獅子王様は人間嫌い

佐々木 おかもと

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6.愛

 その後、医師の素早い薬剤投与のおかげか、五日ほどかけてリュイスは体調を回復させていった。
 途中経過を見にきた医師からも完治を言い渡され、リュイスはレオンの執務室へ足を運ぶことにした。熱が高く苦しい中で、レオンがずっと近くにいてくれたことは覚えていたリュイス。

 その気遣いに緩む口元を抑え、執務室の扉をノックした。

「リュイス、もう身体はいいのか?」
「お蔭様で、もうすっかり良くなりました」
「そうか」
「はい、ご心配おかけして申し訳ございません」
「いい、気にするな」

 謝るリュイスの頭を撫で、優しく微笑むレオン。
 この五日間で、苦しむリュイスを宥めるために頭を撫でていた為か、今になってもクセで頭を撫でてしまう。
 そんなレオンを見て、リュイスはレオンが最初の頃とは随分変わったな、と思った。

 鋭い視線を常にぶつけてきていたあの頃とは違い、その視線も触れ方も、まるで愛しい人に触れるようなものに変化していた。二人は暫く見つめ合い、レオンがそっと口を開いた事によって、リュイスは我に返った。

「お前が熱で苦しんでいる時、俺は怖かった。お前がこのまま死んでしまうのでは、と」
「陛下?」

 首をかしげたリュイスに、レオンは自嘲の笑みを浮かべる。そしてゆっくりと言葉を紡ぐ。

「情けないが、弱ったお前を見て自覚した。俺は……お前が愛しいと」
「…………」

 砂糖を溶かしたような甘い視線で、レオンに見つめられリュイスは背中がムズムズする。それでもレオンの言葉は止まらない。

「始めは人間に対する嫌悪感と、王としての責務に挟まれお前に手酷く当たった。だがお前の事を知り、お前の考え方を知って、段々と惹かれていった」

 言いながらリュイスの手を取り、大きな手でにぎにぎとリュイスの小さな手を揉む。

「今更、何を言っているんだと思うかもしれない。だか、謝らせてくれ……今まですまなかった。許されるならば俺は、お前と恋をしたい」
「……!」
「俺と恋人になってくれないだろうか」

 不器用に。でも直球に。素直な気持ちを伝えてくる目の前の獅子に、リュイスは止まっていた息をゆっくりと吐き出した。
 よく分からない感情がリュイスの中で、ぶわっと膨れ上がる。しかし、嫌な気はしなかった。
 温かくて切ない。けれど、痛くない感情。

「恋……ですか」

 リュイスは掠れた声で呟いた。その声色が妙に真剣で、レオンは顔を強張らせた。どんな罵詈雑言を言われるか、そんな不安の気持ちを張り付ける。

「いいですよ」
「……ほ、本当か」
「ええ、俺たち夫婦ですが、『恋人』始めましょう?」

 リュイスはいつもと変わらぬ悪戯な笑みを浮かべ、レオンの手をぎゅっと握り返した。心に湧きあがった暖かい気持ちを、手のひらを伝って教えるように。

「……ああっ」

 レオンは切ないような、嬉しいような様々な感情が混ざった声で頷いた。



 その日の夜。
 リュイスは、レオンの寝室で晩酌をしていた。

 レオンからの誘いで寝室へ訪れたリュイスは、緊張と幸福感で胸がいっぱいだった。それはレオンも同じで、時より見せる甘やかな視線がそれを物語っている。

 ワインを飲み二人で会話をしていると、どちらからともなく熱っぽい視線で見つめあう。その熱の正体は、ワインのアルコールによるものでは無く、心から相手を求める熱だ。
 レオンはリュイスの髪を耳にかけると、頬に手を添えたまま顔を近づける。

 そしてリュイスが瞼を閉じたのを合図に、その小さな唇へ吸い付いた。しっとりとした唇を割り開き、リュイスの熱い口内へレオンの舌先が侵入する。ザラリとしたレオンの舌が、リュイスの上顎を擦るとその刺激に、リュイスの吐息が漏れ出た。

「ん……ふ、ッ」

 歯列を舌先でなぞり、リュイスの濡れた舌を吸うように絡める。キス一つでぐずぐずに溶かされたリュイスは、レオンによってベッドへ運ばれる。
 柔らかいスプリングがリュイスとレオンを受け止め、向かい合って座った二人を優しく支える。再びキスを再開した二人。

「ん、ぁ、……んん」
「……っ、ふ」

 部屋に響く吐息が、二人の脳内を官能的に高ぶらせる。レオンはキスをしながら、リュイスの身体をまさぐった。着脱の楽なリュイスの服は、レオンのれによってあっという間に脱がされた。上半身の服を剥かれ、リュイスの滑らかな肌にレオンの手が触れる。腹をなで、肋骨の凹凸の一つ一つを撫で上げる。
 そして、リュイスの胸にある赤い二つの突起を指の腹で刺激した。

「ん、ぅあ、そこは……」
「感じるか?」
「……っ」

 レオンの問いかけに、リュイスは恥ずかしさで思わずレオンを睨みつけてしまう。

「ふ」

 その愛らしい反応に笑みを零し額に口づけた。そのまま、レオンは胸の突起を責め立てる。腹でくるくると触ってみたり、爪で引っ掻いてみたりとリュイスの反応を見ながら愛撫していく。

