰まって苦しいくらいに。
「あ?」
「んでっ、こんな、」
「てめぇ今更泣くほど初でもねぇだろこの淫乱が。おいまだ足んねぇか勃ってんぞ」
「…るさ、違う、」
「大人しくしてろよ」
藤嶋は、そう言って翡翠の痛む股間に手を伸ばし、あろうことか手で触れ始めるのだから「…めて、痛い、」と抗議が漏れる。
その少年の抗議に藤嶋の手は足の間から抜かれたが、ここまでくるとそれももどかしいと感じる。だが意地でも我慢してやると翡翠は意気込んだのだが、今度は溜め息を吐き割れ目に手拭いを当てるのだから「あっ…、」と、声が思わず漏れてしまった。
「力抜けよ」
淡々と言い穴へ指を入れようとする店主は「痛ぇんだろ?」と続ける。
自分もあっさり力を抜いてしまうのに「いい子」と言われ、何様だよと翡翠は大人を頭で批判した。
「…出さねぇと腹壊すんだよ、知らねぇだろうけど」
藤嶋の一言に羞恥が沸いた。
ゆっくり、藤嶋に掻き出される感触に「んんっ、」とどうしても声が出る。
店主の方が慣れているし何より藤嶋の指が骨っぽくて変になる、自然に力が抜けてしまう。
だけど藤嶋はえらく自分に淡々としてると翡翠は感じた。淡々と自分は藤嶋に犯されている。
その方がいくらでも悲しくなった。
自分だって武智に淡々としていた癖に。
「んんっ、はっ、」と、翡翠の涙に濡れた声と水の音が重なる。どんどん悲しくなっていくのだが、それに藤嶋が呆れたように溜め息を吐くのだから、終わった頃に「死ね、あほ」と子供は悪態しか吐き出せない。
「…一通り終わったが風呂入って帰ってこい」
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