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第1章
出逢い
しおりを挟む大気が呼吸をすると被っていた薄絹が翻り、視界を遮った。目をゆっくりと開けると視線が交わる。
青い光が私をとらえた瞬間、時が止まったような気がした。
自分が庭先に立つ見知らぬ誰かと目を合わせていると自覚した時、心臓が飛び上がり汗が吹き出る。それは気づかぬうちに目が合うほどの距離に人が立っていたことに対する驚きかもしれないし、そこに立っている人がとても均整のとれた顔立ちをしていたからかもしれない。
男は色素が薄い髪色に今までに見たことのないような青みがかった瞳をしており、背は一段高い走廊に立つ自分の方が優っているが、それでも普通よりも大きく、体つきも軍人のようである。
とにかく去らなければと慌てて体を翻しそうとするが、いつのまにか段を上がり近づいた男にガシッと手首を掴まれる。掴まれたことよりも男の手のひらの感覚にまたしても心臓が跳ねた。はるかに男の方が背が高かった。
私は焦ってなんとか逃れようとするが、男の力はびくともしない。力を抜き、瞬時に力を入れるという動作を繰り返してみたがそれでも相手は何も言わずにこちらをみているだけであった。
手を掴んだまま下を向き、何も話さない男にええい埒があかない!と痺れを切らし、精一杯作った声で話しかける。
「…何か御用でしょうか。」
…高すぎて掠れた声は到底聞こえるような声量でなかった。だが声に弾かれたように顔をあげた男は薄絹で隠れた私の目のあたりをみつめるだけだった。
何も言わない男は私をますます混乱させるだけで…この男何を考えている?まさか私が皇帝だと気づいた!?…それとも皇帝は女装癖のあるヤバいやつだと思ったか…不審者か?警備は何をしてるんだ!!!とりあえず逃げなければ!とにかくいっそ相手の足を蹴ってころばせることができたら逃げられる!だが追いかけて来られたら…それに万が一打ち所が悪かったら死んでしまうかもしれないし…焦った私はとんちんかんなことばかり頭を巡る。
「あっあの!!!月をみませんか!?」
「は?」
驚いた私はうなづいてしまった。
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