刹那の皇帝

たろ

文字の大きさ
10 / 22
第1章

口達者

しおりを挟む
「皇帝陛下!!!」

はっとする。どうやらぼーっとしていたようだ。

「すまない、なんだったか」

「…襲撃者の件ですが」

頴達は何か言いたげな顔をする素振りを見せたが説明を始める。ここは王宮内にある皇帝の執務室であり、またしてもこの部屋には醒月と頴達しかいなかった。頴達は数少ない秘密を知っているものの1人である。

「赤鴦妃の実家、汀家より帰還の際、町民に紛れた者が3名ほど襲ってまいりました、2人は捕らえましたがあと1人逃し、その際対抗した警護のものが負傷し2人軽傷、1人重症です。」

「見舞いは手厚くな」

「そうではありません!」

「警備のものの数はやはり減らすべきだと思うし、毎回同じ人員でないとなると結束力という点で襲撃者に劣るから危ない。やっぱり編成の面でも少し見直すところがあるのではないか?」

護衛のものはいつも変わる 。護衛は自然と距離が近くなってしまうので醒月の秘密を知られぬようにするためには人員を変化させるしかなかった。

「違います!気軽に公務でもないのに外に出るのはいかがなものかと申しているのです!」

「頴達…それはわかっている、今回の件は私のわがままだ。すまない」

「…わかればいいのです、こちらも言い過ぎました。近くには祭事も予定されていますのでしっかりしてください、あの夜から少しおかしいですよ」

「えっ」

頴達の冷ややかな瞳でじろりと睨まれてたじろぐ。

「そっそうか?」

「はい、何かありましたか」

何か…あの夜は彼が追いかけてくる間もなくすぐさま有鄰の呼ぶ部屋に戻った。部屋にいなかったことを不思議に思った有鄰に説明することもなく頴達が訪ねてくるからといって、渋っていたが衣を脱がせてもらった。誰にも夜の出来事、男の存在は漏らさず、無かったことにしていたが、その時から何をしてもあの青い瞳が思い出されて頭から離れなかった。それが表にでていたとなると不味い。

「いっいや何もなかった!少し疲れていただけだ。そうではなくて!えっとその!そうだ!やっぱり新しい専属の護衛を雇い入れるべきではないか!?」

「却下です、秘密を知るものを増やすことはどこから漏れるかわからず危険です。」

「じゃあ1人でもいいから専属を決めるのはどうだ!?」

「却下です!第一そんな1人で専属の護衛を勤められるほど有能なものなんていないでしょう。」

ぐうの音もでない。

「そっそっか~あっそろそろいい時間だな!!!頴達!!!帰ろう!」

頴達には口で叶わないのだ。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

氷の王と生贄姫

つきみ かのん
恋愛
敗戦寸前の祖国を守るため、北の大国へ嫁いだセフィラを待っていたのは「血も涙もない化け物」と恐れられる若き美貌の王、ディオラスだった。 ※ストーリーの展開上、一部性的な描写を含む場面があります。 苦手な方はタイトルの「*」で判断して回避してください。

処理中です...