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For Someone
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「なんか、わざわざありがとうございます」
「いや、こちらこそだよ。てか良い人だったわ。俺実はね、お兄さんたちが来てくれる直前までめっちゃびびってたんだよ」
「え?」
「だってさ」
浦賀先輩はふと、どこか真っ直ぐ、景色を見上げる。よく先輩はそうする。
「妹さんを危険な目に遭わせるわ、前回制服めちゃくちゃにしちゃったわで。それで病院来たいなんてさ、間違いなく殴られるなって思ったもん」
「マリちゃん…あぁ、2番目のお兄さんとマスター、凄く気に入ったみたいでしたよ、先輩のこと。むしろあの日は…荏田先生が怒りを買っていて…もう凄まじく怒ってました。その場で先生を説教、みたいな」
「あっはっは!スゴいね。荏田先生のテキトーさは通用しなかったかー。笑っちゃいけないんだけど…面白いね。荏田先生、焦ってた?」
「いじけてました。もう私も説教されました」
「…でもそんな人がいてよかったね。
これ聞いていいかわかんないんだけど…。お兄さんって…」
「あぁ、はい。兄弟とは違います。ちょっと関係を説明するのが厄介なので大体は兄で済ませていますが。
同居人?と言うか保護者と言うか。私、親が三重にいまして。東京でお世話になってる人なんです。
けどいつもパッと出てくる一言は、二人とも兄なんです」
「良い関係だね…」
遠い目をする浦賀先輩。浮かんだのは弟さんだろうか。
「家族ってもんは、やっぱりいいね、きっと」
「どうでしょうかね」
「まぁ、人によるだろうけどね」
「そうですね」
この人にとっての家族って何だろう。
私にとっての家族って何だろう。
「でも言えるのはさ」
「はい」
「人は、生きるときは必ず一人だよね」
それにもなかなか同意は出来なかった。私はただただ黙ることしか出来ない。
けれども少し考えてみた。この人の生き方を。
多分この人は結構、ひとりで歩いてきているんだろう。
「一人で生きることも、悪くはないけど、たまには誰かと一緒に生きるのも、悪くないような気もします」
「え?」
「いや…なんか似たような人を、知ってるなと思って」
いつもひとりで、何かに耐えて。
「でも、わざわざ一人じゃなくても、全然構わないのになって、少し寂しくなるから」
「…君って結構やっぱり…」
「なんですか?」
「いや…」
浦賀先輩はなんだか柔らかい笑顔で私を見た。
「良い子だなって素直に思っただけ」
そうストレートに曇りなく言われてしまうと反応に困ってしまう。
「まぁ、テキトーに受け流して。時にそーゆーのも大切だよ」
そうなんだろうか。
あんまりそうしたくないけどな。
「あんまり忘れたくない一言だけどなぁ」
「…ホント変わってるね」
私は結構、この人は良い人なんじゃないかなって思うけどな。まだあんまりよくは知らないけど、知らないことばっかりだけど。
「私は、浦賀先輩わりと良い人なんじゃないかなぁ、って気がするけどな」
「言われたことないけど、どうして?」
「いや、一喜先輩が…」
まだそれしか言っていないのに、「あぁ、一喜か…」と先輩は言った。
「一喜には、俺は嫌われてるんだよ」
「え?それは違う気が…」
「いや、そうなの」
はっきりと言い切って私を見た。その目は少し、強く感じた。
「そうであって欲しい」
「え?…でも、浦賀先輩は…」
嫌いじゃないんでしょ?きっと。
だけど語らず浦賀先輩は、はぐらかすように微笑んだ。
この二人には、一体何があるんだろう。
でもきっと、はっきりとわかる。これ以上は入っていけないんだ、私は。
