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60話 隣国でも同じような事が起きているらしい
しおりを挟む「アンジュ様、お久しゅうございますね。」
王妃様は王国主催の舞踏会で何度かお会いしたことがあるが、いつ見ても若々しくお綺麗でとても私と同じ年齢の子供がいると思えない容姿をされている。アルフレッド様のキラキラと輝く金色の髪は王妃様譲りなのだろう。
「王妃殿下、お久しぶりにございます。そして、この子は私の孫のヴィクトリアです。」
「ヴィクトリア・メイスフィールドにございます。今日からお世話になります。」
御祖母様から紹介されて王妃様へ挨拶をした。それから王妃様もマーガレット様を紹介された後、席に座り紅茶を飲みながらお話することになった。
「陛下からはお聞きしたのですけどアレックス王子と婚約なされるとか。しかも、こちらのマーガレットさんと同級生で親しくされていたと聞きましたわ。」
「はい、ヴィクトリア様は私とアルフレッド殿下の仲を取り持って頂いた恩人でもありますの。」
王妃の話にマーガレット様が嬉しそうに返した。
「いえ、私は大したことは何もしておりませんわ。」
「まあまあ! やはり血は争えませんわね。アンジュ様。」
王妃様は嬉しそうにお祖母様に笑いかけた。お祖母様は何だか苦笑いをしている。何のことだろう?
私に見られていることに気づいた御祖母様は咳をコホンとついて扇で口元を隠した。
「王妃様、昔の話はいいではありませんか。」
どうやら、照れてらっしゃるらしい。なんだか御祖母様が可愛く見えてしまった。
「うふふ、でも一気にこんなに可愛い娘が二人も増えるなんて嬉しいわ。」
「ヴィクトリア様が義姉様になるなんて私も嬉しいですわ。これからも仲良くしてくださいね。」
王妃様の言葉にマーガレット様も嬉しそうに話す。
「もちろんです。私の方こそ至らないことがあると思いますがいろいろ教えてくださいませ。」
そんな話を和気藹々としていたら、急に王妃様が部屋にいる侍女たちを下がらせた。なにか大事な話でもあるのだろうか。
「アンジュ様、実は少し困った事がありまして近々お呼びしようかと思っていましたの。」
「左様でございますか。困った事とはなんでしょう?」
「身内の恥ずかしい話なのでございますが、私の母国であるニライ国の王太子なのですが、どうやら身分の低い令嬢に骨抜きにされているようなのです。」
王妃様は隣国の王女だった。留学でこの国にお越しになった時に、今の国王陛下に見初められてお輿入れされたと聞いた。
「ええっ!? ニライ国の王太子様と婚約者様とは昨年会いましたがとても仲睦まじく思えましたが…。」
会った事があるのであろうマーガレット様はかなり驚いた様子だ。
「そうなのです、令嬢が学園に転校して来るまではとても仲が良かったらしいのですが、その令嬢を傍に置くようになり、それからは王太子としても学園の生徒会の仕事も疎かになるようになったそうなのです。」
それって……。
マーガレット様を見ると同じ事を思っているらしく頷き返された。
「この国で先日、起きた事と似ておりますでしょう? それでニライ国から使者が来まして相談にのってくれないかと。ただ、私では心許ないのでアンジュ様も一緒に隣国へ行っていただけないかしら?」
「なるほど、そういうことですか。しかし、人の気持ちは移ろいやすいものです。特に恋は盲目になるもの、私がお力になれるかどうかはわかりませんが、少し気になりますわね。」
「魅了などの術にはかかってはいないとのことですが、私もアルフレッドの事があったので、アンジュ様にお聞きいただいたのです。」
「…そうですね。魔法以外でも人の心を操ることはできます。一度、その王太子に会ってみるしかありませんわね。」
「よかったわ! 実は10日後にニライ国で国王様の誕生パーティがございますの、それに私とアンジュ様とエマ様宛に招待状が届いておりますの。その時に王太子の様子を見ていただけないかしら?」
「……左様でございますか。」
御祖母様は少し考えた後、頷いた。
「わかりました。その招待をお受けいたします。ただ妹は今、所用で領地に向かっておりますので今回は私だけで参加致しましょう。」
「わかりましたわ。よろしくお願いします。」
王妃様はお祖母様が行くことになって安堵したようだった。
ザァーー……
打ち付けるような雨の音に気づいて窓を見ると辺り一面真っ白になるくらい雨が降っていて遠くで雷の音がした。
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