灰と汚濁と異世界と

帯川

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合流

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「灰色の肌の女────?」

 不気味なそれに思わず険しい表情になる。

「ええ、ダークエルフである私を魅了して惹きつけるほどの美貌で無表情にどこかを眺めていたわ。でも────、惹かれるのと同時にどこか恐ろしいものを感じたの。」

 まだ身震いしているシスティアさんはカテラに体をさすられている。

「ジンはその女性に覚えはないんですか?」

 ココロッココが尋ねてくるがもちろんそんな女性に覚えがあるはずもなく、

「ないない!自慢じゃないが俺は一度会った女性は絶対に覚えてる!しかもそんな特徴のある人、忘れるはずないだろ?」
「一体なんなんでしょうかその人は……。」

 そうして一同頭を悩ませていると医務室の扉がバンッと勢いよく開け放たれた。

「ジンいるかぁ!!」

 バッドの若干しゃがれた声が響く。

「いるぞー、どうした??」

 ヒラヒラと手を挙げバッドの方を見やると何やら切羽詰まった様子で────。

「お前、神様と話したろ!?どうだった!?入るか??うちに!!てか入ってくんねぇとうちがやべぇ!!」

 言葉を弾丸のように勢いよく並べ、ずかずかと大股で詰め寄ってくる。

「まてまて!!なんだ一体!?」
「うちに!フーリに入るのかって聞いてんだ!!」
「はあ?別に入んねえけど。」

 なんでこんなに焦ってんだ?

「まじで何も伝えてなかったのかよ……。」

 途端、ひどく残念な様子で頭を抱えるバッド。

「どうしたんですかバッド。様子がおかしいですよ。そもそもジンをここに連れてきたのは勧誘ではなく診察のはずでしたよね?」

 そうココロッココが尋ねると。「ああ、そうだな悪い。」と落ち着くように一呼吸して話を続けた。

「さっきまで定例会議に出席してたんだ。」
「ええ!?全権大使オールドミニスターが集めるあの!?よく出席できたね!!」

 カテラが子供のように驚いた。
 定例会議??全権大使オールドミニスターが集まるってことはバーゼリアの用事もそれか。

「呼ばれた理由はジン、てめえの参考人てことでの出席だった。」
「え、俺?」
「お前のことがどっかから洩れて殺すべきか生かしてフーリに入れるべきかの二択になっちまったんだ。ボスの余計のせいでな。っち、まだイラつくぜくそっ!」
「殺され……はぁ!?それでどうなったんだよ!!」

 頭をぼりぼりと掻きバーゼリアに不満を漏らすバッドだが、その言葉の中に聞き捨てならない内容が含まれていることに気づき、当然俺は焦った。

「とりあえずは保護観察対象ってことになった。俺がかばってやったんだ感謝しやがれ。」
「おお!!ないすバッド!!」

 とりあえずセーフ!!……でもなんでそんな浮かない顔してんだバッド。

「それでな、さっき言ったと思うがてめえがフーリに入んねーといけなくなった。」

 ────────────?

「なんで?」
「そもそもボスがてめえをフーリに入れるってとこから始まったんだよ、お前の生かすか殺すかの話は。そんでボスの話が承諾されたからもうてめえはフーリに入るしかねぇ。」

 ……その話、あまりにも俺が可哀想では?

「そういうわけだジン!!一ミリも悪いなんて思っていないが綺麗好きな冒険者ラインリッヒとしてこれからよろしくな!!なはははは!!!」

 開け放たれた扉の方から聞き覚えのある気持ちのいいほど快活な女の声。あいつだ────。
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