「…てか、俺急にお店に行くんだけど、大丈夫?まぁ、言い出したのは俺なんだけど」
「あ、あぁ」
急に話が変わって一瞬ついていけなかった。明らかなる話題への拒絶だと気付いた。
「あ、そうですねぇ…。柏原さん…マスターにはメールしたんで、まぁ…。どうせ時間的に休憩中だし。
ただ…。一番上のお兄さんには…事件の詳細まではちょっと…」
「え?」
「私にその…なんかそんなことがあったなんて知ったらまず卒倒するよね、てゆーか関係者全員ぶっ殺しに行きそうだよねってみんなで話してて…。あのとき一番上のお兄さん、たまたま不在だったんですけど、いなくてよかったねって話を実はしてたんですよー」
「うわぁ、一番厄介だね」
「はい。多分彼が一番厄介です」
「わかったわ。
小日向さん、彼氏作るのも一苦労だね」
「多分そうでしょうね…」
二人でそんな会話をしているうちにお店に着いた。覚悟を決めてお店の扉を開ける。
「おはようございま…あれ?」
見渡すと、みっちゃんの姿がなく、柏原さんとマリちゃんで雑談していた。
「おぅ、おはよう小夜ちゃんってあれ?あ!君はこの前の!」
柏原さん、すぐに浦賀先輩に気付いて駆け寄った。
「どうも、遅くなりました。漸く昨日退院しまして」
「え?昨日?」
「随分かかったね…ヤバかったの?」
「まぁ軽く脳挫傷と脳溢血でした」
「いやそれ軽くない軽くない!まぁ座って、あ、なんか飲む?なんなら学校じゃねーしタバコでも吸いな!」
「うわ、ありがたいです。お見舞いありがとうございました、これ、つまらない物なんですけど…」
それはどうかと思ったが浦賀先輩は、挨拶をして紙袋を柏原さんに渡してから座ってタバコを吸い始めた。
「え、マジ?わざわざ?いいのにそんな」
「礼儀正しいな…今時いるんだね…」
マリちゃんも一緒にタバコを吸い始める。取り敢えず私はカウンター席に座って3人を眺めることにした。
そして、重大なことを思い出した。
「いや、こちらこそだよ。てか良い人だったわ。俺実はね、お兄さんたちが来てくれる直前までめっちゃびびってたんだよ」
「え?」
「だってさ」
浦賀先輩はふと、どこか真っ直ぐ、景色を見上げる。よく先輩はそうする。
「妹さんを危険な目に遭わせるわ、前回制服めちゃくちゃにしちゃったわで。それで病院来たいなんてさ、間違いなく殴られるなって思ったもん」
「マリちゃん…あぁ、2番目のお兄さんとマスター、凄く気に入ったみたいでしたよ、先輩のこと。むしろあの日は…荏田先生が怒りを買っていて…もう凄まじく怒ってました。その場で先生を説教、みたいな」
「あっはっは!スゴいね。荏田先生のテキトーさは通用しなかったかー。笑っちゃいけないんだけど…面白いね。荏田先生、焦ってた?」
「いじけてました。もう私も説教されました」
「…でもそんな人がいてよかったね。
これ聞いていいかわかんないんだけど…。お兄さんって…」
「あぁ、はい。兄弟とは違います。ちょっと関係を説明するのが厄介なので大体は兄で済ませていますが。
同居人?と言うか保護者と言うか。私、親が三重にいまして。東京でお世話になってる人なんです。
けどいつもパッと出てくる一言は、二人とも兄なんです」
「良い関係だね…」
遠い目をする浦賀先輩。浮かんだのは弟さんだろうか。
「家族ってもんは、やっぱりいいね、きっと」
「どうでしょうかね」
「まぁ、人によるだろうけどね」
「そうですね」
この人にとっての家族って何だろう。
私にとっての家族って何だろう。
「でも言えるのはさ」
「はい」
「人は、生きるときは必ず一人だよね」
それにもなかなか同意は出来なかった。私はただただ黙ることしか出来ない。
けれども少し考えてみた。この人の生き方を。
