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第1章
決意
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「………はぁ」
「旦那様疲れておられますねぇ」
またも夜がやって来て醒月は妻の元を訪れていた。妻は娘をあやしながらこちらに話しかける。
「いや、なんというかな…」
「あら頴達殿にこってり絞られました?」
そうなのだ。あの話し合いの後、やっぱりというかなんというか勝手に宗元に護衛の件を相談したことは頴達にねちねちと説教を受けた。それでも恩師の顔を立てて仮採用を認めてくれたのはありがたい。しかし醒月を悩ませているのはそれだけではない。
「頴達殿も面倒臭いお人ですね、もっと柔軟になればあのお顔だから引く手数多でしょうにねぇ。あの人本当小言多いんですよ!」
きゃきゃきゃと娘の笑い声が聞こえる。…やっぱり頴達の言う通り相談しなければよかったかもしれない。どうしてよりにもよってあの男なのだろう。偶然の一致とは言えないくらいだ。あの男、醒月が思わず仮とは言え採用を決めてしまった翔渓。…どうしてもあのときの女と皇帝陛下が同一人物だとは知られたくない。なぜかその思いで頭がいっぱいだった。どうしてこのように思うのかは定かではないが心が落ち着かず、頭からそのことが離れない。それでも自分の言ったことであるのだから採用を勝手に取り消すことなんてできない。どうして頴達は採用を認めてしまったんだ!!!師の顔を立てるためで本当ありがたいのだからそう言ってはいけない。
『これは仮ですからね。祭事までの期間は働いてもらいますが、何か問題あったりしたら宗元様の紹介とはいえど解雇させていただきます。』
頴達のお説教が耳に蘇る。…とりあえず祭事までの間だ。そう、そこまでの間は何とかして秘密が漏れぬように振舞わなければならない。流石に本採用となったら秘密を守り抜けないだろうから…うん、そこで申し訳ないが切ってしまおうそうしよう。性格の不一致とか何とか言えば!少しの間だ、少しの間。距離が近いかもしれないが仕えてくれている官たちにもばれていないのである。
「よし、頑張ろう」
「ええ、頴達殿に負かしてやるくらいに思いましょ!」
なんだか頴達、散々言われている。
「ああ!」
「旦那様疲れておられますねぇ」
またも夜がやって来て醒月は妻の元を訪れていた。妻は娘をあやしながらこちらに話しかける。
「いや、なんというかな…」
「あら頴達殿にこってり絞られました?」
そうなのだ。あの話し合いの後、やっぱりというかなんというか勝手に宗元に護衛の件を相談したことは頴達にねちねちと説教を受けた。それでも恩師の顔を立てて仮採用を認めてくれたのはありがたい。しかし醒月を悩ませているのはそれだけではない。
「頴達殿も面倒臭いお人ですね、もっと柔軟になればあのお顔だから引く手数多でしょうにねぇ。あの人本当小言多いんですよ!」
きゃきゃきゃと娘の笑い声が聞こえる。…やっぱり頴達の言う通り相談しなければよかったかもしれない。どうしてよりにもよってあの男なのだろう。偶然の一致とは言えないくらいだ。あの男、醒月が思わず仮とは言え採用を決めてしまった翔渓。…どうしてもあのときの女と皇帝陛下が同一人物だとは知られたくない。なぜかその思いで頭がいっぱいだった。どうしてこのように思うのかは定かではないが心が落ち着かず、頭からそのことが離れない。それでも自分の言ったことであるのだから採用を勝手に取り消すことなんてできない。どうして頴達は採用を認めてしまったんだ!!!師の顔を立てるためで本当ありがたいのだからそう言ってはいけない。
『これは仮ですからね。祭事までの期間は働いてもらいますが、何か問題あったりしたら宗元様の紹介とはいえど解雇させていただきます。』
頴達のお説教が耳に蘇る。…とりあえず祭事までの間だ。そう、そこまでの間は何とかして秘密が漏れぬように振舞わなければならない。流石に本採用となったら秘密を守り抜けないだろうから…うん、そこで申し訳ないが切ってしまおうそうしよう。性格の不一致とか何とか言えば!少しの間だ、少しの間。距離が近いかもしれないが仕えてくれている官たちにもばれていないのである。
「よし、頑張ろう」
「ええ、頴達殿に負かしてやるくらいに思いましょ!」
なんだか頴達、散々言われている。
「ああ!」
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