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第1章
再会
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「久方ぶりだな!皇帝陛下!」
早速有鄰に言われた通りに文をしたためて護衛の件を尋ねてみたところ、隠居した領地の方からすぐに訪ねてきてくれたのである。劉宗元は快活明朗といった初老の男である。顔には一文字に刀傷が走っていて幼い女子供に怖がられる風貌はしているが、性格は剛毅の者というのが正しく人から信を置かれやすいいい男であり、第一線を退いたといっても日頃の鍛錬を怠っておらず、若々しい見た目を保っていた。
「お久しぶりでございます。師匠どうか前と同じようにしてください。」
「いやあ、そうするわけにゃあいかんよなんたって今やこの国一番の偉い人。鳳凰様なんだからよ」
そう、師匠といえど軽々しく昔のように衣一つで前に出ることなど皇帝にはできない。重い冠を被り、それからは何枚もの薄絹が垂れ下がる。衣も重く簡単に動けるようなものではない。それだけに飽き足らず大きな距離があるために小さい姿しか見せることができない。
「そうですよ、皇帝陛下。もっと自覚を持ってください」
「頴達!…まだまだ未熟者でございますから…」
「いや大したものですよ…そうだ本題に。専属の護衛が欲しいという話でしたか」
「専属の護衛!?」
頴達は目を尖らせてこちらを見てくるので思わず目を逸らす。そうなのだ、有鄰に頴達の説得方法を考えて欲しいと言ったところ、
『あの頭が固いお方には事後報告で充分ですよ!後戻り出来ないところまで来ないとあの人は納得しませんでしょうから~』
との返ってきたので、なるほど一理あると実際に行動に移してみた。のだが視線が痛い。ただでさえ切れ長の瞳で睨まれたら肝がすくみあがる。醒月は後が今となって怖くなってきたがもう後にはひけない。
「はい、急にお頼み申してすみません。…して誰か良いものはいらっしゃいますか?」
頴達はどういうことだといった風にこちらを睨んでくるがなんとか無視する。
「ええ、ちゃんと連れてきましたぜ。何人かと迷ったんですがね。若いんですが腕は確かで前の戦乱の時に目をかけてなぁ、中身もいいですよ。なんというか軍人にしては情があるというか!まあ少し欠点ちゅう欠点もあるけどな!!!」
がはははと豪快に笑う宗元は醒月の師匠であった時の容貌を映していて少し懐かしくなる。
「して、其の物はいずこに?」
頴達は事前に知らされてなかったことなんてないと言ったように場を仕切りだす。流石である。確かに宗元の周りには彼の従者達がいるが、皆若いというには少し歳がいき過ぎているように見える。
「いや、ちょっと席を外すって…あ~あいつの悪いとこが…」
「悪いところ?」
「失礼致します!!!」
そこにまだ若い官が入ってくる。頴達は自らの部下に対してすぐさま反応する。
「急にどうした」
「先程からうろちょろと歩き回っていた不審者をお連れしました。」
「不審者?それならばしかる場所に連れて行くべきだろう」
「いやそれが奴が申すには劉元将軍に連れられてきたと!」
「あ~すまんすまん。そいつ俺が連れてきた奴だから」
「そうでしたか!それでは入室を許可させていただきます。」
官はすぐさま去って行く。
「…どういうことですか?」
「いやあ…あいつの欠点でねぇ…とんでもねぇ方向音痴なんだよ」
…方向音痴?
そこへバタバタと幾人かに連れられて若い男が入ってくる。宗元が認めるだけある軍人の体つき。色素が薄い髪の毛。
「皇帝陛下の御前に失礼致します」
顔を上げた瞳は、目を離すことができない青い光を放つ。
「名を韋 翔渓と申します。」
早速有鄰に言われた通りに文をしたためて護衛の件を尋ねてみたところ、隠居した領地の方からすぐに訪ねてきてくれたのである。劉宗元は快活明朗といった初老の男である。顔には一文字に刀傷が走っていて幼い女子供に怖がられる風貌はしているが、性格は剛毅の者というのが正しく人から信を置かれやすいいい男であり、第一線を退いたといっても日頃の鍛錬を怠っておらず、若々しい見た目を保っていた。
「お久しぶりでございます。師匠どうか前と同じようにしてください。」
「いやあ、そうするわけにゃあいかんよなんたって今やこの国一番の偉い人。鳳凰様なんだからよ」
そう、師匠といえど軽々しく昔のように衣一つで前に出ることなど皇帝にはできない。重い冠を被り、それからは何枚もの薄絹が垂れ下がる。衣も重く簡単に動けるようなものではない。それだけに飽き足らず大きな距離があるために小さい姿しか見せることができない。
「そうですよ、皇帝陛下。もっと自覚を持ってください」
「頴達!…まだまだ未熟者でございますから…」
「いや大したものですよ…そうだ本題に。専属の護衛が欲しいという話でしたか」
「専属の護衛!?」
頴達は目を尖らせてこちらを見てくるので思わず目を逸らす。そうなのだ、有鄰に頴達の説得方法を考えて欲しいと言ったところ、
『あの頭が固いお方には事後報告で充分ですよ!後戻り出来ないところまで来ないとあの人は納得しませんでしょうから~』
との返ってきたので、なるほど一理あると実際に行動に移してみた。のだが視線が痛い。ただでさえ切れ長の瞳で睨まれたら肝がすくみあがる。醒月は後が今となって怖くなってきたがもう後にはひけない。
「はい、急にお頼み申してすみません。…して誰か良いものはいらっしゃいますか?」
頴達はどういうことだといった風にこちらを睨んでくるがなんとか無視する。
「ええ、ちゃんと連れてきましたぜ。何人かと迷ったんですがね。若いんですが腕は確かで前の戦乱の時に目をかけてなぁ、中身もいいですよ。なんというか軍人にしては情があるというか!まあ少し欠点ちゅう欠点もあるけどな!!!」
がはははと豪快に笑う宗元は醒月の師匠であった時の容貌を映していて少し懐かしくなる。
「して、其の物はいずこに?」
頴達は事前に知らされてなかったことなんてないと言ったように場を仕切りだす。流石である。確かに宗元の周りには彼の従者達がいるが、皆若いというには少し歳がいき過ぎているように見える。
「いや、ちょっと席を外すって…あ~あいつの悪いとこが…」
「悪いところ?」
「失礼致します!!!」
そこにまだ若い官が入ってくる。頴達は自らの部下に対してすぐさま反応する。
「急にどうした」
「先程からうろちょろと歩き回っていた不審者をお連れしました。」
「不審者?それならばしかる場所に連れて行くべきだろう」
「いやそれが奴が申すには劉元将軍に連れられてきたと!」
「あ~すまんすまん。そいつ俺が連れてきた奴だから」
「そうでしたか!それでは入室を許可させていただきます。」
官はすぐさま去って行く。
「…どういうことですか?」
「いやあ…あいつの欠点でねぇ…とんでもねぇ方向音痴なんだよ」
…方向音痴?
そこへバタバタと幾人かに連れられて若い男が入ってくる。宗元が認めるだけある軍人の体つき。色素が薄い髪の毛。
「皇帝陛下の御前に失礼致します」
顔を上げた瞳は、目を離すことができない青い光を放つ。
「名を韋 翔渓と申します。」
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