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第1章
口達者
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「皇帝陛下!!!」
はっとする。どうやらぼーっとしていたようだ。
「すまない、なんだったか」
「…襲撃者の件ですが」
頴達は何か言いたげな顔をする素振りを見せたが説明を始める。ここは王宮内にある皇帝の執務室であり、またしてもこの部屋には醒月と頴達しかいなかった。頴達は数少ない秘密を知っているものの1人である。
「赤鴦妃の実家、汀家より帰還の際、町民に紛れた者が3名ほど襲ってまいりました、2人は捕らえましたがあと1人逃し、その際対抗した警護のものが負傷し2人軽傷、1人重症です。」
「見舞いは手厚くな」
「そうではありません!」
「警備のものの数はやはり減らすべきだと思うし、毎回同じ人員でないとなると結束力という点で襲撃者に劣るから危ない。やっぱり編成の面でも少し見直すところがあるのではないか?」
護衛のものはいつも変わる 。護衛は自然と距離が近くなってしまうので醒月の秘密を知られぬようにするためには人員を変化させるしかなかった。
「違います!気軽に公務でもないのに外に出るのはいかがなものかと申しているのです!」
「頴達…それはわかっている、今回の件は私のわがままだ。すまない」
「…わかればいいのです、こちらも言い過ぎました。近くには祭事も予定されていますのでしっかりしてください、あの夜から少しおかしいですよ」
「えっ」
頴達の冷ややかな瞳でじろりと睨まれてたじろぐ。
「そっそうか?」
「はい、何かありましたか」
何か…あの夜は彼が追いかけてくる間もなくすぐさま有鄰の呼ぶ部屋に戻った。部屋にいなかったことを不思議に思った有鄰に説明することもなく頴達が訪ねてくるからといって、渋っていたが衣を脱がせてもらった。誰にも夜の出来事、男の存在は漏らさず、無かったことにしていたが、その時から何をしてもあの青い瞳が思い出されて頭から離れなかった。それが表にでていたとなると不味い。
「いっいや何もなかった!少し疲れていただけだ。そうではなくて!えっとその!そうだ!やっぱり新しい専属の護衛を雇い入れるべきではないか!?」
「却下です、秘密を知るものを増やすことはどこから漏れるかわからず危険です。」
「じゃあ1人でもいいから専属を決めるのはどうだ!?」
「却下です!第一そんな1人で専属の護衛を勤められるほど有能なものなんていないでしょう。」
ぐうの音もでない。
「そっそっか~あっそろそろいい時間だな!!!頴達!!!帰ろう!」
頴達には口で叶わないのだ。
はっとする。どうやらぼーっとしていたようだ。
「すまない、なんだったか」
「…襲撃者の件ですが」
頴達は何か言いたげな顔をする素振りを見せたが説明を始める。ここは王宮内にある皇帝の執務室であり、またしてもこの部屋には醒月と頴達しかいなかった。頴達は数少ない秘密を知っているものの1人である。
「赤鴦妃の実家、汀家より帰還の際、町民に紛れた者が3名ほど襲ってまいりました、2人は捕らえましたがあと1人逃し、その際対抗した警護のものが負傷し2人軽傷、1人重症です。」
「見舞いは手厚くな」
「そうではありません!」
「警備のものの数はやはり減らすべきだと思うし、毎回同じ人員でないとなると結束力という点で襲撃者に劣るから危ない。やっぱり編成の面でも少し見直すところがあるのではないか?」
護衛のものはいつも変わる 。護衛は自然と距離が近くなってしまうので醒月の秘密を知られぬようにするためには人員を変化させるしかなかった。
「違います!気軽に公務でもないのに外に出るのはいかがなものかと申しているのです!」
「頴達…それはわかっている、今回の件は私のわがままだ。すまない」
「…わかればいいのです、こちらも言い過ぎました。近くには祭事も予定されていますのでしっかりしてください、あの夜から少しおかしいですよ」
「えっ」
頴達の冷ややかな瞳でじろりと睨まれてたじろぐ。
「そっそうか?」
「はい、何かありましたか」
何か…あの夜は彼が追いかけてくる間もなくすぐさま有鄰の呼ぶ部屋に戻った。部屋にいなかったことを不思議に思った有鄰に説明することもなく頴達が訪ねてくるからといって、渋っていたが衣を脱がせてもらった。誰にも夜の出来事、男の存在は漏らさず、無かったことにしていたが、その時から何をしてもあの青い瞳が思い出されて頭から離れなかった。それが表にでていたとなると不味い。
「いっいや何もなかった!少し疲れていただけだ。そうではなくて!えっとその!そうだ!やっぱり新しい専属の護衛を雇い入れるべきではないか!?」
「却下です、秘密を知るものを増やすことはどこから漏れるかわからず危険です。」
「じゃあ1人でもいいから専属を決めるのはどうだ!?」
「却下です!第一そんな1人で専属の護衛を勤められるほど有能なものなんていないでしょう。」
ぐうの音もでない。
「そっそっか~あっそろそろいい時間だな!!!頴達!!!帰ろう!」
頴達には口で叶わないのだ。
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