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第1章
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夜が始まる頃、皇帝は後宮を訪れる。基本的には上級妃から下級妃、女官など沢山の女たちが後宮にいる。そうはいっても醒月は女であるため醒月帝の後宮には今現在、周りの世話をする女官が数名と上級妃に至っては寵姫とされている赤鴦妃こと有鄰妃しかいなかった。
「どうぞいらっしゃいました」
有鄰はすぐさま周りの者に娘を預け、下がらせて醒月と2人になる。
「ということなんだ、まぁ頴達の言うこともわかるんだがそれでもやっぱり私は雇った方がいいと思うんだ」
「そうでしたか」
有鄰は何かを考えているように下を向き俯く。
「有鄰?」
はっと有鄰は面をあげて取り繕う。
「あら、ごめんなさい専属の護衛の件ですね?ええ、私もいつまでも人員を変え続けることは不可能だと思います」
「大丈夫か?体調でも悪いのか?」
いつも聡明な妻がこのようにぼーっとしているのは珍しい。
「ふふふ、大丈夫ですわ、それを言ってしまえば旦那様!貴方こそあの夜から何かおかしいんじゃなくて?」
「うっ」
「そうですわね…ああ。口が堅く、信用がおける護衛…禁軍の方からでなく、劉元将軍からご紹介していただいたらいかが?」
なんだかするりと躱されてしまった気がするが、こちらも探られては腹が痛いために口をつぐむしかない。それに…
「宗元…いいかもしれない」
劉 宗元は醒月の武の師であり、秘密を知っている者の1人である。武官としては大変優秀で先代皇帝の時から活躍した男であり、将軍として一隊をまとめていた。現在は半分隠居といった体であるが、人を育て、見る目は確かだから信用できる。
「早速頼んでみよう」
「それと…ありがとうございました」
急に腰を折って有鄰はこうべを垂れる。
「!?急にどうした」
「危険だとわかっているのに、私のために実家を訪れていただいて」
「あぁ…そんなことか、頭を上げてくれ、別に大丈夫だ。負傷した者には申し訳ないが…」
「ありがとうございます、娘をあの人との思い出の場所へ連れて行くことができて私は…!」
さらに深くこうべを垂れて有鄰は感謝の言葉を続ける。どうにもいたたまれない。
「…申し訳ないと思うなら」
「…思うなら?」
「頴達の説得方法を考えてくれないか」
ぷふっと笑われたのは気のせいではなかった。
「どうぞいらっしゃいました」
有鄰はすぐさま周りの者に娘を預け、下がらせて醒月と2人になる。
「ということなんだ、まぁ頴達の言うこともわかるんだがそれでもやっぱり私は雇った方がいいと思うんだ」
「そうでしたか」
有鄰は何かを考えているように下を向き俯く。
「有鄰?」
はっと有鄰は面をあげて取り繕う。
「あら、ごめんなさい専属の護衛の件ですね?ええ、私もいつまでも人員を変え続けることは不可能だと思います」
「大丈夫か?体調でも悪いのか?」
いつも聡明な妻がこのようにぼーっとしているのは珍しい。
「ふふふ、大丈夫ですわ、それを言ってしまえば旦那様!貴方こそあの夜から何かおかしいんじゃなくて?」
「うっ」
「そうですわね…ああ。口が堅く、信用がおける護衛…禁軍の方からでなく、劉元将軍からご紹介していただいたらいかが?」
なんだかするりと躱されてしまった気がするが、こちらも探られては腹が痛いために口をつぐむしかない。それに…
「宗元…いいかもしれない」
劉 宗元は醒月の武の師であり、秘密を知っている者の1人である。武官としては大変優秀で先代皇帝の時から活躍した男であり、将軍として一隊をまとめていた。現在は半分隠居といった体であるが、人を育て、見る目は確かだから信用できる。
「早速頼んでみよう」
「それと…ありがとうございました」
急に腰を折って有鄰はこうべを垂れる。
「!?急にどうした」
「危険だとわかっているのに、私のために実家を訪れていただいて」
「あぁ…そんなことか、頭を上げてくれ、別に大丈夫だ。負傷した者には申し訳ないが…」
「ありがとうございます、娘をあの人との思い出の場所へ連れて行くことができて私は…!」
さらに深くこうべを垂れて有鄰は感謝の言葉を続ける。どうにもいたたまれない。
「…申し訳ないと思うなら」
「…思うなら?」
「頴達の説得方法を考えてくれないか」
ぷふっと笑われたのは気のせいではなかった。
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