多分この人は結構、ひとりで歩いてきているんだろう。
「一人で生きることも、悪くはないけど、たまには誰かと一緒に生きるのも、悪くないような気もします」
「え?」
「いや…なんか似たような人を、知ってるなと思って」
いつもひとりで、何かに耐えて。
「でも、わざわざ一人じゃなくても、全然構わないのになって、少し寂しくなるから」
「…君って結構やっぱり…」
「なんですか?」
「いや…」
浦賀先輩はなんだか柔らかい笑顔で私を見た。
「良い子だなって素直に思っただけ」
そうストレートに曇りなく言われてしまうと反応に困ってしまう。
「まぁ、テキトーに受け流して。時にそーゆーのも大切だよ」
そうなんだろうか。
あんまりそうしたくないけどな。
「あんまり忘れたくない一言だけどなぁ」
「…ホント変わってるね」
私は結構、この人は良い人なんじゃないかなって思うけどな。まだあんまりよくは知らないけど、知らないことばっかりだけど。
「私は、浦賀先輩わりと良い人なんじゃないかなぁ、って気がするけどな」
「言われたことないけど、どうして?」
「いや、一喜先輩が…」
まだそれしか言っていないのに、「あぁ、一喜か…」と先輩は言った。
「一喜には、俺は嫌われてるんだよ」
「え?それは違う気が…」
「いや、そうなの」
はっきりと言い切って私を見た。その目は少し、強く感じた。
「そうであって欲しい」
「え?…でも、浦賀先輩は…」
嫌いじゃないんでしょ?きっと。
だけど語らず浦賀先輩は、はぐらかすように微笑んだ。
この二人には、一体何があるんだろう。
でもきっと、はっきりとわかる。これ以上は入っていけないんだ、私は。
「…てか、俺急にお店に行くんだけど、大丈夫?まぁ、言い出したのは俺なんだけど」
「あ、あぁ」
急に話が変わって一瞬ついていけなかった。明らかなる話題への拒絶だと気付いた。
「あ、そうですねぇ…。柏原さん…マスターにはメールしたんで、まぁ…。どうせ時間的に休憩中だし。
ただ…。一番上のお兄さんには…事件の詳細まではちょっと…」
「え?」
「私にその…なんかそんなことがあったなんて知ったらまず卒倒するよね、てゆーか関係者全員ぶっ殺しに行きそうだよねってみんなで話してて…。あのとき一番上のお兄さん、たまたま不在だったんですけど、いなくてよかったねって話を実はしてたんですよー」
「うわぁ、一番厄介だね」
「はい。多分彼が一番厄介です」
「わかったわ。
小日向さん、彼氏作るのも一苦労だね」
「多分そうでしょうね…」
二人でそんな会話をしているうちにお店に着いた。覚悟を決めてお店の扉を開ける。
「おはようございま…あれ?」
見渡すと、みっちゃんの姿がなく、柏原さんとマリちゃんで雑談していた。
「おぅ、おはよう小夜ちゃんってあれ?あ!君はこの前の!」
柏原さん、すぐに浦賀先輩に気付いて駆け寄った。
「どうも、遅くなりました。漸く昨日退院しまして」
「え?昨日?」
「随分かかったね…ヤバかったの?」
「まぁ軽く脳挫傷と脳溢血でした」
「いやそれ軽くない軽くない!まぁ座って、あ、なんか飲む?なんなら学校じゃねーしタバコでも吸いな!」
「うわ、ありがたいです。お見舞いありがとうございました、これ、つまらない物なんですけど…」
それはどうかと思ったが浦賀先輩は、挨拶をして紙袋を柏原さんに渡してから座ってタバコを吸い始めた。
「え、マジ?わざわざ?いいのにそんな」
「礼儀正しいな…今時いるんだね…」
マリちゃんも一緒にタバコを吸い始める。取り敢えず私はカウンター席に座って3人を眺めることにした。
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