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59話 暗雲
しおりを挟む「何だか一雨来そうね……。」
アレクに今日から過ごす部屋に案内されて、はじめは落ち着かなかったけど喉が渇いていることに気付いて部屋にいる侍女に飲み物をお願いした。そして一人になると、窓の外が暗くなっていることにふと気づいた。窓際に立って空を見上げると鈍色の厚い雲に覆われて辺り一面は昼とは思えないほど暗くどんよりとしている。
それがなんとなく薄気味悪く感じて、窓から離れた。
しばらくすると侍女が飲み物と軽食を持ってきたのでそれを食べていたら、アンジュ御祖母様がやって来た。
「リアちゃん! 朝ぶりだわね!! 陛下とのお話はうまく出来たかしら? まあ、リアちゃんなら大丈夫だろうけど!」
「はい、御祖母様。国王陛下から婚約のお許しを頂けました。」
「まあ! それはよかったわ。」
御祖母様は今日も気力に満ち溢れていて話しているだけでもさっきまでの鬱々した気持ちが晴れていくようだ。
「それで、アレックス殿下が見えないようだけど?」
「それが……。」
そこで私は侍女たちに席を外してもらって、陛下の謁見が終わってからザカリー大公様とクララさんに廊下で会った事と、ザカリー様がアレクに相談があると言われ、アレクは私をこの部屋に案内してから再び陛下の元に向かったという事を話した。
「なるほどね……。」
それから、御祖母様は少し考え込んだがすぐに私の方を見てにっこりと笑った。
「ま、今は考えてもしょうがないわね。そんな不安そうな顔をしないで頂戴。私達がいるからには大丈夫よ!」
「はい。…あれ? ところでエマ様も一緒に来られなかったのですか?」
いつも一緒のエマ様が見当たらないことに気づいて尋ねた。
「それがね。ちょっと、うちの領地で魔物の動きが活発になっているらしいの。ほら、領地内に魔物の森があるでしょう? そんなに狂暴な魔物はいないはずなのだけどね…。なんだか領地の畑を荒らし始めているらしいのよ。他にもちょっと気になることがあってね……。まあ、それでパトリックとアンドリューの2人が行くはずだったのだけど、エマが『私も行く』と言い出して先ほど3人は領地に向かったわ。」
「魔物が狂暴化しているということですか? エマ様を行かせてもよろしかったのですか?」
「あの子なら大丈夫よ! パトリックもアンドリューもいるし。」
魔物の狂暴化……。
何らかの事象によって突如、狂暴な魔物たちが増えて暴走する。
昔、古い本に書かれてあった。何十年か前にそういう事があったと。
確か、その名は………
「…… 魔物の暴走」
私の言葉にお祖母様は少し顔をこわばらせた。
「リアちゃん、どこでそれを知ったの?」
「昔、本で読んだことがあったのです。ヴィクトリアの記憶ですけど。それには何十年か前にもそういう事があったと……。」
「そう…。でも、安心して前回のようにはならないわ! その前にパトリック達が何とかしてくれるわ。」
「前回のようにはって、お祖母様達はスタンピードの時に立ち会ったのですか?」
「まあね、たしか私達が今のあなたくらいの歳じゃなかったかしら、あの時はいろいろ大変だったけど、今もこうしてピンピンしているでしょ? 大丈夫よ! あの3人ならきっとスタンピードになる前に片付けちゃうわ。」
そう言うお祖母様の目は輝いていて大丈夫だと信じて待っていましょうと言っているように見えた。
「そうですね。御祖父様達ならどんな魔物でも簡単に捻りつぶしそうですものね。」
幼い頃の領地でのいろいろな事を思い出し少し笑って頷いた。
コンコン
昔話で盛り上がっていると部屋をノックする音が聞こえて入室の許可を出すと侍女が入ってきた。
「王妃様とマーガレット様がアンジュ様とヴィクトリア様に挨拶を参られています。」
「まあまあ! 王妃様とお会いするのもお久しぶりですわ。すぐにお通ししてくださいな。」
それから間もなく、王妃様とマーガレット様が私の部屋にお見えになった。
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