「ん、あ……ん、んん!」

 リュイスがレオンにキスをねだり、三度みたび口づけを交わす。レオンはキスに応じつつ、ズボンの上から指の腹でリュイスの割れ目と秘核を擦った。それだけでリュイスは体を跳ねさせ、下着にじゅわりと蜜を染み込ませた。反応の良さに気を良くしたレオンは、何度も服の上からその場所を触る。

「あっ……んぅ、あぁ」
「愛らしいな……リュイス」

 何度も何度も愛らしいと、リュイスに向けてレオンは言った。
 するとやり返す様に、リュイスはレオンの熱くなったソコを触った。ズボンの上から爪でなぞるように、裏筋の辺りを刺激する。

「ぅ、リュイス……っ」

 お互いに緩やかな快楽を与えながら、じれったい刺激を楽しむ。何度も深い口づけを交わし、唇が離された頃。熱に浮かれたリュイスの顔がレオンに向けられた。
 その顔にレオンは、酷い加虐心にさいなまれる。か弱く愛らしい者ほどどこまでも追い詰めて、可哀想なほどいじめたくなる獅子の心。だがそれと同時に、甘い蜜で漬け込むように、心も体も甘くトロかせたいとも思う。

 レオンとリュイスは、身にまとった衣服を全て脱ぎ去り生まれたままの姿となった。筋肉の隆起が凄まじいレオンの身体と、細見だが筋肉の透けるリュイスの身体。二人はお互いの体を、網膜に焼き付けるように見合う。
 レオンがリュイスの身体を押し倒すと、下半身へと顔を寄せる。リュイスの淫華に顔を近づけ、その割れ目上部の秘核を口に含んだ。

「え、ちょ、ぅあ……ッ!」

 抵抗するリュイスを意に介さず、口に含んだ秘核をねっとり舐る。その刺激に身を震わせ、腰に響く甘い感覚にリュイスは熟れた吐息を漏らした。レオンのザラリとした舌が、痛みを与えぬようにとリュイスを気遣う。

「く、んんッ……ふぁ、んぅ」

 レオンは口で奉仕しながらも、指をリュイスの割れ目へと押し進めた。指へ絡みつくほど蕩けた肉が、より一層レオンを高ぶらせる。

「ん、あ、ッ……」

 あふれ出る蜜に、リュイスが声を漏らし鳴く。レオンはリュイスの感じ入る顔を見ながら、器用に舌を動かしていく。

「……ちょ、と、待って……俺の番っ……!」

 リュイスはレオンから腰を引くと、身体を起こし逆にレオンを押し倒した。そしてレオンにされたように、自身もレオンのいきり立ったソレを口に含む。
 相変わらず、性器の棘が口内でザラザラと主張する。だが前回と比べ先走りの量が多く、口の中での摩擦が思ったよりもなく痛みは無い。

「……ッ……ん」

 レオンが微かに吐息を漏らし始めた頃、リュイスは口を離し潤滑油をレオンの陰茎に塗り付けた。

 瓶に入った潤滑油の半分を、たっぷりと使う。レオンの性器についた棘は恐らく痛い。が、こうして潤滑油を使い滑りを良くすることで、それも気にならなくなるだろう。リュイスは自身の性器にも潤滑油を塗りたくると、獰猛な色を湛えた瞳をするレオンを見据えた。

「陛下」
「リュイス……良いのか?」
「痛かったら、蹴り飛ばしますので……大丈夫です」
「ふ、それは何ともお前らしいな」

 初めて夜を共にした日の様に、ムードもへったくれもない発言にレオンは笑みを零す。

「入れるぞ?」
「はい……」

 レオンは確認をとると、ゆっくりリュイスの中へ入る。リュイスは中へ押し入ってくるレオンに引っかかりを感じ、段々とその感覚が気持ち良くなる。リュイスの口から吐息が漏れ始めると、レオンを掴んで離さないとばかりに柔らかい肉が絡みつく。

「あぁ、は……ん、んん!」

 リュイスの反応を焼き付けるように観察し、レオンは徐々に動きを速める。寝室に響くリュイスの喘ぎと吐息、接合部分の水音。突くたびに中がうねり、搾り取るように動くリュイスの性器。
 そのすべてに興奮し、高ぶっていく。

「あ、あ、んぁ……ッ!」
「……っ、ん、くッ……」

 レオンはリュイスの中の弱い所を的確に突き、リュイスを高みへと引っ張り上げる。それに伴い、リュイスの喘ぐ声が段々と大きくなっていく。

「あ"、ぅあ、は、……も、イ……く……へ、いかぁ」
「ああ……っ、共に果てよう」

 レオンはより腰を振り、激しく動き始める。肌と肌がぶつかる音を響かせ、その音が一際大きくなった瞬間。
 二人は同時に、弾けた。

「ん、ぁあ――」
「……ク、ッ――」

 激しく果てたリュイスは、高い所から落ちる感覚に襲われる。リュイスは微かに痙攣しながらレオンへ抱きついた。気持ち良いのに怖いという不思議な感覚に、思わずレオンの名を呼び縋り付く。
 するとレオンは、宝物を抱えるかのように力強く抱きしめた。
 心地よい疲労感の中、リュイスは意識を手放した。

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