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21話 さすがはセバスチャンですわ!
しおりを挟む「お父様は大事なときにいつだって私の話を聞いてくれない! いつも私の為だって言いながら本当はお父様にとって都合がいいからなのでしょう?」
私は何故だか涙が溢れてポロポロとこぼれるのも気にせず今まで言えなかったこと全部ぶちまけた。
「わたしっ、しっているもん、わたしは、おかあさまの代わりにあいしてくれているだけでしょ? ほんとは……本当はあの時に、私よりお母さまを…ふぐっ。」
(助けたかったのでしょう)
そう言葉にしようとして大きな手で口を塞がれた。
「……それ以上は口にしては駄目だ。後で後悔するぞ。」
私の口を押えたのはアレクだった。
アレクはそう言った後、口から手を離して私の頭を軽くポンポンと叩いた。
「うっう、うわぁーん。」
私は耐えきれなくなって初めて声を出して泣いた。
「おやおや。これはまた、大惨事のようですね。」
急に玄関の方から声がしてその入り口には執事のセバスチャンが立っていた。
「せば、すちゃん、どうして……ひっく。」
泣いていてうまく言葉がでない。でも、なんでここにセバスチャンがいるのだろう?
「なんとなく、朝のアレク様の様子から何か隠し事なされている様子でしたので嫌な予感がしましてねえ。まさかこのような惨事になるとはさすがに私でも予想はできなかったのですが。」
「しかし、この屋敷にはどうやって来たんだ? 俺は教えた覚えはないのだが。」
アレク様が不思議そうに聞いている。
「それは、企業秘密です。まあ、執事たるものこれくらいはできると思っていただけばよろしいのです。 ―― ところで、アレク様。かなりの怪我をなされていますが大丈夫でしょうか? 念のため医者を呼んではおりますが、かなり酷い状態です。痛みはないですか?」
セバスチャンの言葉に今まで忘れていたけど、アレクの腕が石像に挟まれているのだ。アレク様の腕を見ると袖が赤く染まっていてだらーんとしている。
これは骨折しているかも。
「アレク様!! 血がっ。」
「あ、ああ。なんかな痛みは無いんだ。そんな真っ青な顔で見るな俺から目線をそらせ貧血でぶっ倒れるぞ。」
そう言っているアレクの顔色の方が悪い。
「とりあえずお部屋でお医者様が来るまで休まれた方がいいですね。アレク様、ちょっと失礼いたします。」
「っ!? お、おい!!」
セバスチャンはアレクの側へ腰を落とすとヒョイとアレクの肩と膝に自分の腕を差し込んで持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこという奴だ。
アレクはその格好がすごく嫌みたいで暴れようとしたが体が痛むらしく身じろぐくらいで顔をしかめている。
アレクは190センチくらいあるのにそれを楽々持ち上げるなんて!私は感嘆の声を上げた。
「さすがはセバスチャンですわ!」
「何が、『さすがは』だ! このっ降ろせ!! 部屋まで自分で歩ける、って、いてぇえ!!!」
「はいはい、暴れないでくださいね。お嬢様、部屋まで案内できますか?」
「う、うん! こっちよ。」
そう言ってわーわーと喚くアレクを宥めながら部屋へと案内した。
「ああ~、これは酷いねぇ。全身打ち身は治癒魔法で直せるが左腕が複雑骨折になっているな。とりあえず、骨の修復をするがあまり治癒魔法を当てすぎると魔力酔いが起きるかもしれないから少しずつしかできない。ギブスで固めつつ治すしかないな。全治2、3週間といったところか。あと、今夜は発熱するかもしれないから痛み止めを処方しとくね。」
お医者様はそう言って治療を始めたので私は部屋から追い出された。
「お嬢さま、どうされますか? お屋敷へお戻りになりますか?」
廊下で待機していたセバスチャンが私に聞いてきた。
「戻らないわ。だってアレク様は私のせいで怪我をされたもの、ちゃんと責任をとらなきゃ。それに私、今はアレク様に雇われた身なのですものお側を離れるのは職務放棄になっちゃうわ。……あの、お父様は?」
「ああ、旦那様の事は気になさらず。お嬢様がやりたいと思うことを優先させてください。後の事は私にお任せを。ただ、一つだけ条件を付けさせてくださいませ。男女二人だけの空間は何もなくても後から何か言われるかもしれません。ですので、侍女のメイを連れてきておりますのでメイも一緒にこのお屋敷に住まわせることが私からの条件となります。」
「わかりました。私からアレク様にお話ししますわ。わがまま言ってごめんなさい。それからお父様のことよろしくお願いします。」
あの騒動の中、お父様は固まったようにその場から動かなかった。何か声をと思ったがセバスチャンが「今はそのままにしてあげてください」と言ったので声をかけずにいた。やっと言いたいことが言えたのに胸がキリキリ痛むのはなぜだろう。
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